上橋菜穂子のレビュー一覧
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ネタバレ「綿毛」が読みたくて。外伝は読んだことあったのですが、改めて文庫版を買って読みました。ソヨンのことを知れてよかった。本編に書いてある生い立ちの情報だけでは、「なんて不幸な人なんだろう」という感想で終わってしまっていました。せっかく一族を離れてまで共に生きたいと思えた人と一緒になれたのに、先立たれてひとりエリンを育てる人生はつらかっただろうなと。その答えが書かれていて、たくましさに胸が熱くなりました。
「秘め事」がやっぱりこの本の肝なのかなあと思います。ユアンのことがずっとよくわからなくて、頭に残っていたのですが、読み返すと「物言わぬ王獣のよう」な彼の姿がつかみ取れる気がします。何一つ不自由ない、用意された伴侶と添い遂げる飼育された王獣のような一生。焼けつくような破滅願望を、ずっと抱えていたのでしょうか。それでも、エサルと過ごした山小屋での研究の日々は、彼にとっても宝物だったんじゃないかと思わずにはいられません。どんなにそれが身勝手な行いだったとしても。なんて静かで、悲しい抵抗なんだろうかと。 -
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第五章 運命の曲がり角
1 竪琴の響き
2 運命の曲がり角
3 教導師たちの決定
4 最期の便り
5 傷
第六章 飛翔
1 不安の胎動
2 飛翔
3 霧の民(アーリョ)の大罪
4 野生の雄
5 二頭の飛翔
第七章 襲擊
1 真王(ヨジエ)の行幸
2 ダミヤの誘惑
3 襲擊
4 治療
5 闘蛇の印
6 決意
第八章 風雲
1 求婚
2 獣の血
3 ダミヤの命令
4 魔がさした子(アクン・メ・チヤイ)
5 露見
6 逃亡者
7 風の夜
8 王祖の来し方
9 虚しさの天地
終章 獣の奏者
1 払暁
2 弦の調べ
6章の終わりに教導師になったエリン
教えることについて。
学ぶということの、ふるえるような興奮を感じとってほしい、というエリンの言葉。
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圧巻。
ファンタジーであり、心をえぐるような現代の問題とも直面する。
戦争、移民、差別、宗教、倫理観。作品に描き出された世界は、いまの社会を投影しているかのようだ。こうした現代社会に通じる世界観を意識せずにはいられない一方で、気がつけば、そんな第三者的な思考を放り出して、世界に没入し、主人公たちとともに「生きる」とはどういうことなのか、一心に問い続けている。
なかでも、第10章「人の中の森」が印象的だった。そこで静かにかわされる二人の対話は、「生きる」とはどういうことなのか、ひとつの答えが示されていたように思う。
「生まれて来るすべては、そのとき一回しか生まれない個性をもった命」
上橋菜穂子さんの作品は、「守り人」シリーズと『獣の奏者』を読んだことがある。カテゴリーとしては児童文学に分類されるらしいけれど、その枠組みはあまり意味をなさない。年齢ではなく、生きることに引っかかりを覚えた人が手に取る作品だと思う。
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ネタバレ上橋さんの純和風ファンタジー。人の心の声が聞こえてしまう「聞き耳」の力を持つ少女小夜と、とある屋敷に隠し育てられたお殿様の息子、霊狐の少年野火の運命が絡み合い、先祖たちの血塗られ、憎しみに満ちた領土争いに巻き込まれていく。
死のにおい、呪術、復讐など全体的に薄暗い雰囲気なのだが、それを裂くように走る野火の健気さ、小夜のまっすぐな気持ちが火花となって光り、とてもうつくしい。どこまでも応援したくなる二人だったから、ラストは感無量だった。人の世で生きていくことはかなわなくとも、二人が一番幸せになる道を選んだのだから、それでいいのだ。
たった370ページほどの物語で、魅力的なサブキャラクターも多いのでもっと読みたくなってしまうのだが、そこを凝縮したからこそこの物語の疾走感が生まれるのかもしれない。でも、読みたいなあ、花乃、木縄坊、玉緒たちの物語、小春丸のその後の話。