松本清張のレビュー一覧
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新潮文庫の「松本清張傑作短編集(一)」は推理小説でもなく時代小説でもなく、現代小説をまとめたということです。昭和40年初版発行ですから、この文庫になさるとき、著者自身も存命で何らかのかかわりを持たれていたのではないか、ですから自信作ではないかと。今回その個々の作品を再読してみまして、たしかに清張さんの特徴が一番よく出ている作品群だなと思いました。
市井の研究家は努力してよくできれば怨まれるし、出自学歴によってさげすまれもし、いじめにも会い、世間の風は冷たい。
例えば「石の骨」
人骨化石を嵐の後の崖崩れから拾い、古代の研究をひそかにしているので知識豊富なれば、旧石器時代の人骨と確信し -
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アーティスト快慶を嫉妬するプロデューサー運慶、足利義嗣が自刃したのちに足利義持に放逐された世阿弥、下品な秀吉を軽蔑していた千利休、絵は下手だったが中国で構図の妙を手に入れた雪舟、商人の茶道を否定し武家の茶道をつくりあげた古田織部、師匠らしい師匠につかなかったため画流ルーツが漠としている岩佐又兵衛、茶碗の目利きしか家康に能を見出してもらえず武士としての手柄も稼がせてもらえなかった小堀遠州、俵屋宗達をうまく操作し商売人としての技量のほうこそ注目される本阿弥光悦、個性の強すぎる画のため売れずに屈折した東洲斎写楽、テーマが古すぎて上手にまとめることができなかった止利仏師のこと、松本清張の博学がふんだん
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ネタバレ松本清張てこんなに面白いのか(゚д゚)!と覚醒させられた。
悪女元子がしたたかに金銭を奪う犯罪を達成し、その過程で多くの人の恨みを買い、最後には欲と怨念におぼれて大逆襲を喰らってしまう。銀座を舞台にしてるところも、中洲に出入りするオトナになって読むと少しはピンとくる。取材や描写が実に丁寧で、展開も息つかせぬスリリング。
架空名義預金・医学部への裏口入学・隠蔽第1の銀行だったり、個人情報管理がずさんだったりそもそも携帯電話が全く登場しなかったり、古い時代に書かれてはいるものの、何度も時代背景を修正してドラマ化されるのは、悪女の行動が言葉は悪いがまことに魅力的に描かれた傑作だからにほかならない -
購入済み
NHKの東京裁判とは全く違う本
過日NHKが受信料を無駄遣いし、カナダ。オランダと合作で東京裁判なるテレビドラマを作成し史実に基づいたような印象操作を行っていたが、しょせんあのテレビ局は自虐洗脳をいまだにおこなっている。
それに引き換え松本清張のそれは史料に基づき実に正鵠を射た展開となっている。
主役は大川周明のようだが彼を基軸にこの裁判の偽善性と理不尽と不真実さなどよくわかるだろう。 -
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松本清張『張込み 傑作短編集(五)』新潮文庫。
松本清張の初期作品8編を収録した短編集。いずれの短編も、ミステリーというよりも普通の人間が内に秘めている業を炙り出しているかのようだ。既読作が多いが、さすがに30年ほど前に読んだ作品なので、細部については忘れている。
『張込み』。強盗殺人犯の石井久一が訪ねたのは今は普通の主婦で、かつて恋仲にあった女だった。石井を逮捕するために張込む刑事の柚木は主婦の暮らしを壊さないことを願うが…ヒリヒリするような緊張感が文章から伝わる。
『顔』。劇団員の井野良吉に銀幕デビューの幸運が舞い込む。しかし、井野には知られてはいけない過去があった…井野良吉と石岡貞