上橋菜穂子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「精霊の守り人」の作者、上橋菜穂子さんが語る、どうやって作品を生み出しているのかと、どうやって作家になったのか。
繰り返し尋ねられては断り続けてきた彼女がアンサーとして出した一冊。
研究者にもなれない、作家にもなれない、と涙が止まらなかった日々や、研究者としてオーストラリアをひたすらハンドルを握り走り続けた日々とその時の思いを、率直に語ってくれています。
「子どものころ、時を忘れて物語にのめりこんだように、私はいまも、物語を生きるように、自分の人生を生きているような気がします。」p171
簡単な道などない。一歩踏み出した先に、次の道が開ける。
「古くてあたらしい仕事」を読んだ時と似た読後感。そ -
Posted by ブクログ
NHK対談番組「Switch」の内容に往復書簡等を加筆して本にしました。斎藤慶輔さんは釧路湿原野生動物保護センターの獣医師でオオワシやシマフクロウなどの治療・保護をしてきた人。上橋菜穂子さんの「獣の奏者」の監修をしたことが奇縁で対談に至りました。
上橋菜穂子さんについては、あと1-2冊読めばコンプリートになります。それほど寡作なのです。彼女の新居の書棚がチラリと出てくるけど、専門書関係だけで700冊ぐらいあるらしい。彼女の書くのはファンタジーですが、なんでもアリではない、「特に、命あるものの生き死にに関わることで、うそは絶対に書きたくない」と決意しています。最新作の「鹿の王」で大部分を占める -
Posted by ブクログ
1990年から約10年間、上橋菜穂子は小説を書きながら、同時にオーストラリアの西部の町を訪ねて定期的に文化人類学のフィールドワークを行っていた。アボリジニ先住民族の調査である。
私は今、戸惑っている。彼女の仕事を純粋に文化人類学の成果として学ぶべきなのか。彼女の小説にどのように影響しているのか分析するべきなのか。とりあえず、この一文はその両方の立場をとる曖昧なものになるだろう。
一つの文化体系に、強力な文化体系が押し寄せた時に、その文化はどのような変容を起こすのか。例えば縄文文化に弥生文化が押し寄せたとき、どうなったのか。弥生文化体系は、イギリス西洋文化よりは遥かに弱かったはずだ。しかし似 -
Posted by ブクログ
守り人シリーズ3冊目。
トロガイ師の過去に迫ります。
最初名前が出て来た時に男性だと思っていた自分が懐かしい。
チャグムやシュガ、帝の隠密部隊も登場し、一作目好きな方には嬉しかったと思う。
花や花の守り人を主軸にしつつ、裏テーマは恋愛だと思っている。
個人的にはバルサとタンダの恋愛(?)の行方がとても気になる!!
バルサがより自覚したって事で進展あるのかな?
そしてバルサの『ガキの頃は不幸を呪っていたけれど、幸福を認める気になったのはこんな年になってからだ』ってセリフがささる!
あんなに強くて格好良いバルサも色々な人や戦いを経て、情緒面でまだ成長(?)していくんだなぁ…って。バルサ可愛 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ守り人シリーズ、そして旅人シリーズの集大成となる最後の物語。今までの話が統合されて出てくる感じで、一気読みしてきた身としては感慨深いものがある。何年もかけて読んでいたら登場人物を忘れてそう(笑)
チャグムの足跡を追いかけて、いつもぎりぎりのところまでたどり着くのになかなか会えずにもどかしく感じたが、最後にああなってこうなって、うーん序章にぴったりだという展開とオチ。
しかし世界観が広がりすぎたせいもあるかと思うが、タルシュ帝国がロタ王国に感づかれてほしくなかったことをチャグムはイーハンに教えたかどうか、というところが省略されていたり、チャグムの追手がそれだけしかいなかったの!?と疑問に思ったり -
Posted by ブクログ
最強に見える人でも、当然こども時代はあったし、最強になる前の時代があったわけだし、最強に見えても決してそんなことはない、ということを示していて面白い。トロガイの話なわけだが、そんな弱いところを見せたシーンで弟子が活躍する、というのも王道で良いね!
ただ、サグとナユグという2世界で理解していた中で、ナユグとも違う、数年間に一度の邂逅というような異世界感を理解するのに少し時間がかかった。それと、花が結局何がしたかったのかよく分からないまま終わってしまった感はある。
自分の人生が、立場や現実によってなかなか思い通りに行かないというのは本当にそのとおり。そういう中で迷いはあれど、もがいていくということ -
Posted by ブクログ
これまでのシリーズ史上もっとももどかしく、だからこそ人間味があるというか、共感する内容となっている。というのも、バルサもトロガイも出てこないため、「ここでうまくやっつけてくれる!」という人がいない。そのため、チャグムやシュガが自らの能力を限界まで発揮しつつも、勧善懲悪とはならない感じ。だがそれがよい(笑)
そしてサンガル家のしたたかな女性たち!純粋な心だけでは政治の世界は生きられないのよと言わんばかりに手練手管を披露していく。これは果たして子供向けの本なのだろうかと思ってしまう。
自分が南海の生まれ(でも船に酔う)ということもあり、非常に楽しく読めました。 -
Posted by ブクログ
本書は守人シリーズ、獣の奏者シリーズ、狐笛のかなたに登場する料理を南極料理人で有名な西村さんを含むチーム北海道で再現したもの。
上橋さんの作品は獣の奏者と狐笛のかなたを読んでいるがいつも食べ物の描写がとても美味しそうで強く印象に残る。
個人的には獣の奏者でエリンのお母さんが作る猪肉の葉包み焼きと狐笛のかなたで小夜が小春丸と食べていたくるみ餅のシーンが大好きなのだがそれらも勿論収録されている。流石です…。
登場する作品が国内外問わず食べたものを元にされており、それぞれにエピソードがある。それがにおいや味の想像を掻き立てられる描写に繋がっているのかなと思った。
見た中で汁かけ飯が食べたくなった。あ -
Posted by ブクログ
ネタバレ文化人類学の本は、どの土地のものであれ、読んでいて辛い気持ちになることが多い。大体「文化人類学」という学問分野で「調べる側」に立つのは西欧をはじめとした先進国側が圧倒的に多いわけで、「調べられる側」に立つのはアフリカや中南米、アジア、太平洋島嶼国といった、調べる側にとって「遅れた国」。結果、白人から見て相手の文化がどれほど劣っているか、異なっているかという視点が絶対に入り得る。それは、調べる側が「後から入ってきた先進国」、つまりアメリカや日本、オーストラリアなどになっても、大して変わるものではない。
そんな中、この本は著者が9年近くをアボリジニとともに暮らして感じたり調べたりしたことを元に書 -
-
-
Posted by ブクログ
つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。
守り人シリーズは随分久しぶりなんですが、読み始めたら一気にあの世界の