宮本輝のレビュー一覧
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「幻の光」は1979年に単行本、1983年に文庫化された短篇集で、表題作ほか3編収録
久しぶりの宮本輝さん
未読タイトルとの出会いという新潮文庫のフェアに見事にハマった一作
「幻の光」
能登の漁村を舞台に、夫を突然の自殺で喪い、
悲しみと息子を連れて再婚した女性が過去と向き合いながら新しい生活に向き合っていく姿
“愛する男を失った女の美しすぎるため息”
(こんなコピーがついていたらしい)
秘めていた本心を打ち明け 次の幸せへと向かう
「夜桜」
一度の浮気を許せず、離婚した女
若くして息子を失い、新婚夫婦と知り合ったことで、人生の選択の是非を問う
「こうもり」
泥の河と似た色合い
「寝 -
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しおり欲しさに、新潮文庫の100冊に選ばれている「幻の光」を読んでみました。
「錦繍」とはまた違った切なさが心に残る一冊です。
ある日突然、自ら命を絶った夫。
原因もわからず、残されたのは妻と子どもだけ。
夫の死から三年が経っても、妻はその理由を模索し続けます。
あれこれと思い返してみても、はっきりとした答えは見つかりません。
なぜなら、答えを知っているのは、もうこの世にいない本人だけだからです。
人は、中途半端で終わったことが、ずっと心に残る生き物だと思うのです。
たとえば、仕事でも何でも、完結していないことって、頭の片隅に残って、ふとした時に思い出してしまうじゃないですか。
人の死もそ -
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禁門の変の後、幕府は長州残兵隊を追って捕縛、惨殺を続け、次第に市民の感情は長州への同情、幕府への反感に移っていく。
長州征伐に加われと命じられた各藩も本音は迷惑、水戸の天狗党の乱で350人の尊王攘夷派の浪士が斬首され、「幕府のやり方はあまりにひどい。降伏している者を」との声が上がり、幕府の威光は地に落ちていく。
そんな中で、大政奉還という「:慶喜の大博打」が打ち出され、西大小(西郷、大久保、小松)が動き出す。
慶応4年1月3日、鳥羽伏見の戦いが始まる。
新政府が樹立される中、弥一は新しいカンパニーの設立を目指す。
越中富山の薬売りと、薩摩藩との切っても切れない結びつきをベースに主人公弥一の言動 -
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夢見通り商店街に住む一癖も二癖もある人々の悲喜こもごもの物語を集めたオムニバス形式の短編集です。
夢見通りは戦後の闇市から発展した商店街。そこに暮らす住人はよく言えば人間味がある、悪く言えば癖が強い、腹に一物どころではない物を抱えた人ばかり。オムニバス形式で少しずつ進んでいく物語は、話によって主人公が変わるものの、ちょくちょく里美という男性が登場する。お人好しで、巻き込まれ体質の独身会社員。周りの住民たちに振り回されつつ、今日も彼は彼ら彼女らと世知辛く生き辛い世の中を泳いでいる。
今作を手に取ったのは、この著者宮本輝さんの文章が読みたくなったためです。この方の文章は独特の魅力があるよ -
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ハードルが上がりすぎてたかな…。
灯台からの響きが良かったので、その期待度のままオススメされたこちらを読んでみた。
ちょっと文章が読みにくくなった?
灯台からの響きに比べると、1シーンに登場する人物が多いせいなのかもしれないが、ワンセンテンスの中に複数の人物描写が詰め込まれるケースが多い気がして、認知負荷が高いなぁ…と思いながら読んだ。
そして、形見分け的に孫へと譲る、徳子おばあちゃんの大事にしているモノや、晩餐会に出てくる料理やワインを格調高く描写するところは、勉強にはなるけど、ちょっとクドいな、と思ったりした。まあこれは上流に触れる人たちに対するルサンチマン的感情なのかもしれない。