谷崎潤一郎のレビュー一覧

  • 刺青・少年・秘密

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    ネタバレ

    新潮文庫には未収録の「悪魔」「続悪魔」「神童」を読む。

    「悪魔」は陰鬱とした作品。
    神経衰弱の佐伯は汽車や地震を極度に恐れ、そのために死ぬのではないかと怯えている。上京して叔母の家で下宿を始めるが、そこには鈴木という陰気な書生がいて、佐伯の従姉妹の照子と婚約をしていると主張する。しかし照子と佐伯は次第に親しくなっていき、鈴木に恨まれるようになる。最後は照子の鼻水がついたハンカチを佐伯がこっそり舐めるシーンで終わる。

    「続悪魔」は、佐伯と照子の関係がさらに進み、最後は鈴木に刺されてしまう。
    谷崎は「続悪魔」を執筆するにあたって、「悪魔」の結末部分(ハンカチの場面)をないものと思って読んでもら

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    2022年09月11日
  • 刺青・秘密

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    虐げられ、笑われ、堕落していく快楽が描かれる初期作品集。

    少年期の暴力的な遊びを描いた「少年」は被虐が加虐に鮮やかに転換し、後のナオミに繋がる。そのほか、身を落としてまで笑われることに喜ぶ「幇間」、女装をして夜の街を徘徊する「秘密」、まだ見ぬ浮世と女人に懊悩する「二人の稚児」が面白い。

    「異端者の悲しみ」は自叙伝的作品で、「母を恋うる記」は母親が亡くなった二年後に書かれた潤一郎版「夢十夜」のような作品。

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    2022年09月11日
  • 春琴抄

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    再読。
    歪んでるなぁ、これが愛なのか何なのか私には分からなかった。好きな人というよりお互いにとって都合のいい人にも思えた。
    あと年々バイオレンスな描写が苦手になってることに気づいた。たった数行読みたいのに心臓がバクバクしちゃって脳の酸素が薄くなってく感じがした。

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    2022年08月26日
  • 猫と庄造と二人のおんな

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    飼い猫リリーをめぐって、猫を可愛がる庄造と、猫を利用して庄造の心を惹こうとする前妻と後妻。前妻の品子は庄造と復縁するときのための保険として好きでもない猫を引き取るが、次第に愛着を持ち、猫も品子に気を許すようになる。こっそり会いに来た庄造には一瞥をくれただけだった。

    猫のために駆け回る庄造の姿は滑稽で風刺的。猫は人間の言葉を解さないだけにより崇高で、タイトルの順はそのまま価値の順で、そのまま崇拝、隷属の対象になっている、と解説より。

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    2022年08月18日
  • 刺青 痴人の愛 麒麟 春琴抄

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    ネタバレ

    振り返るとシンプルな話で、4時間位で読み終わった。少女に翻弄され、わがままがすぎて淫売くらいになってしまうが、それでも翻弄されてしまうという話だった。
    表現が上手で読みやすかった。

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    2022年08月13日
  • 猫と庄造と二人のおんな

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    一人の男の取り合いをする二人の女。でも男は全然幸せではない。むしろ食傷気味である。男は感情が純粋に思える猫に首ったけ。懐いている時は良かったが、ついには猫にとってどうでもいい存在になりあたふたしている。居場所の失った男はこれからどうするのだろう。2022.6.18

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    2022年06月18日
  • 卍(まんじ)

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    戦前の小説のわりに、ストーリーに起伏があって二転三転する。作者は事実そのままを描く自然主義には反対の立場だったらしい。

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    2022年04月21日
  • 盲目物語 他三篇

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    ★3.5「三人法師」
    歴史的事実や昔の物語をベースにしたものなので、あらすじはどうってことのないお話が4つ収録されているだけなのだが、読ませる文章に仕上げているのはさすが。

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    2022年02月22日
  • 吉野葛・盲目物語

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    白州正子の『かくれ里』に谷崎の『吉野葛』の話が出てきたので吉野葛目当てに買ってみた。

    奈良には行ったことがあるが、吉野には行ったことがない。行ってみたい土地だ。谷崎の美しい文章で吉野の地が広がる。とはいえ行ったことのない土地は想像が付きづらいので、Googleマップやネットを駆使して実際の情景を見ながら読むのもまた一興。
    『盲目物語』は浅井長政の奥さんであるお市の方に仕える座頭による語り。ひらがなが多くて正直読みづらいため、若干うっとなってしまうが、読み始めるとこれが滅法面白い。時は戦国時代。織田信長、浅井長政、豊臣秀吉、明智光秀など錚々たる面々が登場するが、座頭はただ1人お市の方の身を案じ

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    2022年01月30日
  • 刺青・秘密

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    面白かった〜「刺青」「幇間」「少年」あたりは本当にThe性癖と言わざるを得ない文章だった。圧倒的に美しい女に、天性の加虐性や性質をぶつけられて心身が捻くれることに喜びを見出している男ばっかり出てくる。なおかつ相手も同じ(ただしベクトルは反対の)喜びを感じていてほしいという... 文章が上手いのでそういう心理がさらさら入ってきますね。
    「異端者の悲しみ」も良かったな。最後主人公が芸術を発表したくだり、ねじれて澱んで、しかしそれを悲しいと思わないわけでもない主人公の性質が花開いたかんじがする。好きな終わり方でした。

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    2021年12月30日
  • 細雪(中)

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    あらすじ
    1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)
    春までの大阪の旧家を舞台に、4姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られ、全編の会話が船場言葉で書かれている。上流の大阪人の生活を描き絢爛でありながら、それゆえに第二次世界大戦前の崩壊寸前の滅びの美を内包し、挽歌的な切なさをも醸し出している。作品の主な舞台は職住分離が進んだため住居のある阪神間(職場は船場)であるが、大阪(船場)文化の崩壊過程を描いている。
    感想
    没落商家の四姉妹、ある人からフランス語で発行された本をよんで描写が良かったと言われ日本語版を読んでみた。

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    2021年12月09日
  • 魔術師(乙女の本棚)

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    或る繁華な街区の果ての、物淋しい一廓に存在する妖しい見世物小屋では、魔術師による魔術を披露する舞台が公演されている。
    そういうものに惹かれる好奇心旺盛な彼氏にくっついて、どこまでも添い遂げるつもりの彼女がいじらしくて可愛かった。恋してる乙女はたしかにこんな感じなのかもなぁ。

    〈「わたしにはあなたという恋人があるためなのです。恋の闇路へ這入った者には、恐ろしさもなく恥かしさもない。」と云うでしょうか。〉

    そうやって盲目状態のまま二人で永遠になれたら、それはそれである種の恋の完成なのだと思う。

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    2023年06月26日
  • 刺青・秘密

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    今読んでも全く色褪せることのない独特な世界観にページを捲る手が止まらなかった。

    書き方を間違えると「キモい」方向に行ってもおかしくない題材が多いのだが、それを美しい描写とともに神聖な雰囲気さえ感じられる物語にまとめていてすごい。

    生涯でかなりの数の作品を出している模様。

    人形橋が地元っておしゃれでいいな〜

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    2021年10月14日
  • 夢の浮橋

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    過去分

    橋は何かと何かを、結びつけるものだが、この浮橋は生母と継母を結びつける橋と主人公と母を結びつける両方の意味があった。

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    2021年10月02日
  • 台所太平記

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     前から本書が中公文庫に入っていたのは知っていたのだが、今般の改版の機会に購入、読んでみた。
     晩年に近い作品だし、日常雑記的な題材を、ユーモアを混じえた平易な文章で書いているので、とても読みやすい。

     昭和11年夏に千倉家に雇われた「初」から始まり、昭和37年の千倉磊吉(本書では谷崎のこと)、数えで喜寿の祝いをするまでの間の、同家で働いた女中たちの中から、忘れることのできない人物の姿、性格、働き方などが、様々なエピソードと共に紹介されていく。

     日本がまだまだ貧しくて、特に田舎の学歴もない女性には女中奉公のような仕事しかなかった時代ではあるが、磊吉が忘れることのできない人たちと言うだけに

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    2021年09月26日
  • 作家と猫

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    さまざまな作家たちによる猫づくしのアンソロジー。
    猫とともに生きることの喜びをあらためて感じて、ほっこりする作品ばかり。

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    2021年09月11日
  • 夢の浮橋

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    「夢の浮橋」は非常にエロティックなお話である。「文壇昔ばなし」で、谷崎潤一郎と泉鏡花が一緒に鍋を食べた時、食べるのが早い谷崎氏に食べられないように、食べるのが遅い泉氏が仕切りを作っておくのに、結局食べられてしまうというエピソードに笑った。

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    2021年05月22日
  • 卍(まんじ)

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    関西の文語のような表現で、いささか理解力が無いと苦労しました。主人公が欺かれる所は何とも言えない虚無感があり、読者にとっての読み応えのあるものにとって代わった様です。嫌らしい綿貫の誓約書により破滅まで追いやられる様子や、最後に夫までもが光子に靡いてしまうという設定は見るに堪えませんが、それこそ人間のいやらしさを描いていて良かったです。最期の盛り上がりに欠けたような気もしましたが、園子が実は冷静な女だった事が分かったので安心しました。

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    2021年05月16日
  • 新装版 細雪 中

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    体面ばかり気にする旧家の人々の行動や言動が理解出来ずにイライラするのだが、続きが気になって読み進めてしまうのは何故だろう。

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    2021年05月15日
  • 新装版 細雪 上

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    共感できる主人公とか出てくるわけでも、面白い出来事が起こるわけでもないが、なんとなく読み進めてしまう物語。文章は美しい。

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    2021年05月12日