谷崎潤一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
勝手知ったる自分の文化圏の贅沢に飽きた主人公が、未知で慣れない異国と異形に触れた瞬間、途端にその表現が精緻に活き活きとしてくる。
慣れすぎて辟易すらする自国の美女の媚態や宝物のきらびやかさよりも、得体の知れない人魚の容姿、肌の冷たさが細かく美しく描かれている。
パッと見知らぬものへの興味、興奮で視界が広がる主人公と同じ感覚を味わえるような文章。
しかし、その行く末は、何だか恐ろしい気がする。
ある世界で巨万の富をもち、称えられる美貌や若さをもっていたとしても、世界が変わった途端に唾棄される存在に変わる。
極東から、白人が多数派の欧州。
そのきっかけが人に破滅をもたらすとも噂される人魚。美しく儚い恋物語か、そのさきの暗雲か。
オランダ人商人のいうライン川上流のそれは、歌で人を誘い破滅させるローレライのことだろう。
ねこ助さんのイラストは毎回かわいいが、今回はかわいいながらも妖艶。人魚の肢体の描き方が実にいい! -
Posted by ブクログ
巨万の富を手にして地上の美味と美色とに飽き、支那の国でひたすらの退屈を持て余した、孟世燾という名の貴公子。
噂を聞きつけた阿蘭陀人が、そんな彼のもとに連れてきたのは遠い熱帯の海で生き捕らえてきたという、世にも艶やかに照り輝く眩しさの人魚。
「私は此れ迄、心私かに自分の博い学識と見聞とを誇っていた。昔から嘗て地上に在ったものなら、いかに貴い生き物でも、いかに珍らしい宝物でも、私が知らないということはなかった。しかし私はまだこれ程美しい物が、水の底に生きていようとは、夢にも想像したことがない。私が阿片に酔っている時、いつも眼の前へ織り出される幻覚の世界にさえも、この幽婉な人魚に優る怪物は住んでいない。恐らく私は、人魚の値段が今支払った代価の倍額であろうとも、きっとお前からその売り物を買い取っただろう。………」
「………私は地上の人間に生れることが、この世の中での一番仕合わせな運命だと思っていた。けれども大洋の水の底に、かくまで微妙な生き物の住む不思議な世界があるならば、私はむしろ人間よりも人魚の種属に堕落したい。あの瑰麗な鱗の衣を腰に纏うて、このような海の美女と、永劫の恋を楽しみたい。―――この美女の涼しい眸や、濃い黒髪や、雪白の肌に比べると、私の座右に仕えている七人の妾たちは、まあ何という醜い、卑しい姿を持っているのだろう。何というか平凡な、古臭い容子をしているのだろう。」
久方ぶりの有頂天の歓喜と恋心に打ち震えて涙する貴公子の様子と、人魚の描写がとても幻想的だった。
この時代の作品には差別用語がばんばん使われてて痺れるねぇ。 -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、谷崎潤一郎さんとねこ助さんのコラボ作品『人魚の嘆き』です。ねこ助さんのイラストは、息を飲むほど素敵…繊細で緻密、そしてどこか怪しげな印象です。
ストーリーは、家柄もよく巨万の富を手に入れた上に、容姿にも恵まれ博識でもある中国南京の貴公子が主人公です(天は二物を与えずとは言いますが、二物どころではないですよねぇ…)。世の贅沢を味わいつくした貴公子、やがてそれが魅力的なこととは感じられなくなってしまいます。そんな時、人魚を伴ったオランダ人の商人が貴公子の元を訪れます。法外とも言える対価で人魚を手にいれた貴公子は…。
なんとも、読みにくい!!読めない漢字ばかり…多分こう読むんじゃないかなぁ~と予想しながら、予想もつかない場合は、とばして(汗)!!本当は調べなきゃならないのかもですが…まぁ、自分がよければそれでいい!と自己肯定しながら読みました。読後は、儚くも切ない気持ちでいっぱいになりました。 -
Posted by ブクログ
読んでいて、実は文字通りとっていいのか、迷う。
伝統的な日本家屋の美的ありかたと新しい利便性を生かすそれぞれのものが、調和しがたく全体の調和にそぐわない、ことになりがちなことは理解する。
誰も、閑とした青い畳の床の間にパソコンのケーブルが大量にのたうっていて、それを差してこれが私たちの慣習で理想的な和室のありかただと胸を張る気持ちにはなれないだろう。
しかし、それが日本人の肌の浅黒さや、闇と光の室内における受け入れかたの西洋との違いによるとなるとどうも感覚的にそぐわない。
そして、書き手は、どうもそんなことはわかって書いている感触がある。
白人たちが一層肌を白く見せるために、黄粉をぬり、例えば新しいところでいえば、何作品か前のバットマン映画の画像の暗さは気紛れに出来上がったものではなくて、伝統的に闇の演出というものが成立しているからだろう。
そして、それらの風情を知った上で、わざとかいているような感触がどうもあるのである。
コナン・ドイルを読んだり、彼は向こうの古典を相当読み込んでいるようにみえるのだ。
和式トイレの外界に通じる小さな引戸ばかりでなくて、完全に暗くならない紙一重の暗さやそこから日の当たる障子の白い反射まで段階を踏む光の色の微妙な色合いに対する感性は恐らく紙の戸をつくる文化のあるところには、共通してあるだろう。中国とか、韓国とか、それ以外にもアジアでは。
しかし、西欧とアジアで線を引くのかといえば、そうではない。アジアはアジアでその文化を大事にしているようにみえる、と文章中にはみえるからだ。
すると、何か別の像を結び始めるような気がする。
詰まるところ、当時の西洋的な文化を同質化するには、進みすぎている日本独自の実用性と美的センスの調和を捨てるにも捨てられず、かといってこのままでは廃れ、いつかはなくなってしまうかもしれない言葉で言い尽くせないものをどうするか、そこが肝であり、問題意識なのではないか。
そして、このような外界からくる衝撃は、古くて新しい問題である。
目の前の利便性を受け入れるために、拠り所になる価値を少しずつ犠牲にせざるを得ない。ところが、犠牲にせざるを得ない価値が日本の場合、じつは一般的でない、世界的といってもいいが、日本人がわかって使っている分には、よっぽど進んでいるものを犠牲にしなくてはならない。これが、繰り返されている歯痒さのようなものが根底にある。このなんとなく、損した感じを含んでいる感じがするのだ。
これは、選択の上に進歩が上積みされる、進歩のためにそれに合致するものを選び、他を棄て去るというありかたに対する一般人が抱いている抵抗感をさりげなく取り出している。
恐らくそういうことなのだ。
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Posted by ブクログ
はい30オネエです
コンプリート間近です
潤一郎です
ほんと潤一郎にしか書けない文章だな〜って思いました
まず漢字がムズい(いや絶対そこじゃないだろ)
読めない漢字多すぎないか潤一郎よ
なんとなく音は想像つくけど意味がさっぱりわからん熟語とか多すぎないか潤一郎よ
あれか?ちょっとした意地悪か?
それとも当時の読者はみな難なく読めたんか?
難なく意味も分かったのか?
いや、絶対そんなわけないね
絶対読めない人が多数いたはずだね
絶対なんて読むの?って聞かれて早口でゴニョゴニョって言って誤魔化した人が多数いたはずだね
くそう潤一郎め!インテリぶりやがって
でもなんかね
何だかその読めない漢字とひらがなのね羅列が美しいのよね
美しい文章なのよ視覚的に(え?何を言うてますの?)
画像として目に飛びこんでくる文章が美しいのよね
いや多分潤一郎側もそんなん言われて困るだろうけど、そう感じてしまったのでしょうがないよね
そしてねこ助さんのイラスト…素晴らしいんだけど、どう見ても貴公子が中国人の顔じゃないw -
Posted by ブクログ
2024/06/10
卍、まんじ
※書き方間違えると、ハーケンクロイツになってしまう....
全編、異様な迫力に満ち満ちた小説。
柿内園子というひとりの女性が、ある事件のことの顛末を証言していくお話。
話し言葉で書かれていて、改行がない。
文字のてんこ盛り。
本を開いただけで、異様なイメージなのに、
読んでいくと、さらに異様なワールドに巻き込まれてしまう感じ....
しかも、大阪言葉。これが、この小説の魅力をさらに倍化させている。
いくら、関東大震災を契機として、
関西に移住したからって、
東京・日本橋生まれの生粋の江戸っ子谷崎が、
勝手が違うことばの大阪弁で小説を書き上げるのは並大抵の苦労ではなかったはずだ。
※助手をおふたりつけたそうな。でしょうなあ〜
しかし、大阪言葉、関西のことばですか。
こればっかりは最強、魅力があって、他県の人間はとても敵いません。
でも、現在の大阪弁というのは、谷崎が描いた卍の戦前の大阪弁とはだいぶ変ってきている気がします。
例えば、古い日本映画でいうと、浪花千榮子ね。
浪花さんが喋っているだけで、なんか独特の大阪言葉に、聞き惚れてしまいます。
現在、浪花さんみたいな大阪言葉を話されるひといらっしゃるのでしょうか?
卍、
お話は二点三点していき、スリリングであり、やっぱり谷崎らしい、"性"についても多々考えされられてしまいます。
「蓼喰ふ虫」、中公文庫で出たようです。
20代の頃読んだが、よくわからなかった。
再読します。 -
Posted by ブクログ
未読のまま放っておいた。
谷崎のマゾヒズム小説6篇を集めた文庫本
マゾヒズムとは....
相手から精神的、肉体的苦痛を与えられることによって性的満足を得る異常性欲。
オーストリアの小説家ザッヘル=マゾッホのからの語。
被虐性愛。マゾ。
マゾか。
ないな、自分には…..
だから登場人物たちの気持ちに、どれも感情移入はできない。
それよりも、これらヘンテコリンなお話を、流麗な文章で綴っていく谷崎の筆力、というより魔力に恐れいった。
"鹿麟"の南子(なんし)夫人の残虐や、
"魔術師"における魔術師に魅入られた主人公の悲劇とか...
6篇のなかでは、
"ーと房の髪"の露西亜人、オルロフ夫人が凄ぶる魅力的であ
る。
彼女が、舞踊"石橋(しゃっきょう)"の獅子の精のような赤毛の持ち主ってのがスゴい。
石橋の獅子の精の赤毛って、ほんと真っ赤っかですよ。
そんな美貌の赤毛夫人の虜になっていく3人のオトコたちが、あの関東大震災を交えた話として展開され、なかなかスリリングです。