上橋菜穂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本を初めて手に取ったのは、まだ単行本で出版されたばかりの頃だった。
けれど、そのとき私は買わなかった。
当時の私は「本を買う」という行為に満足してしまっていて、
その先にある「読む喜び」を見失っていたからだ。
だからこそ、上橋菜穂子さんの本をそんな自分の手で扱うことが、
どこか申し訳なく思えたのだと思う。
あれから数年がたち、
もう一度「物語」に触れたいという想いが静かに胸に芽生えた。
そのとき自然と思い出したのが、この『香君』だった。
――物語の幕開けは、追われる少女の姿から始まる。
アイシャ。旧藩王の血筋を理由に命を狙われ、捕らえられた少女。
彼女を救ったのは、利用価値を見出した男 -
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Posted by ブクログ
兄にとってのベストオブ・ファンタジーが「2分間の冒険」なら私にとってのベストはこの本「狐笛のかなた」
繰り返し読んできたお気に入りの一冊だ。
世界観の描写が自然の細部まで繊細に表現され、呪いと憎しみが渦巻く物語なのに、出てくる風景はどこか柔らかく、美しい。
命を救われた時小夜の温かさを胸に、一途に小夜を見守り続けてきた野火と、その想いに触れ、野火を守りたい小夜。
見返りも求めずに、ただ小夜を守りたいと命をかける野火の姿に本当に切なくなる。
そして覚悟を決め、迷いが消えたの野火の端々に出てくる、小夜と居る時だけの年齢相応の表情や所作にキュンとくる。
誰しもにとって完璧なハッピーエンドではな -
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Posted by ブクログ
圧倒的に上質なファンタジーを読んだ、読ませていただきました。最高...。
生きること、生かすこと、病の不条理、生命の神秘を、ときに国と国、民族と民族の対立や共生として壮大に、ときに細胞一つひとつの働きとして緻密に描いた物語。
4巻目の解説にもあるが、本書の1番の魅力は、ファンタジーといっても根本的解決の手段を魔法や超常現象に頼らない点。人々や動物が懸命に生きようともがく姿が、または上橋さんが丁寧に描き出す湿った草木の匂いや、部屋に差し込む光の淡い色などの風景が、何か現実世界の延長のような感覚で自身を異世界に投影してくれる。
生きることだけでなく、死ぬこともまた、生き物の身体には、その生のは -
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Posted by ブクログ
ネタバレ人と王獣。本来結ばれないはずだった絆をエリンが結んでしまったことでこんな哀しい展開を迎えるなんて…
獣のことを、リランのことを、知りたくて知りたくて走り続けて、いつか野に解き放ってあげたくて試行錯誤してきたはずなのに、その結果戦の武器にせざるを得なくなるなんて、本当に人間はなんて醜く愚かで哀れなんだろうかと心底思う…
でもエリンが言っていたように「人は殺し合いをすることで均衡を保とうとする獣」であるなら、それが人を人たらしめる所以なんだろうなとも思う。
戦争は良くないと言いつつも、時が経てばまた争いの火種が生まれて同じことを繰り返す。
自分たち人間が醜く愚かな生き物だってわかってるから、そうじ -
Posted by ブクログ
めっちゃおもしろかった。
サラサラサラ〜っと読めた。
気づいたらもう残りわずかで。
『精霊の守り人』もおもしろかったけど、その数倍おもしろかった。
死んだジグロ(ヒョウル)と冒頭から槍で舞うシーンが好き。
ヒョウルの正体はその冒頭から分かってはいたけど、『山の王』や『最後の扉』が気になり過ぎて最後まで飽きなかった!
ヒョウルの存在意義がすごいよくできてる。
国を守るため、また世代交代というか、きちんと弔われることもいい。
『オコジョを駆る狩人』、や『牧童』という不思議な存在にもわくわくしたし、洞窟の中の深い川や儀式などの神秘的なところも印象的。