上橋菜穂子のレビュー一覧
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ネタバレあのヒュウゴの少年時代の物語。タルシュ国密偵アラユタン・ヒュウゴ。やたらと気になる存在だったあのヒュウゴ。
バルサやチャグムにとって、敵対する関係のはずなのに、完全な敵ではない。
ラウルを説き伏せた能力の持ち主。
なぜ、あんなにもヒュウゴという人物が心に残ったのか、本作の上橋さんのあとがきで納得。ヒュウゴのこの少年時代の物語は、ヒュウゴが登場した時点で出来上がっていたとのこと。だから、ヒュウゴがあんなにも、登場人物の中でも際立つ存在となっていたのだ。
本作は守り人シリーズのスピンオフみたいな位置づけなのだろうけど、もはやひとつの物語として完璧に出来上がっている気がする。
ヒュウゴが家族全員を奪われるという辛く厳しい体験から、どのようにしてタルシュの密偵になっていくのか。ヒュウゴの心の変化がありありと伝わってきて、その心情描写に舌を巻く。
リュアンとヨアルとの交流は本当に胸熱で、なんなら守り人シリーズで一番というほど涙が込み上げてくるし、ならず者として生活を送らざるを得ないヒュウゴの状況も痛いほどよくわかった。
上橋さんは人間の醜い面、守り人シリーズでいえば、暴力に酔って快感を得てしまう人間の残虐な一面も隠すことなく、フラットに描く。そこに特別な感情はなく、「人間ってこういうところがあるんだよ」と諭されているようで、どんなに「暴力はダメ」と言われるより、心に響くものがある気がする。
国が滅ぼされるって何なんだろう。生き残った者は侵略者に頭を垂れてはずかしくないのか。いや、見えていないのだ。なぜ、どこかに生き残っているはずの帝は侵略者により苦しめられている民を救わないのか。そう、自分には、見えていないのだ。色々なものが・・・・
と顔をあげ、前に進むヒュウゴがまぶしかった。
あと、バルサの15歳の頃のお話も収録されていたけれど、ヒュウゴの話の感想で力尽きたので、こっちの感想は割愛・・・(笑) -
Posted by ブクログ
「感無量」、「感慨にふける」・・・
あぁ、この読後感をどう表現してよいのやら。
ついに、終わってしまった。バルサとチャグムの長い長い物語が。
この「天と地の守り人」は三部作で、タルシュ王国の北への侵攻を前に、第1部と第2部で、様々な戦略、駆け引き、思惑があって、そういったものがあったからこそ、最後のこの第3部は話の展開も早く、ページをめくる手が止まらないとはこういうことか、というほど早く読み終えてしまった。そして、「守り人」シリーズでは私としては初めて、何度も涙が溢れた。
戦争や、歴史上の戦など、これまで何度も映像で見聞きしたけれど、これまでで一番と言っても過言でないほど、チャグムとともに自分の身に迫って「戦」を感じた気がする。それほど圧倒的な描写だった。
チャグムと帝の関係、バルサとタンダの関係。
そうくるか、そうなったか・・・
「守り人」シリーズ、噂通りの傑作だった。「ファンタジー」、「児童書」という枠にとらわれず、多くの人に読んでもらいたい。
「ラピュタを崩壊させる言葉は?」
「バルサ!(あ、違っ!!恥・・・)」 -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ7作目。
いやぁ、おもしろい。ぐんぐん物語に引き込まれてしまう。
チャグムがサンガル王国へ儀式のために出向いた頃にまかれていた火種(タルシュ王国のサンガル王国への侵略
)が一気に燃え上がっていて、新ヨゴ皇国も大きな波にのまれていく。
なんと、サンガルがどうにも持ちこたえそうにない、どころか、タルシュ王国の手に落ちていた・・・!あの快活な海の民が・・・!
サンガルがタルシュの手に落ちたということは、新ヨゴ皇国にとっては南の城壁が崩れ去ったことになる。
と、物語の序盤ばかりを思い返してしまったけれど、本書はなんといってもチャグムの成長が素晴らしい。
父である帝から命を狙われ、タルシュのラウル王子(こいつがまた、憎らしい!)からは帝の命を狙い、チャグムが帝位につき、タルシュの枝国になるよう進言され・・・
なんとも難しい立場にいながら、民を守ることを第一に考え、ひとりで悩み抜くチャグム(今回はシュガもバルサもそばにいない)。そして、大きな賭けともいえる決断をする。
バルサに守られ、帝になどなりたくないと泣いていた少年がこんなにも成長したのか、と、シリーズを初めから読んできている読者にとっては胸熱必至!(←これって正しい日本語?)
佐藤多佳子さんの解説にあったように、これまでのファンタジー色強めから、歴史色強めに少し舵取りが変わった本書だからか、物語でありながら、どこかの国の史実をたどっているような気さえした。
また、新しい登場人物の、ヒュウゴやセナという脇役もとてもよかった。
さぁ、これからシリーズ終盤だー。 -
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ネタバレ「ーでも、他人をあっさり見捨てるやつは、自分も他人からあっさり見捨てられるからね。」
名言でた!しかもこんな端的な名言。いや、今までもたくさんいいセリフ、あったんだけど、メモをするのももどかしく、先へ先へ進んでいた。でも、なぜかこのセリフは今の私にささった!野獣のような闘争心を持つバルサが、結局、誰よりも人間的に温かいのは、こういう考えを持っているからなんだ、とすっと心にささった。
シハナ、なかなかの戦略家。シハナとアスラは昔から関係があったとは・・・。
シハナの罠にはまるバルサ。この戦いもすざまじい。上巻からサルが気になっていたので、おぉ、やっと出てきたか、と。傷を負ったバルサの元にタンダが駆けつけてくれてどんなにほっとしたか。
シハナのロタ王国を思う気持ちは熱く、一見筋が通っているように感じる。が、やはり極端な考えはどこか危うい。王弟イーハンが賢明な判断をしたのに、そこを仕者であるシハナが覆してはいけないなぁ。シハナの考えに一瞬こちらまで説得させられそうになってしまった。そうか、そうか、シハナもいいやつだったんだな、と。単純。
この上下巻にわたる「神の守り人」では、ロタ王国に、偶然にしては大きすぎるたくさんの波が押し寄せる。スファルの思惑とシハナの思惑が違うことに加え、南部の大領主たちの思惑、北部の氏族の思惑、そして王家の思惑。さらにさらに異界ノユークからの神の再来・・・。それぞれの立場の者が、どのように自分の信念にそって立ち回るのか。とても興味深く読めた。中でも、アスラは最後、自分の意思で行動したことが素晴らしかった。
アスラが目覚めること。そして、「絶対的な神の力」に頼るのではなく、「対話」を通して国を治めていく、というロタ王国が平和に繁栄していくこと。これらを願うような気持ちで読み終えた。 -
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ネタバレタンダやチャグムなど、大切な人のいる新ヨゴ王国を離れ、故郷カンバル王国へ向かったバルサ。読者はバルサの過去をもっと深く知ることになり、バルサはずっと抱いていた祖国への怒りに向き合うことになる。
ジグロが殺した友がなぜ8人だったのかなど、本書で明らかになっていくにつれ、ログサム王の本当の、そして恐ろしい陰謀がわかってくる。ジグロの弟、ユグロみたいな人間には、私もコロッと騙されそうだと思うと、小さな怒りのようなものが自分の中にも灯った気がした。
牧童の存在がとても良かった。一見、カーストの最下級のものとみなされている者たちが山の王の民であり、誇りをもって暮らしていることになんだかとても心地よさを感じた。
そして、ヒョウルとの<槍の舞>で、ジグロは本当の意味で弔われて、バルサは怒りの向こうへ突き抜けることができたのかも、と思ったときの安堵感といったら・・・
上橋さんのあとがきに、この「闇の・・・」は大人に人気で、前作の「精霊の・・・」は子供に人気との記述があった。なんだかすごくよくわかるな、と思った。
ただ・・・・、寒く貧しい北国、カンバル王国が、山の王からの、いつとは知らされずもたらされるルイシャに頼るしか民を飢えさせない方法はない、という現実は厳しいな~。国のために、民のために、と画策したユグロの気持ちもわからないでもない。ただ、あまりにも自分を信じすぎ、周りを軽んじてしまったユグロ。彼の今後が描かれることはあるのだろうか、と気にしつつ、シリーズ次の作品へ。 -
購入済み
原作は外伝まで読了。
忠実にコミカライズされていて、命が吹き込まれたみたい。ジョウンとエリンの穏やかな日々がずっと続けばいいのになぁ。
巻末の対談やキャラクターの原案もありボリューミーでした。イアルは決定稿より一稿のがイケメンですね。落ち着きのある雰囲気を持たすため今のビジュアルしたようですが…ちょっと落ち着かせすぎじゃないですか竹本先生。笑 -
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上橋菜穂子は裏切らない ……なんて偉そうなタイトルをつけてしまいましたが、本当にそうだと思う。獣の奏者しかり、鹿の王しかり。
こちらの小説は「日本っぽい」場所を舞台としたファンタジー小説。どこか懐かしさを感じる景色、描写、温もりを感じ取れるだろう。
そして、読者が予想する展開を少しずつ裏切り、ラストに「そ、そう来るか」と思わず漏れてしまったと同時に、なんと素晴らしい物語かと涙がこぼれ落ちた。
ファンタジーとして読むもよし、死生観を読み取るもよし、はたまた舞台となった場所の生活や文化を楽しみながら読むもよし。
物語の上辺には現れない、層の深さが感じられる物語です。 -
購入済み
原作に忠実
コミカライズされると原作と随分雰囲気が違ってしまう作品が多い中、このコミカライズは良い意味で「原作に忠実」である。ということは原作の力量がコミック版にもそのまま反映されるということであるが、原作が作者上橋菜穂子の代表作のひとつなので、実に安心して読みすすめることができる。絵柄の原作の雰囲気をよく描きだしている。