上橋菜穂子のレビュー一覧
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ネタバレオタワルの天才医師・ホッサルは、祭司医・真那に誘われた安房那にミラルと共に訪れる。東乎瑠帝国の次代皇帝の座を巡る政争に根深く絡むオタワル医術と清心教医術の確執。異国の地でホッサルが遭遇する事件とは…。「鹿の王」の続編。
ホッサル推しへの供給本。
これはまさにホッサルファンブックです、本当にありがとうございます。「鹿の王」の続編で、ヴァンとユナのその後ではなく、ホッサルとミラルのその後を描いてくれて本当に嬉しかった。冒頭のミラルと真那の親密そうな様子に嫉妬して拗ねるホッサルに、にやにやが止まらなかった。それをまた母のように見守るマコウカンもまた良し。ああ、本当に供給過多。感謝の意で溺れそう。
いつもレビューは、意図的に段落を分けて、良いことも悪いことも様々な内容を書こうと思っているのだが、思い浮かぶのはホッサルの小話ばかり。むしろ、この段落の内容でレビューそのものが埋め尽くされてしまう程に、心に残ったホッサルのシーンしか語りたいことがない。脳内は、ホッサルの写真集状態。
とはいえ、さすがの世界観。
ファンタジー世界の中での医療を見事に描ききっている。今回は、そこに白い巨塔もかくやという医療抗争も加わって、より深みのある構造となっている。地名、人名、決してシンプルでないのに、全く置いていかれない。どことは特定できないが、随所に細やかな配慮があるのだろう。「鹿の王」より、気持ちルビが多いかも。
ホッサルとミラルの結婚式くらいまでやるかと思った。
それは期待しすぎか。ミラルが乎来那学堂に進んだという。本当に芯の強いしっかりした女性だ。ホッサルによりかかることなく、我が道を邁進し続ける。二人のゴールインをちゃんと見届けたかったが、ほのめかしはあったので、あとはホッサルの決心に期待だ。がんばれホッサル。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろすぎて3日で全巻読破した!
神郷オアレマヅラが謎に包まれたまま終わってしまい、まあそうだよね〜と思いつつ、同じ世界線ではなく異世界の扉が開かれて、香君やオアレ稲はもたらされたのではないか…と妄想が止まらない。
香りから自然の摂理を色々知れるのも面白いし、政治的な側面も読み応えがある。
そして一つのことに依存する恐ろしさも改めて感じた。
人間が自分たちの力で道を切り拓いていく大切さも。
そして何より登場人物がみんな良い。
それぞれの思惑があって対立することがあっても、どちらか一方が悪者には見えない。
それぞれの信念が理解できる。
アイシャ、オリエ、マシュウにもまた会いたい。 -
Posted by ブクログ
名作『鹿の王』の後日譚。
ただし、ヴァンとユナはいっさい登場しない。『鹿の王』のもう一人の主人公のような立ち位置のホッサルの物語であり、わたしにとっては気になる存在だったミラルの物語だ。
とにかくミラルがかっこいい。今回は、少し情けないホッサルとの対比も鮮やかで、ミラルの魅力が全面に出ている。むしろ、本作の主役はミラルと言ってもいいかもそれない。
副題の「水底の橋」も秀逸。『鹿の王』は、そのいわれを作品中で語られ、作品の内容をストレートに表現していたけど、これと比べると「水底の橋」は少しわかりづらいかも?
水底の橋とは、今でも高知辺りでよく見かける沈下橋のこと。大水に流されない頑丈な橋……ではなく、言ってみれば大水を「やり過ごす」ことで被害を最小限にとどめようという知恵から生まれた橋だ。作品自体は災害の話ではない。それでも、この副題の意味するところを考えると、作者の考えの深さに思わずうなる。
ヴァンとユナの後日譚も知りたい!
けれど、この作品を読むことができて良かった。 -
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久しぶりにファンタジーでも読むかと思い、上巻を購入したのが15年くらい前。そのまま本棚に突っ込んでいたのを、急に読もうかという気になって引っ張り出して来ましたが、この年でいまさらファンタジーというのもあれかなと思いましたが、面白かったです。
まず章立てがちょうどいい長さにまとめられていて、入浴中に読むとちょうどアニメ1話分くらいの読後感で、読みやすかったです。またファンタジーとはいえ、いろんな要素が現実世界のリアリティラインから外さず、その辺も読みやすさの一因なのかなと思いました。
闘蛇と王獣、真王と大公の関係が、ちょうど日本とアメリカ、または国内の天皇制、核の問題などが読み取れて、その辺はちょっと大人向きを感じる要素かなと思いました。
ただ、あとがきを読んでみると、王獣編までをわずか3か月で書ききったとのことで、そういう要素を織り込もうとして織り込んだわけでなく、手近にあるテーマを引っ張ってきたらたまたまそうなったのかなという印象でした。
エリン中心に物語を引っ張っていくので分かりやすいのですが、ジョウンやユーヤン、イアルなどがあっさり退場していったのがちょっと物足りなかったかなと思いました。続刊で、その辺が深堀されることを期待してもいいのでしょうか? -
Posted by ブクログ
「鹿の王」のスピンオフで、主人公はオタワル医術師のホッサルと彼の恋人で助手でもあるミラウ。
医術の2つの流派をめぐる政争や、治療の是非、生きるとは何かということが書かれていて、いつもながらいろいろ考えさせられながら読みました。
この作品は上橋氏には珍しく恋愛部分の比重が大きくて、こんなのも書くんだと驚かされました。最後は氏の粋な計らいがあって思わずニンマリ。
私は上橋氏の自然描写が好きで、特に好きな一節がこちら。
「屋敷の中は静かで、ただ屋根を打つ小雨の音だけが聞こえている。」
これを読んだとき、屋根を打つ雨音だけでなく、雨と草の匂い、部屋の暗さなどが急に私の周りを取り囲み、一瞬にして別世界に連れて行かれました。
やっぱり上橋氏の作品はいいですね。