松本清張のレビュー一覧

  • 小説日本芸譚

    Posted by ブクログ

    数々の日本史に残る芸術家に関する短編小説。
    何を成し遂げたか、というよりも、人間性に迫っていくところが面白い。
    もちろん、具体的なところは、想像でしかないわけだが、それをうまく作り込んでいる。

    例えば、一流の芸術家だとしても、世代交代というものに思い悩むことがあるだろうし、素晴らしい芸術家ほど、精神的に脆弱であり、二重人格であるかもしれない。

    また、ここで取り上げられる芸術家は、歴史上は、表面的には取り上げられる機会が少ないのかもしれないが、例えば、茶道家などは、政治とも深く関係があったわけで、そのような史実を学ぶ上でも有益なヒントを与えてくれる。

    ただ、どうしても短編小説なので、ここか

    0
    2024年09月15日
  • なぜ「星図」が開いていたか―初期ミステリ傑作集―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    「清張以前」「清張以後」という表現が面白い。確かに、なぜ成長にはまったかと言えば「トリックの面白さ」より「人間の心理を突く、動機を探っていく」所に酷く惹かれたと断言できる。

    文庫本の裏表紙にも「誰もが持ちうる後ろ暗さや焦り」をち密に張り巡らしていく成長の作品は他の追随を許さない。

    サスペンスドラマの原作に欠かせなかったといわれるけれど、個人的に言えば「原作を貶めただけで、低レベル」の記憶しかない。その主役級に引っ張りだことなった男女タレントは見るのもいや(笑)

    0
    2024年09月10日
  • 黒革の手帖(下)

    Posted by ブクログ

    読み終えて上手い話で人を安易に信じてはいけないと思ったけど、これは騙されるよな。
    ただ話の辻褄が綺麗なくらい合っていくので、途中からもしやこれはどんでん返しの復讐劇が始まるんだろうなとも思っていた。
    作者も間違いなく銀座でタバコの煙を燻らせながらバアでお酒をセンセーって言われながら飲んでいた筈だ。
    実在のホステスにほのかな恋をし、結局実らなかったものだから恨み節で、実際では何も出来ないので、小説の中でどん底に落ちる恐怖を与えてやろうっていう復讐劇だったのかもしれない。
    もしくはホステスから様々な悪い事例を聞いていて、それらをヒントにして書いたのかな。
    怖かったけど面白かった。

    0
    2024年09月07日
  • 張込み―傑作短編集(五)―

    Posted by ブクログ

    人はふとしたきっかけで道を見誤る。そこに気づくのか否か、それとも気づいても引き返せない倫理の欠如か、罪は静かに加速する。松本清張の短編はそれぞれ終盤の畳み掛けが圧巻である。もはやバッドエンドに向かう必至が人の業の深さに通底する。欲は怖さを兼ね備えている。表題以下珠玉の短編集。見とるぞ、見とるぞ…

    0
    2024年09月05日
  • なぜ「星図」が開いていたか―初期ミステリ傑作集―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    顔☆☆☆☆
    殺意☆☆☆☆
    なぜ「星図」が開いていたか☆☆☆☆
    反射☆☆☆☆
    市長死す☆☆☆☆
    振込み☆☆
    声☆☆☆☆
    共犯者☆☆☆☆

    ミステリ小説は好きですが、松本清張作品をガッツリ読んだのは今回が初めてでした。
    ミステリとの出会いが江戸川乱歩、横溝正史だったので、その対抗としての社会派ミステリ代表・松本清張を避けていた感じです。

    ただ読んでみると、どの作品もしっかり作り込まれていて、ひねりもあり、面白かったです。

    0
    2024年09月08日
  • 駅路

    Posted by ブクログ

     【松本清張読み返し7冊目】
     2024-8-26(月)松本清張『駅路』傑作短編集(六)を読み終えました。この短編集全6巻は、松本清張の短編作品を現代小説・歴史小説・推理小説に分けて、3つの領域を各2巻にまとめたものです。本書は推理小説分野の第2集で、傑作短編集全6巻の最終巻でもあります。

     読売新聞の「松本清張 今日的意義問う」「分析する書籍刊行続く」という見出し記事で取り上げられていた『松本清張の昭和史』と『松本清張はよみがえる』を読んだのをきっかけに、松本清張作品を読み返そうと思いたちました。本書で7冊目です。学生時代に松本清張の作品はかなたり読んだと思い込んでいたけれど、読み返してみ

    0
    2024年08月28日
  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―

    Posted by ブクログ

    人間の弱さとそんな人間を生きさせる希望とそれを支える愛。それは少しずつなんとか倒れないように、それでも少しでも良い体勢になるように努力をするが、やはりいずれ崩れてしまう。その滅びの美しさ、怖さが凝縮された小説たち。どの作品も徐々に崩壊していく登場人物たちの世界が愛おしくなるほど哀しい。

    0
    2024年08月27日
  • なぜ「星図」が開いていたか―初期ミステリ傑作集―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    学生時代に松本清張にハマって読んでたことがあるのですが、数十年ぶりの再読です。自分の立場や環境が変わると感じ方も違いますね。

    倒叙ミステリー多めの短編集です。ザ・昭和な風景でタバコや愛人を囲う金持ちがバンバン出てきます。でも不思議と今読んでも面白いです。

    トリック重視ではなく、追い詰められて犯罪を犯した人間の心理描写が、清張の色褪せない面白さだと思います。読者が犯人になって追いつめられるドキドキが味わえます。今でも頻繁にドラマ化されている理由が分かる気がします。

    0
    2024年08月26日
  • 松本清張ジャンル別作品集 : 6 社会派ミステリ

    Posted by ブクログ

    短篇ながらどれをとっても味わい深い。さすが社会派ミステリーの松本清張である。時代錯誤を全く感じさせない奥深さがあると思う。

    0
    2024年08月20日
  • 張込み―傑作短編集(五)―

    Posted by ブクログ

    うーん面白い。
    短編集の構成としては推理小説を集めた巻ということだけど推理小説とも少し違う犯罪小説集。驚きトリック自慢の浅い推理小説とは一線を画す。
    どの作品も戦後の社会の中で生きる人の心をバックグラウンドにして職人芸的なお話を作り上げる松本清張の手腕が冴える。「鬼畜」は幼い緒形拳の出ている映画がテレビで放映されていてトラウマ的に怖かったけどこういう原作なんだな。「張込み」の人間ドラマ。「顔」のスリル。「声」のアイディアと偶然のプロット。「地方紙を買う女」の登場人物の個性とトリック。「一年半待て」の法的な組み立てと皮肉。「投影」の正義感とマスコミ。「カルネアデスの舟板」の破綻に至る心の動き。

    0
    2024年08月19日
  • 犯罪の回送

    Posted by ブクログ

    清張先生の小説は面白い。この小説は解説で最後の小説なんだと知った。1992年8月4日に清張先生はお亡くなりになられた。今2024年8月で、32年前。お書きになられた小説はいまだ古びない。

    0
    2024年08月14日
  • 点と線

    Posted by ブクログ

    ドラマ化、映画化もされている有名な作品。な割には、どんなあらすじだったか思いだせない…と思い、手に取った。
    怪しいと睨んだら、とことん矛盾がないか考察、検証していく様は面白かった。

    なるほど、結局のところ状況証拠のみで、時刻表を使ったアリバイ崩し。怪しい点と点が一本の線になった時、事件の全容が明らかになるのだが、最後の手紙でも憶測でしか真実?であろうもの(きっとそれが真相なんだろうが)を語れないのが、モヤモヤ…
    今で言う、「それって貴方の感想ですよね?」的な感じで、本人じゃないのになんで解るんだよ!とツッコミを入れてしまった。

    0
    2024年08月12日
  • 危険な斜面

    Posted by ブクログ

    謀(はかりごと)はなぜ成就しないのか。未来という時間の流れと人の感情という想定外要素が必ずや邪魔をする。それは意図的ではなく図らずもそういう運命なのかもしれない。何気なく過ごす日常に企みは潜んでいる。それを暴くのは決して正義ではない、因果から抜け出せない人の欲への愛おしさである。綺麗事では決して人の心は掴みきれないのだ。松本清張はその代弁者であろう。

    0
    2024年08月11日
  • 遠い接近

    Posted by ブクログ

    多分再読。全部忘れてたけど。執念の物語。ここで書かれていることが本当ならやり切れない。微妙な年齢の人は、上手く立ち回れば戦争に行かなくて済んだってこと。
    軍隊の理不尽さ、ほんとにバカらしい。

    0
    2024年08月03日
  • 渡された場面

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    やっぱり松本清張の作品は動機や事件経過がリアリティに溢れてて好きだ。二人の女を同時に妊娠させて片一方を殺すような酷い犯人だけど、盗作したり犯行現場に近寄るのすら躊躇ったりするような小物感が拭えないのも人間味がある。こういう人間が起こした事件、ごく当たり前に新聞に載ってそうと思わせるのがすごい。

    0
    2024年07月29日
  • 黒革の手帖(下)

    Posted by ブクログ

    読み終わって「はぁー」と声が出た
    “わるいやつら”同様に、序盤は主人公の傍若無人ぶりに苛立ちを感じながら、後半は没入して主人公の焦りや恐怖が自分ごとのように感じられて読み進めたくなくなる(けど気になるから読む)

    0
    2024年07月18日
  • けものみち(下)

    Posted by ブクログ

    読んでる時は小滝にうるさく迫る民子にイライラしたけど好きな男に盲目になった女ってこうなっちゃうよな、弱みになっちゃうよな、って読み終わってから腹落ちしました
    最後は、あぁ!と驚きの感嘆の声が出るような結末でした
    情事に耽るシーンが多いのであまり人には勧めにくい

    0
    2024年07月17日
  • わるいやつら(下)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    背筋が凍るような感覚がありつつも下巻は一気に読んでしまいました。
    戸谷の焦りや恐怖が自分のことかのように感じられ、終盤は気が気ではなかったです。
    最後まで自省がなく他責思考なのは反社会性パーソナリティなのかな、なんて思いました。救いようがない愚かな人間をここまで描写できるのは流石としか言いようがありません。

    0
    2024年07月15日
  • 小説帝銀事件 新装版

    Posted by ブクログ

    何十年か振りに読み返したけど、やっぱ仁科の考察からの何かが欲しかった。
    でも自分で後は考えろっていう事なんだと思っとく。

    0
    2024年07月14日
  • Dの複合

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    謎が謎を読んでどんどんわからないことが増えて…を繰り返して読んでいった先に気づけば一周まわって戻って来てたみたいな話だった。大掛かりすぎる気がするけれど、それだけ深いものを抱えていたのかななどと考えたり。

    0
    2024年06月28日