上橋菜穂子のレビュー一覧
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王獣保護場で教導師を務めていたエリンが、戦場の真ん中で王獣のリランによって助けられた「降臨の野(タハイ・アゼ)」での出来事から10年。かつて真王の護衛士であったイアルとエリンは結ばれ、ジェシと名付けられた息子と穏やかな日々を過ごしていた。しかし、またもや起きた闘蛇の大量死の真相を調べるうちに、家族の3人の平穏な暮らしは、終わりを迎えていくことになる。
とにかく、エリンとイアルがかっこいい物語だと思った。
獣たちが野にあるように自由に育つ。あらゆる争いや諍いからも自由に、家族とともに平穏な生活を営む。エリンとイアルは、そうした「自然」であるはずのことを望みながらも、国同士の政治は、獣を自由に操る術を持つエリンとその家族を放っておいてはくれない。隣国ラーザが、闘蛇を利用した軍隊を持ったとなれば、真王は、エリンに戦場で闘蛇を殲滅できる王獣部隊を作ることを無慈悲にも命ずる。そんな政治の中にあっても、エリンは、獣を、人を解放するという自らの信念を守るため、最後の最後まで交渉を持ちかける。
その静かでありながら、強かな振る舞いが、とにもかくにもかっこいい。ジェシとイアルが襲撃を受けるシーン、元護衛士だったイアルが、難なくその状況をかいくぐるところもかっこよかった。
ただ、普通のことを願っているだけの家族が、政治という大きな流れに利用され翻弄されるという筋。どうやって終わるのだろうと、次の完結編がただただ楽しみになる。 -
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上橋菜穂子さんの作品には美味しそうな食べ物がたくさん出てくる。単に美味しそうというだけでなく、「魚」や「果実」でもよさそうなところを、ゴシャとかナライとか名前も付いていて説明があるので、物語の世界がよりしっかりと立体的に見えてきて、食べたい気持ちが強くなる。そんなふうに感じる人は多いようで、実際に作ってみよう!と企画して作られたのがこのレシピ本。異世界の物語の食べ物を実際に作ってみるというアイデア自体が既におもしろい上に、上橋さんの説明でそうした食べ物がその世界での暮らしや登場人物のそのときの状況をふまえて考えられたものであることがわかるので、料理を作らなくても、上橋さんの作品(主に守り人シリーズ)の解説としても十分楽しめると思う。
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ネタバレ 無料版購入済み
エリンは獣医学部へと進学し…
エリンとジョウンの過去が交錯し、ジョウンの教育者としての能力の高さが判明しますね。教え子にはなまじ公平に接していたので出来の悪い息子持ちの高級官僚に疎んじられ……まぁ学校組織とかには如何にもありそうなエピソードは、原作者の経験とも関連していたのかもしれません。
エリンは勉強し続けて亡き母のようにもなりたいとの思いが強くなり、王獣の面倒をみるべく、寄宿舎付きの学校へと入りますね。
良質な作品ですね。TVアニメは配信されていないようですが、見てみたくなりますし、原作も然りですね。 -
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王獣がカッコよくてイイですし…
やはりだんだんと作品世界が広がりますね。ミツバチの生態等は現実世界とさほど差がないようです。主人公、とても好奇心旺盛で聡明っぽいですね。
巻末には原作者とまんが担当者の対談等も再録されているのが良いです。
王国の警備兵や、王族その他も出てきますし、森の中で遭遇する王獣も良いですね。
良質で丁寧な作品ですね。 -
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東洋風ファンタジーの幕開けで
龍のいる世界で、霧の民、その他、水田に恵まれている中央の国と、そことは異なる辺境よりの土地と。良い舞台ですね。
原作者の作品も未読なのですが、丁寧な作画に惹き込まれますね。主人公の女の子も過酷な運命に翻弄されそうで、母は命を賭してでも守るべきものは守ったらしいのですが、詳細はまだ見えませんね。
もう少し読み進めば一定、見えてくるのでしょうね。 -
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人類学者の卵だった著者がオーストラリアに滞在し、街に住むアボリジニとイメージのなかのアボリジニのギャップにショックを受けながら、友情を通して〈理想の先住民〉ではない隣人としての姿を少しずつ知っていく過程を綴った体験記。
管啓次郎の『本は読めないものだから心配するな』で紹介されていたので手に取ったのだけど、本当にいい本だった。文章は優しくとても読みやすく書かれていながら、オーストラリアに限らずありとあらゆる文化において他者を尊重するとはどういうことなのか、考えるヒントをくれる一冊だと思う。
文化人類学というものがそもそも西洋のアカデミズムに拠っているという問題がある。先住民に〈野生〉の理想を押しつけながら、同時に資本主義的な観点からは〈役立たず〉のレッテルを貼り、社会から排除する。上橋さんの戸惑いもまずはそこから出発する。
一方で、今はもう街に暮らしているアボリジニも親戚の死などをきっかけに伝統社会に引き戻され、魔術師やトーテムがいる世界に入っていってしまうところはやっぱり面白く、興味を惹かれずにいられない。本書で取材対象になっているのは、日本文化の先生としてオーストラリア西部の小学校に赴任した上橋さんが友だちになったアボリジニの女性たちだ。彼女たちは幼い頃を白人が定めた居留地で過ごし、今は街で生活しており、父や夫はもう狩りをしていない。
面白いのは居留地時代がノスタルジーの対象になっていることだ。居留地はそれぞれの共同体が白人の入植前に暮らしてきた土地とは関係なく決められていたらしいのだが、それでもブッシュで動物や虫を捕っていた日々を語る口ぶりはにわかにいきいきしてくる。言葉や文化の伝授を禁止された時期があるせいで親世代と子世代は精神的な分断を抱えており、ブッシュの記憶はその溝を飛び越える大事なものだったのではないか。
日本でもアイヌや琉球の文化を持て囃す一方で、生活リズムの違いや宗教観・家族観の違いには理解を示さない、歩み寄らないという差別の歴史があると思う。「物質社会 VS 精神世界」だとか、「先住民の生き方こそが"本当"なのだ」とかいう話じゃなく、他者や他文化を理想化せずに尊重するにはこれから世界はどう変わっていかなければならないのか、と優しく問いかける一冊。 -
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ネタバレ前作「炎路を行く者」に収録されている「十五の我には」で、サダン・タラムという人たちが出てきて、「はて、こんな人たち、今まで出てきたっけな?」と思っていたら、本作で出てきた。
あとがきによると、本作を書き始めたものの行き詰って、本作の一部として「十五の我には」が先に出来上がったそうな。
毎度のことながら、上橋さんの頭の中はどうなっているのか。あれやこれやと辻褄が合わなくならないほど、世界観が完成しているのかと、ため息が出る思いだった。
タルシュとの戦後、タンダと向かった草市で偶然にもサダン・タラムを助けることになり、さらにそのまま旅を護衛することとなったバルサは、20年前ジグロとともにサダン・タラムを護衛したことを思い出す。話は20年前のサダン・タラムとの旅をたどりながら進む。
なんといってもジグロのかっこよさよ。一流の護衛士というだけでなく、思慮深く、全てを俯瞰した作戦をとれる賢さ、他人の気持ちを汲むことのできる温かさ、申し分のない男ではないか。サリとの関係、むふふふふ・・・・。
そして、バルサもそんなジグロに育てられただけあって、立派な大人になったねぇ(どこのおばちゃん?)。
終盤、バルサが、エオナに、もうだいぶ前に逝ってしまったジグロの声が聞こえる気がするときがある、と語ったとき、人が生きるって、命があるときだけのことではないんだな、としみじみと感じた。
しかし、サダン・タラムの頭を狙った今回も20年前も、端的にいえば、民族同士の争いが発端。現実に目を向けるとロシアとウクライナも・・・。アール家とマグア家の長い長い緊張状態に少し驚きをもって読み進めた。これ、バルサが護衛しなかったら、両家の争いはずっと続いてたんでないかと思う。
バルサを誇らしく思い、ジグロがまたさらに身近に感じられるお話だった。 -
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ネタバレバルサがジグロと共に、追手から逃れて暮らしていた頃が描かれている短編集。
タイトルのとおり、村や家族から疎まれたり、離れてしまったりした流れ者が描かれる。
タンダの親戚のおじちゃんオンザ、老女賭事師のアズノ、年老いた護衛士スマル・・・
これは児童文学の域を超えている。私だって、正確に読み取れたかどうか(読書に「正確さ」もないとは思うけれど)自信がない。「ん?」と立ち止まって、上橋さんの意図をくみ取ろうとしたこと数回。
人間の良い面も悪い面も上橋さんの手にかかってしまえば、フラットに描かれ、一度しか登場していない人物も人間としての温度を持ったひとりの人となり、読者の心に住み着いてしまう。
人間の奥深さをここまで表現してしまうとは、さすがとしか言えない。
全体的に暗いお話ではあるけれど、昔のバルサとタンダの関係をのぞき見ることができ、生きているジグロをたどることができ、ファンには必読な短編集だった。
最後、タンダがバルサの帰りを待ちわびるところがなんとも言えず微笑ましかった。