宮本輝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
さすがと言いますか、読み始めると引き込まれてしまいます。やはり宮本さんの文章は私の波長に合うようです。
しかし、アウトラインを書こうとすると悩んでしまいます。息子と母親の再会の物語。両親の離婚に隠された秘密。このあたりがメインストーリーなのですが、その他に"十七歳の少女の目の前での自殺"および"内なる女性"というもう二つの流れがあります。少女の自殺は伏線として意味のあるものですが、あまりに扱いが大きすぎるように思えます。更に内なる女性については、この設定が何故必要だったのか理解に苦しみます。
もう一つ、私が宮本作品から離れ始めた理由−−物語りの流れと -
Posted by ブクログ
このような大家族ものはともするとキャラクター小説になりかねないが、この作品はそんなことなかった(強いて言えば飼い犬くらいか)。
文化の違う人が一人、この大家族に入り込むのであるから当然事件は起きる。ただ、昼ドラのような超絶ドロドロ事件でもなく、あっというどんでん返しも起こらない。さーっと読んでいるとそこまで気にしなくても・・・なんという瞬間もありそうなくらいである。しかしそこで生活する人にとってみれば大きなこと。この世の中の大ぜいにとっての事件なんてそんなものだろう。所詮他人にとっては自分の身に降りかからないことについては他人事なのだ。
大事件は無いにしろ、この留学生が結局この家族に大きな影響 -
Posted by ブクログ
よねかの思い出を探る旅は、そのままよねかに引き寄せられた男たちを振り返る旅であった。美しくかつ強い女性であったよねかはまた、人間の業を強烈に意識した女性であった。傍目からみるよねか像とは異なり、付き合った男たちは結局その心の美しさに思いを馳せ、卒業していくのだ。
杉井と加古がそれぞれの立場で過去を振り返っている。それぞれ独り語りや日記の記述でその振り返りを綴るわけだが、国内は北海道から糸魚川、大町、岡山、海外ではヒマラヤ、パキスタン・カラチ、パリとそのスケールは非常に大きい。スケールの大きさと登場人物それぞれの、繊細に変化する心の動きが合わさりきわめて立体的、重層的な物語構成を感じた。
しかし