Posted by ブクログ
2013年03月30日
少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。
そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。
彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side‐Aから始まる新感...続きを読む覚の恋愛小説。
偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。
やっぱり本多さんが書く人物はどれも魅力がある。
不器用である種開き直りも見せている主人公。
交通事故で死んでしまった、水穂。
プールで出会うかすみ。妹のゆかり。
ゆかりの婚約者の尾崎さん。
べらぼうに金持ちの野毛さん。
その他みんな個性があって面白い。
激しい恋愛の後摩耗して、疲弊しきった時に雨宿りの様な恋がある。
そんな風に思う。
それは雨宿りであって、止まない雨は無いのも事実。
だけどそれは必要であって、そこに愛が無いとも言い切れない。
序盤の祥子との関係もそういうものだろう。
そして主人公はそういう関係性を求めていたし、そういう人が主人公の周りに集まって来ていた。
主人公の上司の小金井さんの恋も何気に切なすぎる。
小金井さんの10年間にどれほど押しつぶされるような思いがあったのだろうか。
きっと主人公が雨宿りの様な恋が出来ていたから、かすみとの関係維持できたのだと思う。
人と人との交わるタイミングって不思議なもんだ。
そんでもってその雨宿りが帰る所になるときだってある。
引用させてもらえるならば、
人生は偶然も必然も無い。ただそこにあるだけだ。
自分もそう思う。