松本清張のレビュー一覧
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数々の日本史に残る芸術家に関する短編小説。
何を成し遂げたか、というよりも、人間性に迫っていくところが面白い。
もちろん、具体的なところは、想像でしかないわけだが、それをうまく作り込んでいる。
例えば、一流の芸術家だとしても、世代交代というものに思い悩むことがあるだろうし、素晴らしい芸術家ほど、精神的に脆弱であり、二重人格であるかもしれない。
また、ここで取り上げられる芸術家は、歴史上は、表面的には取り上げられる機会が少ないのかもしれないが、例えば、茶道家などは、政治とも深く関係があったわけで、そのような史実を学ぶ上でも有益なヒントを与えてくれる。
ただ、どうしても短編小説なので、ここか -
Posted by ブクログ
読み終えて上手い話で人を安易に信じてはいけないと思ったけど、これは騙されるよな。
ただ話の辻褄が綺麗なくらい合っていくので、途中からもしやこれはどんでん返しの復讐劇が始まるんだろうなとも思っていた。
作者も間違いなく銀座でタバコの煙を燻らせながらバアでお酒をセンセーって言われながら飲んでいた筈だ。
実在のホステスにほのかな恋をし、結局実らなかったものだから恨み節で、実際では何も出来ないので、小説の中でどん底に落ちる恐怖を与えてやろうっていう復讐劇だったのかもしれない。
もしくはホステスから様々な悪い事例を聞いていて、それらをヒントにして書いたのかな。
怖かったけど面白かった。 -
Posted by ブクログ
【松本清張読み返し7冊目】
2024-8-26(月)松本清張『駅路』傑作短編集(六)を読み終えました。この短編集全6巻は、松本清張の短編作品を現代小説・歴史小説・推理小説に分けて、3つの領域を各2巻にまとめたものです。本書は推理小説分野の第2集で、傑作短編集全6巻の最終巻でもあります。
読売新聞の「松本清張 今日的意義問う」「分析する書籍刊行続く」という見出し記事で取り上げられていた『松本清張の昭和史』と『松本清張はよみがえる』を読んだのをきっかけに、松本清張作品を読み返そうと思いたちました。本書で7冊目です。学生時代に松本清張の作品はかなたり読んだと思い込んでいたけれど、読み返してみ -
Posted by ブクログ
うーん面白い。
短編集の構成としては推理小説を集めた巻ということだけど推理小説とも少し違う犯罪小説集。驚きトリック自慢の浅い推理小説とは一線を画す。
どの作品も戦後の社会の中で生きる人の心をバックグラウンドにして職人芸的なお話を作り上げる松本清張の手腕が冴える。「鬼畜」は幼い緒形拳の出ている映画がテレビで放映されていてトラウマ的に怖かったけどこういう原作なんだな。「張込み」の人間ドラマ。「顔」のスリル。「声」のアイディアと偶然のプロット。「地方紙を買う女」の登場人物の個性とトリック。「一年半待て」の法的な組み立てと皮肉。「投影」の正義感とマスコミ。「カルネアデスの舟板」の破綻に至る心の動き。