宮本輝のレビュー一覧
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先日、映画館で「幻の光」が「能登半島地震 輪島支援 特別上映」と冠され、1995年の公開から29年の歳月を経て、デジタルリマスターにて上映されるということを知り、鑑賞して参りました。
本作が宮本輝さんの作品であること、映画化されたこと、主人公の女性を演じられている俳優のお名前くらいは知っている程度の認識でした。ストーリーや舞台として能登が登場すること、また監督を是枝裕和さんが務められ、これが長編映画デビュー作であったことなどは今回知ることとなりました。
古き日本の風景に「あるもの」を纏わせた絵画のような美しい映像に圧倒される映画でした。
そして、ぜひ原作も読んでみよう、と手に取った次第です。
生まれ育った尼崎で結婚し、初めての子供が生まれて三ヵ月目に夫が突然亡くなってしまった記憶を胸奥に秘め、奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過ごす女性の内面の葛藤を描いたお話です。
主人公、ゆみ子の前夫は、本当に唐突に亡くなってしまいます。状況としては、電車の運転士が言うには、線路の上を電車の進行方向を向いて歩いていて、急ブレーキも空しく轢かれたと。
先ほど、映画の説明の中に思わせぶりに書いた「あるもの」というのは、はっきり記すと「死の陰」のようなものです。衣類にも(子供の衣服までも)寒色を多用し、尼崎でもそうですが、舞台が能登に移った後も、日本海の荒波が、墨色の曇天が、風景が「あるもの」を纏っているようで、そう感じるからこそ、スクリーンに余計なものをそぎ落とした陰翳のような美しさがある気がしました。小説の活字からもそういった趣が溢れ出ます。
希死念慮、という言葉があります。文字通り「あるもの」に惹かれる思考・感情を指す言葉なのかな、とぼくは解釈しています。
知り合いに言われたことがあります。
「あるもの」にすっと惹きつけられる瞬間は誰しもにある、その程度の違いこそあれ。
主人公はずっと、なぜ前夫は「あるもの」に惹かれてしまったのか考えます、そのことがもしかしたら喪失からの混乱や悲しみの日々を支えていたのかもしれません。
でも、主人公の生きる世界は大切な人を喪ったことで変わってしまったのだと思います。
冬の朝の目の覚める冷たい空気をぴしゃりと肌に感じるような、そんなお話でした、説明が下手くそですね、ごめんなさい。
映像の記憶が、活字を目で追う補完をしてくれて、今作は先に映画を鑑賞したのが吉と出た気がします。
そして、おそらく、この映画の再上映の企画が発表された後、能登に豪雨による災害が起こりました。
被災地にどう向き合うか、そして未知の災害が自身に降りかかった時の準備を考えようと改めて思います。
本書は、ほかに3作、短い物語も収録されている短編集ですが、表題作が群を抜いて存在感を放ちます。
本格的な冬の訪れの前に心身共に暖かくして読んでいただきたい一冊です。 -
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感想
今回は熊吾と房江の視点それぞれから交互に物語が語られる形式。
夫婦の周りにはどうしようもない人が多いが、自分たちが呼び寄せているのか?時代のせいなのか?なかなか安穏な日は訪れなさそう。
そんな激動の中で、息子の伸仁は病弱ながらも花札や賭けマージャンなどよからぬ方向へ。
あらすじ
熊吾は大阪に戻り、56歳、伸仁は小1になっていた。
熊吾は新しくテントの接着剤と中華料理屋、雀荘の事業を始める。
丸尾の隠し子がいる愛人が亡くなり、浦辺ヨネに城崎で小料理屋をやらせてことなきを得る。
周の子供の麻衣子は井手と結婚したが、井手の不倫に怒って、家出し、別れる。
妹のタネが母親を連れて無理矢理上京する。懲りずにヤクザものの男を作り、店を始めるが上手くいかない。母親のヨネは伊予に帰りたいのとボケが始まり、徘徊するようになり、遂には行方不明になる。
熊吾はプロパンガスの事業に目をつけて、元妻の兄で警察を退職した杉野を誘い、事業を起こす。
台風で倉庫に保管していた接着剤がダメになり、テント工業を畳むことにする。銀行が急に融資を渋り出す。背後に岩井亜矢子がいることに気づく。
プロパンガスは資金繰りが苦しく、共同出資者の杉野も商いに向いていない。そんな中、自分の糖尿病が発覚する。
杉野と合わない熊吾はプロパンガスの事業から身を引き、きんつば屋とカレーうどん屋を始める。
その頃、港湾労働者の近江丸が炎上して、アル中の亭主焼け死ぬという事件が起きる。伸仁もその事件に関わっており、ショックを受ける。 -
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ネタバレロス在住の叔母(菊枝)が日本滞在中に逝去したという知らせ。相続人である甥の弦矢は莫大な遺産を手に入れる。
5歳の時に病死したはずの叔母の娘レイラが、実はスーパーで連れ去られ、行方不明になっていた。少しの望みにかけ、弦矢は調査会社の優秀な探偵ニコとともに27年間封印されていた真実を追う。
菊枝は幼児愛者の夫から娘を守るため、誘拐と偽って、信頼しているマクリード夫婦に彼らの娘として育ててもらっていたのだ。
大事な一人娘を手放さなければならなかった菊枝の気持ちは、想像を絶する。
夫やまわりの人達にも嘘をつき続けなければならないなんて、生きた心地がしなかっただろう。もっと他のやり方はなかったものか。
菊枝は、愛する娘を手放し、離婚することもなく人生を終え、幸せな人生だったのだろうか。後に残った素晴らしい庭とこだわり抜いて造った豪邸を玄矢に託すことで、少しは報われたのかなと思った。
そしてマグリード夫妻も玄矢からの連絡でメリッサに真実を告白するきっかけを得て、全てがうまくまとまることを願う。
アメリカでは子どもの行方不明者が年間80万人にものぼるという。日本で一人でも子供が行方不明になったら、大変なニュースになるのに、アメリカでは珍しいことではないということか。
アメリカのランチョ・パロス・ヴァーデスの広大な自然やオルコット家の管理された美しい花々で彩られた庭の風景が魅力的に描かれている。
アメリカに一度だけ行ったことがあるので、その時感じた雰囲気を思い出しながら、読み進めた。日本とは何もかもスケールが違う。
とても丁寧に地形を説明しているが、地理が苦手なので、いまいち頭がついていかなかった。
現代作家の中では今のところ、宮本輝が一番好きなので、文章は自分に合っていてとても読みやすかったが、淡々としていて、完読するのに時間がかかった。 -
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ネタバレ感想
競馬にまつわる馬主、調教師、厩務員、騎手などの人間関係も泥臭く書かれている。競馬を題材にした人間関係が書かれている。
和具の娘の久美子が人生舐めたお嬢様という感じでどうも気に入らない。今後の話のキーになるほど重要な人物なのだろうか?
あらすじ
渡海ファームの跡継ぎの博正は高校を卒業したばかりの18歳。この年は、渡海ファーム期待のハナカゲのお産、姉のお産、飼い犬のお産と忙しい年だった。どのお産も上手くいき、渡海ファームはハナカゲの子のクロに多大な期待を寄せていた。
和具は大阪の2代目社長で会社を大きくした功労者だ。馬主はもう辞めようとと考えていたが、クロと出会い、馬主になる。和具は、愛人の息子が腎不全で移植しか助かる道がないと知って、自分の腎臓をあげるか迷う。ちょうどその頃、娘の久美子からクロがほしいとねだられて、息子のことも打ち明けて、クロを譲る。クロは和具の秘書によってオラシオンと名付けられる。
最近頭角を現してきた騎手の奈良と4連勝中のミラクルバードを巡る話。騎手の乗り方や実力だけではない世界の話。 -
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松坂の大将、遂に浮気がバレるの巻。
というか、日曜日なのにちょっと医者へ寄って来るなんて、松坂の大将!それは無いですってw日曜日とは気付かなかったらしいのですが、そんなウソはバレバレでしょーよ。房江(妻)さんも気付くってw
第8部まで読んできて一番納得のいかないシーンです。もーバカバカ。
結果これでこの夫婦は壊れてしまい、房江さんは自殺(未遂)するわで大混乱。
この物語でよく出てくるのが『運』。私も運のみで何とか現在息が出来ている人間ですので、非常に刺さるのがこの『運』『運命』について。松坂の大将は今まで運が良かった。それが7部あたりからこの強運に陰りが出来て、遂にこの8部で浮気バレ。そしてご子息から無視される始末。お疲れ様でした、大将。
そしてラスト9部ではどういう結末を迎えるのでしょうか。これが37年掛けて書かれた作品なんですよね・・・37年って。
とは言え終わって欲しくないんですよ。松坂熊吾の人生を神様の目線で見てきた私にとっては寂しいの一言。納得の行く最後であってほしいですね。
さあ、第9部へ!!! -
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読んだ本 ドナウの旅人 宮本輝 20240326
ソウル旅行中にドナウの旅人を読む。
母親の熟年離婚に端を発した物語も、色んな人間模様が絡んできて、何の話かよくわからなくなってきた。少しサスペンスの味付けもあって、こんな話だったんだって感じでした。
まだ冷戦下の時の作品なので、共産主義やジプシーなんかへの人種差別への思いなんかが描かれていて、時代の流れも感じました。時代の流れというと、横柄な父と離婚しようとしている母親を、今だったら娘が連れ戻そうとするか。そもそも離婚するのに一大決心でヨーロッパに逃げるか。全てがコンビニエンスになってる今だったら、簡単に別れるし、本人の自由って誰も止めないんでしょうね。人生の大事や規範の移ろいがいい悪いじゃなくて少し寂しい気がしました。
それにしても、不倫だけは漱石のそれからの社会抹殺時代から、石田純一で世の中に認められたのかと思ってたのに、再び社会抹殺時代に戻ってますね。 -
Posted by ブクログ
今回のタイトル『慈雨の音』、筆者あとがきによりますと、”この時代の松坂熊吾一家を取り巻く物語の周辺と細部に、人間への慈しみと言うしかないものが、横溢していたと感じるからである”と、納得。
いくつもの別離をこの優しい雨が洗い流してくれる、そんな、しっとりとした第6部。
熊吾一家も何とか再スタートするわけで、ついつい応援してしまうのですよ、脳内で。偶にやらかすと(ノ∀`)アチャーと脳内でAAが浮き出てくるのですよ、ホンマに。こう毎日この世界に入っていますと、俺が松坂熊吾で松坂熊吾が俺で状態で、生き方に影響が出てきそうで怖いです。妻を殴ってはいけませんよ(熊吾さんDV野郎なんで)
さあ、今夜から第7部。熊吾さんの新しいビジネスの成功をお祈りいたします。