宮本輝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み進めるうちに、物語を追っているというより、誰かの人生のそばに静かに腰を下ろしている感覚になりました。
骨董や器の話が出てくるのに、知識を誇る感じがなく、むしろ「手に取ってしまったものが、あとから人生に意味を持つ」その流れが心地いいです。
家族の記憶や戦争体験が少しずつ浮かび上がってくる展開は重たいはずなのに、語り口が柔らかく、無理に泣かせにこない分、逆に胸に残りました。
一方で、後半は救いの方向に整いすぎていて、現実のざらつきが薄まったようにも感じます。
偶然が重なりすぎる場面が多く、「そんなにうまくいくか?」と一歩引いた自分もいました。
それでも読み終えたあと、過去を抱えたままでも人は前に進めるのだと、静かに背中を撫でられたような余韻が残る一冊でした。 -
Posted by ブクログ
人生の分岐点であった過去の出来事を洗いざらい清算しているような鉄男と今まさに鉄男が清算しているような分岐点に立たされている邦彦を対照的に描いていた様子が印象的であった。
鉄男は冒頭は喫茶店を営む穏やかな老人といった印象であったが過去の出来事を知っていくと同時に鉄男の心の内に潜む人間的な部分も知ることになる。
作中に登場する女性は皆、自分の芯のようなものを持っており格好良かった。中でも自分は自らの手腕で複数の店を手がけるユキに惹かれた。
杉山の本心が掴めない感じもどこか魅惑的で気づくと彼のことが知りたくなっていた。
鈴子も同じような気持ちで杉山に惹かれたのだろうか。
純文学的な作品は伏線回収が少ないイメージであっただけに鈴子が美しい翡翠色のギヤマンを食い入るように見ていたのは杉山の独特な緑色の絵に通ずるものがあったからという伏線回収には驚いた。
ラストシーンでのビリヤードの様子を描いた描写は人間関係に重なるように感じた。
玉を人間、キューを環境とすると自分の意思とは関係なく環境によって進む方向や出会う人が決まり、出会ったかと思えばすぐに離れてしまうといったような人間関係に通ずるを感じた。
偶然ではあろうが、作品全体を通して若くして親を亡くした邦彦がアルバイト先でお世話になったり、父にお世話になったと言いご馳走してくれる金兵衛など小野寺史宜の「ひと」と通ずるものが多くあるなと感じた。 -
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泥の河の信雄は今まで呼んだ作品の中で最年少の主人公であったような気がする。
幼い信雄が感じるよく分からないけどなんかモヤモヤするなという気持ちを描くシーンが多かったが、読み手側としても幼い頃の経験を元に信雄の気持ちを推測することができた。
ラストの喜一に向かって「お化け鯉がいる」と叫んだのは別れの挨拶や新潟に行くことへの報告よりもお化け鯉がいることを伝えた方が喜一は顔を出すだろうと考えた末の行動だろう。
心理描写が魅力的な泥の河と比べて蛍川では雪の降りしきる様子や蛍の群れに出会った場面など美しい風景描写が多かった。
描写自体は少なかったが個人的には越前海岸の崖で竜重と千代が寒さに凍えながら佇んでいる描写が最も鮮明に想像できて好みであった。
どちらの作品も若くして身近な人の死を経験しているという共通点があったが、小学生の信雄は人が死んだという事実を受け止めるだけであることに対して、中学生の竜夫は人が亡くなったことに想いを馳せたり死が起因して何かしらの行動に出たことから2人の精神年齢の差も伺いしれた。
小学生と中学生というさほど変わらない年齢差の2人の精神年齢の差を上手く表現しているなと思った。
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表題作の中編に加え、短編が3つ。共通するテーマは死別により残された人、か。
印象に残ったのは、「幻の光」と「夜行列車」。
「幻の光」は、理由もわからずに夫が自殺した主人公の女性が、再婚して暮らす金沢の海辺で前夫の死の理由に思いをはせる。物語では、死と生が地続きにあるようで非常に近い。金沢の薄暗い海辺の雰囲気も重なり全体的に物寂しさがある。終盤で辿っていた真相に自分なりの答えを見つけ、ほんの少し明るさが生まれる。
「夜行列車」は、中堅メーカーで慣れない営業を行う主人公が、大阪から東京行きの夜行列車の中で、会社の同僚や昔の友人を思い出す話。それぞれのエピソードに明確なつながりはないが、寝台車両の雰囲気もあり、こちらも仕事に情熱を注ぎ疲れ始めた主人公の物寂しさを表現している。
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Posted by ブクログ
佐賀旅行で本が足りず、不意に買った宮本輝。
なんと主人公の故郷が近江八幡と、次の旅行先が出てきた。なんと偶然。
裏表紙の説明から、何か壮大な戦中戦後の一代記。と思いきや、なんとも文化的で上品で仲が良く人が良い家族と、建築物と、モノと、食べ物の、品の良い美しい描写が続く小説でした。
美や文学への教養高い家族たちなもので、なんとも日々が美しい。かっこいい。
徳子おばあちゃんには、祖母姫を感じました。凛とした、芯のある人。
家族たちの距離感もよい。
冒頭、四合院造りの描写が続き、読み進むのが遅くなるも、慣れていき、そんな様々なものへの美しい詳細な描写が楽しくなってくる。
終盤の晩餐会の描写の素晴らしきこと。
古典を読みたい。
美を楽しみたい。
良きものを食べたい。
優しくありたい。おおらかでありたい。
全てに敬意と賛嘆を。