宮本輝のレビュー一覧
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あたしの好きな、「亡くなった人の残した謎を探し求める」お話。
『オレンジの壷』や『森のなかの海』のような感じね。
亡くなってしまった人の人生を穿り返す事って、本当は失礼なことなのかもしれない。
でも宮本輝さんの作品では、謎を追うことが主人公の生きる意味を見つけ出したり、何かの突破口を見つけ出したりするのよね。
追っているうちに主人公が徐々に成長していく様を見ているのも清々しい。
一見平凡に生きていたような人でも、宮本さんにその人生を書かせると、「人生波乱万丈」って思えてくる。
どんな人でもたくさんの人に影響を与え、いろんな物を残している。
この本は宮本輝さんらしくてすごく好き。
下巻がどんな -
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「前途洋々」という言葉がぴったり。
希美子と一緒に暮らしている中学生〜高校生の女の子たちが、それぞれの才能を活かしてそれぞれの道を進んでいく。
若いっていいなぁと思ってしまったよ。
この作品のもう一つの(と言うかほんとの)柱は「カナ江の人生を遡る」こと。
同じく宮本輝さんの『オレンジの壷』も亡くなった祖父の人生を遡っていく作品だけど、今度は『オレンジの壷』の女性版って感じかな。
カナ江は、静かだけど強い。逞しい。
希美子にも惹かれたけど、カナ江にも強く惹かれた。
それにすき焼や季節の素材を使った炊き込みごはん、鱧のお吸い物、シャトー・ラトゥール・・・
出てくる食べ物・お酒がおいしそう。
って、 -
Posted by ブクログ
一気に読んじゃいました。
やっぱ、宮本輝はいいなぁ〜。
定期的に、この宮本ワールドにどっぷり浸りたくなるのは何故だろう。
今回の話しは、宮本作品にしては珍しくハッピーエンド?って感じの終わり方だった。
作者のあとがきが珍しくあって、そこにもたまにはこうのもいいかな、って感じの事を書いてあったけど、読後感が爽やかな感じがして、いつものように、ドッシリとした重厚な、重くのしかかってくるようなものがなく、こちらもスッキリできて良かった。
お話は、若くして夫に先立たれた美しき未亡人が、残されたフランス料理店を継いで働いてるんだけど、そこに、10歳も年下の画家との恋愛や、店を中心にした色々な出来事や、店 -
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早い人なら1日で読んじゃうかもしれないような量だったかな。
毎度芸がない感想だけどとても面白かった。(^_^;)
18年間結核で療養生活をしていた志穂子。治らないと思っていた病魔に奇跡が起こったのはたった一枚の絵葉書だった。
退院した24歳の志穂子が、真っ先にしたかった事は絵葉書を出した主に会うこと・・・
志穂子という主人公の心がとても綺麗で、実生活という中では子供と同じなのに、病院という小さな世界で生きてきた彼女は実はとても大人で・・・
何だか、自分に正直でいるという事に私はすごく気持ちを惹かれました。
志穂子の父親がまた素敵な人でねえ(〃∇〃)
コレは若い男女のお話なんだけれど、
行き -
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主人公世良順哉は身分を隠し社会的成功を収めた産みの母である森末美雪と再会します。
なぜ自分を捨てたのかこだわり続ける順哉の前に、19歳の少女の飛び降り自殺から物語は始まり、その後、死んだはずの少女から自分宛に手紙が届きます。ホラー小説的です。
「因果具時」・・・・睡蓮は、水に浮かぶ植物ですが、その根は水中のどろの中につかってます。
蓮に込められた、そして人間の宿命にまつわる、諦めとも高潔さとも神秘性とも言い換えられる崇高さをもって、泥の中から汚れに染まらず生き抜き、花を咲かせる清々しさを、この小説によって訴えたかったのでしょうか。
終盤近くでタイトルに睡蓮を選んだ意味に気が付き、いつもながらの