上橋菜穂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本を初めて手に取ったのは、まだ単行本で出版されたばかりの頃だった。
けれど、そのとき私は買わなかった。
当時の私は「本を買う」という行為に満足してしまっていて、
その先にある「読む喜び」を見失っていたからだ。
だからこそ、上橋菜穂子さんの本をそんな自分の手で扱うことが、
どこか申し訳なく思えたのだと思う。
あれから数年がたち、
もう一度「物語」に触れたいという想いが静かに胸に芽生えた。
そのとき自然と思い出したのが、この『香君』だった。
――物語の幕開けは、追われる少女の姿から始まる。
アイシャ。旧藩王の血筋を理由に命を狙われ、捕らえられた少女。
彼女を救ったのは、利用価値を見出した男マシュウだった。
マシュウの親族を名乗り、庭園に身を寄せたアイシャは、
そこで現香君・オリエと出会う。
やがて心を許し、庭園での苦しみを打ち明け、
オリエと共に山荘で日々を過ごすことになる。
一方で、オアレ稲の問題が動き出す。
初代香君の思想を探るカシュガ家の姿が描かれ、
物語は少しずつ、香君という名の重さを浮かび上がらせていく。
その中で、心に深く残った言葉がある。
草木の植え替えをしたアイシャに向けて、オリエが言う。
「ここで暮らすことは、草木にとってだけでなく、あなたにも残酷なことね。」
その一言に、私は胸を打たれた。
「感じる力があるということは、苦しさとも共に生きること」――
そう思っていたアイシャに、
オリエはそっと「生きやすい場所を選んでもいい」と伝える。
その言葉の中に、柔らかな優しさと、生き方の自由が感じられた。
けれど同時に、私は思う。
その優しさは、オリエ自身が“香君”という重い立場から逃れ、
穏やかな時間を与えられていることと無縁ではないのではないか、と。
オリエはアイシャが本当の香君であると知っていたのか。
それとも、マシュウの面影を重ねていたのか。
時間が彼女たちの想いを引き継いでいるのかもしれない。
今の私は、オリエの優しさをただの「優しさ」として受け取れない。
どこかで疑い、ためらう自分がいる。
それはきっと、私自身が人の心を疑うことを覚えてしまったからだろう。
それでも、オリエの言葉が純粋な慈しみであることを信じたい。
その思いを胸に、
私は次の巻へと静かにページをめくっていこうと思う。 -
Posted by ブクログ
兄にとってのベストオブ・ファンタジーが「2分間の冒険」なら私にとってのベストはこの本「狐笛のかなた」
繰り返し読んできたお気に入りの一冊だ。
世界観の描写が自然の細部まで繊細に表現され、呪いと憎しみが渦巻く物語なのに、出てくる風景はどこか柔らかく、美しい。
命を救われた時小夜の温かさを胸に、一途に小夜を見守り続けてきた野火と、その想いに触れ、野火を守りたい小夜。
見返りも求めずに、ただ小夜を守りたいと命をかける野火の姿に本当に切なくなる。
そして覚悟を決め、迷いが消えたの野火の端々に出てくる、小夜と居る時だけの年齢相応の表情や所作にキュンとくる。
誰しもにとって完璧なハッピーエンドではないが、「共に生きる」二人だけの道を見つけた野火と小夜が長く幸せに生きていければいいと思う。
愛し、慈しむことの美しさと切なさに溢れる、この本が大好きだ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ人と王獣。本来結ばれないはずだった絆をエリンが結んでしまったことでこんな哀しい展開を迎えるなんて…
獣のことを、リランのことを、知りたくて知りたくて走り続けて、いつか野に解き放ってあげたくて試行錯誤してきたはずなのに、その結果戦の武器にせざるを得なくなるなんて、本当に人間はなんて醜く愚かで哀れなんだろうかと心底思う…
でもエリンが言っていたように「人は殺し合いをすることで均衡を保とうとする獣」であるなら、それが人を人たらしめる所以なんだろうなとも思う。
戦争は良くないと言いつつも、時が経てばまた争いの火種が生まれて同じことを繰り返す。
自分たち人間が醜く愚かな生き物だってわかってるから、そうじゃない動物たちを愛でたり慈しんだりする心が生まれるのかな…
エリンの、そしてリランとその子供たちの最期はとても辛くて悲しくてショックだったけど、その後の王獣たちは野に解き放たれて人間の戦の道具にされることがなくなったのは良かった…
素晴らしい物語でした✨
子供の頃にぜひとも読みたかった…!(T-T) -
Posted by ブクログ
めっちゃおもしろかった。
サラサラサラ〜っと読めた。
気づいたらもう残りわずかで。
『精霊の守り人』もおもしろかったけど、その数倍おもしろかった。
死んだジグロ(ヒョウル)と冒頭から槍で舞うシーンが好き。
ヒョウルの正体はその冒頭から分かってはいたけど、『山の王』や『最後の扉』が気になり過ぎて最後まで飽きなかった!
ヒョウルの存在意義がすごいよくできてる。
国を守るため、また世代交代というか、きちんと弔われることもいい。
『オコジョを駆る狩人』、や『牧童』という不思議な存在にもわくわくしたし、洞窟の中の深い川や儀式などの神秘的なところも印象的。 -
Posted by ブクログ
上橋菜穂子の守り人シリーズは とても好きな話しです。
随分と久しぶりに 読みました。
若い時のバルサとジグロ
若い時の私には わからなかったジグロの愛情
無骨な武人だったジグロ 若い娘に 優しい言葉なんかかけられなかったんでしょうね。
サリの娘 エオナは ジグロの娘かもしれません。
もし そうだったら ジグロにも娘がいたんだ!
よかったなあ!
そして物語の最後には バルサにも 帰るところ
タンダの家が あります。
自分をわかってくれる人が待っていてくれる
というのは 幸せですね。
戦い 怪我 策略のシーンが続く中 穏やかな終わり方が あったかい気持ちになります。
上橋さんの書く食べ物も 美味しそうです。
女の子たちが 必死で 一生懸命 力をつくして生きていく話しです。