上橋菜穂子のレビュー一覧
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購入済み
とかげのしっぽ
人の生と死の概念について考えさせられる濃厚でいて、かつ異世界というファンタジー感、そして人々の思惑が織りなす絡み合った物語で読みごたえは抜群でした!
鹿の王というタイトルから読み始め前は「もののけ姫」のイメージを漠然と持っていました。確かにそのイメージが間違っていたとは思いませんが、私が印象に残ったことは「病理学」についてです。流石にこのタイトルから想像することはできないでしょう!
まだ病気が菌によるものでなく宗教的なものが深く絡んでいると多くの人々が思っている時代。少数派ではあるが、病気は菌という目に見えない小さな原因があるんだということが分かってきたという背景があります。そんな中で描かれる -
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Posted by ブクログ
上橋菜穂子先生、ここまでの物語をこの世に生み出してくれて、ありがとうございます(感涙)
エリンの亡き母、ソヨンの想いが初めて文章として表された「綿毛」から始まるこの外伝は、全てが今までの物語の核となる部分ではない。
けれどこの「獣の奏者」の世界で生きる人々にとって当たり前にそこにある思い出達を、
上橋菜穂子先生が特別に覗かせて下さったような嬉しさを初めに感じた。
今までの世界を読み進め、エリンと共に冒険をした読者に頂けたご褒美として、これ以上にいいものはないと思える。
特に、「刹那」と「秘め事」で新たなエリンとエサル師の一面を知り、今まで感じることのなかった対極をなす2人の立場と生き方に、 -
Posted by ブクログ
I、II巻で繰り広げられた、辛く重い世界ではあるがその世界をエリンだからこその力強さで歩き道を切り拓いていく物語から一変。
大人になったエリンには、昔とは比べ物にならない程大切で、守るべきものができた。それは喜ばしい事である一方、以前のような生き方はできなくなってしまった。
物語にあった虫食いを埋めるように、母の死、そして「大いなる災い」の謎を解くべく、しがらみの中を必死に生きるエリンと、そんなエリンの姿に心を痛めつつも一番理解しているイアル。
懸命に家族の幸せを願う2人と、その息子ジェシの行先が最後には穏やかなものになる事を願って止まない。
個人的にイアルが父親をしている描写が、とてもらし -
Posted by ブクログ
小学生の頃から何度も読んでいる大好きな本。数年ぶりにチャグム達に会いたくなって再読。はじめて読んだ時はチャグムよりも幼かったのに今ではバルサと十しか離れていない。時の流れる速さに驚いた。
今回は、突然母と離されたり、父である帝に暗殺を企てられたり、よくわからん異界の生き物に卵を産み付けられたりと大変なチャグムの心情に着目して読んだ。チャグムが、バルサ達に感情をぶつける所でバルサとタンダはチャグムに安心を与える存在になれたんだなと実感できた。
上橋菜穂子の作品を読むのは1年ぶりだが、文章の読みやすさですぐに話に入れた。バルサ達と共に旅をするのはやはり楽しい -
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Posted by ブクログ
ネタバレたつみや章の『月神の統べる森で』と混乱しちゃう。
でも、縄文が舞台の『月神の~』とは違い、こちらは律令の世の中。
それでも人はまだ神のそばで生きていた。
九州の山間の小さな集落。
男たちは狩りをして、女たちは稗や粟を作ったりどんぐりの粉で団子を作ったり。
欲しいものは山が与えてくれる。
神さまの場所さえ侵さなければ。
しかし、時代は変わってしまった。
男たちは朝貢(えだち)のため都で6年間暮らさなければならず、男手の足りない村は狩りをすることもままならず、どんなに工夫をしてもひもじさをこらえることはできなかった。
そしてようやく帰ってきた男たちは、遅れた生活(全身の刺青、狩猟生活等)から抜