宮本輝のレビュー一覧
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主人公の志乃子が50歳とちょうど私と同年代で、親近感を覚えながら読み始めました。
働き者の夫と3人の子供を持つ主婦の志乃子が、たまたま古美術品を手に入れたことから人生が動き出すお話。
平凡な主婦という設定だけど、実はただ者ではない気がしたよ。良いものを見分ける目利きの天性の才能がある。
すなおで謙虚で礼儀正しく、自分を自分以上のものに見せようとはせず、自分以下のものに見せようともしない、そんな善き人である志乃子。彼女が物との出会い、人との出会いで新たな人生を切り開いていくのだけど、これは偶然ではなく彼女が引き寄せたものなんじゃないかなという気がした。
50歳でこんな風に人生の風向きが変わること -
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私は、読書には非日常を求めます。
SFとかサスペンスとか突拍子もない展開が好きです。
ドキドキ、わくわく♪
ところが、この彗星物語は、とある大家族のほのぼのとした日常を描いています。
おじいちゃん、お父さん、お母さん、長男、長女、次女、次男
お父さんの出戻り妹と3男1女の子供、犬、留学生
ちびまる子ちゃんのともぞう張りのおじいちゃん
さざえさんの「たま」よりキャラクターの強いアメリカン・ビーグル「フック」
渡る世間。。。ばりにいろいろ事件が起きます。
なぜ読んだのか?
それは、今住んでいる地元を描いた本で、前から読んでみたかったからです。
土地に関する描写は、「あっ、あの道か」「あのバス停ま -
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わりと初期の宮本輝の短編集。何とも地味な話が7編。喫茶店に掛かる絵画を盗んじゃう「星々の悲しみ」や「西瓜トラック」のようなちょっと日常離れしたことが起こるのはまだしも、「火」なんか、なーんにも起こらない。起こるかと期待させといて起こらないようなもの。それなのに、何ともいえない深さを感じる(←「何ともいえない」なんて何てずるい表現)。
深さとは、こんな何でもないことを書き上げる筆力のようなものだろうか。当たり前っぽい日常のひとこまを切り取ったような作品世界に、何でもないことのよさ、何でもないもののなかにある豊かさのようなものを感じているのだろうか。
読みながらふと似てるなと思ったのは向田邦子の書 -
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読ませる一冊
430ページにもわたる分厚い本を、一晩で読ませられてしまった。
面白い!タイの王家の血を引く自分を愛してくれる男と、何処の馬の骨ともしれぬ、自分を確かに愛してくれるかもわからない男との狭間で揺れに揺れる美女。
それは、タイの喧噪とうだるような暑さと、独特のスパイスの香りとともに水の都バンコクで繰り広げられるひとつのラブストーリーである。
人の心と決断の礎のはかなさ
この作品では、人の心/決心・・・意思決定プロセスが非常に面白く描かれている。
一つの意思決定=「行動が起こされるにあたっての基礎となるモノ」が、実は非常に心許なく、時としてわき上がるような人いきれに気圧されて -
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ネタバレ宮本輝が好きな読者はこの著書にどんな評価なのだろうか?
たしかに禁忌の異母兄妹恋愛を興味本位でなく、愛の根源として描き、なおかつミステリアスな魅力も醸している。惹き付けられ、読み終えるまで本を手放せない盛りだくさんのおもしろさはさすが。
でも、ミステリー、ゴシックロマンとして読んでしまう平凡なわたしには、はぐらかされた感じが残る。つまり、本当に異母兄妹かどうかがこの物語に絶大な雰囲気を与えているので、どうしてもその謎解きのつじつまを求めてしまうのだ。結末や解説を求めては雰囲気が壊れるのだけれど。ついね。
そして、背景は島根県、強い風がふく岬の上の茶室風古屋。兄妹はそこでの焚火が大好