あらすじ
日本企業は二度の石油ショック、ニクソン・ショック、円高などを克服し、強い競争力を作り上げてきた。日本企業に比較優位をもたらしたのは組織的知識構造をコアとする労働スタイルにあった。それは個別的な直感=暗黙知を形式知化して組織全体のものにし、製品やサービス、業務システムに具体化していく組織の運動能力をさす。いくつもの優良企業のケーススタディをもとに知識創造と知識資産活用の能力を軸として、大転換を迫られている日本的経営の未来を探る。
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Posted by ブクログ
わたしが最初に読んだ野中郁次郎さんの本は、この本でした。
今でこそビジネスシーンでは誰でもが使う言葉「ナレマネ」や「見える化」は、日本企業文化の特徴である「暗黙知」を認知し、企業の価値として育み発展させていく知識経営を提唱した野中先生が始まりだったのではないでしょうか?
その企業の真の価値は既に現場で蓄積されている暗黙知によって支えられているという指摘は、目から鱗が落ちるどころか、頭をガツンと叩かれたような衝撃を与えるとともに、現場の価値を再認識して強みを活かす自信を与えてくれました。
以後、改めて『知識創造企業』を読んで詳細を学び、時を経て『野中郁次郎ナレッジ・フォーラム講義録』でリカレントしました。
言い方は変かもしれませんが、野中郁次郎は、わたしにとっては、常に憧れのブランドであり、迷ったら戻れば良いという基地のような存在でした。
ドラッカーよりも先に野中郁次郎を知ったわたしは、親鳥の後をついて歩く雛のようにしっかりと摺り込みされていました。
暗黙知の見える化を行うという客観的な視点と、自社内の価値を見直すという姿勢は、わたしを「学ぶ組織」や「場の理論」や「ポートフォリオ」、ドラッカーマネジメントやコトラーマーケティング、ひいてはMBAの世界やハーバードビジネスレビューに導きました。
本物と亜流を見極める目も野中経営学の衝撃が与えてくれたように思います。
お目にかかったことなどありませんが、密かに師と仰いでいた方でした。
言い古された言葉ですが、巨星堕つといった感慨です。
学びをいただいた感謝を 哀悼を込めて
Posted by ブクログ
『SECIは単純な機会的プロセスではありません。知識創造という点で一番重要なことは、SECIの背後にある大きな目的意識、存在論だといえます。何のために存在するのか、いかにあるべきか、他社とは何が違うんだ、どんな理想状態をめざすのか。こういうところまでつながる存在論がないと知識の根本が崩れていってしまいます。
それは究極的には自己を越えた世界の“知”の追求です。その意味で知識というのは「真・善・美」を追求するものであります。』
ナレッジマネジメントについて極めてシンプルに整理されていて良かった。
それにしても、グローバル・ナレッジ・リーダーの資質がすごい。
1.確立された個(individuality)
2.マーケット・ビジョナリー(visionary)
3.意思決定力あるいは「意志力」(will)
4.価値創出力あるいは価値経済感覚(value)
5.場をデザインし駆動させるリーダーシップ(ba)
こんだけ兼ね備えていれば、そりゃ〜できるに決まってるわな。
Posted by ブクログ
ナレッジマネジメントの草分けが日本にいらしたとは、驚きました。暗黙知と形式知の利用サイクルがとってもためになりました。外資IT業界で育ってきましたが、ユーザーにツールを乱暴に与えて、使えないのはリテラシーが足りないと嘆くのは、そろそろ終わりにしたいと思っています。本書のように知識の循環までデザインして、初めて使用者側も「なぜ」使わなくてはいけない納得するのだと思います。知識を会社の中でどのように生かしていくのかを知るのに、とてもよいスタートになりました。
Posted by ブクログ
すっかり経済の低成長が定着し新商品の上市のペースも鈍ったこと、あるいはリストラやアウト・ソーシングによって現場の実務知識が流出してしまったことなどを背景に、最近は日本でもソリューション・ビジネスやナレッジ・マネイジメントという言葉だけはかなり浸透した感がありますが、本書は、そのナレッジ・マネイジメント、そして知識経営がどのような思想のもとで、どのように推進されるべき概念のものか、実際にどのように活用されているか、などを概述しています。
前半は、観念哲学の概念論張りの説明で難しく感じるかもしれませんが、言語哲学のロゴス/パトスのような循環関係を持つSECIモデル、形式知/暗黙知をキータームを使っての説明は分かりやすく、知識経営とは何か、それを実践する為のプロセスや組織はどうあるべきか、などを全体的に見通すには最適の入門書です。
Posted by ブクログ
知識経営のすすめという表題に胡散臭さを感じた。
第4章が、場をデザインするという題目になっているので、逆に、親しみを感じた。
知識では役に立たないが、場が共有できれば、役にたつかもしれないからだ。
内容が、やや抽象的すぎて、現地、現物の地から強さが感じられない点が、読み終わった不安感をかきたてている。
結局、経営は不安との戦いなのだろう。
Posted by ブクログ
初めて読んだのは高校時代。
あれから大分たって今大学生の私だが
果たして野中先生、紺野先生の理論が理解
できるか。。。。。
多分これは今のところ私が読んだ本で一番
消化不足で、一番難しく、一番面白い本だと思う。
Posted by ブクログ
アジャイルの本を読んだ後、野中先生の本も積読であったなと思い出して読んだ一冊。数年前、社員の意識変革の必要性を説く上司が課題図書として挙げた一冊。
1999年の発行。出てくる固有名詞やネット社会の進み具合とかからはちょっと古い話かと感じさせたりもしますが、製造業から知識産業に主役が移るという予想はそうなったりして、古くても新しい。
暗黙知を形式知に変える場をどうデザインするかですね。
Posted by ブクログ
発刊は1999年だったが、今の時代にも適応される考えが記載されている書物のように感じた。
自社がSECIモデルで経営できているかや、知識経営のステップに照らすと道のりは遠いように見える
Posted by ブクログ
自分の組織への適用エクササイズ。
狭義のナレッジマネジメント:知識の共有・移転・活用
+知識ベース事業
+知識経営組織、組織デザインとリーダーシップ、組織改革
・知識創造プロセス
暗黙知
↓ 共同化 (創発場)
暗黙知
↓ 表出化 (対話場)
形式知
↓ 結合化 (システム場)
形式知
↓ 内面化 (実践場)
暗黙知
以上を、個人、集団、組織の各レベルで
・分類
知識資産の把握、議論、活用のための分類
構造的分類
機能的分類
ビジョンの把握、議論、活用のための分類
意味的分類
・観察→定義→分類→仮説(測定のための)→活用→検証→フィードバック
・ハイパーテキスト型組織
自律的な知識創造プロセスをまわす
発展的、多元的、動態的
Posted by ブクログ
ちくま新書らしい学術書の入口って感じ。
ナレッジマネジメント、知識経営については野中先生のお話を何度か聞いていた上での読破だったので腹落ちしやすかったが、一般的にはけっこうタフな内容だったような気もする。
いずれにしてもブレなく同じ論理をきちんと説明できるってことでやっぱり権威なんでしょうね。この道の。
Posted by ブクログ
本書はナレッジ・マネジメントの導入書である(といってよいと思う)。ナレッジ・マネジメントは、この本の著者の1人である野中郁次郎が提唱した企業マネジメントの方法論であるが、この本では、ナレッジ・マネジメントの胆となる概念である「知識」と、組織の成員が集まって知識を創出する「場」の重要性を説いている。
私自身が本書を読んで重要だと感じた点は、以下の3点である。
(1) 「知識」と「情報」は、曖昧な形ではあるが、ある程度は区別することができる概念である(著者はあまりこのことを重要視していないようではあるが)。「知識」は「個人や組織(集団)が認識・行動するための、道理にかなった秩序(体系・手順)」(101-102ページ)である。その際、知識を用いる人がその知識内容を正当なものとして認識していることがポイントとなる。一方で「情報」は、(一般的には)「データから構成された意味や意義」(103ページ)のことを指し、「情報」は「知識」の形成に寄与するものである。
(2) 「知識」はさらに、「形式知」と「暗黙知」に区別されて考えられる。「形式知」とは言語化が容易な知識のことを指す。例としては、マニュアルや文書情報などが挙げられる。こうした形式知は、言語を媒体として共有や編集が可能である。
一方で、「暗黙知」とは言語化しえない、あるいは言語化しにくい知識のことを指す。例としては、熟練の職人の技術などが挙げられる。暗黙知は言語化の難しい知識であるが、身体経験によって個人に取り込むことができる知識である。
知識の創出の際には、形式知を暗黙知へ変換したり、逆に暗黙知を形式知へと変換する作業などを通じて、組織に所属する人々の間で形式知や暗黙知を共有するプロセスを構築し、分析することが肝要である。ちなみにこのプロセスは「SECIプロセス」と呼ばれている(cf. 111-115ページ)。SECIプロセスは繰り返されることが重要であり、それによってこのプロセスにかかわる人々の成長が期待できるのだという。
(3) 「場」は、組織に属する人々が知識(形式知・暗黙知の両方)の共有や創出を行う結節点となるために、重視されるものである。そしてまた、「場」の様態は、SECIプロセスに沿って分類し分析することができる。
「知識が重要だ」と指摘すること自体は簡単である。しかし、実際には現場の知識を持つ人々(組織に所属する人々)の参加意識が必要であり、知識共有に人々が貢献することで人々にメリットが感じられなければならない。そのため、知識共有に対して人々が自発的に取り組んでくれるような状態とすることが重要となる。
本書は、ナレッジ・マネジメントという方法の要点を整理しており、それゆえに私はこの本をナレッジ・マネジメントの「導入書」であると見なした。しかし、本書の内容だけでは、組織の中での具体的な実践へと結び付けることは難しいだろう。ナレッジ・マネジメントは魅力的な方法論のひとつであると思うが、当然ながら、組織の状態をよくふまえた上で用いることが肝要となる(本書の著者は、ナレッジ・マネジメントが短期的に成果をもたらすような方法でもなければ、体系的に商品化されたような「便利な経営手法」でもないことをきちんと記している)。このマネジメント手法についてさらに深く知りたい方は、『知識創造企業』も併せて読むとよいかもしれない。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日本企業は、二度の石油ショック、ニクソン・ショック、円高などを克服し、強い競争力をつくりあげてきた。
日本企業に比較優位をもたらしたのは、年功制度・終身雇用という労働形態だけでなく、組織的知識創造をコアとする労働スタイルにあった。
それは個別的な直感=暗黙知を形式知化して組織全体のものにし、製品やサービス・業務システムに具体化するという組織の運動能力のことである。
トヨタやホンダ、花王、富士通、富士ゼロックスなど優良企業のケース・スタディをもとに、知識創造と知識資産活用の能力を軸として、大転換を迫られている日本的経営の未来を探る。
[ 目次 ]
第1章 情報から知識へ
第2章 21世紀の経営革命
第3章 第五の経営資源
第4章 「場」をデザインする
第5章 成長戦略エンジン
第6章 創造パラダイムの経営
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
SECIモデルを勉強する第一歩として手に取り、読みましたが、やや冗長です。
平易な文章で書かれているため、読みやすいのです。
ただ、頭にはあまり残らないというか、心躍る感じがなかったです。
中小企業事例を探したいと思いました。
Posted by ブクログ
知識を第五の経営資源と位置づけ、知識を中核に据えた組織経営を提起している、のだが、本の分量に比してかなり大きなフレームワークであるため、一冊だけで概要をとらえるのはかなり難しい。ものごとの整理で個別に参考になることも多く、読むべき本であることは間違いないが、関連書籍も何冊か押さえるべき。
Posted by ブクログ
「知識経営」(ナレッジ・マネジメント)を、従来よりもいっそう包括的な視点から捉えなおそうとする本です。
90年代半ばから欧米で関心が高まった「知識経営」は、個人の知識や企業の知識資産を組織的に集結し、共有することで、効率を高めたり価値を生み出すこと、そして、そのための組織作りや技術の活用をおこなうことを意味します。しかし著者たちは、従来の知識経営が、私たちの「頭の中にある」知識よりも、データベースなどに蓄えられた情報が対象となっており、それを応用する「知識管理」の段階にとどまっていたと述べます。
知識経営は、知識ワーカーたちの組織的行為を通じて、単に知識を活用するだけでなく、新しい価値を創出するような経営として捉えられる必要があります。本書ではそうした知識の活用による価値創出のプロセスを説明するために「SECIプロセス」というモデルが示されています。これは、知識の「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「結合化」(Combination)、「内面化」(Internalization)から成り、知識ワーカーたちの体験が共同化されることで言葉へともたらされ、組織の「知」にまで成長し、それが個々人に内面化されることで、それに関わった人びとがひと回り大きく成長する……というプロセスを表わしています。
さらに著者たちは、こうした知識による価値創出がおこなわれる「場」についての理論への展望をおこなっています。そこでは、アフォーダンスや現象学、M・ポランニーの暗黙知の理論や、西田幾多郎の場所の哲学などとのつながりが示唆されていて、おもしろそうに思えます。ただ、その内容は十分に展開されておらず、もどかしく感じました。
Posted by ブクログ
古いのに古さを感じさせない。経営や知識についてわかりやすくまとめてあって興味深かったです。ただ横文字が多すぎる…わざわざ日本語で注をつけるくらいなら最初から噛み砕いて書けばいいのに、と不満があるので★3
毎年読み返すとよさそうなので未来の自分頑張れ~。
Posted by ブクログ
1999年当時の「ナレッジマネジメント」に関する著書である。
初版当時は、Lotus Notesが企業を席巻していかに会社の中にある「知」をソフト上に集積するかが重要なテーマだったように思う。一方、ナレッジマネジメントの動きに当時はデータの流量やそのもの量の保管に充分にインフラが充分なソリューションを提供でなかったことや、「暗黙知」の集積の先のその利用にまで手が回らなかった。
テキストマイニングやデータマイニングが充分に発達したのは21世紀にはいってからである。
本書は、その背景にあった理論の書である。理論はソリューションを伴って、始めて活きるということであろうか。
Posted by ブクログ
p.21 優良事例を分析して取り入れることによって成果を上げることに慣れてしまうと、自分で考え、挑戦、失敗する風土がなくなってしまう。
p.66, 84 個々人の持っている知識は個人が組織の中で認められるための財産なので、それを同僚と分かち合おうという呼び掛けには必ず心理的抵抗が生まれる。でも個人が抱え込んでいるのは知識資産を腐らせているようなものだし、こういう知識は組織の仕事を通じて得たものなので「公共財」としての性格ももっている。
共有しよう、という組織文化がないといけないが、これにはトップダウンの強力なイニシアチブが求められる。
p.89 古い組織に新しい技術を導入しても、複雑さを増すだけ。組織変革をともなわないとダメ。
p.103 データ-情報-インテリジェンス-知識-知恵 というピラミッド構造。
データは記号、数値。情報はデータから構成された意味や意義。知識は情報を認識し行動に至らしめる秩序。知恵は知識を現実に適応させて得られた成功事例集。
p.105, 106 暗黙知はそれを持っている本人がなかなか体系的に理解できない、場合によってはそうした知識をもっていることを知らない。こうした七気を得たり、伝えるには時間がかかる。そこではマニュアルなどの形式知が意味を持ってくる。
p.124 個人の暗黙知が体系的な知識として組織で客観化・正当化され、ふたたび実践に向けて個に向かう。この螺旋的サイクルによって個も組織も新たに創造された知識を得て拡張していく。
Posted by ブクログ
陰と陽、その一方を極めて行くと、必ず次の展開のときには、その反対の中に芽が出てくる。今一度知の組織的創造を自らで見直してみる、自らの有り様を徹底的に反省してみる必要がある。
Posted by ブクログ
1回生夏季休暇の課題図書として先生が複数の書籍を紹介した中から、タイトルに惹かれ選択。
近年叫ばれる「知識経営」についての著作。勉強している方にとっては当たり前のことばかり書かれているのかもしれませんが、読んだ当時の私にとっては学ぶことの多い本でした。この本で得た知識は、他の経済論やマーケティングの授業でも役に立っています。
「知識経営」と言われると何だか仰々しく聞こえますが、無形の知識を商品にする、あるいは知識を組み込んだ商品を提供することで収益を得る経済・企業の話(コンサルティング業など)で、これはまさに現在の経済の姿です。よって、是非知っておくべき内容です。
一番重要なのは、やはり人であり、そのリーダーシップや行動力、コミュニケーション。