宮本輝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ドナウ河を、逃避行する絹子と長瀬、
それを追いかけ、一緒に行動する麻沙子とシギイ。
麻沙子に好意を抱くペーター。
長瀬を追う 謎の男 尾田。
複雑に絡み合いながら、ドナウ河の下流 黒海に注ぐ
街 スリナまでの旅の過程を描きながら
人間模様とその国の模様が 鋭く描かれる。
共産主義の国というものの国の成り立ちを、
建前と本音がよく描かれていた。
絹子が 他人に転化して、自分のせいじゃないと言う。
そういう性格から、長瀬の秘密を知り、自分が何ができるのか?
を考えることで、大きな変化をもたらしていく。
長瀬の再生のチャンスを 絹子が持っていた。
長い長い物語 だった。
人を愛すること、老いること、生きながらえること、
病気になること、失望すること、忘れ物をすること、
人は 実にいろんなことを経験して、一人の大人になっていく。 -
Posted by ブクログ
ひさしぶりに 読むと そのまだるっこさと言うか
しつこさが、何とも言えないねぇ。
ジネンジョを掘るように、愛について掘り下げていく。
底の深い旅行
50歳の妻 絹子が 離婚する決意を固め、33歳の男 長瀬とドナウ河を
始まりから黒海に注ぐまでを、旅行するという計画で、
それを 娘がおいかける。
娘 麻沙子には ドイツ人の恋人 シギィがいて、結婚する意志を固めて、
二人で、母親と長瀬を追いかけるのだった。
長瀬は、4億6千万円の借金をかかえ、死ぬ場所をさがしているのだった。絹子を道連れにする。
死のうとする決意も揺らぎながら、その決意を知られてしまうことで、まわりは影響を受けるのだった。
絹子の独りよがりで、私は悪いことをしていないという考えが、
このような逃避行になった。
それにしても、歳が離れた男女の物語が多くあるが、多くは男が歳をとっていて、女が若いというのが相場であるが、それが逆転した場合は、女が金持ちであるはずなのだが、そうではなく、死への道連れという代償が存在する。
長瀬のもつ、巨額の借金をどうするのか?死であがなうのか、
地道に返していくのか?
それが 上巻では やっとそのテーマに設定された。
シギィの友人 世捨て人ペーターの思考方法
オットーの快活さ。友人に恵まれているのですね。
物語の彩りを添えることとなる。 -
Posted by ブクログ
森のなかの海・上巻はなかなか我慢を強いられるなぁと思ってい。
それがより顕著なのは序盤〜中盤にかけて。
主人公・希美子が(もちろん上巻の終盤から物語の収束に向けて、「再生」をより鮮明に書くためには必要なことなのだけれど)とにかく失意の底に押しやられていく。
そこに加えて、物語の舞台となる場所へ向かうために目まぐるしい変化の波が次々に押し寄せてくる。
これはもう、ほとんど急流を下るような感覚だった。
宮本輝さんの柔らかい文章が押し寄せる変化の波を受け止める緩衝材になったような気もするし、淡々と綴られるその書き方に否応なしに飲み込まれていったような気もする。
やっとこさ舞台が整ったと思ったら、そこに更に大きな変化がやってきた。
もうなんなんだ、と…。もっと希美子をいたわってくれ、とそんな思いすらあった。
そうして役者が一堂に会することでようやく物語は静かな流れを見せ始め、ゆっくりと着実にそれぞれの「再生」を描いていくわけです。
ここに上巻の感想を書いているうちに「あぁ、なるほどな」と、あらためて宮本輝さんの筆の巧みさに驚いたりする。
自分は、やっぱりこの人の描く物語が好きなんだなぁ…。
星3にした理由は…希美子があまりにも悲惨な目に遭ってたのと、物語に絡む「謎」が少し不自然に浮かび上がった時に妙に違和感があったからです。 -
Posted by ブクログ
主人公は、赤ちゃんの時、母に捨てれた。でもけっして不幸ではない、父や養母は優しかった。自分の家庭もあり、大切にしていた。けれど彼にはひとに言えない秘密もあった・・・。
てな感じの、不思議なはなしで。
会社で、若い女の子の自殺の場に遭遇し。
それに関して、また、気がかりな出来事もあって。
捨てられた母に、自分を隠して逢いに行く。
同僚の生き方にも刺激を受ける。
思い返せば、盛りだくさん。ぎゅう、ぎゅう。
でも、感覚的にはそうでもないんだ。
重い重いはなしなようで、そう感じさせない明かりがある。
いろいろ起きたけど、ひとって、日常って、けっこういろんなものを抱えているもんだよなと思わされた。