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風に吹かれ、水に流され、偶然に身をゆだねる旅。そうやって〈私〉はマレー半島を経て、やっとインドに辿り着いた。カルカッタでは路上で突然物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤでは最下層の子供たちとの共同生活を体験した。ベナレスでは街中で日々演じられる生と死のドラマを眺め続けた。そんな日々を過ごすうちに、〈私〉は自分の中の何かから一つ、また一つと自由になっていくのだった。此経啓助氏との対談「十年の後に」を収録。「あの旅をめぐるエッセイIII 仏陀のラーメン」が新たに追加された【増補新版】。※本電子書籍は、令和二年八月発行の新潮文庫(新版)を底本としています。
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Posted by ブクログ
『深夜特急』第3巻(インド・ネパール)は、全6巻の中で最も「強烈なカルチャーショックと過酷な試練」に直面する巻です。
2巻までの爽快な移動劇から一転、シンガポールから飛んだカルカッタ(現コルカタ)で、圧倒的な人波、熱気、貧困、詐欺師たちの洗礼を受けます。途中で訪れたネパールのカトマンズで一息つくものの、インドへ戻ると体調を崩し、激しい下痢と高熱に襲われて激痩せする最大の危機(沈没)に陥ります。
4巻以降のシルクロードやヨーロッパを目指す「旅の本番」を前に、カオスなインドで心身ともにボロボロになりながら旅人として脱皮していく、全巻を通しても屈指のドラマチックな一冊です。
Posted by ブクログ
七章 神の子らの家
そこをひとりで歩いていくのには勇気が必要だった。...いちど迂回すれば無限に迂回していかなくてはならなくなる。
八章 雨が私を眠らせる
彼には、ヒッピーたちが放っている饐えた匂いを嗅ぐことしかできていなかったのです。...どの国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることができます。...深い虚無、それは場合によっては自分自身の命をすら無関心にさせてしまうひどの虚無です。
此経啓助さんとの対談
だからデリーからロンドンまでバスに乗って行こうとしたのは、自分の体内に地球を測ることのできる距離計を作りたかったからなんですね。...旅のことって抽象的に語れない、とは思いませんか?...たかがいくつかの国を短期間歩いただけで、分かったようなことは言うまい、と決めているようなところがありましてね。
Posted by ブクログ
もし『深夜特急』を一冊だけ読むとしたら、私はこの本を推します。
インド・ネパール編。
何もかもが違う。
死生観によるものなのか、カースト制によるものなのか、あくせくと日々の生活に摩耗している自分にとって、インドの風景はまさに別世界だった。病院で患者と向き合い、命や死に接しているはずの自分が、なお日本の枠組みの中でしか物事を見ていなかったことに気づかされる。そこでは生と死がもっと身近で、同時に自然なものとして受け入れられていた。
幸せとは何か、生きるとは何か。過去・現在・未来、そして価値観や空間を超えて、普遍的な問いを突きつけられる感覚があった。
同じ人間でもここまで違う。
それでも通じ合える瞬間があり、時には争いもある。
平和と戦争、光と影が共存している世界。
考えがまとまらず混乱する自分もいたが、むしろその混乱こそがこの本の魅力であり、自分の中に新しい問いを残してくれた価値なのだと思った。
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