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つばめのように自由に、気ままにこの日本を歩いてみたい――。世界を歩き尽くしてきた著者の、はじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。それから歳も経験も重ねた今、同じ土地を歩き、変わりゆくこの国のかたちを見て何を思ったか。本州「北の端」龍飛崎、太宰治の生家を訪ねた五所川原、宮沢賢治の足跡を追った花巻、美景広がる軽井沢や兼六園などを歩いて綴った、追憶の旅エッセイ。〈電子オリジナル版〉は沢木耕太郎撮影の写真が収録されています。
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Posted by ブクログ
JR東日本の雑誌『トランベール』に連載していたエッセイから、著者自ら41編を選んで一冊にまとめたもの。当時、新幹線の車内で読んでいた人が羨ましくなる、素晴らしい内容でした。 例えば「絵馬の向こう側」では、日本人と海外から来た人の書く内容から、視点の違いにドキっとしたり、「旅の長者」では、旅に出て予...続きを読む期しないことに出くわす”旅運”についての記述など、たくさんの興味深いエッセイがありました。 なかでも、一番好きなのは「夜のベンチ」です。著者が、16歳の春に初めての一人旅である、東北一周の旅に出たきっかけが「終着駅」に書かれていますが、そのときに起きたあるエピソードについて書かれています。人っていいなと、心温まる内容でした。 あと、文庫化に際して「文庫版あとがきとして」が追加されており、そちらも素晴らしい内容です。何かしらの自己啓発本を読むよりは、心に響くと思います。文庫化前の四六判を既読の人は、この「文庫版あとがきとして」だけでも読んでみるといいでしょうね。 以下、文中に出てきた本に関する覚え書き。未読のものは、読んでいきたいと思っています。 『津軽』太宰治(他作品『哀蚊(あわれが)』) 『戦艦武蔵』吉村昭 『火宅の人』檀一雄 『奥の細道』松尾芭蕉 『檀』『ハチヤさんの旅』『春に散る』『流星ひとつ』沢木耕太郎 『火花』又吉直樹 『ある華族の昭和史』酒井美意子 『かげろう日記遺文』室生犀星 『今も時だ』立松和平 『方丈記』鴨長明 『菜穂子』堀辰雄 『アレキサンダーの道』『孔子』井上靖 高倉健出演映画『八甲田山』(原作:『八甲田山 死の彷徨』新田次郎) 作家のみは、宮沢賢治(詩:「永訣の朝」)、佐藤春夫、吉行淳之介、横尾忠則、瀬戸内寂聴、小林多喜二、山本周五郎
旅を通して、得られる出会いとご縁。 見知らぬ地で、目に着いた物や人から得られる気づきや、学び。 そして、そこで思った感情や想いが言語化されていてた。 素晴らしい一冊。
沢木氏の代表作「深夜特急」は間違いなく面白いが、海外経験が乏しいと実感が持ちにくい部分もある。 その点、本書は旅先が日本国内なので海外経験の有無は関係なく読める。 観光案内ではなく、旅先での出来事が主観的に綴られているのだが、不思議と現地に行ってみたくなる。 沢木氏の原点とも言える「東北一周の旅」に...続きを読む関する一連の文章が強く印象に残り、学生時代に訪ねた龍飛崎にもう一度行きたくなった。
旅行してるみたいで楽しかった。 沢木さんの本を他にも読みたくなった。 現地に行って自分で感じること。 最後の小さな失敗をする機会を失うのはもったいない、と言うことに共感した。
時間とお金を考えなくていい旅に行きたくなりました。余裕を持つために会社を変わったのに時間は窮屈になってしまい、旅行もせいぜい2泊まで。去年はコンサートにかこつけてホテルに1泊するだけがほとんど。コロナで次々にダメにしたヨーロッパに行きたいなぁ…
年末旅行の移動中に読んだ。移動手段と宿だけ押さえた他はノープラン、せめて飯屋くらいは調べておいた方が良いだろうかと悩んでいたが、却って本書で無計画旅行のモチベーションに油を注いだ結果になった。トランヴェールの連載エッセイだからと忖度するわけでもなく、旅先で感じたことが率直に書かれており、各章ごとに一...続きを読む期一会の旅の醍醐味を感じた。 津軽地方について書かれた章は特に、少し前に太宰治の津軽を再読していたので、二人の感じ方の違いが見られて興味深く読んだ。
思っていた以上に面白かった! 最後のあとがきで、食べログで調べて地元の名店を探す方法もありだけど、それは旅先だからできる失敗の経験をするチャンスを失うということなのだと。自分は結婚してからは、旅行に行くときはいつもカミさんが段取りしてくれて行くから、この沢木さんのいうチャンスをずっと失ってきたのだな...続きを読むと思う。別に残念では無いけれど、この本を読んでたら、日本に住んでいるのに、この本に出てくるところを全然知らないなと思い、今住んでるところと会社の近辺しか知らない人生はかなりつまらないのかもなとしみじみ感じた。まぁ、こういう名文のエッセイを読めば、そこに行った気にはなれないこともないから、読むだけでも良いのかもしれないけれど。
70年代の若者は小田実の『何でも見てやろう』に衝撃を受け、80年代は沢木耕太郎の『深夜特急』に触発され、バイトをしてはバックパッカーとして世界中を貧乏旅行していた。 大学4年間ろくすっぽ授業に出ず、世界をリュック担いで世界を巡っても卒業できて社会人に…ある意味では戦後日本の高度成長と繁栄の象徴のひ...続きを読むとつだったという見方もできる。 方や今の学生は入学して息つく間もなく就活が口を開けて待っており、ボランティアに資格取得にと社会に巣立つ前の『武装』が求められる時代だけに。 さて本書。その世界中をひとり巡った著者による初の国内旅エッセイ。旅のスタートは東北。沢木耕太郎にとって、東北は『深夜特急』の前哨戦であり、ひとり旅の愉しさと手応えを知った、16歳春 沢木少年の12日間にわたる『みちのくひとり旅』にある。それから約60年。この国内紀行は青春の旅路であった東北から始まる。 いずれの話も『聞かせどころ・読みどころ』が用意されている。通底するのは『宿縁』というか『袖触り合うは多生の縁』に類するエピソードに溢れ、沢木耕太郎はそれを『旅運』という言葉に置換する。 旅先で予期しないことが起きた時、むしろ楽しむ精神が『わらしべ長者』よろしく、良縁を引き寄せる磁力のようなものを育むと語る。う〜ん、ひとり旅の達人ならではの箴言ですな。 沢木耕太郎って〈孤高でコミットしない性向〉と勝手に思いこんでいたけど…なんのなんの実に人なっこい御仁なのだと印象一新。 例えば、キャバクラの客引きから居酒屋の名店を聞き出したり、講演先で訪れた宮城では講演後に熱心な読者の持参した著書にサインした後、その読者の経営する寿司店に流れ一献。その縁が取り持ち良好な付き合いが継続中だったり、軽井沢では駅で知り合った老婦人から紅葉スポットを教えてもらい即その情報に乗っかり足を向ける。そこに待っていたのは息を呑むほどの絶景…。 それもこれもひとり旅の年季の入り方が違うわけで、ひとり旅の手練れなんですな。とは言え、これまで『あっちゃ〜』の失敗の上に成り立っているのは言うまでもなく、ホームラン王に輝いた大谷翔平が今季143の三振を喫してるように、とどのつまり は数なんですな。めげずに振る、懲りずに旅立つ。 そこで、あとがきにはふたつのアドバイスめいた下りが綴られる。 ①国内旅行なら失敗をしても容易に回復できるから、ひとり旅をするなら先ずは国内から! ②ネット情報に背を向け、自身の直感と経験を総動員すべし! 後者のアドバイスなんて、ネットなんて無い時代からひとり旅をしてる人だから言える芸当だからで、昭和のアナログ世代の困った時は人に尋ねるといった強引なコミュニュケーション手段が備わっている世代のなせる技で、思わず苦笑。 この本が優れているのは、お手本となる〈ひとり旅の醍醐味をエアー体験できる!〉ってこと。 わずかな路銀で愉しめるひとり旅を探している方なら、この本でまず心得を胸に刻み、旅先を決めるのもいいのかも…。
深夜特急は読んだ事があったので、他の著書も読んでみたく購読。 国内旅のエッセイなので、海外と比べて情景が浮かびやすく、短編集なので読みやすかった。少年期の旅がその後の旅のスタイルの原点になっているようで、沢木さんの生き様の一片を知ることができたように思えた。
花吹雪ごめんなすって急ぎ旅 間近に控えた自らの死を、大仰に悲愴がったりせず、大衆演劇の舞台で花道を退場する三度笠姿の渡世人になぞらえでもするかのように、ちょっとした滑稽みを漂わせつつ突き放している先輩の辞世の句。
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