レビュー
歴史の教科書などで子どもの頃から知っていた事件ではあったが、都心で起きた事件だったのねという程度の認識だった。3年ほど前NHKスペシャルの未解決事件ファイルを視聴したことにより、興味の扉が開き、底なし沼に落ちていった。
さらにその頃実家の墓探しをしており、椎名町の寺に墓見学後、後日帝銀事件はその寺のすぐ裏手で起きた事件だったことを知り益々事件が身近なこととして感じられるようになった。
私にとって松本清張は若い時分にもちろん読んだことはあったが、代表作を数点読むのみで当時はあまりハマらない作家だった。
帝銀事件は松本清張の作品をまず基礎知識として読まないと始まらないというわけで、この作品から読み始めた。
丹念に調べ上げて一応フィクションという設定で作られている。
これを読む限り、警察の捜査は旧日本軍の731部隊関連まで追求していたにもかかわらず、名刺捜索班からあぶりだされた画家を犯人に仕立てあげられてゆく。
その画家は、性格的にも金銭的にも清廉潔白ではなかったことが災いしてしまったという筋書き。
個人的には名刺捜索班からあぶりだされた容疑者の中に歯科医がいてこの人のほうがまだ怪しそうだったが、事件後死亡していたのでそれ以上の探索はできなかったようだ。凶悪事件には生きている犯人の逮捕が必要なのだ。
物的証拠もないのに自白があったり、アリバイがない(実際はあるのだが家にいた、家族と一緒にいたはアリバイにならない)ことで犯人に仕立てられてしまう旧法の恐ろしさも思い知らされた。
当時から何でも犯人はGHQがらみだという結論に不満を訴える読者はいたようだが、GHQ占領後まだ日も浅い時期にこの内容を小説という形でも発表できた松本清張という作家はあらためてすごい。
満足度★★★★
小説帝銀事件 新装版
角川文庫
著:松本 清張1909-1992
ISBN:9784041227695
。出版社:KADOKAWA
。判型:文庫
。ページ数:288ページ
。定価:600円(本体)
。発行年月日:2009年12月
。内容紹介
占領下の昭和23年1月26日、豊島区の帝国銀行で発生した毒殺強盗事件。捜査本部は旧軍関係者を疑うが、画家・平沢貞通に自白だけで死刑判決が下る。昭和史の闇に挑んだ清張史観の出発点となった記念碑的名作。発売日:2009年12月25日
以上出版書誌データベースより引用