松本清張のレビュー一覧

  • 黒地の絵―傑作短編集(二)―

    Posted by ブクログ

    「二階」「拐帯行」「黒地の絵」「装飾評伝」「真贋の森」
    「紙の牙」「空白の意匠」「草笛」「確証」の9つの短編が収録。表題にもなっている「黒地の絵」は、朝鮮戦争中に九州は小倉にあった米軍基地での黒人兵士脱走と小倉市民への危害や被害の実話が素材になっている。他の作品も、アカデミズム、白い巨塔に対する鬱積や企み、虐げられた仕返しをしたつもりが逆に嵌められて、組織防衛のために犠牲になる人間など、読み応えのある作品ばかり。

    0
    2020年02月26日
  • 危険な斜面

    Posted by ブクログ

    本作の中の''二階''に五つ星です。
    もしかしたらと、読者の予想が松本清張に追いつきながらも、彼の作品の特徴である個々の感情を描写しており、読者をあっと驚かせる展開へ。
    男性はどう捉えるか分かりませんが、女性には読んで欲しい作品です。

    0
    2020年01月25日
  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―

    Posted by ブクログ

    新潮文庫の「松本清張傑作短編集(一)」は推理小説でもなく時代小説でもなく、現代小説をまとめたということです。昭和40年初版発行ですから、この文庫になさるとき、著者自身も存命で何らかのかかわりを持たれていたのではないか、ですから自信作ではないかと。今回その個々の作品を再読してみまして、たしかに清張さんの特徴が一番よく出ている作品群だなと思いました。

    市井の研究家は努力してよくできれば怨まれるし、出自学歴によってさげすまれもし、いじめにも会い、世間の風は冷たい。

    例えば​「石の骨」​
    人骨化石を嵐の後の崖崩れから拾い、古代の研究をひそかにしているので知識豊富なれば、旧石器時代の人骨と確信し

    0
    2020年03月17日
  • けものみち(上)

    Posted by ブクログ

    主人公は中風のろくでなしの夫を持つ妻。夫とはホステス時代に出会って結婚。その中風の夫を放火で殺害。中居として務めていた料亭で出会ったホテル支配人の仲介で中居を辞め、高齢の大物のもとで仕えることに。しかし、仕えた高齢男性も寝たきりの中風だった。放火に不信を持った刑事の思惑も主人公に接近。

    0
    2019年10月24日
  • 黒い福音

    Posted by ブクログ

    昭和34年に実際に起こった「スチュワーデス殺人事件:英国海外航空の現役スチュワーデス:武川知子さん(27歳)が川の畔で死亡しているのが発見。解剖の結果、他殺と断定されて、捜査が始まる。遡上に上ったのは、武川さんが通っていた都内杉並区にあるカソリック教会のベルギー人神父。結局、神父の帰国によって未解決のまま。」を素材とした作品が本書。

    0
    2019年10月19日
  • 蒼い描点

    Posted by ブクログ

    昭和34年に発行された作品。女流作家の原稿係を担当する若手女性出版社社員が主人公。主人公は、入稿が遅れている女流作家を追って、箱根を訪れる。そこで遭遇した知り合いの中年フリーライターの自殺事件に遭遇。警察の自殺の見立てに不信を感じ、一方、担当する女流作家の代筆疑惑も持ち上がり、同僚の男性社員とその真相解明に動き出す。箱根、犬山、秋田、真鶴と全国を当時の国電で動き回る。携帯電話もな時代、電報や遠距離電話の申し込み、速達便などが連絡ツール。

    0
    2019年10月15日
  • 天才画の女

    Posted by ブクログ

    銀座の有名画廊に、新人女流画家が自身の作品が持ち込まれる。安く買い取り、得意先絵画コレクターが購入した高額絵画の「おまけ」として付けられた。が、買い取った顧客は、この「おまけ」の作品に心酔。ここからストーリーが展開する。作品数が少ない新人女流画家。新人を育て囲い込み、大きな利益を上げようとする画廊。

    0
    2019年10月13日
  • 小説日本芸譚

    Posted by ブクログ

    アーティスト快慶を嫉妬するプロデューサー運慶、足利義嗣が自刃したのちに足利義持に放逐された世阿弥、下品な秀吉を軽蔑していた千利休、絵は下手だったが中国で構図の妙を手に入れた雪舟、商人の茶道を否定し武家の茶道をつくりあげた古田織部、師匠らしい師匠につかなかったため画流ルーツが漠としている岩佐又兵衛、茶碗の目利きしか家康に能を見出してもらえず武士としての手柄も稼がせてもらえなかった小堀遠州、俵屋宗達をうまく操作し商売人としての技量のほうこそ注目される本阿弥光悦、個性の強すぎる画のため売れずに屈折した東洲斎写楽、テーマが古すぎて上手にまとめることができなかった止利仏師のこと、松本清張の博学がふんだん

    0
    2019年08月25日
  • 十万分の一の偶然

    Posted by ブクログ

    よくもあしく松本清張先品である。いわくさほど知られていないらしい。けれども、エンターテインメントの王道をいっている。時代はちょっと前だけど、そこを考えて十分楽しめる。

    0
    2019年05月30日
  • 黒革の手帖(上)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    松本清張てこんなに面白いのか(゚д゚)!と覚醒させられた。
     悪女元子がしたたかに金銭を奪う犯罪を達成し、その過程で多くの人の恨みを買い、最後には欲と怨念におぼれて大逆襲を喰らってしまう。銀座を舞台にしてるところも、中洲に出入りするオトナになって読むと少しはピンとくる。取材や描写が実に丁寧で、展開も息つかせぬスリリング。
     架空名義預金・医学部への裏口入学・隠蔽第1の銀行だったり、個人情報管理がずさんだったりそもそも携帯電話が全く登場しなかったり、古い時代に書かれてはいるものの、何度も時代背景を修正してドラマ化されるのは、悪女の行動が言葉は悪いがまことに魅力的に描かれた傑作だからにほかならない

    0
    2019年01月19日
  • 黒革の手帖(上)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    凄くいい!
    著者は、数字に強いのが窺えます。
    どうしようもなく救い難い男共を翻弄し、更なる高みへ目指す悪い女、元子。
    なんだかスカッとします。
    同時に女性は読んだほうが得な内容になっています。
    しなやかさ、駆け引きの巧みさ、美しい日本語…お手本になると思います。
    裏切らない内容。
    面白く下巻を読みます。

    0
    2018年12月16日
  • 黒い画集

    Posted by ブクログ

    短編七編のうち四編までが、男と女の愛憎を描いている。
    一般論として、女の嫉妬は時として激しいが、男の嫉妬は醜悪に見える。
    と、つくづく思わされたのが「坂道の家」である。
    全体的には、男には男の立場の秘密、女にも同様に持ち合わせているのです。
    自らの安全と出世を願う人たちは、誰しもが持っている不透明な部分を、見せかけのアピールで透明性を保つことで、組織の中で安心感を与え出世コースを辿るのであろうが、少しでも不透明な部分を見せてしまうと排除されてしまう。

    0
    2018年11月26日
  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―

    Posted by ブクログ

    小倉の松本清張記念館に2回も行ったけど、点と線しか読んだことがなかった。これは濃ゆい。短編集なのになかなか読み進めなかった。
    人間の生き様の描かれ方が文字通り「濃密」なんじゃないかと思う。
    実在の人物をモデルにした作品は特にすごい。

    あまりにも不器用というかそんなんじゃ生きづらいだろうなぁでもそうしか生きられないんだろうなぁと思うようなところが何よりその人の魅力であるというあたりがすごい。

    0
    2018年10月27日
  • 紅い白描

    購入済み

    赤い白描

    一気に読みました。最後に思いがけない展開になり本当に面白かったです。松本清張の本は若い頃から読んでます。

    0
    2018年05月23日
  • 雑草群落(上)~松本清張プレミアム・ミステリー~

    Posted by ブクログ

    岩波書店は2018年1月12日に10年ぶりの改訂となる「広辞苑」の7版を発売する。
    時代とともに意味が広がっているとして、「やばい」が追加されるということで、大分ニュースにもなっていた。
    意味は「のめり込みそうである」

    上巻を読み終わった。この作品“やばい”!

    0
    2017年11月28日
  • 黒革の手帖(上)

    Posted by ブクログ

    ドラマで武井咲が演じたのを見て、原作に興味を持って読み始めた。
    時代も昭和50年代だし、主演の元子は銀行員でも、派遣ではなかった。
    しかも、美人でもなかった。
    それでも、ドラマとはまったく違ったストーリー展開がすごく引き込まれるものがあり、これが松本清張なのか!と、実は初めて松本清張も読んだのだ。
    固いイメージがあったけれど、とても読みやすい文章。手に取るように思い浮かんでくる情景。
    顔と違って、優しい文面。
    色んな意味で驚いた。
    何度もドラマ化されている理由も分かる気がする。
    すぐ下巻読みます。

    0
    2017年10月01日
  • 黒革の手帖(上)

    Posted by ブクログ

    武井咲さん主演ドラマの原作です。この小説はかなり前の時代に書かれたものですから、もちろんいま放映中のドラマとは違いますが、本は本として楽しめます。

    ストーリー本編のなかに、その時代の社会的な問題や事件なども織り混ぜられており、社会派ミステリーの要素たっぷりです。

    登場人物の名前は、殆どがテレビドラマと一緒なので、小説の人物名とテレビの俳優(女優)さんの顔を想像しながら読むのもいいかも。

    0
    2017年08月09日
  • 砂の審廷 ――小説東京裁判

    購入済み

    NHKの東京裁判とは全く違う本

    過日NHKが受信料を無駄遣いし、カナダ。オランダと合作で東京裁判なるテレビドラマを作成し史実に基づいたような印象操作を行っていたが、しょせんあのテレビ局は自虐洗脳をいまだにおこなっている。

    それに引き換え松本清張のそれは史料に基づき実に正鵠を射た展開となっている。
    主役は大川周明のようだが彼を基軸にこの裁判の偽善性と理不尽と不真実さなどよくわかるだろう。

    0
    2017年07月16日
  • 熱い絹(上)

    Posted by ブクログ

    タイのシルク王という実在した人が行方不明になった事件をインスパイアして書かれた作品です。この事件は未解決であり、真実は闇の中です。
    そして、上巻しか読んでいない私にはこの物語も未解決で、真実は闇の中です。
    似たような状況の事件が置き、それらの関係性が徐々に明らかになっていきます。物語に吸い込まれていきます。早く下巻買わないと!

    0
    2017年06月06日
  • 張込み―傑作短編集(五)―

    Posted by ブクログ

    松本清張『張込み 傑作短編集(五)』新潮文庫。

    松本清張の初期作品8編を収録した短編集。いずれの短編も、ミステリーというよりも普通の人間が内に秘めている業を炙り出しているかのようだ。既読作が多いが、さすがに30年ほど前に読んだ作品なので、細部については忘れている。

    『張込み』。強盗殺人犯の石井久一が訪ねたのは今は普通の主婦で、かつて恋仲にあった女だった。石井を逮捕するために張込む刑事の柚木は主婦の暮らしを壊さないことを願うが…ヒリヒリするような緊張感が文章から伝わる。

    『顔』。劇団員の井野良吉に銀幕デビューの幸運が舞い込む。しかし、井野には知られてはいけない過去があった…井野良吉と石岡貞

    0
    2017年05月09日