あらすじ
戦国に名高い美女、お市の方への思慕を盲目の法師に語らせた表題作のほか、戦国時代に材を取った「聞書抄――第二盲目物語」など、歴史ものの傑作。北野恒富の口絵、菅楯彦による挿画(「聞書抄」)を完全収載。ほかに短篇二作、正宗白鳥による文藝時評を付す。〈註解〉明里千章〈解説〉千葉俊二
盲目物語 他三篇
収録作品「盲目物語」「聞書抄 第二盲目物語」「三人法師」「紀伊国狐憑漆掻語」
付録『盲目物語』――「文藝時評」より(正宗白鳥)
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Posted by ブクログ
1931(昭和6)年から1935(昭和10)年に初出の作品集。
おなじ中公文庫で『盲目物語』のみが入ったのをずっと前に読んで持っているのだが、他の作品を含めて編み直し出版したらしい。
谷崎潤一郎の文章は極めて流麗で美しく、しばしば文章そのものがエロティックな妖しさをも帯びるのがとても好きだ。『盲目物語』はさらに、極めて恣意的な「ひらがな化」が試みられている。さっきは漢字表記だったのが何故かひらがなで出てきたりする。ひらがなばかりで読みにくい(文意が瞬間的に認知できない)ところがたくさんある。谷崎はここで、字面の視覚的なリズム書法をでも試みたのだろうか。しかし、ここまで徹底した作品は他に無さそうな気がする。
この作品集は谷崎のあの変態的な性のテーマが出てこず、歴史上の有名男性の影に隠れた女性を前面に出すという点で当時としては新しかったのかもしれないが、それでも歴史叙述のような面が多々あって、私には少々退屈だった。谷崎の小説としては。