上橋菜穂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
圧巻。
ファンタジーであり、心をえぐるような現代の問題とも直面する。
戦争、移民、差別、宗教、倫理観。作品に描き出された世界は、いまの社会を投影しているかのようだ。こうした現代社会に通じる世界観を意識せずにはいられない一方で、気がつけば、そんな第三者的な思考を放り出して、世界に没入し、主人公たちとともに「生きる」とはどういうことなのか、一心に問い続けている。
なかでも、第10章「人の中の森」が印象的だった。そこで静かにかわされる二人の対話は、「生きる」とはどういうことなのか、ひとつの答えが示されていたように思う。
「生まれて来るすべては、そのとき一回しか生まれない個性をもった命」
上橋菜穂子さ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ上橋さんの純和風ファンタジー。人の心の声が聞こえてしまう「聞き耳」の力を持つ少女小夜と、とある屋敷に隠し育てられたお殿様の息子、霊狐の少年野火の運命が絡み合い、先祖たちの血塗られ、憎しみに満ちた領土争いに巻き込まれていく。
死のにおい、呪術、復讐など全体的に薄暗い雰囲気なのだが、それを裂くように走る野火の健気さ、小夜のまっすぐな気持ちが火花となって光り、とてもうつくしい。どこまでも応援したくなる二人だったから、ラストは感無量だった。人の世で生きていくことはかなわなくとも、二人が一番幸せになる道を選んだのだから、それでいいのだ。
たった370ページほどの物語で、魅力的なサブキャラクターも多いので