池井戸潤のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
吉川英治文学新人賞受賞作。
おもしろかったー!
ゼネコンの「談合」がテーマ。
645ページもあるから身構えたけど、冒頭から面白く、そして読みやすい。2日で読んでしまった。
中堅ゼネコンの一松組で建築・土木に携わる、入社三年目の富島平太。「オレたちバブル入行組」などに出てきた白水銀行も。
入札に向けて邁進する中で、あっと驚かせるシーンがたくさん。特に抜本的なコスト削減には感嘆させられた。
登場人物も魅力的。
お調子者だけど優秀な先輩の西田。寡黙な実力者の尾形。人情味あふれる天皇こと三橋。
ライバルたちを小物感あふれる書き方にするのは池井戸流ですね。
平太の母と園田の母も、良い。
萌のストーリーはここまで詳細には必要なかった気はするな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ町工場の少年・山崎瑛と東海郵船の御曹司・階堂彬。全く違う環境で育った二人の少年は、産業中央銀行に同期入社を果たす。彼らは、東海郵船という巨大な会社を窮地から救えるのだろうか。
非常に痛快!
どちらのアキラも非常に優秀なので、度重なる困難も「どう乗り越えていくのか」わくわくして見ていた。階堂彬の叔父にあたる階堂普と崇は、優秀な兄・階堂一磨に多大な劣等感を抱いていた。彼らに経営センスはまるでなく、典型的な無能な二代目。一磨や彬の助言にも一切耳を貸さず、破滅に向かって一直線だ。彬の弟・龍馬を唆して連帯保証人にした時は、思わず舌打ちをした。彼らを真正面から叩いていく彬に拍手喝采。頼む、この会社を再生してくれと祈るように頁をめくった。先が気になって、頁をめくる手が止まらなかった。
山崎瑛は、よくまっすぐ成長したものだ。
父親の工場が潰れ、夜逃げした先にも借金取りがやってくる壮絶な体験を幼少期にした。努力の方向性も正しく、立派に学問を修め、大手の銀行に就職できた。ただ勉強ができるだけじゃなく、瑛はとても有能だ。人生のロードマップみたいな物ができている人なんだと思う。進むべき道が見えていて、そこに向かってまっすぐに努力できる人なのだろう。
階堂彬の社内改革の話も読みたかった。
東海郵船がもっと落ち着くまで全部読みたかった。二人のアキラの働きでブラッシュアップされたロイヤルマリン下田も見たかったなあ。ところで、私はゴミ屋敷や散らかった家を業者や整理収納アドバイザーが片付ける動画が好きだ。何かが機能的に美しくなっていく様が好きなのだと思う。倒産しかけている東海商会や東海観光、階堂龍馬によって取引先からの信用を失いつつある東海郵船の再生は、その動画を見た時のような爽快感を与えてくれた。是非、綺麗に着地するまで詳細に読んでみたかった。 -
Posted by ブクログ
中堅ゼネコンの現場で働く主人公・平太は、ある日いわゆる「談合課」に突然異動を命じられる
「談合」は業界を守るための「必要悪」だと諭されて、戸惑いながらも徐々にその考えに染まっていく平太
一見、単なる社会派小説に思われるが、この平太の人事異動が恋人・萌との距離をつくるキッカケとなってしまう
萌の方も勤務先の銀行での考えと平太の「仕事」に対するズレから、徐々に同じ銀行の上司に惹かれていく
企業で働くとは? 生き方とは? 家族とは?
自分にとって真に近くにいてほしい人とは?
そうした問いかけを平太や萌の視点を通して読者に語りかけられる
そして平太と同郷で母とも繋がりがあったと思われるゼネコン会の天皇・三橋との出会いによって平太の考えや取り巻きが大きく変わっていく
また検察側の視点も程よいタイミングで入ってくることで、談合する側だけの論理ではなく「社会」として広い視点で「談合」を見つめながら物語は進む
読みながら平太とともにハラハラしながら、社会人として自分自身にも投げかけられるような問いが随所に散りばめられており、さらに池井戸作品としては安定のミステリ要素もしっかりと踏まえた結末に楽しませてもらった
本書あとがきに書かれていたが、私は著者が当初候補としていたタイトルがこの作品にはとてもしっくりくると思った
「走れ、平太」
泥臭く社会に揉まれながらも、目の前の道を走っていく青年の姿に好感を持たない人はいないはずだ
-
Posted by ブクログ
読み始めたら止まらない。止まりたくない。
だって、少しの希望が見えて来たら、すぐに困難に立たされて、一体いつになったら相手をぎゃふんとやっつけてくれるのかとやきもきしていたら、続きが気になって気になって読むのを止められるわけがない。
でも、無情にも最寄りの駅に到着。
行きと帰りの電車の中が読書の時間である自分にとって、駅に着いてしまうのが残念なほど、この本に熱中していた。
集中しすぎて駅を乗り過ごしそうになること、数度。
内容は勧善懲悪。
本当にスカッと気持ちよくさせてくれた。
でも、浮かれて終わりではなく、しっかりと現実的な落とし所もあって最後まで感心しっぱなし。
大きく広がった話も全て決着を見せてくれた。
諦めずに最後まで頑張っていれば、結局は人情、人との繋がりだって、現実はそんなにうまく行かないってわかっているけれども、この話の人の何十分の一でもいいから頑張って、自分の信念貫いて生きていけたら格好いいなとちょっと思う。 -
Posted by ブクログ
まだ上巻なので、全体の感想は書けないけど、使いからしっかりとずっしりと感じる社会背景の重厚さ、奥深さにガッチリと心は鷲掴みされてしまった。
会話だけでテンポ良く、楽しく読み進めさせる本も面白いけど、それこそ「面白かった」の一言で終わってしまい、何か物足りなさを感じてしまうけど、
この小説は状況説明、背景説明の文章だけでグイグイと引き込まれてしまう。一見すると文字が多くて読んでいて飽きが来そうな気がするけれども、全くもってそんなことはない。その細かい説明がより感情移入を促し、社会悪として映る企業に対してはどんどん嫌悪感が増して、早くそんな企業をやっつけてくれと、主人公の中小企業を応援したくなってくる。
もしもこんな文章で社会の経済や歴史の教科書が書かれていたら、何度も読み返してその教科が大好きになるだろうに。何でこういう教科書はないんだろ。
全く関係ないけど、こうやってよく目の敵にされる大企業や警察、または政治家の人たちはこういう小説を読んだ時にどういった気持ちになるのだろうと、時々思う。
一体どういう結末が待っているのか、スカッと気持ちよく終わるのか下巻が楽しみです。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ足袋の老舗「こはぜ屋」が、足袋の業績悪化を危惧し次なる一手としてランニングシューズ業界に参入しようと孤軍奮闘する。
色々な仲間を得て、自社の従業員の力も借りながらついに目標であるトップランナー・茂木選手に「陸王」を履いてレースに出てもらうのだが…。
勧善懲悪が得意な筆者であるが、それほど色は濃くない。経営というものの困難さを前面に打ち出しているストーリーだ。物事はうまく行かない。うまいくいったかと思ったら問題が山積してしまう。失敗しているからこそ、見える景色もあるし支えてくれる存在にも気付かされるのだ。
うまく行っている時に人が集まってくるのは当たり前。辛い時に寄り添い励ましてくれた「陸王」の思いと、堂々と走り切った茂木選手の思いがリンクした時に胸が熱くなった。