宮本輝のレビュー一覧

  • 流転の海―第一部―(新潮文庫)

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    1982年に開始したこの「流転の海」シリーズが、2018年6月の第九部「野の春」をもって完結したということが話題となった。宮本氏も、この37年間に及ぶ大河小説の完結に、躊躇することなく自らを褒めていた。

    物語の主人公は、松坂熊吾。宮本輝氏の父・宮本熊市氏の物語である。第一部は、敗戦から2年たったばかりの大阪を舞台。松阪熊吾が事業の再興を始めるシーンから始まる。そのとき、熊吾50歳にして初めての子を授かる。

    物語の中では、その子を「伸仁」と名付けるが、まさに宮本輝(本名宮本正仁)自身のことである。

    宮本氏は、「私は、自分の父をだしにして、宇宙の闇と秩序をすべての人間の内部から掘り起こそうと

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    2019年01月22日
  • 胸の香り

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    短編7作品を収録しています。

    表題作「胸の香り」と「しぐれ屋の歴史」の2編が、とりわけ強く印象にのこっています。ともに、主人公やその両親の来歴にかかわる秘密が明かされる内容で、30枚程度の分量のなかで巧みに構成されたストーリーをえがきだしています。

    「舟を焼く」は、他の作品とはすこし異なる読後感を受けました。離れることを決意した夫婦が小さな旅館を訪れ、その主人夫妻もまたまもなく離婚することになっていることを知ります。さらに彼らが、二人の思い出の舟を焼くことを決め、砂浜の上で舟を移動させているということを主人公は知るのですが、このエピソードが離婚というリアルな出来事からふわりと遊離していくよ

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    2019年01月19日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    素敵な話です。
    世代を超えた人の繋がりが、
    流れを作っていきます。
    終わり方がもう少しドラマチックだと良かったんだけど。
    せっかくの繋がりがもっとグッとして終わると気持ちよかったです。

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    2018年12月24日
  • 長流の畔―流転の海 第八部―(新潮文庫)

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    発行が最近は1年に1回なので、読む側も遅々として進まない。主人公の熊吾は老いてなお元気だ。だが自分の意思と力では及ばぬ運命なる流れに翻弄される。人に裏切られ、家族にも愛想をつかされる。しかし、時々人のために行なったことに報いを得る。場合によっては命を長らえる。人生をどう生きるか、ふと考える瞬間を持つ。2018.12.20

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    2018年12月20日
  • 田園発 港行き自転車 上

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    宮本輝作品を手に取ったのは本当に久し振り。昔読んだイメージそのまま柔らかい文章で心にすーっと入ってきます。
    現実的に見れば、なかなかハードな現実だと思うのだけど何故かそれを負のイメージにさせないのはなぜでしょう。重い気持ちにならずに、でもしっかり心に受け止めながら読める一冊でした。続きの展開が予想できなくて楽しみです。

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    2018年10月27日
  • 避暑地の猫

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    青春時代のダークサイド
    宮本輝氏の描き出した青春時代のテーマでは
    一様に健気な男が奮闘しているイメージがありますが。
    こういうダークサイドも妙に印象に残っているんですよね。
    宮本氏の宗教を作品の評価に持ち込むのはやめるべきだと
    思います。見かける場合ちらほらあるんすが。
    ええもんはええと。それだけで評価せんと。

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    2018年10月17日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    ひたすらに旅へ行きたくなる。

    下巻では散らばっていた繋がりが線となり、佑樹を取り巻く周りの大人たちの優しさに触れる。
    しかし賀川直樹のだらしなさが曖昧にされていて、何とも納得できないラスト。

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    2018年10月14日
  • 三十光年の星たち(下)

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    プロになるには最低30年働いて働き抜くことが必要。
    人はまわりの人間に支えられて一人前になる。
    宇宙の永遠も人の人生も同じ努力を続ける舞台の中。
    このほんから私なりに学んだ教訓。
    有村富恵への回収の結末がなかったが、久々の宮本輝を楽しんだ。

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    2018年09月30日
  • 田園発 港行き自転車 上

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    ネタバレ

    物語の舞台が東京、京都、富山に跨り、登場人物もやたらと多くて、相関図がいるほど。さらに、普通なら省かれる脇役一人一人のエピソードまで事細かに描かれているから、何が何だか状態で混沌としてくる。

    それでも、入善市の田園風景、黒部川の流れ、立山の姿、旧街道の街並み、風を受けて走り抜ける自転車のスピード感は十分に富山の魅力を伝え、やっぱりその地を旅したくなるのは間違いないし、京都の花街の風情ある佇まい、芸妓の世界の伝統を守り抜く女たちの強さと美しさにも惹かれた。

    だけど、死亡した賀川直樹には最後まで魅力を感じられなかった。有り体にいえば、養子で婚家に居場所がなかった婿が、京都で羽を伸ばして若い子に

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    2018年09月30日
  • いのちの姿 完全版

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    ネタバレ

    宮本輝の小説の主人公や舞台の設定と重なるような、宮本さんの子供の頃の実体験。少しビックリしたような、でも、だからこそ、読者の心に響く、深い話になっているのかも、とも思いました。

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    2018年08月26日
  • 私たちが好きだったこと

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    不思議な関係。
    語弊を恐れずに言えば、不安神経症の人の相手は大変だと思う。
    なんとも胸が苦しくなる展開。
    ーーー
    工業デザイナーを目ざす私、昆虫に魅入られた写真家のロバ、不安神経症を乗り越え、医者を志す愛子、美容師として活躍する曜子。偶然一つのマンションで暮らすことになった四人は、共に夢を語り、励ましあい、二組の愛が生まれる。しかし、互いの幸せを願う優しい心根が苦しさの種をまき、エゴを捨てて得た究極の愛が貌を変えていく……。無償の青春を描く長編小説。

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    2018年08月20日
  • 慈雨の音―流転の海 第六部―(新潮文庫)

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    酔っては女房を殴り飛ばす男が、憲法を、日教組、歌舞伎、俳句、日米安保等々を熱く語る。この熊吾、得体が知れなく、どう理解すれば良いのか?

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    2018年08月15日
  • 私たちが好きだったこと

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    ひょんな成り行きで共同生活を送る事になった。男女4人の物語。
    4人とも他の人の為に四苦八苦してばかりいる、お人好しなのですが、純粋に人がいいばかりでなく、それぞれクズい部分も持っているんですよね。
    そんな彼らに、次から次へと色んな事が起こり、それによって傷つけ合ったり、絆を深めたりして過ごしてゆく「あー、人間ドラマだなァ・・。」という感じの小説でした。

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    2018年08月01日
  • 五千回の生死

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    息子が「読み終わったから読む?」と貸してくれた本。
    短編集だったので隙間の時間に読めました。
    昔の大阪が見えるようなお話でした。

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    2018年07月02日
  • 月光の東

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    ネタバレ

    解説をよんでいて、宮本輝の小説には、自殺というテーマがよくでてくることを知った。
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    ほかの小説にもよく出てくる自殺のモチーフである。
    自殺といっても、自殺した当人よりむしろ、すぐそばで誰かに自殺されたものは
    どうするかという問題である。
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    読んでいると、死よりも、生きるためのすべをかいてあるように思えた。
    死なないで、生きるためにこうして!って生きることへのヒントがちりばめられている
    ような気がした。

    最近樋口裕一先生の本で、知的な思考は訓練で身につく。と学んだが、

    自分を好きになること、これも訓練で身につくのか!と思った
    自分を好きでいる訓練は、生きるために必要。

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    2018年06月11日
  • 水のかたち 下

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    そんなアホな、と、言いたくなるような何もかもがうまく行き過ぎ、世間は狭いというか、あっちもこっちも実は知り合い、って。


    でもずんずんと読み進むことができる。

    そうだ、私は嫉妬しているのだ。ほぼ同い年のこのヒロインに。絶対に私とは真逆の資質を持ったこの50女に。

    たまたま気に入った茶碗がすごい逸品で、大金が手に入ったり、その縁で趣味の良い喫茶店を始めることになったり、もうすべてのことが良いほうに良いほうにと回り始めるのだ。

    だけど、私はいつも思う。こういう「運」はただの偶然などではないのだ。その人の持つ徳や資質が呼び寄せるのだ。だから私には絶対にそんな運はめぐってこない。きっと死ぬまで

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    2018年06月08日
  • 三千枚の金貨(下)

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    金貨を埋めた芹沢由郎の生い立ちが丁寧に書かれていく。金貨が見つかるのかという所が一番興味のあるところだが、サラリーマンの生活、子どもの頃の苦い思い出など、いろいろからみ合って重厚な物語になっている。

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    2018年04月28日
  • 三千枚の金貨(上)

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    金貨が本当に見つかるのかが興味のあるところだが、金貨を桜の木の根元に埋めたという人物はまだ謎ばかり。

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    2018年04月28日
  • 田園発 港行き自転車 下

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    宮本輝さんの作品、久々に読んだかも。
    富山に行って愛本橋を見てみたいなぁ、と素直に思わせる作品。でも徒歩にしろ自転車にしろ結構勾配がきつくて大変そう… 黒部と併せていつか行ってみたいなぁ。

    群像劇なので章が変わるごとに登場人物が入れ替わり、この人は誰で、どの人とどういう関係なんだろう?と混乱しました。特に京都の小松関連の人間関係が頭に入ってこなくて大変でした。宮本さんは不倫関係には反対だけれども生まれてきた命は平等に尊いものだ、という事を書こうとしたのかな、なんて思いました。

    個人的には舞妓さんや芸妓さんの芸事をナマで見た事が無いので偉そうな事は言えませんが、やっぱり水商売だよなぁなんて思

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    2018年03月15日
  • 森のなかの海(下)

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    2人の女性にモノ思う。


    愛する人に裏切られた女。
    愛する人を失った女。

    哀しいけど、この物語では、
    前者のほうが幸せと思ってしまう。

    希美子はまだ先がある。
    それもきっと明るいものが。
    そう信じたいし、辛い試練だって、
    未来のための過程だったのだと思う。


    反対にカナ江は‥。
    未来がないひとだから、よけい哀しいのか。
    まわりの大人に騙されて、
    愛するひとたちを失って。
    罪とは言い難い罪を背負って孤独に生きた。
    もっと心をさらけ出して、
    泣いたっていいし、傷つき傷つけてもいい。
    だって、生きてる時じゃなきゃできないもの。
    行き場のない痛みを抱え、ひとり耐え忍んだ。

    しんみりしてまう。

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    2017年12月24日