沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 作家との遭遇(新潮文庫)

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    ネタバレ

     少女は小説を書く愉しみを覚えた。それは、『しんこ細工の猿や雉』の中の「おとなしい子に御褒美」という言葉を借りれば、物語を愛し、物語の力を信じた少女に、物語の神様が「御褒美」としてひとつの美しい手鏡を与えた、ということと同じであったろう。そこに映せばどのようにでも姿かたちを変えることができる、という美しい手鏡だ。少女は、思うがままに変容させつつ、そこに自分を映し、外界を映していく……。
     だが、小説を書くという行為には、たとえそれがどれほど幼くつたないものであっても、どこかに「自らを視つめる」という契機を避けがたく含んでしまうところがある。手鏡は自惚れ鏡にもなりうるが、鏡台の前に座った少女には

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    2023年03月19日
  • 春に散る(下)

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    かつて世界チャンピオンを目指した仲間たちと、『チャンプの家』で暮らし始めた、広岡仁一。

    才能あふれたプロボクサー・黒木翔吾が4人に教えを求めてくる。

    翔吾とともに、世界を目指すことを決めた、広岡、藤原、佐瀬、星の4人。

    佳菜子の過去も明らかに…

    翔吾も世界タイトルマッチへと進むが…

    広岡も自らの病気を隠し、翔吾のタイトルマッチへと向かう…

    広岡、いい人すぎる…
    まさに名前の通り、人につくしている。
    何が彼をそこまでさせるのか…
    もう少し、この先が見たかった…

    春に散る…

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    2023年02月19日
  • 春に散る(上)

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    かつて世界チャンピオンを目指したボクサーだった広岡仁一。
    60歳を超え、自分の残り少ない人生を想い、40年ぶりに日本に戻る。

    かつて所属していたジムの会長はなくなり、その娘が引き継いでいた。

    かつて、ともに合宿所で暮らし、世界チャンピオンを目指した仲間たちを訪ねるが、それぞれに孤独な人生を送っていた。

    やがて、広岡ら4人はともに暮らし始める。かつてジムの2階の合宿所で暮らしたように。

    世界チャンピオンになれなかった元プロボクサーたちが、これからどう生きていくのか。

    佳菜子も何か訳アリのようだが、彼女の過去に何があったのか…

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    2023年02月18日
  • テロルの決算

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    読むのに時間がかかり疲れた
    間違いなく読み応えはあるが
    時代も古いし
    正確に認識できていない言葉が出てくると
    例えば
    安保闘争ってなんだっけ?
    とググったりを繰り返した

    テロは誠に手前勝手な迷惑行為であるが
    その全てを否定することも難しいのではないかと思ってしまう

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    2023年02月06日
  • テロルの決算

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    沢木耕太郎(1947年~)氏は、横浜国大経済学部卒のノンフィクション作家、エッセイスト、小説家、写真家。著者が1974~5年に香港からロンドンまでを旅した記録『深夜特急』(発表は1986~92年)は、当時のバッグパッカーのバイブル的存在としてあまりにも有名。本作品で大宅壮一ノンフィクション賞、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、『凍』で講談社ノンフィクション賞、その他、菊池寛賞等を受賞。
    本書は、1978年に出版、1982年に文庫化されたものを、2008年に新装版化したものである。
    私は、1980年代にバッグパックを背負って海外を旅し、沢木の作品はこれまでに、上記の各賞受賞作をはじめ、

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    2023年01月14日
  • 天路の旅人 無料お試し版

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    西川一三と沢木耕太郎

    西川一三と沢木耕太郎。時代も旅程も全く違うが旅する二人に共通する「匂い」を感じることができる。小説ではなくドキュメンタリー ルポルタージュなのだが、主人公西川一三の歩みがあまりにも壮大なので、その迫力は凡百の小説を遥かに上回っている。

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    2023年01月06日
  • 敗れざる者たち

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    本質は何かを突き詰めたくていろいろ考え行動し得られたものが綴られている。
    本質がよくわからなくてもそこに至る過程で得られることは近いものがあるのではと思わせる。

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    2022年12月23日
  • テロルの決算

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    私はテロという暴力を肯定しない。しかし加害者である個人を否定しない。その尊厳を守るべき社会は、私たちが担う責任の集約でもあり為政者はその代表となる。民主主義社会の過渡期に起きた暗殺事件、被害者の政治家・浅沼稲次郎と加害者の右翼思想青年・山口二矢、ふたりは面識もなく現場となった日比谷公会堂で初めて対峙する。偶然が重なった警備の穴にするりと足を踏み入れた山口の決意はどれほど熟成されたものなのか、それとも当日の新聞朝刊に載った記事による衝動的な狂騒だったのか、夭折となった山口の本心は知る由もないが、最後の章で垣間見せる人情に感嘆する。彼は狂人ではない、思想の違いがこれほど常軌を失わせてしまう悲劇なの

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    2022年12月09日
  • 天路の旅人 無料お試し版

    匿名

    ネタバレ 購入済み

    帰れないつらさ

    母国の事情もわからず終わりの見えない旅を永遠に続けようとしていた主人公が、やがてたどり着いた先で出した答えにグッと感じるものがあります。祖国に帰りたい気持ちはきっとあるのでしょうが、なかなか難しいところがあったそうです。作品を書くためにインタビューまでしたという著者の強い思いもあって、読む者の心を揺さぶる作品と言えます。

    #深い #切ない

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    2022年11月01日
  • 寒橋(さむさばし) 山本周五郎名品館III

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    巻末で語る沢木氏の世界も一片の作品の様で「情」の世界が持つ彼なりの想いを自分の父の話を軸に切々と語っているのが哀切を伝える。

    とは言え、山本氏の作品に「情」が流れていないものが有るかな・・ユーモア小説の類でも情が有る。
    でも沢木氏が語るように、膨大な作品群の中でも秀逸揃いを納めてある~「人情裏長屋」「なんの花か香る」「かあちゃん」「あすなろう」「釣忍」は題名だけで内容が湧き上がってくる。今回、しっかり刻み込んだ「寒橋」の情感・・切なさと底冷えのするような空気感がもたらす夜の河岸の情景が心を震わせる。
    おたみの産む子の父はひょっとして・・と邪念も働くけど。

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    2022年10月31日
  • 作家との遭遇(新潮文庫)

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    憧れの作家を挙げろと言われたら、沢木耕太郎さんを挙げるだろう。彼の書くものは、小説を除いて、ほとんど読んでいるかもしれない。本書は、以前単行本として刊行された23人の作家論だが、文庫化にあたり外国人作家が割愛され19人の日本人作家論となっている。

    沢木さんの作家論を読んで、その作家について学ぼうと思う人はそうはいるまい。沢木さんの作家論を読む人は、おそらく沢木耕太郎がその作家をどう語るかを知りたいのである。

    沢木さんの手にかかると、作家たちの人生は何か壮大な運命に絡め取られているかのように感じられる。お堅い作家論にはない、鮮やかなドラマがそこにある。そのように書くと全てが沢木さんのイマジネ

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    2022年10月15日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

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    旅のつばくろシリーズ、第二弾?
    相変わらず旅情をかき立てられます。
    若いころアルバイトでためたお金で、東北に旅した話。
    そして数十年たって、その時の足跡をたどる旅。
    取材などで訪れた場所、そのエピソード。
    コロナが収束したらといっているうちに、
    こっちはだんだん年を取り・・・
    年々、腰が重くなるのです。

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    2022年10月10日
  • 若き実力者たち

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    「沢木耕太郎」が、自らが選んだ道をひたすら疾走する十二人の胸に秘められた情熱の旋律とロマンの軌跡を描いたルポルタージュ作品『若き実力者たち 現代を疾走する12人』を読みました。

    『危機の宰相』、『テロルの決算』に続き「沢木耕太郎」作品です。

    -----story-------------
    「尾崎将司」、「唐十郎」、「河野洋平」、「秋田明大」、「安達瞳子」、「畑正憲」、「中原誠」、「山田洋次」、「市川海老蔵」、「小沢征爾」たち十二人とともに酒を酌み、ともに旅して探った、現代を現代的に生きる人物紀行。

    「小沢征爾」、「市川海老蔵(現・団十郎)」、「唐十郎」、「山田洋次」、「尾崎将司」…。
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    2022年10月08日
  • テロルの決算

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    「沢木耕太郎」が、日本社会党の党首「浅沼稲次郎」を小刀で殺害したテロリスト「山口二矢(おとや)」を描いたルポルタージュ作品『テロルの決算』を読みました。

    『危機の宰相』に続き「沢木耕太郎」作品です。

    -----story-------------
    あの時、政治は鋭く凄味をおびていた
    17歳のテロリストは舞台へ駆け上がり、その冷たい刃を青ざめた顔の老政治家にむけた。
    とぎすまされたノンフィクションの最高傑作!

    少年の刃が委員長の胸を貫いた瞬間に社会党への弔鐘が鳴った。
    テロリストと野党政治家とが交錯する一瞬までをたどる大宅賞受賞作
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    『危機の

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    2022年10月07日
  • 危機の宰相

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    「沢木耕太郎」が、「池田勇人(はやと)」の経済成長テーマだった「所得倍増」を巡るプロセスを描いたルポルタージュ作品『危機の宰相』を読みました。

    「城山三郎」が78歳で国鉄総裁になった「石田礼助」の人生を描いた作品『粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯』を読んだのですが、「石田礼助」を国鉄総裁に強く推薦したのは「池田勇人」だったんですよね… そんなこともあり、本書を選択、、、

    「沢木耕太郎」作品は、8月に読んだ『檀』以来なので、約1ヶ月半ぶりですね。

    -----story-------------
    あの時、経済は真っ赤に熱をはらんでいた
    安保闘争の終わった物憂い倦怠感の中、日本を真っ赤

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    2022年10月07日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

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    前作にも増して旅情をかき立てられる35編のエッセー集。遠い記憶の穴を埋めるための東北旅行、北斎の版画に描かれた場所を探し求める日光旅行、江戸幕臣の紀行文を辿る23区内小旅行等々…心に残るエピソードばかり。読みながら、まだ携帯もない時代、時刻表だけを手に飛び回っていた頃が懐かしく思い出された。これまで旅先に残してきた心を回収する旅は、自分もこの先いつかできたらいいなと思う。スマホにもガイドブックにも頼らず一人、風の吹くまま気の向くままに…。

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    2022年09月28日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

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     会津若松、秋田、伊豆の湯ヶ島温泉、島根の松江、福岡の柳川、大分の臼杵、宮城の塩釜、福岡の朝倉市秋月などを訪れた時の様子と感想が書かれていました。

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    2022年09月23日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

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    著者は180cmもあるんだ。
    そりゃ、若い頃はモテただろうな。
    スマホを持たずガラケーというのも、好感度高し。
    あんだけ旅してるのに、道に迷った時も地図アプリを見れば一発なのに、あえて(スマホを持たず)人に尋ねてそっから思いもかけずいろんなことに遭遇する楽しみが旅の醍醐味なんだとか、さすがだわ。
    よく、通りすがりの人に道をきいたり、話しかけたりしてるみたいだけど、なんて幸運な人たちなの。
    私も、道を歩いてたら突然、沢木耕太郎に道を聞かれないかな。

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    2022年09月04日
  • テロルの決算

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    安倍元総理の死とそのテロリストの気持ち。台湾をめぐる東アジアの昨今の緊張した国際関係、ほとんど消えてしまった社会党と民社党。テロルは、それぞれについて、新たな視点で考える機会を与えてくれました。

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    2022年08月15日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

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    「旅のつばくろ」の2巻目。
    1巻目には、このエッセイが、JR新幹線の車内誌である「トランヴェール」に連載されたものであるという説明があったのだが、この2巻目には、その記載、すなわち、このエッセイの初出が全く記載されていない。それは沢木耕太郎のエッセイを味わう分には書いてあっても書いてなくてもどちらでも良い類のものであるが、何故書いていないのだろうか、と不思議な気がした。もしかしたら書下ろし?そんなこともなさそうだしな、と思いながら。
    このシリーズは、国内旅行のエッセイである。
    沢木耕太郎が書く旅行記といえば、何といっても「深夜特急」。外国を放浪するように旅するというのが、沢木耕太郎の旅行記のイ

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    2022年08月13日