宮本輝のレビュー一覧
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ネタバレなんていうか「染みた」っていう感想。ものすごく面白くてぐいぐい引き込まれる、というわけではないのだけれども、静かに染みてくる話だった。幼い息子を不注意で死なせてしまった男性がギリシャでギリシャ人女性と再婚して。。。という話なのだけれども、特にこの男性がどのように、自分の過失による息子の死を乗り越えていくか、、、という話。観光の側面からだけではわからない、ギリシャの混沌とした雰囲気がまた興味深かった。
「ものごとにはすべて原因と結果があるのに、人間の運命だけこの原因と結果の法則からはずれるのはおかしい」という言葉にちょっと考えさせられたな。 -
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「夢見通りの人々」は、十章の短編からなるオムニバス小説である。
登場人物は詩人志望の里見春太と彼が思いを寄せている美容師見習いの光子。 そして、競馬狂いで夫婦ゲンカの絶えない太棲軒の親父・ライオンズクラブのメンバーになりたくて幾つかの役職に名を連ねているパチンコ屋の経営者。金儲けが人生のすべてとおもっている村田時計店。
ホモと噂されているカメラ屋の若主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。もとやくざの組員だった肉屋の兄弟──。
これら、ひと癖もふた癖もある夢見通りの人々がある章では主役になり、ある章では脇役で登場する。
例えば、ある章では、淫乱で自分の店に雇ったバーテンをいつの -
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人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ
とは、作中の言葉であり、不可思議な死に対するひとつの解釈である。
短編集。全編を通して、誰かの死が、深く或いは無意識のうちに主人公の思考に絡み付いていた。
貧しく、決して華やかではない日常の中で、漠然とした不安、答えの見えない感情が、何気無い瞬間、ふと胸中を過ぎる。
その源泉を探ると、それは、けじめをつけていない過去の出来事であり、それが誰かの死であったりする。
死というものに、答えを与えることは、誰にだって難しく、いつだって解らないものだということ。
平凡な日常を切り取り、平凡な人の不安定な心のうねりを通じて、読み手に教えてくれたような気がす