あらすじ
ついに生き残った男――ヴァンと対面したホッサルは、人類を脅かす病のある秘密に気づく。一方、火馬の民のオーファンは故郷をとり戻すために最後の勝負をしかけていた。生命を巡る壮大な冒険小説、完結!
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なんとも壮大な世界観で、しっかりと作り込まれた物語性の高くて深淵さをも感じる小説であった。
本屋大賞をも受賞したというのも頷けるものである。
さて最終巻であるが、まさに故郷を失った火馬の民オーファンらの、巧妙な計画で東乎瑠への復讐を、ヴァンが防ぐために、まさに彼が唱える「鹿の王」とも言える行動をとる。
「飛鹿の群れの中には、群れが危機に陥ったとき、己の命を張って群れを逃がす鹿が現れる、群れを支配する者、という意味ではなく、本当の意味で群れの存続を支える尊むべき者」が、鹿の王とのことであれば、まさに、ヴァンはその行動をとることになるのであるが、ここでこの小説が医療にも根源を求めている小説であることからも、この一言は単に表題をさすものでなく、全体を通じて流れるテーマそのものであり、生き物それ自身が成している、身体のどこかで生き死にを繰り返している流動的かつ神秘的に行われているであろうことをも内包しているように思える。
また最後にホッサルが思った
「そうだ。・・・・・・あの男はもう、独角じゃない」
という言葉から、単にヴァンは戦士の頭領という意味あいというものでなく、新たに全く異なった、人としての、家族としての繋がりを得て、まさにヴァンは「独」ではないのであろう。
これ程までに織り込まれた小説に出会えたことに感謝である。
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最終巻。半日で読み終えてしまった。
国によって異なる医療の在り方があって、文化や暮らしがあって、その中で自分たちの暮らしを手放さざるを得なくなった人々。
全ては思い通りにはいかないし、最善だと考えて行動していても、それが個人の死によって成り立っていては意味がないのでは、と思う。
だけどその中でも人が人を想う気持ちがきらきら光って希望のように思える、そんなお話でした。
素晴らしかった、超現実的なファンタジーだったなぁ。
微生物によって支えられている身体は、国や土地そのもので、人と自然は繋がっていることを改めて感じました。
血縁も、一緒に暮らすことでできる絆も、今隣にいてくれる愛猫の尊さも、全てひっくるめて大切だ。
なんだかいい大晦日。
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圧倒的に上質なファンタジーを読んだ、読ませていただきました。最高...。
生きること、生かすこと、病の不条理、生命の神秘を、ときに国と国、民族と民族の対立や共生として壮大に、ときに細胞一つひとつの働きとして緻密に描いた物語。
4巻目の解説にもあるが、本書の1番の魅力は、ファンタジーといっても根本的解決の手段を魔法や超常現象に頼らない点。人々や動物が懸命に生きようともがく姿が、または上橋さんが丁寧に描き出す湿った草木の匂いや、部屋に差し込む光の淡い色などの風景が、何か現実世界の延長のような感覚で自身を異世界に投影してくれる。
生きることだけでなく、死ぬこともまた、生き物の身体には、その生のはじめから仕込まれている──
それでも祖国が消えることは、この世に生まれた、たったひとつの形である私が消えることは、哀しいものですよ──
身体の中で起きていることは効率的な生と死の循環であるにもかかわらず、その働きを司っているはずの脳では哀しいと感じでしまうのは、なんとも不思議だなぁ、と思う。
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トマたちは家族だ。
だからこそ、ユナの「あ、にぃちゃ!にぃちゃだ」のところは泣ける。
そして最後も家族としての信頼関係があるから悲壮感が無い。
ああ、ユナたちの続きが読みたい。
でも現時点で無いんだよなぁ。
ミラルたちの話はあるみたいだから、そっちを読もうと思う。
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人体というミクロコスモスと宇宙というマクロコスモス。体の中にいる細菌達のことを見ることは出来ないけれど、自分の身体を一つの国や世界、はては宇宙だと感じることは日々の瞑想中にぼんやりと感じていました。
鹿の王はそんな自分の感覚を分かりやすく言語化してくれた、きっとこの後の人生でも何度も思い返す物語だと思います。非常に面白かったです。
Posted by ブクログ
複雑な糸が解け、全てがつながり、その先にはとにかくあたたかい愛があった。
病、生命という壮大なテーマで、物語のスケールも壮大だったけれど、読み終わった後は不思議と重くならず、しかしタイトルの鹿の王の意味の深さをじっくり味わいながらも爽やさと、切なさ、悲しさ、そして愛情で胸いっぱいになった。
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とうとう長い旅が終わってしまいました。いや、これからも続いていくのでしょう。
私としては寂しい終わりでしたが、ヴァンにとってはやっとゴール?役割?を見つけたということなのでしょうか。
物語を通して、「人は自分の身体の内側で何が起きているのか知ることができない」「人の身体は、細菌やウィルスやらが、日々共生したり葛藤したりしている場でもある」ということを改めて意識しました。
しかもそれを人の社会とも似ているという視点に目から鱗です!
確かに!と思いました。
身体の内部も、人の社会もお互いが影響し合って動いていますもんねー
それにしても、そこからこのファンタジーを生み出すっていう発想がすごいです(°▽°)
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タイトルの鹿の王の意味合いは何度か提示されてきたけれど、こんな結末になるとは思わなかった。次の「水底の橋」で匂わせてくれないかなぁと淡い期待を持って続けて読んでしまおう。
家族や氏族、根付いた土地が絶対的な世界で、血の繋がりのないヴァンやユナが家族として受け入れられていくのは象徴的だし、医師たちの100%純粋ではない職業的探究心みたいなものを垣間見れたのも興味深かった。
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ここまでくると、キャラ一人一人が好き過ぎて、完結しないでくれ、という願いが強く、読み進めも牛歩になる。壮大なテーマなので、ナウシカ以上の映画になる期待してしまうが、映像化はしないでほしい願望が勝つ。とにかく面白かった。
Posted by ブクログ
3でよくわからなかった事情が4で整理された。
ファンタジーのジャンルだが、魔法の力で問題は解決しない。架空の世界で起きている出来事というだけで、内容は現実的である。
↓
以下ネタバレです
森へ入ってしまったヴァンを、ユナたちが探しに行くことが、唯一の希望。
ただ、意識障害(裏返る)が起こった直後にサエと出会うが「触れたら犬に戻れない(?)」とヴァンが感じたことが心配。だからユナ達に会えても、一緒に帰ることを拒否しそう。森の中でユナたちがヴァンを見つけても、もうそれはあのヴァンではなくなっているのではないか?黒狼病ウィルスによって引き起こされた意識障害と、まだ治っていない怪我のせいでヴァンの命が危ない。ヴァンは不思議な力で犬を導いているのではなく、ヴァンはただ「犬に好かれる人」「動物の心に寄り添えるのが上手な人」。
作中に出てくる抽象的な表現を言葉そのまま受け取って読んだらそれはそれで面白いファンタジーになるとは思う。しかし私は違う。
1から4まで読んで、作品の中に「神」だの「呪い」だの宗教的な言葉が出てきて
それで解決されたらただのおとぎ話じゃんか、と思っていた。しかしそれぞれに説明がついた。著者さんは文章の中でそのヒントをくれている。それに気づいた私はラッキーだ。そしてその事がこの作品のいいところだと思う。私は今まで宗教的な表現を受け入れるのが難しかった。でもそれだと面白みのない人間と思われやしないか?と思っていて最近の葛藤だった。しかしこの本を読んで、これからは他者や物語の中で宗教的な表現を使っても自分なりにそれらを現実の言葉で消化できるようになったと思う。それが今回の1番の学び。
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ついに、最終巻を読み終えた。
ファンタジー物を読みたいと思い、手を取ったのが始まりで、その期待を裏切らない緑と光に溢れた綺麗な世界観だった。その中で、人々の営みや、病に対する医学の対処が面白かった。
人間の体の中で、全体の生命を維持し続けるために、活動する器官や菌、全体の生命のためなら、縮小、絶滅も起こりうる。
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様々な種族か登場し、種族間の争い・葛藤が繰り広げられるが、最後に森に消えたヴァンをまた様々な種族の者が彼を追って森に入る。最後は読者に想像させる終わり方だが、彼らがおそらくは幸せに暮らしたであろうと思うとともに、この世界も同様に種族同士が手を取り合い、発展していくことを予感させる。
ヴァンはまさに「鹿の王」と呼ぶにふさわしい。
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読み終わった!
世界観素晴らしいしずっと楽しく読めるんだけど、前半の医学知識部分が現代人からすると当たり前すぎて冗長に思えてしまった。
ハッピーエンドでよかった。
Posted by ブクログ
「人はなぜ病み、なぜ治る者と治らぬ者がいるのか」…答を探す医術師。大国に併呑された小国の民族に、同化して生き延びるものとそれが出来ずに滅ぶものがあるように。個と全の共鳴、命を巡る壮大な構図と、人の絆の暖かさ。物語の深さに嘆息。
「鹿の王」(2014)上橋菜穂子
#読書好きな人と繋がりたい
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面白い!医療小説としてのリアリティもあり、現実的なファンタジーだった。
4巻は特に展開も大きくとても満足したが、鹿の王全体で見ると3巻あたりの中弛みもあり、総合すると星4つかなという印象。
Posted by ブクログ
「鹿の王」が本当は何を意味するのか。
どうしようもなく切ない。
だけど、それを理解し、心から感謝し、慕うものは確実にいる。
その後を読者に想像させる終わり方は、悲しみの中に唯一存在する希望のようだった。
Posted by ブクログ
本書は壮大な医療ファンタジー。医療の原点と進歩について考えさせられる内容であった。身近で大切な人と毎日楽しく生きたい、という素朴な想いを誰しもが持っているはずなのに、いつしか自分の地位や見栄や欲望をまとい傲慢になってしまうのが人間。人間以外の生物、鹿や犬、ウミウシやウイルスの生き方から、改めて生きるとはどうゆうことか、大切なのものは何かを諭された。
Posted by ブクログ
心に残った言葉。
ある種の暗い諦観を常に心に持ちながら、それでも、絶望したり、放り投げたりせずに、ひたすら患者に向き合い続ける医師たちが、医学をここまで連れてきたのだろう、と思うようになった。
人の生命、生きることの意味を問われたような気がする。
Posted by ブクログ
なんて壮大で心奪われる物語なんだろう。気になっていたけど予備知識なしで読み始め3巻まで一気読み。
今出会えたからよかったのかも。
4巻では政治的な問題も孕んで悲しい展開に
謎の疫病
現代の世界で起きているいろんな悲しい出来事を予見していたかのような物語で、悲しみや恐ろしさと今、目の前で起こっているような感覚から、世界に引き込まれていった。
2015年本屋大賞受賞作
ファンタジー作品では初だそう
Posted by ブクログ
20240512
1冊目を読み進めた時にはこんなに壮大な物語だったなんて思いもしなかった。毎度ドキドキハラハラさせられ、まるでマンガを読んでいるような展開。また、さすが日本医師会の日本医療小説大賞を受賞した作品。病のメカニズムや新薬開発のバックグラウンドが非常にリアルに描写されていた。
剣も矢も人を殺すことには変わりはない。ただ病は人を選ばない。一旦広まれば止めようもなく何の関わりもない人を殺していく。
生き物は皆、病の種を身に潜ませて生きている。そいつに負けなければ生きていられるが、負ければ死ぬ。
当たり前のことだけど、自然の節理、そんな中でも人が大切にすること、したいことは何かを気付かされた一冊だった。
Posted by ブクログ
相変わらず通勤電車の中で読むんだけど、1冊はページ数も少なく軽いので持ち運びには苦労しなかった。
やはり単行本より文庫本を読むのが正解だな、っていう前置きは置いておいて、本屋大賞を受賞してる作品なんだよね。
久し振りのファンタジー小説で面白かった。
1巻目は面白くて読むのが勿体無いと思う程で、独特の地名や民族名、名前を覚えるのに苦労したけど、この独特さも非現実的なファンタジーとして良かった。
民族間での争いはやはり強いものは強く、大逆転なんてありえないけど、どこかでこの無念さを晴らす出来事は読んでみたかった…侵略者相手だからね。
犬と深い森に入ったヴァンの後を追う者達も気になるが、争いの元が去った今は続編はないんだろう。
でも、犬に噛まれて感染する症状や抗体の話はまるである意味コロナと似ており、発刊されたのが2014年なのにこの近似感を思ったことに驚いた。
Posted by ブクログ
歴戦の勇士、全体を統べるのではなく、全体を生かすために戦う者、鹿の王。病に罹る者、罹らぬ者、病から治る者、治らぬ者。その違いは何か。思想的な問答が続く前半。それぞれがそれぞれの思惑で動き、陰謀と策略、大展開が待つ後半。ヒーローはヴァン、ヒロインはサエ。ホッサルもいい働きをし、ミラルもそれを助ける。国と民と家族。すべてを丸く治めるエンディング。最終巻がよかった。
Posted by ブクログ
鹿の王4。シリーズ全体を通して、ウイルスに対抗するための医学の裏側を覗くことができたような気がします。現実でもコロナウイルスの蔓延が記憶に新しいですが、現実と物語がリンクして、より味わい深く感じた。物語としては含みを持たせるような終わり方で、ヴァンと無事に出会いたの気になります。タイトルの「鹿の王」とは、自身の命をなげうっても仲間のために行動できる者であり、それをけっして美化していない部分が印象深かったです。
Posted by ブクログ
2014年刊行。
上橋奈穂子の長篇ファンタジー。
2015年の本屋大賞、日本医療小説大賞を受賞。
舞台は東乎瑠(ツォル)帝国に支配された地・アカファ。
アカファ内トガ山地の氏族出身で、故郷を守るための精鋭部隊「独角」のリーダーであったヴァンは、東乎瑠軍との戦争に敗北した後、アカファ岩塩鉱で奴隷として働かされていた。
ある晩、謎の獣の群れが岩塩鉱を襲撃し、人々を次々と噛んでいった。その後、岩塩鉱で謎の病気が流行し、ヴァン一人だけが生き残る。
ヴァンは、岩塩鉱から逃亡を図り、その途中で同じく生き残った幼子のユナと出会う。彼はユナを連れて逃亡を続けることを決める。
一方、オタワル人の天才医術師ホッサルは、岩塩鉱で発生した謎の病の噂を聞きつけて、調査を開始する。
ホッサルは調査の結果、この病が250年前にオタワル王国を滅ぼした「黒狼病(ミッツアル)」である可能性に気づき、これに有効なワクチンの開発に着手する。
本作は、ヴァンとホッサルを主人公として、主に彼らの視点を切り替えながらストーリーが進行する。
文庫版で四巻にまたがる長編であり、作り込まれた世界と設定が特徴的。
ストーリーの主軸は「黒狼病」の謎と、アカファ内の陰謀を明らかにすることであるが、そこにこの色々な要素が複雑に絡み合い、重厚な物語となっている。
例えば、オタワルは250年前に滅んだ王国でありながら、医術や工学などの先進的な技術をもっているため、東乎瑠の支配下にありながら特権的な立場を与えられていた。
医術に関しても東乎瑠より圧倒的に進んでいるが、東乎瑠では「清心教医術」が権力を持っており、ワクチンや血清などの「不浄な」治療を行うオタワル医術を目の敵にしていた。
このような、かつてから存在していたこの世界における、ある種の「歪み」がストーリーに絡み合うことで、本作を奥深しいものにしている。
全体的に固有名詞が多いので、世界観に入り込むまでに少し時間は掛かるが、クセは少ないので、集中して読めば問題なく理解できる。
非常によく纏まっているし、面白かったのだが、個人的にはあまり嵌ることができなかった。
何故かを考えてみた。
本作は上品に、うまく纏まっているのだが、そこに作者の思想やこだわりをあまり感じなかった。
個人的には、作者の偏った思想や思考、病的なこだわりや偏執的エネルギアを感じる作品の方が好きなのだと。それらを本作に見いだせなかったから、物足りなさを感じたのではないかと思った。
その意味では、外伝の方が好みだった。
本作は面白い。しかしそれは、暇つぶし、エンタテインメント的な面白さであり、それは私が求めている読書体験とは方向性が異なる。
私は、フィクションを経由して得ることができる、日常生活では手に入らない「何か」を求めているのだ。
皮肉にも、それを気づかせてくれた小説だった。
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最終巻。ヴァン軸とホッサル軸が合わさって進んでいく。勢力の関係図が複雑でちょっと難しい。ラストがかなり解釈や想像の余地を残す描き方で、私としてはスッキリしなかった。きちんと決着まで描いてほしかった。
Posted by ブクログ
かつて人と獣が共に生きる地を描いた小説『鹿の王』。上橋菜穂子が紡いだ物語は感染症と闘う人々の姿を通じて命の重さを問う。主人公は愛する者を守るため必死に抗いその歩みは読者に「生きるとは何か」を突きつける。文明が進んでも病や災禍は人間を試す。だが互いを思いやる心があれば困難も越えられると教えてくれる。疫病の記憶が新しい今だからこそこの物語の響きは深い。結局強さとは孤立にあらずつながりにあるのだ。
Posted by ブクログ
うたわれるものに近い作品だった。病魔との戦い、部族との戦い、未知の獣との戦い、そして神となり世界を諌める戦い。
最後の終わり方もまさにそれ。作者が外国の民俗学を学んでいると後書きに書いてあったから、この描写の仕方も納得だった。
展開については4巻またがった割には、と思うのはいささかわがままだろうか