あらすじ
救援物資の横流し、麻薬の密輸から殺人事件まで、“神の名”のもとに行われた恐るべき犯罪の数々。日本の国際的な立場が弱かったために、事件の核心に迫りながらキリスト教団の閉鎖的権威主義に屈せざるを得なかった警視庁――。現実に起った外人神父による日本人スチュワーデス殺人事件の顛末に強い疑問と怒りをいだいた著者が綿密な調査を重ね、推理と解決を提示した問題作。
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昭和34年に実際に起こった「スチュワーデス殺人事件:英国海外航空の現役スチュワーデス:武川知子さん(27歳)が川の畔で死亡しているのが発見。解剖の結果、他殺と断定されて、捜査が始まる。遡上に上ったのは、武川さんが通っていた都内杉並区にあるカソリック教会のベルギー人神父。結局、神父の帰国によって未解決のまま。」を素材とした作品が本書。
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実際にあった未解決事件を元に書かれた小説。綿密な取材を元にストーリーは展開されていく。著者は死体のあった現場等にも足を運んだそうだ。事件は俗に言うスチュワーデス殺人事件。容疑者には教会の神父があがったが、裏に潜む闇の人物、教会とのつながり、どれも確信に近いものだったのに当時の時代背景によって、国際問題に発展する可能性を秘めたこの事件は慎重に扱わざるを得なかった。モタモタしているうちに容疑者は国外へ。事件は闇の中へ葬りさられてしまった。この小説が事実に近いものならば…殺された被害者は一体どういう気持ちの中、死んでいったのだろうか。死に顔は穏やかで笑みを浮かべているようだった。とあるが最後まで愛を信じたのだろうか。
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実際の事件を基にした作品。
いつの時代にも本来行く場所に行くものを
くすねる愚か者は存在します。
こともあろうか、それが「聖職者」だったのです。
しかも聖職者どもは
平然と禁忌を破り、快楽にふけっていたわけで。
もう神って何?となってしまいますね。
結局のところ女におぼれた男は
その女を悪事に加担させることに失敗し
抹消するという悲しい事態へと落ちます。
ただし、その男か?というと疑問で。
日本が敗戦国だったことで起きた
痛ましい事件です。
でも、こんなことがあっても
人は弱くて、過ちを繰り返すんですよね。
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『砂の器』の後に読んだ。あらすじにも記載がある通り「BOACスチュワーデス殺人事件」が元となっているノンフィクション小説である。実際の事件を調べると公訴時効が成立し、お蔵入りとなったのである。なお、解説には「著者一流の推理と解決を示したもの」とあったので、清張先生はどのよう解決したのか楽しみにしていたら、案の定、生田世津子を殺害したと思われるトルベックは帰国してしまう挙句。教会を前にして日本警察は完全敗北となったのである。ノンフィクションだからか。 私自身初めてに等しいノンフィクション小説だった。
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上手いな〜〜描き方
官能小説じゃねーかと思ってたら怖い話じゃん…書き方が客観視点なのが救いがなくて怖い
これは神を信仰する宗教をディスった話?
ミステリーって著者の考えが出てこないという点で怖い、サイコパスみたい
松本清張って何を書きたい人なの?
やっと捜査始まるんかい!!
ランキャスター氏が世津子を襲うって、普通だったらわざわざ自分の手を汚すようなことしないと思うけど、そういうことが罷り通ってた時代ってことなんだろうな…
実際にあってお蔵入りになったってのがやだなあ
そうゆうものにメスを入れる感じで書いたわけね
"実際犯罪の新解釈"っていうジャンルがあるのか…
松本清張ってそうゆう人なんだ
この人自身に興味が湧くな
松本清張記念館に行ってみたいから頑張って他のも読もう
昭和45年の作品が全く古びれずこんなに夢中になってしかもかなり読みやすく読めるなんて
エンタメじゃないからかな
Posted by ブクログ
再読。ノンフィクション・ミステリー。
戦後という日本が国際的に弱い立場の時代、キリスト教宗教集団の名に隠れて、救援物資の横流し、麻薬の密輸の犯罪が行われ、あげくに殺人事件も隠されようとする。
翻弄され殺されたのは、そのころ憧れの職業スチュワーデスの女性。殺したのは若い神父。
こういう昭和時代の黒い部分を、描かせたら一品の清張節をふたたび満喫。
Posted by ブクログ
解説を含むと文庫で699ページに渡る長編でありますが、
読み始めるとどんどん気になり、第二部はほぼ一気に読んでしまいました。
先日、三億円事件と黒い福音がドラマスペシャルで行われていて、
そこで気になった原作本。
ドラマでは、第一部がほぼ割愛され、ビートたけしさん演じる
刑事たちの視点がメインとなっていたので、
原作を読むとトルベック側の状況がよくわかりました。
宗教組織を守る、という一点で、その目的のためなら
麻薬の密輸までも行う。
トルベック神父、ルネ・ビリエ神父の欲望に負けて破戒の日々を
歩むのに、それをうまく自分のなかでごまかして、納得させて
悪事を働く姿を見て
宗教組織というものに属することへの恐怖を感じてしまいます。
正義をふりかざせる立場の危なさよ。
「聖職者が人殺しをするうなどと考える奴らは、魂に悪魔が棲んでいます」
といいますが、夜ごと女性と肉体関係を持ち、砂糖、麻薬などの密売を繰り返す
聖職者は、悪魔そのものではないのでしょうか。
結局、首相が、控えているヨーロッパ外交への影響も考え、
犯人であるトルベックや関係する人物を国外へ。
検索すると当時の首相である岸信介は、ノーベル平和賞候補に推薦されていたとか。
全体の権益を考えたら、1人の人殺しなどどうでもよい、という人が
ノーベル平和賞受賞にならなくて良かったと思います。
小説ではありますが、事実もほぼ等しいと、私は考えますので。
警察の現場レベルで頑張っても、上層部からの圧力で悔しい思いをする。
こういう物語は、昔も今も変わらないことが残念です。
松本さんのこのジャンルの他の作品も読みたいと思いました。
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たけしのドラマを先に見たので、原作が読みたくなって読みました。ドラマが先だったので特に違和感もなく伏線なども分かってよかったです。
竹内結子演じる江原の役が、あまりに原作と違い過ぎたのに笑えました。
それよりも何よりも久しぶりの松本清張が面白かったけど時間がかかった。
文章が今どきの作家と違ってきちんとしてるけど堅苦しい。でも読みごたえはある。
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社会派松本清張の憤怒がこの作品を生み出した。
50年前の日本人スチュワーデス殺人事件を扱った本書は
終戦後の日本の国際的地位の低さと
勝戦国から流入した、人、物、金、そして思想がいかに敗戦国である日本に影響を及ぼしたのか、教えてくれる。
清張の取材力と、原動力となった怒りが、本書を映えさせている。
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「黒革の手帳」が本気で何が面白いのか分からなかったので、僕のなかで松本清張は火曜サスペンス劇場の人ぐらいのポジションになってしまっていたのですが、この「黒い福音」はよかった。
そもそも僕は、吉村昭作品のようなノンフィクション小説が好きで、本を読み終わったあとは「現実すげー」とアホ面で元ネタの事件について色々調べたりして賢くなった気になっているわけですから、同じく現実に起きた事件を下敷きにしたこの「黒い福音」が面白くないはずはなかったのでした。
しかしこの作品のすごいのは、吉村昭小説では出来る限り事実に即して物語が描かれるのに対し、犯人が結局捕まっていない殺人事件の犯人の行動を全部書いてしまって、「こいつが犯人です」と真顔で言ってしまうところ。
様々な人たちの思惑や、政治情勢の影響によって結局検挙されなかった犯人に対し、そして世界に対し、毅然とNOを突きつけられる文学の可能性を僕は、火曜サスペンスの人だと思っていた松本清張に教えられたのでした。やっぱり読まず嫌いはダメですね。
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聖職者として身を捧げようとする外国人神父が、一人の女性と恋に落ちる。彼をとりまく教会関係者と裏で暗躍する巨大犯罪組織が、信仰心と愛欲の狭間で葛藤する彼を巧みに利用しようとして、悲劇が起きてしまう。
純粋無垢な神父が追いつめられ犯罪に手を染めてしまうまでの過程と、そして宗教団体をとりまく巨大な闇組織の全貌を後一歩まで追いつめる警察官の様子が非常にスリリングに描かれ、最後まで目が離せなかった。
しかしこのストーリーが実際に起きた殺人事件を基に作られたということを知った時が一番震撼してしまったが・・
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実話に基づく推理小説。
スチュワーデス殺人事件とその背後にある教会と密輸組織の関与を暴く。
久々に読んだ松本清張。最後に捕まらないところがスッキリしないけど、実話に基づくなら仕方ないか。
他のもまた読んでみたい!
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同じ教団に所属する者として戦慄したのは、本作によってではなく、当時の週刊誌のインタビューに載ったある女性作家のコメントである。
司祭による殺人(容疑)というセンセーショナルな事件に対し、この作家は以下のように述べている。
「神父様の瞳をご覧になって下さい。澄み切った美しい瞳です。決して人を殺せるような方の目ではありません」
ベルメルシュ神父(作中ではトルベッキ神父)は2009年時点でカナダの地元の名士として存命中であった。この事件についてはノーコメントを通し、死者への哀悼のことばはなかったと聞く。
なお本事件に関し、日本のサレジオ会(作中ではバジリオ会)でも真相を曖昧にした当時の教会当局のあり方を批判する声があることは明記しておきたい。
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中央公論社のハードカバーな清張。清張は文庫だらけなので稀。
真っ黒なジャケットに、真っ赤な紙ととっても凝った装丁です。お洒落!
外国人宣教師が関わったとされるスチュワーデス殺人事件を題材にした内容で、
清張にしては珍しく美男美女がしかもロマンティックに書かれてます。
ネタバレになるのであまり書きませんが、
前半の平穏な舞台と、後半の怒涛の事件の流れが面白いです。
推理小説というより、ゴシップ的な面白さかな。さらっと読めて楽しかったです
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昭和30年代に実際に起きた、外国人神父による
スチュワーデス殺人事件に題をとった話です。
事件の概要を聞くと、「ひどい!!」と思うのですが、
小説を読んでみると犯人にちょっと同情してしまい
ます……。
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ぐいぐいと読ませてしまう筆致は流石と思うのだけれど、多分に強引というか、まあ実際のところもこのとおりなのかもしれないけれど、日本の国際的立場の弱さや宗教集団の閉鎖権威主義に対する作者の憤りで展開していってる気もして、その辺りがちょっとな、と思ってしまった。
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小説としては面白かったが、現実にあった殺人事件だと思うと、とても胸糞悪くなりました。(口が悪くてすみません。)
敗戦国であること、その時から今も続く白人主義が根底があるものと想像がつき、そう言ったことから被害に遭った方に対して、日本人としても女性として悔しく哀しい気持ちになった。
松本清張の作品が好きな理由として、一人一人の心情細やかなこと。
この作品も登場人物の心情が丁寧に書かれており、特に第二章の刑事と新聞記者の複雑かつ切羽詰まっている心の描写は面白く、一気に読んでしまいました。
加害者(とされている)当の神父は100歳を目前に亡くなっているようで、この事件をどう背負って生きてきたのかせめて亡くなる前に問いただしたかった。
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犯罪はどこで道を誤れば至るのか。聖人君子ではない神父もまた人として道を見誤る。裏社会にも通じる圧力は時に政治や世間体へと影響する。真実を突き止められずに終幕する未解決事件、悔恨が日常の営みに溶け込んでいく。忘却へと流される被害者の無念が私たちの心にひっそりと宿した時に変えよう変わろうという声となることを望む。変えなければならないのは世間よりも先に私たちなのだ。
Posted by ブクログ
☆☆☆2019年2月レビュー☆☆☆
松本清張の小説からは「昭和」を感じる。この作品は実際に昭和34年に起きたスチュワーデス殺人事件を題材に描かれた小説である。
グリエルモ教会は「布教」の名のもとに、密輸、支援物資の横流しで大きな金銭的利益を得ていた。「密輸」を生業とするランチャスター氏と深い関係を持ち、それがスチュワーデス殺人事件に繋がる。
直接の実行犯はトルベック神父であるが、彼もまた追い込まれて罪を犯したという意味では「被害者」ともいえる。殺人を犯すまでに追い込まれたトルベック神父があまりにも憐れだ。恋人である生田世津子を自ら手にかけるその精神的苦痛が、読んでいた痛いほど伝わってきた。
新聞記者と刑事のやり取りや、人々の生活描写から時代を感じることもでき、最後までスラスラ読めた。
Posted by ブクログ
実際にあった殺人事件を元に、事実を推測し物語にしたもの。結構分厚く、持参のブックカバーに入らなかった。それだけに読みごたえはあるが、難しいと思うことなく時間を忘れて読み進めた。
あまり推理もの等を読まない身としては偏見として、警察は悪役に回るものなのかなと思っていたけどこの話はそうではなかった。寧ろ日本の警察の力❨勿論権力のことではない❩に期待をかけていたような感じさえ受ける。教会側は教会側として、初めから詐欺だとかなんだとするというのではなく本気で布教するなら国の法律を犯してもよいというところに基づいているところもなんとなく歯切れの悪いところ❨※これは誉め言葉です❩。
構成としても江戸川乱歩の初期作品のように、実際の犯行を先に書き後から明かしていくというのもよかった。
Posted by ブクログ
実際に起きた事件をもとにしていることから、リアリティはあるが、事実に忠実なぶん内容が平凡になっているように感じられた。
それにしても、当時のサレジオ会ってめちゃくちゃやってたんだなあ。幾ら時代が違うとはいえ、唖然とする。
Posted by ブクログ
なんでも実際の事件をもとに描かれた物語なんだそうな。戦後日本で急成長した某キリスト教団体の黒い金脈とスチュワーデス殺人事件のなぞを解くみたいな。松本清張のサスペンスは事件の解決そのものよりその裏にある人間のドロッドロした有様が描かれてて好きです☆