上橋菜穂子のレビュー一覧
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まず感じたのは「香りって、こんなにも多くのことを伝えるのか」という驚きです。目に見えないけれど確かに存在する情報が、香りというかたちで伝わってくる世界。その繊細さと豊かさに圧倒されました。
物語が進むにつれて、香りによって読み取れる情報が、単なる気配や感情だけではなく、植生の変化や土地そのものの異変をも示していることが明らかになっていきます。そしてその変化がじわじわと、人知れず恐怖を連れてくる展開が凄いです。
一見すると小さな判断ミス、一つの思い込みや傲慢さが、やがて大きな破滅へとつながっていく。誰もが最初は「善意」で動いていたかもしれない。でも、知識への飢えや支配欲、目先の利益を優先する姿勢が、想像を超えた被害に結びついてしまう――その怖さが心に残りました。
現実の問題とも深く結びついていて、地球温暖化による生態系の変化や、遺伝子組み換え作物の安全性とリスク。私たちが日々直面している課題に通じていて考えさせられることが多かったです。
「気づいたときには手遅れ」なのか、最終巻が気になります。 -
Posted by ブクログ
「人にとっての利益だけを見てしまえば、万象が歪み、めぐりめぐって、人にもまた害が生じてしまう、そういう世界です」
「私に出来るのは、掛値なしの、ありのままの私で、人々と向き合うことだけです」
ファンタジーとは思えない現実味で迫ってくる物語が、本当に本当に最高。上橋菜穂子作品が改めて大好きだと自覚。
上橋菜穂子作品を夢中で読み進められる感性を持ち続けられていることがとても嬉しい。感謝感謝。
気候学者、自然地理学者など、専門家の意見も聞きながら執筆されたというのも納得。
近い将来、こういう食糧危機が起きるのではないかと不安にもなるけれど、あらゆる立場の人が協力できれば、経験や知恵を出し合って解決していけるという希望も見せてくれる。
読み終わった後、身の回りの世界が少し違って感じられる。 -
Posted by ブクログ
斎藤先生と上橋菜穂子さんの対談番組から、本にした児童書。
お二人の大ファンなので、いいおっさんが読んでみた。やっぱいい、二人になると倍!
素晴らしい!!
斎藤先生の言葉から
子供向けの本だと、生態系のピラミッドのてっぺんに人間が堂々と描かれてたりしますが、私はあの絵は間違っていると思う。ピラミッドのてっぺんどころか、もはやピラミッドから大きく外れてしまって、ピラミッドを丸ごと足蹴にして全部ぶっ壊すことができるくらい、人類は文明という強大な力を持つ「神」になってしまっている。それなのに自分たちがなにをしているのか気づきもせず、自覚もないまま、際限なく破壊を繰り返している。 -
Posted by ブクログ
嗚咽が止まらなかった。最後苦しくて苦しくて仕方ないけど、4冊を通してたくさんのことを学ばせてもらった気がする。人生のバイブル。
小学生の頃にアニメが大好きで小説を読んだけど、大人になって再読。感じ方がまた変わっていて、母になって読んだらまた違うと思う。
上橋菜穂子さんの綴る物語は質感がしっかりとしていて、本当にその人生を生きている感覚がする。ファコの香ばしい香りや闘蛇の甘い香り、人の表情や感情が体験しているかのように感じられる。本当にその国や人物が歴史として存在したんじゃないかと錯覚してしまうような物語です。
今も私の中には確実にエリン、イアル、ジェシ、エサル、ジョウン、その他の人々が生きていると感じる。それぞれの思いを持って生きていると信じられるような感覚がある。
全てをかけて獣を自由にしたいと願い、愛するものと平和に暮らしたいと願って懸命に生きたエリンの思いは、日々を大切に生きようと思わせてくれました。
こんな素敵な物語を残してくれて、上橋菜穂子さんには感謝の思いでいっぱいです。
・人は松明の火のように、少しずつ確実に何かを繋いでいく。その時は相手に伝わらないと思っていても、後々その言葉が生きてくることがある。伝えることに意味がある。
・掟や法則では測りきれない絆や愛が、獣の中にはあるということ(人間も獣の一部として)
・人は知って考えて考え抜くことが必要。分からないものを追い続けることが大切
・戦争はなくならないし、その果てに勝者も敗者もない
・なぜ言ってはいけないのか分かるようになるまで、言ってはいけないことがある
※ 余韻がすごいのでこのあとダラダラ続きます
生き物の生態に無邪気に目を輝かせていた少女時代のエリンが懐かしい、、、色々なことを知ったからこそ考えられる、それが素敵なことであり残酷なことであるなあと。
エンディングに関して、聡いエリンなら何が起こるか予測できていたはずでは?リランには音無し笛の耳栓をするべきだったのでは?もっと早くソヨンたちが忠告に来るべきで、そもそも霧の民の人々がもっと早く動くべきだったのでは?と納得がいきません笑
なんとかイアル、エリン、ジェシで幸せに暮らして欲しかった、、、束の間でも愛する人と結ばれて生活できたことが唯一の救いですが。
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Posted by ブクログ
ネタバレユグロの口のうまさが本当にすごい。そして、自分のことしか考えてない人の方が迷ったりせずハッキリと物事を言えるし進めるので周りの人は流されるんだろうなぁと思った。断定する人に人は騙されやすい。気をつけよう…。
そして、最後のお別れ。驚いたのは、「辛かった。それでもバルサを育てて幸せだった」みたいなことを告げずに、バルサを守るために友を殺さなければいけないことへの憎しみが伝わって怒りながら育ての親を刺した後、バルサが哀しみと共に寒い中自分を包んで守ってくれたことを思い出し、ジグロが消えてゆくという…。いい意味で予定調和ではなく、ただひたすら、「憎んでいた、それでも守り抜いた」というジグロの現実を置いて終わったこと。「幸せだった」「愛していた」という甘いコーティングをしなかったこと。凄まじい作品。