有栖川有栖のレビュー一覧
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ネタバレ怪しげな表紙の写真とタイトルに釣られて読んでみようと思った作品。25ページ前後の短編が並び、短い時間でも気楽に読める構成となっている。
鉄道に特化したミステリーは見かけるが、鉄道の怪談集というのは珍しいのではないだろうか。各作品は、テーマだけでなく内容にも駅や列車がしっかり意味を持って絡んでいるので、見かけ倒しでもない。 少し読めば「これ、作者はテツか?」と思うような、本来不必要な鉄道用語が顔を出すが、門外漢お断りなどということは全くなく、面白く読める作品ばかりで、さすがに著名な著者というところ。
著者については名前はよく見かけるが、文学賞の選考委員や解説者としての印象が強く、現役の作家というよりも有識者という認識であった。
著者の長編を読んだことはなく、「小難しくかったりしたらイヤだな」と思いながら読み始めたが、最初の話を読み始めてそれが杞憂だとわかった。
最初の『夢の国行き列車』は怖いというより切ないような寂しさを感じる短編。主人公の幸せと『戸倉』の不幸が対照的で、その幸せについても過去と現在という時間軸で対照的(それゆえ主人公は今の幸せに感謝し、一方でそれが失われることを危惧もする)な、どこにでもありそうな日常生活の場面が続く中に急にポッカリと怪異が口を開ける。そんなお話だった。
短編はどれも駅や鉄道にまつわる怪異譚ではあるのだが、「人間を信じてみよう」というような、ほんのり心が温かくなるようなオチの話が多い。そう思っているとヒヤリとするものも混ざっている。なんとなくもの寂しいような郷愁を誘う感覚もある。
どれも気持ちの良い余韻が穏やかに尾を引く感じの、心地よい読後感で、後味の悪いものはほぼない。 そう思うと『あとがき』で著者が『すべてが怪談となっているかどうか』と述べているように、怪談集や怪異譚というより幻想小説集の方が近いかもしれない。異質な物があるとすれば表題作の『赤い月、廃駅の上に』で、これはしっかりとしたホラー、怪談といって間違いがない。
また、著者の本業ミステリ作家を感じたのは『海原にて』で、「どこに鉄道が?」と思っていたのが終盤ひっくり返る、叙述トリックのような書き口で完全にだまされてしまった。
『あとがき』も本編同様に読みやすい文章で、内容も本書作品への感情が素直に書かれていながら、謙虚でもあって好感が持てるものだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ好物である長編のミステリが読めて、満足度も高かった。なぜ自分は長編のミステリが好きなのだろう?多分、謎解きだけではなく、今回の話のような、偶然が重なり、こういうことが起こると人はこのよに行動する、とか、それぞれの登場人物のことも少しずつ明かされていき人間関係や幾層にも重なった思惑、そこから得られる没入する世界観を楽しみたいんだろうなあと思った。そのため、こういう物語は休日にまとまった時間で読むスタイルにしている。
マレーシアが舞台というのも新鮮で、英語、マレー語(そのものとしては登場しないが)の、よくわからない会話の中でのストーリーというのもリアルだったし、ちゃんとその外国語に焦点をあてた謎解きも用意されていた。いろんな細かな描写の中にちゃんと伏線が仕組まれてあって、ストーリーとしても、パズルを当てはめていくような最後のほうの展開としても気持ちよかった。
登場人物は多いのと、親世代の人間関係も出てくるので、覚えるのが苦手な私は人物関係のメモを取りながら読んだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあの、江神さんに対して熱心な描写があるわけでもないのになんであんなに全てがカッコいいんですか???
船上のデッキで風に当たっていたり、島についての人との接し方だとか、なんなの?落ち着き?落ち着きがカッコいいの?ベラベラ喋らないのがいいのかな?もう本当謎。なんだろう。とにかくカッコよすぎる。
江神さんの
「しんみりするなよ、少女探偵」
が大好きだし、それに続くマリアの
「はい、ーー少女探偵がんばります」
もよかったし、その後のアリスの
「マリアのためなら」
もとてもよかった。何気ないやり取りなんだけど、なんだか登場人物たちみんなを好きになる。
「不適な面構えを、見て、闘志を燃やしましょう」
「ボーイフレンド兼私立探偵よ」
と言うマリアの性格がすごくいい。
江神さん、夏風邪を引いたマリアの最後の一つ二つの演技の咳に
「二回分は嘘」とサラッと言うところとか、
「部長を盾にするのか。とんでもない奴やな」
とかさ!なんていうか上手く言えないんですが要はすごくメロいんだが?!となりました。
・不穏な会話を意図せず盗み聞きしてしまうシーン
僕は咳払いして「立ち聞きしてしもうたなぁ。まずいよ」「立ってたのは向こうで、こっちは座ったままだったわ。立ち聞きだなんて人聞きの悪い」
マリアが開き直ってそんなふうに言う。
「だけど妙なものね。内緒話が聞こえてきた途端に三人が三人ともピタッと口をつぐんじゃうなんて。人間の習性かな、私たちの品性かな」
そんなんじゃない。内緒話の途中で頭の上の部屋に人がいることを気づかせては、恥をかかせてしまう、とこちらが思いやりを示したまでだ。そのおかげで聞いていた僕たちの方が気まずい思いをしてしまった。
→なんとなく印象に残った記述。
・アリスが夜にマリアの発言を思い出すシーン
マリアも同じ屋根の下でこれを聴いているのか、と思うとそれもまた妙な感じのするものだった。「この小さな島が世界になって、宇宙を漂ってるみたいな気になるの」しか。うるさいロマンチストめ。
あの子のことが好きだという奴を僕は三人知っている。中には僕のことを彼女の恋人だと勝手に思って羨んでいるらしいのもいる。違うんだがなぁ。
→ここすごく好き。
口笛うまいのも解釈一致の江神さん!!
だけど二日目の夜、早々に酔い潰れるのは意外すぎる!
お酒あんま強くないのかな?警戒心バリバリとかじゃないからかな?なんか平気でシラフなイメージだったからギャップ!
・アリスの内心
ジグソーパズルに熱中する人間自体が暇人の標本なのに、それを見物するほどの馬鹿はこの世にいない。
→アリスから時々出るこういう辛辣な言葉もなんかいいよね。
・ボートの上で一遍の詩を暗唱するシーン
マリアはやっと微かに笑った。私のことを口説いているみたいね、と言う。本当はそうではないことを二人ともよく承知していたので、僕も、そうやなとくすくす笑った。
→ここもね〜〜〜すごく好きなんだよーーー!!!
これだけで、このシリーズを今後末永く読んでいきたいと思わせる。
・ボート大転覆から海に放り出されるシーン
「アリス」
何だ、何だ。
「靴が」「脱げた」「片方」
脱げた片方だけの靴なんて知らないよ。シンデレラの王子様じゃないんだから。
「明日」「捜したら」
もう彼女は何も話しかけてこなかった。
→ここも!同じく好き!なんだろう、上手く言えないんだけど、本当に好きなんだよ。
・浜に上がるシーン
ひどい目にあったと振り向くと、マリアは体に貼りついたタンクトップを気にして少し恥ずかしげだった。
「大丈夫、透けて見えてないから」「アリス、先に行って」
僕は言われたとおり先に立って歩きだした。マリアのついてくる足音がする。靴の中で水がくちゃくちゃと鳴った。
→はーーー。なんだろう、味がある!!!
・その後準備シャワーを浴びて合流して自転車のサドルにそれぞれ腰掛け夜空の下言葉を交わすシーン
「涼しい風」
マリアが目を細めて言う。昨夜の雨と風が嘘のような気持ちのいい真夏の夜だった。誰かと語り明かしたいような気がした。マリアがもう部屋へ戻ろうと言いだすまで、僕からは切り出さないだろうなという気がした。
→味が!!!する!!!
・お転婆大転覆の尻拭いを江神さんが上手く纏めてくれるシーン
ちょっと恰好つけすぎではありませんか、という気もしたけれどそういうことで話か治まり、僕はひと安心した。さて、うまくオールが見つかってくれればいいのだけれど、と思いつつ部長の顔を見た。
ひと言。「ドジ」
→江神さん!!!!!好きです!!!!!
・マリアに対しるアリスの独白
すねるなよ。すねたふりなのか、本気なのかの判別がまた難しいから。
→ほんっっっとうに。百回噛んでも味がする。立て続けによくこんな素晴らしい事書けるな実体験ですか???と思わずにはいられない。それくらい、いい。
肝心の謎解きはやはり江神さんフィーバータイム。
月光ゲームでも思ったけど本当に理屈と理論の鬼だなと。
鮮やかな理論的帰結すぎてため息でる。
それにしても悲しいね。
兄、兄の婚約者、弟、画家、画家の恋人。
犯人含む人間模様も、前作よりスッと入ってくる感じで、切なさややり切れなさが残る作品だった。
色々な意味で、正直1作目よりも面白かいと感じた!
マリアの登場もよかった!
夜が明けて犯人が亡骸となって見つかるシーン。
少し前に別作者のある作品を読んだばかりだったので、どうしてこう犯人があっさり死んでしまうんだろうと。なんとも言えない気持ちになった。
その作品の感想でも書いたけど、自分はコナンで育ったので
推理で追い詰めて犯人を死なせたらダメだってコナンが言ってたのが「推理もの」に触れた一番最初だったから、どうしてもやりきれない気持ちになる。
「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は殺人者とかわんねーよ」
って。
もちろん江神さんは学生だし、探偵家業で生きていないし、そこまでの責任を負わすのはお門違いだと思ってるんだけど、それはそれとしてやるせないなぁ、と。
でもとにかく月光ゲームより楽しめました! -
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単行本未収録作品6編、火村シリーズ&江神シリーズをタイトル「砂男」として文庫本で発表。
美味しい所を掻い摘みです。
もちろんシリーズものは、何時もながら面白いが、今回はその他の作品「ミステリ作家とその弟子」「小さな謎、解きます」の2作品が面白かった。
スランプ気味な作家に弟子入した男が持ってくる作品に対して、作家のレクチャーが白熱する。
鉄道トリック、有名な物語に独創的なツッコミを入れつつ新しい物語を紡ぎ出していく。
斬新な裏物語に、弟子同様のめり込んでいった。
ほぼ無給で住み込み、作家の妻の家事手伝い、身の回りの世話をして、その変わりに作家に自分の作品の批評やアドバイスをもらう日々。
何を思い弟子入したのか?
ラストが定番ながらも・・・。
街角探偵社を名乗る、推理小説好きの私立探偵。
探偵とは名ばかりの便利屋でもあるが、フワッとしたお悩みを解決していく彼と相棒のような甥っ子のやり取りが楽しい。
実はこの2作品が「砂男」より面白かったかもしれないです。
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2026年14冊目
読みやすくて面白い、王道なミステリー小説で大満足でした。
ずっと前から有栖川有栖先生の小説を読みたいと思って、ようやく読むことができました。
最初、なかなか起承転結の起が起きないなと読んでおり、事件が起こるのが150ページくらいから。それまでは登場人物の紹介やそれぞれの会話が書かれていて長いなと感じましたが、始まってしまうともう後はスラスラと夢中で読み、面白いなという感想に落ち着きました。
推理パートが入ってから、書き方が分かりやすいのかサクサク読むことができ、出てくる情報も頭の中に入ってきやすかったです。
全体的に難解な小説っていう印象はなく、読みやすくて面白いという印象を受けました。
火村と作家アリスのコンビもとても良く、読んでいてとても楽しかったです。
次にダリの繭を読むか、学生アリスシリーズの1作目月光ゲームを読むか迷っています。。 -
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ネタバレ学生アリスシリーズが好きな私が初めて手に取った作家アリスシリーズ。
江神二郎が出て来ない寂しさを埋められるか不安でしたが、火村先生が魅力的な方で良かったです。
凄く正統派のミステリなんだけど、ミスリードがあり、私はあっさりとそれに引っかかりました。
そんなに単純なわけなかったー!
話の流れは面白かったし、犯人もなるほど、と思えました。終わり方もよかった。
ただ、後でわかるのかな、と思っていたいくつかの謎が、ただの仕掛けであったことが少し残念でした。
それが必要な意味はわかるんだけど、意図を知りたかった、という感じ。
でも、犯人の職業的にそうなったのかな、とも思います。
動機については、一捻りあったのは良かったけど、想定していたよりは軽く感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおんもしろかったー!!!!
第一、第二の犯人と交換殺人ってのは予想通りだったけど黒幕はわからずじまいだったのでなるほどあんたか!と楽しく読めました!!
江神&マリアの物語はどこかおどろおどろしさを感じながら、アリスと先輩ズの物語はワクワクを感じながら、交互に違った味わいを楽しみながら読み進めていくのも新鮮で面白かったなあ!
ただ欲を言えばラスト、アリスとマリアの再会のいちばんの掛け合いが聞きたかったな〜・・
前作前々作とあまり意識してなかった、作家アリスがこれを書いてる、ということを今回のは読んでてめちゃくちゃ意識したというか、所々に感じる〝隙〟がアリスっぽくて、作者これも考えながらやはり書いてるんだろうかおそろしッッてなってた。
あと後書きの、晶からアリスの火村英生が生まれたとかいう文言を読んで待ってーーーーーってなったよね・・
ことここに来て漸く、この作家アリスと学生アリスシリーズのエモさというものがわかったかもしれない……という意味でも『双頭の悪魔』面白かったです! -
Posted by ブクログ
シリーズ4作目。
いつも冷静でいて、穏やかであり知的な濱地健三郎。
今回も視える能力でさまざまな依頼をサクッと解決する。
助手の志摩ユリエも能力を開花させているのをとても感じる。
捜査一課の赤波江刑事もちょいちょい登場するのも変化があって良い。
黒猫と旅する女〜電車のなかでの出会いのはずが…。
ある崩壊〜強盗殺人の末に…。
少女たちを送る〜ユリエが頑張ったが、双子だった!
湯煙に浮かぶ背中〜極楽すぎて…。
目撃証言〜月蝕を観たかったために…。
観覧席の祖父〜写真の謎は複写撮影。
怪奇にして危険な状態〜強い思いは、行く先の恐れと不安。
全7話。
いろいろな設定で楽しめた。
黒猫のぬいぐるみと旅する話やホテルに現れる少女、露天風呂を楽しんだり、月を眺めたり、野球観戦を楽しんだり…とふわっとした情緒があって怖さよりそこにとどまっていたい気持ちの強さを感じた。