宮本輝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ一言でいうと、長かったぁ・・・。
物語の本筋以外の、旅の情景描写が作者本位というか、細かすぎてかえって想像しにくくてきちんと読み込もうとするタイプの私にはたびたび苦痛に思えてしまった。
とても美しい表現なのだけど、それがじゃまでいまいち物語に入り込めないというか・・・。
ストーリーの運びは、時々ミステリーの要素が入っていて、予想外にドキドキさせられたりして面白みがあったけど、このミステリーじたての部分の結末も、この物語自体の結末も、なんとも言い難い・・・これでよかったのかな?という感じ。
小説全てに、主題があるとは思っていないけれど、こういう結末は好きではないなぁと思ったり。
名作として -
Posted by ブクログ
ネタバレ宮本輝が28歳で会社勤めをやめ、「泥の河」で太宰治賞、「蛍川」で芥川賞を受賞するまでのサクセス・ストーリーが大変興味深かったです。神経症気味の青年が小説家を目指して会社を退職したということに周りの人々が驚いたことも肯けますが、かなり特異な例なのでしょうね。宮本を支えた資産家、淀競馬場に親子で凧揚げに行っていた際に出会った縁で祝電を打ってきてくれた会社時代の同僚、同じく祝電を打ってきた荒正人への欠礼の話が印象に残ります。宮本が桃山学院大卒業でながら素晴らしい文章を書いていることのギャップが不思議だったのですが、酒と小説にあけくれた若い日の自伝的文章を読むと謎が解けたように思いました。やはり破天荒
-
Posted by ブクログ
宮本輝の文章は読みやすい。
そしてうまい。
なかなか惹かれる作品でした。
二人の男に揺れる主人公の愛と、
主人公の愛人につきまとう不穏な影。
一気に読ませる力はすごい。
でも、なんとなく結末がすっきりしない。
占いを考えるとそういう結果でいいんだろうけれど、
何故突然エカチャイ擁護?
何故今更サンスーン嫌悪?
っていうか、
そこまで同性愛者は同性愛者ってだけで嫌われていたんだ、この世界で。
というのが突然結末の短時間にバタバタと。
それが理解できる出来事があったならいいんだけど、
起こったことがその急激な変化が納得出来るような事じゃなかった
(描写が、そこまでの出来事に感じさせなかった)
-
Posted by ブクログ
ドナウ河を、逃避行する絹子と長瀬、
それを追いかけ、一緒に行動する麻沙子とシギイ。
麻沙子に好意を抱くペーター。
長瀬を追う 謎の男 尾田。
複雑に絡み合いながら、ドナウ河の下流 黒海に注ぐ
街 スリナまでの旅の過程を描きながら
人間模様とその国の模様が 鋭く描かれる。
共産主義の国というものの国の成り立ちを、
建前と本音がよく描かれていた。
絹子が 他人に転化して、自分のせいじゃないと言う。
そういう性格から、長瀬の秘密を知り、自分が何ができるのか?
を考えることで、大きな変化をもたらしていく。
長瀬の再生のチャンスを 絹子が持っていた。
長い長い物語 だった。
人を愛すること、老いる -
Posted by ブクログ
ひさしぶりに 読むと そのまだるっこさと言うか
しつこさが、何とも言えないねぇ。
ジネンジョを掘るように、愛について掘り下げていく。
底の深い旅行
50歳の妻 絹子が 離婚する決意を固め、33歳の男 長瀬とドナウ河を
始まりから黒海に注ぐまでを、旅行するという計画で、
それを 娘がおいかける。
娘 麻沙子には ドイツ人の恋人 シギィがいて、結婚する意志を固めて、
二人で、母親と長瀬を追いかけるのだった。
長瀬は、4億6千万円の借金をかかえ、死ぬ場所をさがしているのだった。絹子を道連れにする。
死のうとする決意も揺らぎながら、その決意を知られてしまうことで、まわりは影響を受けるのだった。
絹 -
Posted by ブクログ
宮本輝という作家の小説を読んだことがなかったので、まずは短編集が読みやすいかと思い、購入した。解説で「親と子の世代が濃密にかかわり、それほど自己主張しない書き方で、地域社会に根ざした人間の生活を描く」と評されている通り、土着性と世代間の濃密な関わりの通奏低音を全般に読み取った。そもそもそうした描き方が今の私には息苦しさや哀しさや不安を喚起させた。「北病棟」や「不良馬場」で語られる病と死の現実感がまた怖い。表題作は主人公やその友人達も私が既に過ぎてきた大学生辺りの年齢であり、先の人生への希望と不安や、モノトリアム的な怠惰さと苛立ちと、それを乗り越えようというもがきも理解できたが、他の作品はなかな