上橋菜穂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
堪えていたものがグググっと込み上げてラストのシーンでは涙が溢れた。
獣と少女が必死に通わせた心の軌跡の物語でもあり、愚かさを繰り返す人間の物語でもあり。
戦争映画を見ているような気分にもなった。
後半になるに連れて目が離せなくなって行く。
主人公のエリンとリランを小さな頃から見守って来た読者にとっては、胸が痛いシーンの連続であったりもした。
どのシーンでも悔しさと怒りと虚しさが入り混じっていて苦しくなった時が多かった。
それがラストのシーンでは救われたような、だけど「人間は愚かでごめんなぁ!泣」と叫びたくなるような胸熱シーンに心奪われた。
これで完結と言っていた作者の気持ちもわかる。
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Posted by ブクログ
この外伝が読めて本当に良かった
本編では語られなかったエリンとイアルの馴れ初めも嬉しかったし、エサル師の若い頃もよかった
あの経験をしているからこそのエサル師の考え方があるんだなぁとしみじみ思う
1番嬉しかったのはソヨンとエリンの話
本編でのソヨンはエリンにだけじゃなくすべてのものに対して淡々としており、エリンに愛はあるんだけどどこか血が通っていないというか…冷めたイメージが拭えなかったのだけど、今回の短編を読んですごく嬉しくなった
私にとってこの話も外伝自体も〈余分な一滴〉ではなく、必要なものだった
この外伝を読んだからこそ本編での違和感や理解できなかった心情なんかもスッと胸に入ってきたので -
Posted by ブクログ
ネタバレ闘蛇編、王獣編が完璧すぎる世界観だったけどこれはさらに上を行くかもしれない
今回は前作から10年ほどすぎエリンはイアルと結婚し、息子のジェシが生まれている
国も真王と大公が結婚しており、様々な変化があった
王獣リランもその後さらに子を産んだようで平和な日々が続いているようだった
だけど闘蛇村の一つで牙が大量死する事件が起き調べるよう命がエリンに下ったところから物語は加速を増していく
ある事からエリンが闘蛇を操れる事がバレてしまう
いよいよ、想像していた最悪の状況となる…
イアルとエリン全て話さずとも何を考えているのか理解しているところは、強い絆で結ばれてるんだなぁと読む度に思う
王獣軍を作らな -
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Posted by ブクログ
ネタバレここまで洗練され完璧な世界観に浸れたことが嬉しすぎて改めて作者さんの文才の凄さとこの物語を作品として世に出してくれた事に感謝
今回はエリンが人間の汚い部分に触れ大人へと成長していく
リアンとの絆を履き違えてはいけない
エサルの助言の意味をある事件をきっかけに痛感するエリン
自分の理想と現実は違うのだと理解し、絶望するもそれでも自分のしたことの重大さを受け入れ覚悟する姿はかっこいい
段々と過去に何があったのか、王獣規範の本当の意味が明かされる
過去の人々の願いは時代が移ろう中で少しずつ忘れ去られていき、過ちが繰り返されるのもまた人間の性なんだろうなぁと思うと虚しくなると同時にだからといってどう -
Posted by ブクログ
小学生の自分が1番好きだった本。
追われるようにページをめくって、胸が高鳴った幼い日々を、今もよく覚えている。
10年以上ぶりに読み返すことには勇気を要したけれど、全くの杞憂だった。
なんなら、上橋菜穂子さんの描くファンタジーが、児童文学の域を保ちつつ、広がる世界の広さが想像力の限界を試しに来る、この心地の良さが今も自分の中にあることを再確認しただけ。それだけで、涙が出るくらい嬉しかった。
なんて優しくてあたたかくて、切ない気持ちに
させてくれるお話なのだろう。
ともすればややこしい領地争いや人間関係を、易しすぎる言葉も使わずにこれ程上手く伝えられるのは、もう本当に上橋先生ならではだと思う -
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Posted by ブクログ
ネタバレエリンの息子ジェシは、母が王獣の訓練をする姿を見たいがために立ち入りを禁止されていた森にこっそりと入って盗み見をしていた。エリンや護衛兵たちはそのことに気がついていたが、母と過ごす時間の少なかった幼いジェシを思うと、注意もしづらく、黙認していた。
ある日、その森の中からジェシの悲鳴が聞こえる。慌てて悲鳴の方へとエリンが走ると、大量の火蟻に身体中を噛まれ悶えるジェシの姿があった。一命を取り留めた息子を連れて、火蟻に襲われた森へとエリンは向かい、森の生き物たちの危険について、生態について、ジェシに話して聞かせる。
狂乱する闘蛇と王獣を止め、死ぬ、エリンの最期も心に残った。それでも、この物語の中で -
Posted by ブクログ
ネタバレ子供の頃からずっと読んできた作品。本棚を片付けたら、獣の奏者が出てきて、久々に読んでみた。
やはり、上橋菜穂子先生の作品は描写が美しい。例えば、「湖畔にすくっと立つサロウの大樹が、満開の時を迎えていた。湖に張り出した枝にびっしりと咲いている白い綿毛のような花が、朝の光を浴びて、ちらちらと輝いている」。自分の目の前に大樹が聳え立つ湖があって、白い花が光り輝いているように感じられる。自分が獣の奏者の世界に入り込んだような感覚になる。
大人になってから読むと、子供の頃とは違う目線で物語を見ていた。子供の頃はエリンに感情移入をして、母と別れる辛さを思い涙していた。しかし、今はソヨンが骨に刻むよう