沢木耕太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
作者が若い頃訪れた時は津軽のお国訛りが全く理解できなかったのに、今回の旅では…。理由は沢木さんの方言の理解度が高まったのではなく、方言が標準語に近づいてきたからでちょっと残念そう。私も京都の町なかで「もっと京都弁がききたい」って思ってしまう。それは旅する者のわがままだろうか。
数ヶ月前にたまたま著者の代表作「深夜特急」に触れる機会があり沢木耕太郎を知った。
私にとっては深夜特急の装丁がちょっとワイルドすぎて手に取ることすら敬遠していたけど、読んでみると心やさしい旅人の旅の話を聞かせてもらっているみたいだった。旅のつばくろは国内の旅だし深夜特急より大分後から書かれたものなので年齢的にも親しみがわく。沢木ファンになってしまいそう。
-
Posted by ブクログ
沢木耕太郎『天路の旅人 下』新潮文庫。
第二次世界大戦末期に敵国の中国大陸奥地まで密偵として潜入した日本人、西川一三の8年間の軌跡に迫るノンフィクション。
下巻を読み進めば、著者の沢木耕太郎の言うところの極めて稀有な旅人の姿が浮かび上がってくる。
密偵というのは資金集めの口実に過ぎず、あくまでも西川一三の未知なる地への探究心こそが苛酷な旅の理由だったのではないだろうか。何しろ、8年間の潜入で日本に情報を送ったという描写は一度しか無い。
あの時代に現地人に成りすまし、辺境の地を漂うことは容易ではなかったことだろう。
3年掛けて中国北部からチベットへと辿り着いた西川一三は、インドへ向かい、そこで日本の敗戦を知る。密偵の意味など無くなったにも関わらず、西川はチベット、ブータン、インドへの潜入を続ける。それは西川の未知なる地への探究心が成せる業に他ならない。ヒマヤラ山脈を9度も超え、さらに奥地へと向かう西川だったが、旅は突如として終わりを告げる。
インドで拘束された西川は、ついに帰国の途に着くのだ。帰国した西川はGHQに呼び出され、中国奥地からチベット、インドまでの辺境の地に関するインタビューを受ける。
やがて、岩手県水沢で仕事を得た西川は仕事の傍ら『秘境西域八年の潜行』を執筆し、やがて盛岡へと移住する。
本体価格750円
★★★★ -
Posted by ブクログ
沢木耕太郎『天路の旅人 上』新潮文庫。
第二次世界大戦末期に敵国の中国大陸奥地まで密偵として潜入した日本人、西川一三の8年間の軌跡に迫るノンフィクション。
著者の沢木耕太郎は東京から冬の盛岡へと向かう。本作のテーマとなる人物である西川一三本人にインタビューすることが目的であった。定期的に酒を酌み交わしながら、インタビューを続ける沢木であったが、やがてその交流が途絶えてしまう。西川の軌跡をノンフィクションに仕立る道を模索するうちに時は過ぎ、ある日、西川の訃報を目にする。
まさか盛岡に、このような凄い人物が暮らしていたということを知らずに驚いた。また、中公文庫から全3巻に及ぶ『秘境西域八年の潜行』という体験記が刊行されていたことなど全く知らなかった。
山口県出身の西川一三は満州鉄道に就職するが、そこを退職し、内蒙古に設立された興亜義塾という学校に入る。西川は卒業目前に酒席で暴力を奮ったことで退塾となり、未知なる中国の奥地からモンゴル、チベットへと密偵として潜行していく。蒙古人のラマ僧に扮した西川はロブサン・サンボーとして、極寒の雪道、延々と続く砂漠、幾重もの峠、匪賊の襲撃や飢えを乗り越えていくのだ。
本体価格670円
★★★★ -
購入済み
さすがは紀行文の名手
さすがは紀行文の名手 深夜特急の作者だけのことはある。なんでもない旅の一場面一場面の描写が、しみじみと心に染みてくる。優れた紀行文を読むとそこへゆきたくなるとよく言われるが、行った気になる という雑誌のオーナーのJRにとっては副作用もあるのではないと思ってしまう。スッキリとした表紙絵も良い。
-
Posted by ブクログ
.
沢木耕太郎が、20代の頃の海外放浪経験を記したシリーズの、第6巻です。
ギリシャから船に乗って、イタリアに渡った沢木。
「インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスに乗って旅をする」という、自らが決めたルールに沿って、ローマへ移動しようとします。
「ヨーロッパに入れば、楽に移動できるだろう」と考えていた沢木ですが、長距離バスが少ないイタリアで思わぬ苦労を味わいます。
当初の想定以上に、月日を要したこの旅。
宿代を値切るなど倹約はしてきましたが、旅の資金も残りわずかとなっています。
沢木は、自分が設定したルールで、この旅を終えることができるのか。
イタリアから、旅を終了するまでの日々が、記されています。
印象に残ったのが、沢木が「この旅をどう終わらせるのか」について、繰り返し考えていること。
フランス入国を前にして、最短距離を選択するかどうか迷った彼が下した決断には、「自分とは違うな」とうならされました。
「なぜ、自分は旅をしているのか」、「旅を続けている人というのは、どういう人なのか」、さらには、「自分はなぜ、生きているのか」。
ただ、「見聞を広める」だけではなく、「自分の人生の目的や、存在意義を知りたい」というような目的が、この旅にはあったのだろうなと、自分なりに推察しました。
ユーラシア大陸を横断する、壮大な旅。
自分とは言葉も考え方も違う人に出会い、交流する。
自分がその場所、その人たちの間で、“初心者”である状態にいる。
自分自身もそれなりに、海外渡航を経験してきたつもりでしたが、このような状況に身を置くことからしばらく、遠ざかっていることに気づかせてもらいました。
コロナ禍を経てしぼみつつあった、旅への情熱を思い出させてもらえた、一連のシリーズでした。
. -
Posted by ブクログ
.
作家の沢木耕太郎が、自らが20代後半で経験した海外放浪の旅を記したシリーズの、第5巻です。
バスを使って、ユーラシア大陸を横断している沢木青年。
想定以上の月日を要しましたが、第4巻からは移動のペースが上がってきました。
第5巻では、沢木がトルコとギリシャで過ごした日々が、記されています。
長く滞在した「アジア」から、「ヨーロッパ」の玄関口へと移動した沢木。
トルコでは、沢木が日本人であることを知って、彼に親切にする人が複数、登場します。
そして、直近では移動優先で旅をしていた沢木が、イスタンブールにはしばらくの間、滞在します。
イスタンブールの街の情景や人々との交流について書かれた箇所を聴いて、「歴史のあるこの街は現在、どのような様子なのだろう?」と、興味が深まりました。
さらに、ギリシャへと進んだ沢木は、アテネやスパルタといった、古代都市の遺跡に足を踏み入れます。
都市間の戦いに勝利し繁栄したアテネよりも、スパルタなど、敗者となり破壊された都市の風景に感銘を受ける、沢木の反応が印象に残りました。
そして、沢木が魅力的な人々と出会い、美しい風景を目にしたペロポネソス半島には、「いつか行ってみたい」という憧れの気持ちを抱きました。
広大なユーラシア大陸を、東から西に進んできた沢木の旅も、終盤に近付いてきたようです。
彼がどのようにこの旅を終えるのかを見届けたいので、第6巻もAudibleで聴こうと思います。
. -
Posted by ブクログ
沢木耕太郎が、海外放浪経験を記したシリーズの、第4巻です。
「インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスで移動する」という(自分なりの)ルールで旅をスタートした、26歳の沢木青年。
香港、バンコクを経由した航空チケットを選んだこともあり、スタート地点のデリーまで、かなりの日数を要します。
そんな沢木も第3巻の最後になってようやく、デリーに到着しました。
立ち寄った土地にしばらく滞在し、人とふれあい、街の空気を味わうという旅を続けてきた沢木。
しかしデリーに着いてからは、目的地であるロンドンに向けて移動することを、意識するようになります。
そんな沢木の、中央アジアから中東にかけての道中が、この第4巻には記されています。
パキスタン、アフガニスタン、そしてイラン。
交通・情報のネットワークが発達した現在でも、日本人の自分には遠くに感じられる、イスラム教徒の国々。
これらの国で沢木が経験した出来事は、足を踏み入れたことがない自分には新鮮に、魅力的に感じられました。
東南アジアで沢木が出会った人々や、経験したこと比較すると、退廃的な人が少ない、規律が守られた土地柄のように、感じられました。
また、ここまでの旅でもたびたび書かれていましたが、宿泊や食事、物の購入において、沢木が値段の交渉をするシーンが多く登場することも、印象に残りました。
ここまできたら最後まで、沢木の旅を見届けたくなりますね。
引き続き第5巻も、Audibleで聴いていこうと思います。
.