宮本輝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読ませる一冊
430ページにもわたる分厚い本を、一晩で読ませられてしまった。
面白い!タイの王家の血を引く自分を愛してくれる男と、何処の馬の骨ともしれぬ、自分を確かに愛してくれるかもわからない男との狭間で揺れに揺れる美女。
それは、タイの喧噪とうだるような暑さと、独特のスパイスの香りとともに水の都バンコクで繰り広げられるひとつのラブストーリーである。
人の心と決断の礎のはかなさ
この作品では、人の心/決心・・・意思決定プロセスが非常に面白く描かれている。
一つの意思決定=「行動が起こされるにあたっての基礎となるモノ」が、実は非常に心許なく、時としてわき上がるような人いきれに気圧されて -
Posted by ブクログ
ネタバレ宮本輝が好きな読者はこの著書にどんな評価なのだろうか?
たしかに禁忌の異母兄妹恋愛を興味本位でなく、愛の根源として描き、なおかつミステリアスな魅力も醸している。惹き付けられ、読み終えるまで本を手放せない盛りだくさんのおもしろさはさすが。
でも、ミステリー、ゴシックロマンとして読んでしまう平凡なわたしには、はぐらかされた感じが残る。つまり、本当に異母兄妹かどうかがこの物語に絶大な雰囲気を与えているので、どうしてもその謎解きのつじつまを求めてしまうのだ。結末や解説を求めては雰囲気が壊れるのだけれど。ついね。
そして、背景は島根県、強い風がふく岬の上の茶室風古屋。兄妹はそこでの焚火が大好 -
Posted by ブクログ
自分を自分以上のものに見せようともしないし、自分以下のものにも見せようとしない、自然で素直でおっとりと話す、おそらく目立つ美人と言うわけでもないのだろうが、男女問わず人を惹きつける魅力のある、50歳の主婦・志乃子。
そう言う「善き人」は「善き人」を引き寄せるのだろう。沙知代も早苗も、夫・琢巳も魅力的な人達だ。そうして縁や出会いによって、それぞれの人生がまた新たな扉を開いていく。一見穏やかながら、50を過ぎてからまた人生が動き出す志乃子や沙知代には、希望のようなものをもらえるし、心地の良い作品だった。
『自分以上のものに見せようとしない。自分以下のものにも見せようとはしない。』
『自分を、自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレ雅人は異族として瀬戸家に紛れていただけだった。弟のきよしはずっと一緒に住んできた兄のことを全く理解できていなかった、本当の家族にはなれなかったことを知った。雅人にとって本当の家族はせつだけだったのだ。雅人にとって星宿海はいなくなってしまった母の思い出。母から聞かされた昔話と先生から聞いた黄河の源流の風景の妄想が生み出した、雅人と母が作った場所。
それぞれの道を辿って「星宿海」に辿り着いたことで、千春も雅人も家族になったんじゃないかなあ
宮本輝の小説からは、町工場の油臭さと泥の匂いがする。
お母さんが身体を売るところを見るのは辛くなかったのかな。あの親子が一緒にいるときはいつも屈託がなく幸 -
Posted by ブクログ
昭和中頃、道頓堀川に間近い喫茶店リバーの店主武内と、そこに住み込みで働く邦彦を中心に、彼らに関係する様々な人々との間で起きた、様々な出来事が筆述された群像劇。
読んでいて自然に胸に浮かんだのは、濁世という言葉。道頓堀川の描写に使われる濁りが、人間世界にも入り混じっている感覚。
けれど汚濁ではなく、雑多な事象の重なりによる濁りで、それはどの場所にも、どの時代にもある一側面のよう。
事故で一本の脚を失った犬・小太郎が、この時期の、この地域の人々が、ぎこちなくしか人生を集めなかったことを象徴しているのだと思う。
大学生邦彦の青春譚であると同時に、中年店主武内の回想録でもある。けれど回想は、思い出の中