松本清張のレビュー一覧
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今更ながら、初松本清張で、当たり前のように面白かった。声を記憶するのに長けた電話交換士の「声」。殺人を犯したにも関わらず俳優として映画出演する「顔」。そして、自分の犯した罪を確認するために、地方新聞を買う「地方紙を買う女」。さすがに隔世の感のある設定のものもあるがそれを差し引いても設定、展開の面白さに圧倒されます。単なる推理もの(「投影」のようなトリックものもあるけれど)ではなく「張込み」「鬼畜」など人間関係について考えさせられるもの、「カルネアデスの舟板」のような刑法(緊急避難の法則)をベースにしたものなど、広くて深い。少しづつ、松本清張の世界に浸りたいと思いました。
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Posted by ブクログ
ようやく読み終わった!
というのも、分厚くてボリュームまんてん、そして物理的に重い!!
松本清張の本を読んだのは初めてだったのですが、スラスラ読めてしまう面白さでした。
短編7作という贅沢な内容!
手に取ったきっかけは、60年から61年にかけて公開された映画「黒い画集」シリーズ三作を観たことでした。
「遭難」を原作とした「ある遭難」の脚本で、好きな映画監督の1人である石井輝男が参加していたことを知り鑑賞。
(「あるサラリーマンの証言」は橋本忍が脚本!)
松本清張は有名だし、たくさん映像化もされているけど、やはり昔の作品な上分厚いので読み切れるかなと少し不安がありましたが、読み始めると夢中 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の長篇ミステリ小説『新装版 遠い接近』を読みました。
『表象詩人』、『溺れ谷』に続き、「松本清張」作品です。
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過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた「山尾」に、召集令状が届く。
この一枚の紙が、「山尾」のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。
古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った「山尾」は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う。
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「朝日新聞社」発行の週刊誌『週刊朝日』に『黒の図説』として発表されたシリーズ -
購入済み
『二階」
当作者の作品の大半は読んでいるが、長編、短編ともに高い完成度を持ったものが多い。中でも本編の「二階」は圧巻である。
登場人物を極めて少なく限り、舞台設定も、主人公の夫が伏せている病間のある二階である。主人公である印刷業を細々と経営している妻が夫の家政婦の登場で心理的に追い詰められていくサスペンスの盛り上がり方は読者を最後まで一気に引き込んで離さない。二階がこれほどまでに遠く、恐怖に満ちものになるとはだれが想像しえたであろうか。意のままになるはずの一介の家政婦の存在は夫婦の大きな亀裂を作り悲劇へと導く。短編ならではの筆致と構成に作者の技量を感じた。