本多孝好のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こんなに切なくなる警察小説は珍しい。
犯人を捕まえたら終わりじゃない。
語られない事の中に秘められた真実がある。
淡々と読み進めていたのに、そこに気づいた瞬間、泣きたい気持ちになってしまう。
中でも『ホワイト・ポートレイト』は印象的だった。
正しい刑罰とは何か、誰にとっての『正しさ』なのか。
考えてみても答えは出ない。
警察は正義のために奔走し、真実を追求する。
被害者は仕返しを許されていない。
だからこそ罪を最大化し、加害者に最大限の罰を与える。
確かにそれも正しいと思うのに、何故だか納得できずにいるんだよな。
個人的に、こういうテイストの作品が好きなのでシリーズ化して欲しいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「死ぬ時、なにを考えるだろう。」
印象としては、タバコの匂いや無機質な音を感じながら、静かに浸れる本でした。一気に読んでしまいました。
死を目前にした人々からは、色々な願いが出てきます。
自分は、何を考えるだろう。
死ぬことに関してはよく考えますが、この本を読み、考えが深まりました。とても現実的な死生観が描かれているのです。
死ぬということには抗えないし、
死を目前にする頃には実は自由に体を動かせない。
自分の人生におそらく意味はなく、死に意味もない。
だから、死を前にした人間が望むものもシンプル。
「死」
私がこの小説から感じたことでした。
本当にその立場になれば、この小説に描 -
Posted by ブクログ
ネタバレ待ちに待った文庫化!待ってた!
本田さんの話を読むと、割り切れないものとの向き合い方とか、法についての向き合い方とか、全てのものについての感じ方っていうのは、人の数だけあって、どれが正しいとかの問題ではないことが痛いほど突きつけられる。全部正義なんだ。登場人物の色々な思いがダイレクトに伝わってきて、そこにはもちろん自分にとって新しい発見もあって、とても新鮮。毎回勉強になる。
ラストは元恋人が主人公を車で迎えに来て、車が発進していくところで終わる。なんだかデジャヴと思ったら、momentのときもそうだった。この表現は、自分の中で区切りをつけて、気持ち新たに未来へ進んでいくことを表しているのかしら -
Posted by ブクログ
ネタバレMOMENTからの7年後を描かれた作品。
MOMENTは神田が主で、森野の存在は薄かったし、神田が探偵のようなそうでもないような、そういうストーリだったのに対し、本作は森野が主となりストーリーが展開していく。
前作で森野側の気持ち、はなんとなく感じていたけれど、神田は気づいているのかいないのか……?な印象だった。
でも、本作では7年の間に変化した2人の関係もところどころに。
飄々として見える森野だけれど、すごく責任感が強い人なんだと感じた。継いでしまった葬儀店を放り出せないからなのか、自分の中の「女の部分」を許容できず、神田を幸せにできる自信がないのか?
女であることを許せないような、そ -
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ネタバレ順番が違っていて、最後に読むべきMEMORYを最初に読んでしまったことに気づいた。
改めて読み返すことに決め、本作を。
個人的に、本多孝好氏の作品が好きだ。
ひねくれているかのような主人公に、不真面目な生き方をしているように感じる方もいると思う。
でも、本作も「本音」が描かれている作品だと思う。生きていくために取り繕うではなく、分からないから分からないと素直に言うみたいな。
淡々としつつ、死生観や、自らの生き方、世の中の理不尽さ、それらに気づき考えさせられる。
人が死を目前にしたときに望むもの。
死ぬ前にひとつだけ願いが叶えられるとしたら?
死を目前にする人たちは素直ではなく、騙したり、 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ「文体が村上春樹に近い」と言っている方がいたので、じゃあきっと好きだなと思って読んでみた。
確かに文体は近い。でもハルキの方がクセあるかな。そんなことより内容が面白い。ミステリーチックで引き込まれる。
しかしact2の中学生とキスしたところでいよいよハルキじゃんと思った。主人公の男性がモテるってやつ。相手の女の子が不思議ちゃんかメンヘラちゃん。
act3の上田さんは、身につまされて辛かった。
しかしデート中の神田がキザでちょっとイラッとした(笑)ハルキ読んでる時と同じ感覚のイラつき。
ミステリーチックと言っても結局生と死をテーマにしているから、結局やっぱりハルキっぽいなと思ってしまった