宮本輝のレビュー一覧
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人生の分岐点であった過去の出来事を洗いざらい清算しているような鉄男と今まさに鉄男が清算しているような分岐点に立たされている邦彦を対照的に描いていた様子が印象的であった。
鉄男は冒頭は喫茶店を営む穏やかな老人といった印象であったが過去の出来事を知っていくと同時に鉄男の心の内に潜む人間的な部分も知ることになる。
作中に登場する女性は皆、自分の芯のようなものを持っており格好良かった。中でも自分は自らの手腕で複数の店を手がけるユキに惹かれた。
杉山の本心が掴めない感じもどこか魅惑的で気づくと彼のことが知りたくなっていた。
鈴子も同じような気持ちで杉山に惹かれたのだろうか。
純文学的な作品は伏線回収が少ないイメージであっただけに鈴子が美しい翡翠色のギヤマンを食い入るように見ていたのは杉山の独特な緑色の絵に通ずるものがあったからという伏線回収には驚いた。
ラストシーンでのビリヤードの様子を描いた描写は人間関係に重なるように感じた。
玉を人間、キューを環境とすると自分の意思とは関係なく環境によって進む方向や出会う人が決まり、出会ったかと思えばすぐに離れてしまうといったような人間関係に通ずるを感じた。
偶然ではあろうが、作品全体を通して若くして親を亡くした邦彦がアルバイト先でお世話になったり、父にお世話になったと言いご馳走してくれる金兵衛など小野寺史宜の「ひと」と通ずるものが多くあるなと感じた。 -
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泥の河の信雄は今まで呼んだ作品の中で最年少の主人公であったような気がする。
幼い信雄が感じるよく分からないけどなんかモヤモヤするなという気持ちを描くシーンが多かったが、読み手側としても幼い頃の経験を元に信雄の気持ちを推測することができた。
ラストの喜一に向かって「お化け鯉がいる」と叫んだのは別れの挨拶や新潟に行くことへの報告よりもお化け鯉がいることを伝えた方が喜一は顔を出すだろうと考えた末の行動だろう。
心理描写が魅力的な泥の河と比べて蛍川では雪の降りしきる様子や蛍の群れに出会った場面など美しい風景描写が多かった。
描写自体は少なかったが個人的には越前海岸の崖で竜重と千代が寒さに凍えながら佇んでいる描写が最も鮮明に想像できて好みであった。
どちらの作品も若くして身近な人の死を経験しているという共通点があったが、小学生の信雄は人が死んだという事実を受け止めるだけであることに対して、中学生の竜夫は人が亡くなったことに想いを馳せたり死が起因して何かしらの行動に出たことから2人の精神年齢の差も伺いしれた。
小学生と中学生というさほど変わらない年齢差の2人の精神年齢の差を上手く表現しているなと思った。
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表題作の中編に加え、短編が3つ。共通するテーマは死別により残された人、か。
印象に残ったのは、「幻の光」と「夜行列車」。
「幻の光」は、理由もわからずに夫が自殺した主人公の女性が、再婚して暮らす金沢の海辺で前夫の死の理由に思いをはせる。物語では、死と生が地続きにあるようで非常に近い。金沢の薄暗い海辺の雰囲気も重なり全体的に物寂しさがある。終盤で辿っていた真相に自分なりの答えを見つけ、ほんの少し明るさが生まれる。
「夜行列車」は、中堅メーカーで慣れない営業を行う主人公が、大阪から東京行きの夜行列車の中で、会社の同僚や昔の友人を思い出す話。それぞれのエピソードに明確なつながりはないが、寝台車両の雰囲気もあり、こちらも仕事に情熱を注ぎ疲れ始めた主人公の物寂しさを表現している。
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佐賀旅行で本が足りず、不意に買った宮本輝。
なんと主人公の故郷が近江八幡と、次の旅行先が出てきた。なんと偶然。
裏表紙の説明から、何か壮大な戦中戦後の一代記。と思いきや、なんとも文化的で上品で仲が良く人が良い家族と、建築物と、モノと、食べ物の、品の良い美しい描写が続く小説でした。
美や文学への教養高い家族たちなもので、なんとも日々が美しい。かっこいい。
徳子おばあちゃんには、祖母姫を感じました。凛とした、芯のある人。
家族たちの距離感もよい。
冒頭、四合院造りの描写が続き、読み進むのが遅くなるも、慣れていき、そんな様々なものへの美しい詳細な描写が楽しくなってくる。
終盤の晩餐会の描写の素晴らしきこと。
古典を読みたい。
美を楽しみたい。
良きものを食べたい。
優しくありたい。おおらかでありたい。
全てに敬意と賛嘆を。 -
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読み始めて、四合院造りの大家さんの話なのかと思ったら、途中でいきなり30代女性視点に変わり、あまり共感できない女性だなぁと思いながら読んでいたら、彼女の家族となかなか芯の強い祖母の話になり、祖母の話がメインなんだなぁと思ったら最後は取ってつけたようにまた大家さん視点になり、ちょっと消化不良。
90歳で正式な晩餐会を開くおばあさんの話が面白かったから、その余韻のまま終わってほしかったような気がする。
吃音の話もいきなり入ってきた気がするし。なんとなく書きたい題材を2,3合体させた感が否めない感じでした。
個人的には端渓の硯、国行の懐刀、アンティークのカテラリーと比べると、半纏だか綿入れってのは大分格差があるなぁなんて思いました。嫁はつらい(笑)
そして、個人的には息子一家と孫のみで二人いる娘が参加しないってのも不思議な感じ。まぁ二人とも海外だから出来なかったという設定だけれども。なんかなぁ~。女親と娘の方がつながりは強くないのかなぁなんて、個人的には思ったりしました。
メニューの中で食べてみたいなぁと思ったのはキャビアでした。おいしそう。少病少悩は確かに理想とする生き方だなぁと思いました。 -
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金井徳子は90歳の誕生日に、家族を招待しての晩餐会を企画する。
豪華絢爛の晩餐会。
そこに至るまでの徳子の人生が…
16歳で出征真近の学生との結婚、そしてその夫の戦死。16歳での決断。
金井健二郎との出会い、教師としての人生。
そこには苦難、情熱溢れる教師生活が。
徳子の晩餐会のために、教え子たちが…
徳子の人生、すばらしい。
特に清彦亡き後、徳子の教師への思いを後押しし、バックアップをした朝倉家があったからこそ、今日の金井家がある。
そして、そんな徳子の子どもたち、孫たちもみな
いい人間ばかりで、徳子の教育が素晴らしかったんだと感じる。
金井家、ほんとにいい家族だった。
徳子の健二郎への感謝ははかりしれない。
健二郎とともにどんなに晩餐会に出たかっただろうか。
徳子の人生と金井家の人々でよかったような気がするが…
三沢家の話は必要だったのか⁇
晩餐会後の金井家の話をもう少し期待していたような自分がいる。
綾乃と棚田のこれからや、春明のK2商会のことを。
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文庫が出版されてすぐに購入した本
好きな作家の小説だけど遅々として進まず
それはたぶん、取り扱う内容にあまり興味が湧いてこなかったからかも知れない
晩餐会、端渓の硯、書道、源氏物語、ゲランの香水、ブガッティのチョコトルテ、シャトー・マルゴー、ペトリュス、、どれも自分には縁がなく最後まで興味がもてなかった
唯一,四合院造りの住居には興味がもてた
どんなものかネットでも調べてみた
確かに中国の映画とかに出てきそうな感じがした
内容は晩餐会へ向かって金井家の人々の日常が淡々と進んでいくだけだった
主催者の90歳になる徳子さんの過去は凄まじかったけど、戦争を経験しているのだから当然と言えばその通りである
それと本編の最初と最後に登場した三沢家の人々の話は興味深かった
父と子はどのように和解するのか,もう少し先を知りたくもあったが、「よき時を思う」ということで、ちょうど終わり方もよかったのだと思った
それぞれの家族の行く末が楽しみで、それがよき時ということなのかなぁと
余談ですが
宮本輝の小説で1番好きなのは『約束の冬』
宮本輝を知るきっかけになった本
約束した二人はどうなるんだろうと思いながら、最後まで興味深く読み進められた
時を経た後での出会いが素敵だった記憶がある
最近では『灯台からの響き』
妻の残した遺品の謎を追うストーリーにドキドキワクワクした
『草花たちの静かな誓い』も面白かった
アメリカの叔母さんが残した遺産だなんて
それだけでワクワクした
今回のストーリーはそういった謎のようなワクワク感がなかったからあまり興味がもてなかったのかもしれない -
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宮本輝氏の小説には苦手意識があったのだが、本書は意外に面白かった。今まであまり好きでなかった理由はわざとらしさであった。
本書のテーマは、長い年月をかけて取り組むべきことを見いだせ、であろうか。人生終盤に入ったベンチャーキャピタリストが若いアントレプレナーたちに融資を続けてきて、まさにその人たちが人生終盤に差し掛かるときに、答え合わせができる。
主人公はさえないフリーターの青年であるが、彼のやさしさからこの老人に見込まれ、大きな仕事を依頼される。彼の周りの人たちもみないい人たちばかりだ。舞台は京都ど真ん中。
正直な感想は、こんな情けない人生を歩んできた青年に、ここまでのことができるかなと疑わしい。逆に言えば、ここまでできる青年ならこれまでの人生ももう少し何とかなっていたのではないか、と言える。また、途中話があちこちに飛ぶが、それがほとんど回収されないまま話が終わる。もとは連載小説だったということだが、内容にして長すぎるという印象だった。
かなり辛らつになってしまったが、会話が多く軽快。流行りの食べ物の描写に力を入れるというポイントも抑えている。価値観はアップデートされていないが、モチーフは現代風になっているので昔の作品と比較して読むのも面白いかもしれない。 -
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「ロイヤルファミリー」を読んで、馬繋がりのこの本を再度手に取った。学生の頃、これを読んで痛く感動し、「名作だーっ」と叫んだ記憶がある。で、いまもう一度読んでどうかというと‥あれ?それほどでも?という読後感。
というのは、「ロイヤルファミリー」のドラマをNetflixで観はじめ、それがまた感動的な作りで毎回泣いてしまい、内容がごっちゃになったからだ。
しかも設定が似通ってるし。早見さん、「優駿」のオマージュで小説書いた?と思うぐらいリンクする。馬主の社長さんには愛人がいて子供まで作ってる。そしてその子に馬を譲るところまでいく。(優駿の方の子は譲られる前に死んでしまうが)。また、いずれの馬主も自分の社から身を引く。そしてその馬主の心に寄り添う秘書が存在する。「ロイヤルファミリー」には泣き虫妻夫木、「優駿」には冷たく冷めた人格を自認するピノキオ(木)こと多田。そして自由奔放な娘がいる。
ただ、「優駿」には騎手の内面に触れる部分がある。自分が乗っていた勝ち馬を他の騎手に取られた時、その騎手に乗り方のコツは?と聞かれ、腹いせにその馬が嫌がる方法をワザと教えた。そのためにその馬も騎手も事故死し、その後彼は苦しむことになるのだ。
オラシオンは強い。実力だけでなく運も強い。最初から最後まで安定の強さで安心して読めた。
時代を感じる部分もある。気の強い馬主の娘を牧場の息子が平手打ちした。今の時代じゃアウトだし、そんな男は願い下げだけど、この娘は何故か彼に惹かれていくんですな。
タクシーの運転手が車酔いした娘に「解放したげましょか。この辺にはホテルあるし」なんていやらしく口説く場面もある。アウト〜! -
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オーディブルで聴きました。
久々に真っ当な作品で口直ししたいと選びました。まあ、間違いない。急展開もどんでん返しも伏線回収もないけれど、しみじみいいお話。
〇〇だぜ、っておじさん同士の会話であまり聞いたことない。東京育ちのおじさんたちの会話ってこんな感じなのかー。
出てくる人が皆コミュニケーション能力高い。初対面の人同士の会話とは思えない。宮本氏の親戚の集まりはこんな感じなのかもしれない。会話が高尚すぎる。
蘭子が命令したことは、真っすぐでピュアな高校生だからこそできたことなのだろうと思う。普通のおばさんにはできない。
敬礼は警官とか自衛隊のイメージがあったけれど、悪くない、というかいいなと思った。