松本清張のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
東亜製鋼株式会社東京支店の販売部第二課約50名が3月の慰安旅行で修善寺温泉に出かける。夜の宴会が終わりかけた時、こっそり抜け出した杉岡課長が行方不明となり、新年度に入ってから惨殺死体で発見された。動揺する社内の様々な人間模様を見つめ、エリートだった杉岡の死の謎を追って独自の調査を進める二人の女性社員。真相追及の過程が彼女らの手記という形式で語られていく。
400ページ余にわたる長編で、事実を拾い出し時系列で整理したり、関係する人物の洗い出しや行動背景を推理していく様子が多くのページを割いて、リアルに綿密に描かれている。 内容的にも、杉岡に支える富崎、野村両次長、庶務主任の田口の社内力学、容貌 -
Posted by ブクログ
「黒の奔流」2024、BSテレ東放送
八月十六日、京都〝大文字〟の夜。興奮にざわめく人混みに紛れて、一つの情事が進行していた。しかしその最中、人妻は送り火に見とれる男の前から姿を消した。
同じ時刻、油壺と三宅島の間では、人妻の夫が参加するヨットレースがおこなわれていた。女を見失い、呆然と東京に戻った男の耳に飛び込む夫のヨットでのクルーの死亡事故、そして、男の家のすぐ近所で人妻の遺体が発見される。これらの点は結ばれるのか。
鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。
ほかに「証言の森」
「種族同盟」(映像化作品「黒の奔流」原作)
「山」の計四篇を収録。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の『顔・白い闇』を読みました。
以下の五編から構成されている短編集です。
■顔
■張込み
■声
■地方紙を買う女
■白い闇
推理小説の部類に入る作品だと思いますが、心理描写に優れているので、ヒューマンドラマとしても愉しめる作品でした。
心理描写の素晴らしさに加え、海外の作家の作品と違い、人物名や地名に親近感があるので、情景がリアルに想像しやすく、読みながら作品の中の世界へどんどん惹き込まれて行く感じ。
でも、殺人事件の現場に居合わせるような感覚は、気持ち悪さもあるんですよね。
あんまりリアル過ぎて、神経をすり減らしながら読んだ… って感じでした。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の短篇ミステリ作品集『松本清張ジャンル別作品集(4) 法廷ミステリ』を読みました。
「松本清張」の作品は、昨年2月に読んだ『新装版 鬼火の町』以来ですね。
-----story-------------
「トモ子」の許嫁「宗一」が殺人の主犯として逮捕された。
事件当夜、「宗一」と寝ていた「トモ子」は、「宗一」が部屋を空けていた時間があったにも拘らず「宗一」と一緒にいたと証言する。
一審二審と「宗一」は有罪になるが、「トモ子」は一貫して「宗一」のアリバイを主張。
裁判は最高裁まで進み、差し戻される可能性が出てきた。
そこでも、これまで通りの証言をするつもりの「トモ子」だったが、ある -
購入済み
作品の演出としてか、石川県各地の陰鬱な雰囲気が強調されていた。私はそうは思わないが、松本清張にはこの地の風景がそんな風に見えたのか…。ただ、重要な舞台である能登の海岸(私が行ったのは冬の夜にライトアップされた機具岩)を前にすると、本作に描かれたように烈風が吹き付け、奇岩のおどろおどろしい感じもあって恐ろしかったのは確か。この地を旅した清張が何を感じたか考えながら読了した。
筋については、先の展開が気になるようなタッチなのでどんどん読み進めることができた。 -
Posted by ブクログ
たまにはこういう古い社会派小説が読みたくなる。殺人の冤罪で死刑となった兄を救うべく、高名な弁護士に依頼するが、費用が払えないことと、この弁護士が浮気相手の密会に急ぐために断られる。その後、この兄は獄中死し、妹は弁護士に復讐を誓う。この弁護士は、依頼を断った罪悪感から、裁判記録を取り寄せ独自の調査を行おい、この兄が無実であることを確信する。一方、弁護士の愛人が思わぬ事件に巻き込まれ、殺人者の容疑をかけられる。彼女の無実を証明する鍵を持っているのは、この妹。真犯人の存在を知りつつ、復讐を優先し、愛人と弁護士を破滅に追い込む。結局、真犯人は明るみに出ず、無実の人間が二人死刑となり、一人は社会的地位を