あらすじ
中堅ゼネコン一松組の若手、富島平太が異動した先は、「談合課」と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾くぞ――たしかな技術力を武器に、真正面から入札に挑もうとする一松組の前に、「談合」の壁が立ちはだかる。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
ネタバレ 池井戸潤最高でした。この所10冊以上Unlimited出してるから、毎日の様によんでるが、この本と空飛ぶタイヤはとくに良かった、今迄、1000冊以上、サスペンス絡みの人間ドラマ読んでるが、結末に至るストーリーが、まるで映画観てるごとく、先が読めない様で、読むと感動してしまう、最高作品である。
「今回の地下鉄工事の入札で、なぜ一松組は他のゼネコンとJVを組まなかったのか。なぜ、談合の打ち合わせに尾形常務が出席しなかったのか。なぜ、他社の談合担当者が逮捕されたのにウチは誰も逮捕されないのか。それはつまり、これが最初っから尾形の策略だったからだ」
内部告発して検察に情報を流していたのは──尾形常務なんだよ」
「検察だよ。東京地検だ。俺も調べてみた。内藤っていうのは、今回の特捜部長だ。間違いない。尾形はこう考えたのさ。競争相手を談合で潰し、一松組だけが生き残って地下鉄工事を受注することはできないか。また、そうなれば全国で指名停止を食らった真野建設も山崎組も村田組も、しばらくはなにもできなくなる。それは一松組にとって千載一遇のチャンスだ。これぞまさしく談合特需だ、ザマーみろってな!」
「三橋の調整を失敗に追い込むことさ。調整が不調に終われば、社長の意向がどうあろうと公正入札に頼らざるを得ない。尾形さんの狙いは、談合潰しなのかも知れないぜ」
ただ尾形常務の計画に利用されるために来たんですか、ここに。談合課に」
潜る、とは、談合で取り交わされた約束を破り、低い価格で落札することを意味する。禁じ手というより、裏切り行為だ。
中堅ゼネコン一松組の若手、富島平太が異動したた。「三橋の調整を失敗に追い込むことさ。調整が不調に終われば、社長の意向がどうあろうと公正入札に頼らざるを得ない。尾形さんの狙いは、談合潰しなのかも知れないぜ」先は、「談合課」と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾くぞ――たしかな技術力を武器に、真正面から入札に挑もうとする一松組の前に、「談合」の壁が立ちはだかる。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!(講談社文庫)
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。
平太のこと、萌の事、談合課の事、そして入札の事。
談合という大きな話を取り巻く、それぞれのストーリーがテンポよく展開されていて、とても読みやすかった。
談合は、必要か、不要か、その答えは自分の中でも出なかった。ただ、一番心に刺さった考え方は西田の考え方で、初めは役所にアプローチをかけるような描写もあったが、結局、案件が欲しければ、他者との調整ではなく、自社が持つ知恵と技術で落とすべきだという信念が感じられた。
良し悪しのつかない物事を前に、正々堂々の信念を持てるような人になりたい。
工事を発注する自治体の、コストへの関心はもっと高まるべきだな。
Posted by ブクログ
大手ゼネコンと中小企業のゼネコン会社の存続と多大な収益を出す為に談合があることを知った。
闇のフィクサーの存在や政治家、金の猛者達がそんな談合を操っている。中小ゼネコンの一松組、若手の平太とその先輩や上司達の奮闘が手に取るように伝わってきた。
最後に笑うのは誰か脱談合は可能か?
この作者の物語は主人公になったつもりで読み更けてしまう。マジックだ。
Posted by ブクログ
裏切らない池井戸作品!
読み応えたっぷり!映画にはできないだろうなと感じる緻密ややり取りの積み重ね。
普段殺人が起こるような作品ばかり読んでいるので、日常的でありながらここまで面白いのはさすがだなあと思いました。
Posted by ブクログ
談合という重々しいテーマの中、平太と業務化のメンバーとのやり取りが緊張をほぐしてくれる気がして、すごく好きな登場人物たちでした。特に西田が最高だった。(笑)
Posted by ブクログ
どんどん話に引き込まれ、先が気になって、やめられない止まらない(笑
談合はルール違反、というのは分かっていますが、こんなに仕事に熱くなれるというのは、ある意味うらやましいと思ってしまいました。
Posted by ブクログ
談合。製造業で働く自分にとっても、その背景は理解できる話だと思う。
どの業界であれ、提供した価値に対して、適正な対価を享受できる構造にしていかないとダメだと最近思ってる中で、思ってくることをそのまま表現してくれる1冊だった。
Posted by ブクログ
池井戸先生の作品は本当にページを捲る手が止められない。。
談合をテーマにした作品
自分もサラリーマンなので組織にいる人間として主人公の心情に共感できるところが多数。。(犯罪に加担するという点では無いです)
ともあれ犯罪は犯罪
法治国家である以上、法律は守らないといけない当たり前が、大企業の数々の不祥事で基盤が揺らいでいる時代
改めてサラリーマンとしてあるべき姿を問わないといけないと思う作品でした
Posted by ブクログ
面白かった。
談合とはこのような形で行われるのかと、勉強になった。
ただ、萌の存在に最後までモヤモヤした。
平太とちゃんと別れてないのにもかかわらず、他の男と付き合う。
うーんという感想です。
Posted by ブクログ
富島平太は現場から本社に異動になり、本来違法な談合がはびこる業界の中でどのようにして自社の利益を上げつつ案件を取ってくるかに苦悩する
大局を見ることこそが大人で小さな視点で仕事をする平太とは価値観が会わないと感じる萌は次第に有能な先輩に惹かれていく
様々な人が寄り道を繰り返しながらあるべき姿に収束していく様は読者を捉えて離さない
Posted by ブクログ
一部難しくて分からないところもあったけど、入札のシーンなんかはすごく緊迫した。
にしても、働きすぎよ。
徹夜とか自分の予定を押し切ってまで、働き詰めになるのはキツイな。
業界としてはまだこんな世界があるだろうかと気になった。
初めは頼りない若手社員だった平太が他社の役員のやつらに毅然と意見を言う姿は格好良かった。
終始応援したいキャラだった。
西田さんも普段はチャランポランでも仕事は誇りを持った熱い男な感じがしてよかったな。
自分がここにいる意味とか青臭い存在論なんか考えるより、自分には何をできるか考えろ!
この言葉は、最近くすぶってる自分に一番印象に残った言葉だった。
園田がうざすぎたので-1
Posted by ブクログ
テンポよく読めて面白かった。
それぞれの立場があり、しがらみがある。それはどんな仕事でもきっとあるのだろうけど、未来に向けて変化していこうという熱い気持ちに共感した。
Posted by ブクログ
久々の池井戸作品は面白かった!
建設会社と政治家、談合と裏金をテーマに扱っていたが銀行や検察との関係も分かりやすく読みやすかった!企業とは何かそこで働く人間の正義感と倫理観の狭間で葛藤する姿が読んでいて感情移入を誘った。働く事に悩みを抱える社会人にはおすすめの一冊。
Posted by ブクログ
第31回 吉川英治文学新人賞
建築業界の闇を知ってしまった。
談合がなぜ必要悪とされてしまうのか、なにがしがらみになるのか、ざっくりとは理解できた。
疑問を持っても配属されたばかりの平太にどうすることもできないし、一松組で目先のことに悪戦苦闘する平太を、彼女の萌が俯瞰してみている気持ちになって冷めていくことに気の毒な気持ちになった。
萌が銀行で尊敬する上司の園田はいけ好かないけど、ドラマでは向井理だったと知ってますます平太に同情した。
池井戸潤さんの作品はサクセスストーリーが多い中、これは主人公が悪側なので今まで読んだ作品とは違う雰囲気を味わえた。
Posted by ブクログ
建設業のアカウントを担当することになり読破。
業界や談合、入札とは何たるかが詰まった内容だった。
企業が生き抜くには、利益を出し続けなければいけないのは当然で、厳しくも企業競争があるからこそ業界全体が成長していくことを改めて実感した。
自分の正義とは裏腹に、会社に身を置くサラリーマンとしての立場に平太はきっと葛藤していたに違いない。どんな状況下でも仕事に熱くなる平太の姿勢にこちらも熱をもらうことができた。
Posted by ブクログ
中堅ゼネコン勤務の主人公が談合と組織の壁に左右されていく小説。最後に種明かしのような解説でミステリー要素もあり、付き合っている銀行員の彼女の心が揺れ動く描写もおもしろかった。
Posted by ブクログ
富島平太は、一松組という建設会社で現場から業務課に異動し、新たな挑戦を始める。
業界の裏で行われる談合や不正に疑問を抱きながら、奮闘し続ける熱い物語。
この本を読んだ当時は女子中学生だった私にとって、「中堅ゼネコン(中規模の建築会社)」は少し難しく感じたけれど、本自体は読みやすくて面白かった記憶がある。知られざる世界を覗き見るような感覚があり、ワクワクした。
この本をきっかけに、池井戸潤さんの作品をたくさん読むようになった。
Posted by ブクログ
建設業を描く池井戸作品。
特に公共工事における談合。
談合は違法であるし、特に官製談合であれば贈収賄や政治資金規正法違反にまで繋がるだろう。
では民間だけの談合なら?もちろん違法ではあるのだが…
そんな所に切り込んだ池井戸作品。
確かに談合により不当に高額になると税金の無駄遣いという話ももっともであるが、作中にある『無理筋』な話も考えさせられてしまう。
経済の安定のため、無事に竣工するため等々。
そしてそこには人間ドラマサラリーマンの悲哀がある。それを読みやすい池井戸作品となればページをめくる手は止まらない。
ラストに明かされた事はなるほどと。でもそうなるとやっぱり辛いなサラリーマン。
三橋さんは純粋な人なんだろうなぁ。元々そうなのか、歳を重ねてそうなったのか。
面白い作品でした。
Posted by ブクログ
池井戸潤がゼネコン業界を書くとこういう面白い作品になる。バンカー目線もありつつ単なる経済小説ではなく、池井戸潤の小説には必ず中小企業や本作の主人公たちなどの現場で汗をかいている人たちの奮闘が必ず描かれている。半沢直樹シリーズのような勧善懲悪ではなく、清濁併せた現実的な状況下での決着になっているが、それでも読後は爽やかだ。
名古屋の地下鉄談合事件がモデルと言われているが、「談合=ゼネコン」というくらい国民のイメージは定着しているのではないだろうか。
その業界に身を置く若き主人公は理想と現実の狭間で悩み、悪いと分かっていても仕方ないと途中では無理に納得しようとするのがやるせない。「しがらみ」はただの言い訳、という台詞が出てくるが、その通りだと思う。
立場が変われば読み方も変わる。多分、ゼネコン業界の人がこれを読むと「うちらにはうちらの事情があるんだよ」と言うのだろう。
そしてずっとこの先も談合はなくならないのだろう。
Posted by ブクログ
サラリーマンの会社における、自分の気持ちと、あいたいする会社の利益の中で、もがき苦しむ姿が、悲哀に満ちていた。
社会悪が何故、生まれるか、社会の仕組みに翻弄される個人。
表面に現れたものだけでは判断するべきではないことを教えられた。
Posted by ブクログ
【鉄の骨】
池井戸潤さんの少し前の著書。
談合が当たり前だった建設業界、それに立ち向かう一人の若者の正義は勝つのか、それとも…。
企業人である以上、利益を得ることは大切。でもどんなことをしてでも利益さえあげたらいいということではない。
過去からのしがらみに縛られていてはいけない、と分かっていてもその慣習を打破すると不幸になることもある。
談合、実に罪深いものだなと率直に感じました。
読み終えた後の爽快感は、やっぱり池井戸ワールドでした
Posted by ブクログ
久しぶりの池井戸作品。ゼネコン業界の"談合"をテーマとした物語です。
一松組に勤める平太は、技術系の職務から入札を担当する業務課への異動を命ぜられ、入札事業における“談合"の存在を目の当たりにすることになります。
談合は悪いことではないのか…という戸惑いを抱きつつも、上司の指示に従い、関係者との調整に懸命に従事する様子が描かれています。
複数の会社の利害や、時には政治家を巻き込んだ“調整"の場では、様々なしがらみにがんじがらめになってしまって自分の意思を通すどころの話ではないのだな…と思いました。
本作では、平太を含めた業務課のメンバーが、あらゆる制約のなかでも必死に会社のために奔走する姿が印象的でした。
仕事に熱くなれるって、、、何かいいなぁ。
ずっしりボリューム感のある作品でしたが、熱い気持ちをいただきました♪
Posted by ブクログ
談合のことはよく知らなかったが、なるほどと思った。
主人公の部署の人達がアツく、二転三転していくストーリーに目が離せなくなる。
ただ彼女の萌にはイライラする。。。
Posted by ブクログ
ドラマの半沢直樹にハマっていたところ、
先輩から勧められて読んだ。
先輩西田が熱い。
平太が業務課への異動理由を
西田に尋ねた時の返答が熱い。
自分も頑張ろうって思えた。
それと彼女。
現実と理想の揺れ動きには
ハラハラとさせられた。
一旦園田の方にいった時の喪失感たるや。
最後、彼女が園田に送ったメール内容や
心理描写が気になりすぎる。
分厚い本だったけど、苦にならず読めた。
自分の今の仕事について
改めて考えることができた。
Posted by ブクログ
西田みたいな先輩に出会いたい。後輩も絡みやすい性格で、仕事が大好き(かつ優秀)で、上司にも必要に応じて強く発言できて、職場の家族を大切にできて…本作で一番好きなキャラです。
ストーリー自体は、入札・談合という話を非常に分かりやすく書かれており読みやすい。流石池井戸潤。
ただ新工法を見出してコスト大幅ダウンに成功した流れにはやや無理があると感じた。
不正は必ずしも自らの意思で行われるものでなく、巻き込まれていくことも多いのだろう。組織に入ると、その組織風土が当然で、今までの常識が非常識に感じることがある。そこで乗るかそるかを判断できる軸と強い意志を持ちたいと思った。
自分が平太と同じ状況に置かれていたらどうするかを考えながら読むと面白い。
Posted by ブクログ
池井戸潤の長篇小説。
2010年刊行。
吉川英治文学新人賞受賞作。
中堅ゼネコン・一松組の若手社員である平太は、ある日現場の施工管理から、常務直下の「業務課」に異動を命じられる。
現場志向の平太としては不満のある異動だったが、サラリーマンの宿命として受け入れる。
「業務課」は、気の弱い課長と、脂ぎったお調子者の中年社員、ミステリアスな美人庶務の3人しかメンバーがいない、社内でも謎とされている部署だった。
平太は「業務課」で、コストダウン交渉や役所への営業など、慣れないながらも仕事をこなしていく。
しかし、ある公共工事をきっかけに、平太は「業務課」が談合を取り扱う裏の顔を持っていることを知る。
平太は世間に背く不正行為である談合を初めは嫌悪するが、業界と会社を生かすための手段でもあることを知り、葛藤しながらも手を染めていく。
そして、日本の大きな談合を取り仕切る「天皇」三橋と出会い、地下鉄工事という巨額の「案件」に向かっていく。
以上が本作のあらすじ。
舞台の時代は明記されていないが、情景描写から推察するにバブル崩壊後かつリーマンショック前の1990年代後半。
当時の社会問題であった建設・土木の公共工事に関する「談合」をメインテーマに据えている。
池井戸潤の作品をちゃんと読んだのは初めてだったが、エンタメ性が高い作品だと思った。
ストーリーは長いが、それなりにテンポが良く、登場人物のキャラが分かりやすく立っているので読みやすい。
一方、ストーリーが単線的で、それ故に物足りなさを感じた。
意味ありげな設定が伏線になるわけでもなく、キャラの掘り下げも甘いので、ストーリーのためにすべてが存在するような、そんな感じが好みではなかった。
(トキワ土建が談合破りをした理由が後に繋がっていなかったり、色々雑)
本作は幾つかの対比が明確に描かれる。
生き残りのために談合をする建設会社とその正義を疑わずに強行する検察。
現実を直視して汚い仕事に手を染める平太と理想論に固執して平太を蔑む萌。
この分かりやすさが読みやすさに繋がっており、これが人気作家のテクニックなのだと思った。
ただ、萌の掘り下げがなかすぎて、単なる思考の薄っぺらいクソ女としてしか見れなかった。気になる読者は多いだろう。
(銀行員がリアリスティックなだけの無能だと言いたいなら、成功しているが)
現実の仕事とは、本書のようにドラマティックで分かりやすいものではない。
もっと単調で、退屈で、複雑で、煩雑で、難解なものだ。
しかし、現実の仕事にも本作における平太たちのようにえも言えぬ達成感を感じることがある。
池井戸潤はそれを理解して、エンタメに落とし込んでいる。
故に彼の作品はよく売れるのだと感じた。
Posted by ブクログ
一松組のような調整なく自社努力のみで受注できる会社がどのくらい存在するのだろうか。
談合はないとしても、営業が交通整理することで設計部門の技術力の成長を鈍化させることはあるかもしれない。そして営業力や自社のブランドにより技術力の低い会社が受注するということも。そもそも純粋な技術力のみで会社の優劣をつけることがナンセンスかも知れないが。
談合、買い叩きなど、一昔前の物語であったが、公共工事の大まかな流れを知るには良い本だった。
あと萌がクズすぎる。