野中郁次郎のレビュー一覧
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野中郁次郎さんの「暗黙知」理論を踏襲した内容の一冊。
昨年の震災直後に書かれた一冊だけあって、日本の中央のリーダーシップの弱さと、それに比べた現場力の強さのコントラストをはっきりと浮かび上がらせながら、日本企業の本来の強さも、欧米型合理主義ではなく、従来の現場力と深いコミュニケーションがら生まれると説く。
確かに、日本企業からイノベーションが失われ、活気がなくなってきたのと、MBA的な欧米流の合理的経営の導入とは時期を同じくする。その過程で従来の日本の現場力が失われたということはあるだろう。しかし同時に、合理的判断の弱さが日本企業の弱点でもあり、現在も進むグローバル化に乗り遅れてきたという -
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太平洋戦争における日本軍という組織の問題点をターニングポイントとなった戦い毎に解析し、問題を振り返るもの。
全般に、ほぼ「組織内融和」、「二重目的」という2つの要因に集約している。
① 「組織内融和」とは、是非の判断を行う際、人間の感情(特に「面目」や「恥」)を使用して実施する「優先度判定」である、ととらえた。例えば、ある進軍の是非をとらえる際、「あいつは関係が深い後輩だから『無条件に』後押ししてやろう」とか、そういうものであろう。
それが組織を運営する上で問題だったか、というと、「根拠なく後押ししたらいけない」、ということなのだと思う。信頼関係が構築できていれば、後押しすることはよくある。 -
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学術的な本なので難しい部分はあったけど、組織論に少しでも関心のある人は読むべきだと思う。組織論のバイブル的な扱いも受けているし、日経でもこの本を解説するコーナーがある。
日本軍がなぜ大東亜戦争(第二次世界大戦)で敗北したのかを組織論的な観点から論じている。読み進めていると、「こりゃあ、酷いな」と日本軍の実態に驚くはずだ。陸軍では奇妙な人情主義がまかり通り、作戦で大失敗した指揮官が「かたき討ちさせてくれ」と懇願すれば、重要な作戦に再び起用する。海軍は日露戦争での日本海海戦の大勝利の経験が忘れられず、古くなってしまった決戦思想に執着する。
単に日本軍を批判する本ではない。日本軍の失敗から、組 -
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分かりやすく先行研究を説明しながら鋭い批判、そして豊富な事例と丁寧な検証など、学術書としては非常に読みやすく(読みやすいがビジネス書ではない)、楽しめた。
内容としては非常に学際的で、経営学はもちろん、哲学から認知科学、教育学、組織論まで幅広く取扱いながら、企業(特に日本)における知識創造のプロセスを説明する。
丁寧に読めば様々な示唆に富む一冊である。私見だが、興味深くてそして新しいコンセプトを次々と展開しわくわくさせられた。これが第一版から15年以上経っているとは思えない。
色々なジャンルの新書を読む方、学際的な考え方に興味を持つ人にはお勧めの本である。 -
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ネタバレ知識の方法論についての本。知識経営についての指南本。
相互継続的な学習 検証につながり、発見・体得につながる。
ドラッカー指摘の知識労働の生産性向上の条件
・タスク定義(仕事の目的は何かを主体的に考える)
・自律性(働く者自身が生産性向上の責任を負う。自らをマネジメントする)
・継続的イノベーション(継続してイノベーションを行う)
・継続的学習とコーチング(自ら継続して学び、人に教える)
・量より質(生産性は量よりも質の問題である)
・自己選択(知識労働者は組織にとってのコストでなく、資本財であることを理解)
日本人は無思想で技術がある。日本は暗黙知を駆使してテクノロジーを取り入れる反面概 -
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ネタバレ本書はナレッジ・マネジメントの導入書である(といってよいと思う)。ナレッジ・マネジメントは、この本の著者の1人である野中郁次郎が提唱した企業マネジメントの方法論であるが、この本では、ナレッジ・マネジメントの胆となる概念である「知識」と、組織の成員が集まって知識を創出する「場」の重要性を説いている。
私自身が本書を読んで重要だと感じた点は、以下の3点である。
(1) 「知識」と「情報」は、曖昧な形ではあるが、ある程度は区別することができる概念である(著者はあまりこのことを重要視していないようではあるが)。「知識」は「個人や組織(集団)が認識・行動するための、道理にかなった秩序(体系・手