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SF・ファンタジー 10位
舞台となるのは、異界と人の世界が交錯する世界 ── 。
対岸の大国であるタルシュ帝国の勢力が増し、不安がたかまる新ヨゴ皇国。皇太子チャグムは、罠と知りながら、祖父とともに海軍を率いて、タルシュの圧力がかかるサンガル王国の救援にむかう。
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Posted by ブクログ
旅人シリーズは前の虚空の旅人のときもそうだったが、完全解決できないシチュエーションでどうやって切り抜けるかというところが描かれていて、とても人間味があるというか、大人向けな物語だと思う。
今回はこれまで以上に、というか最終的に解決していないのは初めてじゃないかと思う展開で、チャグムの苦悩にこちらも悩まされた。
しかしこういった壮大なハイファンタージというのは、最初のほうは不思議な体験や経験を通して主人公自身の成長が描かれていくのだが、物語が進んでいくにつれて、他国との争いなど、国と国との政治力学みたいな話が出てくるものが多い気がする。漫画だが、「マギ」や「ワールドトリガー」などを思い出した。それだけ壮大な世界が描ける作家さんはすごいなと思う。
Posted by ブクログ
なぜか人を引きつけるチャグム。バルサがどうしてここまで惚れ込むのか今までわからないところがあったが、今作ではなんとなくそのあたりを読者に理解させる描写が多い。ヒュウゴもそうだが、一緒にいた呪術師弟ソドクも「なんだか不思議なやつだ。肩入れしたくなる」みたいなことを言うのだけど、そのあたりが好きだ。p.250
チャグムだけでなく、登場人物それぞれの立場からの正論、筋の通し方がとても面白い。リアルさとでもいうのか。
旧ヨゴ皇国ってやつは地理的にもっと遠い存在で簡単には行けないところかと思っていたが、船で簡単?にたどりつけてちょっと想定外だった。
それにしても新ヨゴは閉鎖的すぎる。外部の状況を知らなさすぎ。帝の志向が思いっきり反映されているのかもしれないけど。
タルシュは強大すぎ。それなら、前作に出てきた「タルハマヤ」をタルシュにぶつければいいのに、とか思った。
Posted by ブクログ
勿論本編もなのだが、この巻の解説もまた興味深い。
それが本当に少数派なのかは知らないが
私も守り人シリーズも好きだが旅人シリーズの方がより好きである。
成ろうと足掻く人間に肩入れしたくなる。
確かにそれが正解なのだと思う。
幼少時は兎も角として、今はひとりで己の身を守り
仕事があり信用も得ていて、ひとりでも暮らしていけるバルサも恰好良いし大好きなのだが
まだ年齢も若く大人とは到底言えず
己ひとりで生きていく力が無いのに皇太子という位にあり
それを望んではいないチャグムが
それでも民を守り、己の信念を守ろうと傷付きながら立ち向かう姿はとても心惹かれるものがある。
物語はまだ続いているとは言え、この衝撃の終わり方。
これを**編上巻、などとせず、
旅人シリーズの一巻として出してしまう心意気とでも言おうか。
素直に感嘆する。
私が耐えがたい恐怖だと捉えているもののひとつに『孤独』がある。
初めにそんなことを考えたのは、オズの魔法使いを見た幼少時だった。
ただあれは、トトという相棒がいてくれるので本当の孤独ではない。
もし自分が、言葉も通じない異世界にたったひとりで落とされたら。
ふりかかる全ての困難を、自分だけの力で切りぬけていかなければならないとしたら、
それは、とても怖いことだ。
チャグムの場合は更に、皇太子であるという身分と、世界情勢がプラスされる。
それをたったひとりの少年が背負わなければならないのだ。
以降ネタばれ。
もしも自分が彼の立場だったとしたら。
考えただけで膝が震える。
シュガや多くの人のお蔭でなんとかあそこまで来られても
思わず父を詰ってしまうだろうし
結局行くだけで誰も助けられないかもしれない。
自分が行ったばかりに様々な人に迷惑をかけて
酷く落ち込むだろう。
舌を噛み切る勇気さえ持てないかもしれない。
もし新ヨゴ皇国のように、他国に攻め込まれ蹂躙されるとしたら。
これが個人の問題であれば、己の誇りをかけて戦うだろう。
たとえ賭けにもならぬほど無謀でも、降伏よりは戦うことを選ぶだろうと思う。
しかし、チャグムの場合はそんな簡単な話ではない。
彼の決定で、国民全ての命運が左右される。
多くの民がいればそれだけ意見も多く
立派に戦おうと思う者もいれば、征服されてでも生き延びたい者もいる。
それをまとめ、平和に導かねばならない。
なんという重荷なのだろうか。
もし私が、セナに「逃がしてやろうか」と言われて
「ありがとう
などと言えるだろうか。
言えると思いたいが、到底無理だと思う。
誰にも相談もせずに出来る限り良い方法を考え
捕虜の身で敵国の王子と渡り合い
海士たちを救い、選択の自由をやり、連れ帰り
ジンをもまた救い、託し
己は単身暗い海を着衣のまま泳いでいかねばならぬ。
無事ロタに辿り着いたとしても前途多難。
それでも、船を離れ海に飛び込むことが出来るだろうか。
若い。無謀な万に一つの賭けかもしれぬ。
しかし、とても尊い決断だ。
”奇跡というものがこの世にあるのなら、それをおこせるのは、ただ神にすがり、祈る者ではなく、こういう決断ができる者ではなかろうか。”
私も、ジンと同じ気持ちである。
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