あらすじ
白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。責任を一身に背負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者・田村の応援を得て、必死に事件の真相を追う。二人は事件の背後にうごめく巨大な組織に立ち向かうが、手がかりは次々に消え去ってしまう…。複雑怪奇な社会の裏に潜む悪の実体をあばき、鬼気迫る追求が展開するベストセラー。
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Posted by ブクログ
探偵役が会社員、素人だから手当たり次第に手掛かりを探すストーリーでつい感情移入してしまうし、
事件を追う動機も信頼してくれた上司の弔い合戦で応援できる。
東京名古屋なんて新幹線使えよって思ったけどまだ開通してなくて驚き
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面白い作品だったので、一気に読みきってしまいました。
白昼の中、手形詐欺にあうところから話が始まる。主人公の上司の無念をはらすため、主人公の友人の新聞記者とともに詐欺の主犯格を探す。今では考えられないような社会の常識も、当時は当たり前の部分もあり、突っ込みどころ満載だが、作品としては次のページが気になるほどの面白さでした。
ただ、どうしても気になるのが、黒幕がわかったところ。特に、犯人があっけに取られるほどの劇的な終わりをむかえるところです。初めて読むスピードが落ち、その部分を二度読んでしまいました。
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待ってくれ...!結局二見ヶ浦の旭波荘にいた舟坂は誰だったんだ...?!すごい威圧感で田村と一緒に汗かきながら読んでいたのだが??
そして結局最後まで竜雄と上崎絵津子が出会わない事に動揺した。2人の出会いが読みたかった。
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全容の見えない事件と数多くの謎が次々と現れていくのが面白い。テンポも良く読みやすい。
ただ、全体を通じた大トリックがあるというよりは、いくつかのトリックを最後にまとめて解き明かす形式のため、そこのスペクタクルは人によっては物足りなく思うかもしれない。
また、竜雄の上崎絵津子に対する脈絡のない好意や、一部のトリックの動機に対する疑問は少し残った。
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巧妙な手形詐欺で3000万を騙し取られ責任を取り自殺した会計課長の部下の萩崎竜雄は、義憤に駆られ真相究明に動き出す。友人の田村と共に探っていくが、組織によって第二第三の事件が起きる。長編小説だが、会社員の主人公が命の危機に直面しながらも上司が死んで真犯人がのうのうと生きているのが許せないという気持ちで踏ん張るのが共感する。
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「松本清張」の長篇ミステリー作品『眼の壁』を読みました。
『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
手形詐欺の驚くべき手口!
上司の汚名を晴らすため、ひとりの男が立ち上がった。
傑作サスペンス!
白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。
責任を一身に負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた「萩崎」は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て必死に手がかりを探る。
二人は事件の背後にうごめく巨大な組織悪に徒手空拳で立ち向うが、せっかくの手がかりは次々に消え去ってしまう……。
複雑怪奇な現代社会の悪の実体をあばき、鬼気迫る追及が展開する。
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「松本清張」の短篇を連続3冊読んで、久しぶりに長篇を読みたくなったので本書を選択しました。
400ページを超える長篇でしたが、面白かったので、一気に読んでしまいました、、、
昭和32年の4月~12月に『週刊読売』に連載された作品なので、それから60年近くの年月が経っていますが、現在でも十分愉しめる内容に仕上がっていますね。
昭和電業製作所の会計課長「関野徳一郎」は、つなぎの資金を調達しようとして、R相互銀行本店の会議室でパクリ屋グループによる巧妙な詐欺(篭脱け詐欺)に引っ掛かり、3,000万円(現在だと4億円くらいとか…)の手形を詐取される、、、
会社は大損害を被り、その責任を感じた「関野」は自殺、遺書により過程を知った「関野」の部下「萩崎竜雄」は、自ら真相を追跡しようと決心… 学生時代の友人で新聞記者の「田村満吉」の協力を得ながら事件の真相を探る。
この序盤の展開から物語に引き込まれましたねぇ… 「萩崎」に感情移入して読み進めました。
「萩崎」と「田村」は、「関野」が付き合いのあった高利貸の「山杉喜太郎」や、その女秘書「上崎絵津子」を探るうちに、早い時点から事件の黒幕として右翼の「舟坂英明」の存在に気付きますが、なかなか核心に迫ることができません、、、
その間に、会社からの依頼で事件の真相を探っていた顧問弁護士「瀬沼俊三郎」の部下で元警察官の「田丸利市」は、犯人グループの一味と目されるバーテンダーの「山本一夫(本名:黒池健吉)」に近付こうとして「黒池」が射殺されます… その後「瀬沼」が誘拐され長野県西筑摩郡の山中で死体(死因は餓死?)として発見され、「黒池」も同県北安曇郡の山中で白骨化した死体(死因は自殺?)として発見されます。
「瀬沼」と「黒池」の死については、静養を理由に荻窪の自宅から伊勢に移動した「舟坂」が裏で糸を引いていると思われますが、巧妙なトリックにより、なかなか真相に辿り着くことができません、、、
しかし、二人は「瀬沼」を東京から列車で運び出したトリックや山中に迷い込み餓死したと見せかけたトリック、「黒池」の死体を数日で白骨化させて死後数ヶ月と見せかけたトリックを暴き、そして「舟坂」の正体… 不明だった出生の秘密(出身地や「黒池健吉」、「上崎絵津子」との血縁関係)を解き明かして、アジトとしていた瑞浪(岐阜県)の精神病院「清華院」で追い詰めます。
そして、衝撃的な結末、、、
次に命を狙われていた「上崎絵津子」が沈められるはずだった濃クローム硫酸の風呂に自らが落ちてしまい、跡形もなく溶解… 現在の映像技術で映画化すると、かなりグロテスクなエンディングになりそうですね。
本作品、昭和33年に「佐田啓二」主演で映画化されているようです、、、
当時のことなので、エンディングシーンは、そんなにリアルに描かれていないだろうと思います… プロットや展開は面白いので、機会があれば観てみたいですねぇ。
以下、主な登場人物です。
「萩崎竜雄」
電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。
本作の探偵役。
「田村満吉」
新聞社社会部の記者。
竜雄の学生時代の友人。
「関野徳一郎」
昭和電業の会計課長。
竜雄の上司。
「瀬沼俊三郎」
昭和電業の顧問弁護士。
「岩尾輝輔」
長野県選出の代議士。
「山杉喜太郎」
麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
「上崎絵津子」
山杉商事の女秘書。
「舟坂英明(山崎事務長)」
戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。
荻窪在住。
「梅井淳子」
西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。
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白昼の銀行で巧妙に仕組まれた手形詐欺が起こる。
責任を負った会計課長は自ら命を絶った。
会計課長の部下・萩原は、友人の新聞記者・田村とともに真相を追う。
真相を追ううちに、背後に巨大な右翼団体が見えてくる…
そして、殺人事件、誘拐事件が起こる…
昭和30年代前半なのに、古臭さは感じない。
電報や電話の取り継ぎ、特急『はと』、急行『なにわ』には、昭和レトロを感じる。
餓死に見せかけて殺す⁇
もっと楽に殺す方法もあっただろうに…
なぜ⁇
もっとも今ならすぐに捕まりそうではあるが…
Posted by ブクログ
手形詐欺で自殺に追い込まれた上司の無念を晴らすべく部下と友人の新聞記者が追うサスペンス。黒幕の正体など既視感は有るが寧ろ社会派サスペンスの元祖なのでこちらが元ネタであろう。
社会派と称しつつもキチンとトリックを取り入れているところは良かった。
Posted by ブクログ
清張没後30年 WOWOWドラマ化。契約してないので観れませんが。なぜ、眼の壁を?まだ本棚に残っているので再読です。
資金調達に窮した昭和電業製作所。白昼のとある相互銀行(平成5年相互銀行法廃止)で、三千万(今だと4or5億くらい?)の手形詐欺にあってしまう。担当者は自殺。部下に遺書ともいえる事件の詳細を書いた手紙を残す。部下・萩崎は友人の新聞記者と共に、事件を追い始める。それは、連続殺人事件へと繋がっていく。
経済犯罪小説の先駆け。事件に絡む右翼組織。作者らしい、伊勢や木曽などの地方都市への旅情。
今では考えられない社会常識の中での推理小説ですが、最後まで何を追い詰めているのかさえもわからない名作だと思います。
でも、これ小説の手順で手形パクリ詐欺ができるとは思わないでくださいね。詐欺事件の手法としては、簡易すぎます。手形を準備していますけどを、融資の種類、手形貸付あるいは割引手形か、さえも明確でない。まして、融資取引を契約していない銀行とは不可能。なーんて重箱の隅突いていたら、作者は、そこのところを故意に簡易化したようです。
この詐欺の後の事件の背後を重視ですね。
そして、なんと今年度後期に手形交換所がなくなるみたいなんですよね。なんと電子化。今では、電子手形なる物も利用されているとか。経済犯罪も電子化でしょうか。現物の手形を使った詐欺のドラマはそろそろ最後ということでしょうか。
Posted by ブクログ
6月のWOWOWドラマ前なのでネタバレなしで。
初めて松本清張作品を拝読した。
前半のねっとりゆっくり丁寧な描写で物語の世界に惹き込まれた。
要素が集まり物語が展開し始めると非常にスピーディーで夢中になり一気に読めた。
Posted by ブクログ
資金にショートした民間会社。短期資金調達のために金融業者・高利貸金業者社長の口利きで相互銀行から資金調達できることになる。しかし、その実態はパクリ屋、詐欺集団の手中に落ちる。資金調達の担当者は、自殺。その真相を調べるために、その部下、部下の友人の新聞記者が奔走する。右翼団体、代議士、戦中戦後の混乱、貧村地域の悲哀、偽装殺人など徐々に真相が明らかになっていく。
Posted by ブクログ
「点と線」で推理小説作家としての注目を集めた松本清張が次に送り出した作品。
「大衆作家=松本清張」として巧いと感じるのは、導入部分。大企業の経理課長が単純な手口で手形をだまし取られ、自殺へと導かれる。そして、課長の敵討ちへと立ち上がる部下の主人公。この部分だけで重厚な短編小説ができそうだ。
このリアルな導入部分があり、一気に先を読んでしまおうという気にさせる。小説を読ませようとする、ベストセラー作家の高等テクニックだ。
物語の導入部分で観衆を引きつけることは、時代を経ても、その物語の完成度に重要だ。
と、導入部分に感動したけど、ぶっちゃけ、「眼の壁」は導入部分が一番おもしろい。
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手形詐欺事件を苦に自殺した上司の仇を撃つべく、萩崎は記者の友人と組んで調査に乗り出す。相手は右翼の大物。事件の鍵を握る女の影。萩崎は密かに恋心を抱く。
『ゼロの焦点』とは違って、ラストはあっけない点や黒幕の背景がボカされた点が悔やまれるところではあるが、テンポも良いし、サスペンスとしてもすこぶる面白い。
Posted by ブクログ
★特長
本文528ページ
ミステリー小説紹介のYouTubeきっかけで知る。
1957年週刊読売にて連載。
1958年松竹映画化。佐田啓二主演。
2022年WOWOWで連続ドラマ化。小泉孝太郎主演。
手形詐欺に端を発する連続殺人事件の謎を描いた傑作ミステリー。
★魅力
戦後十年後くらいの昭和時代のミステリー
手形、電話、電報、電車の仕組みなど
昭和のレトロな風俗がノスタルジック
事件解決のヒントを握るミステリアスな美女への
主人公の恋心
★感想
物語中頃までは推測ばかりで、
事件の核心にせまれませんでしたが、
ラスト残り30パーセントくらいから、
展開が速くなり、引き込まれました。
文章は分かりやすく、読みやすかったのですが、
内容的に少し物足りなかった感がありました。
もっと新しい作品も読んでみたい気がしました。
★オススメの人
昭和のレトロなミステリーに興味のある方
★メモ ネタバレあり
昭和電業製作所 工場、支店で5千人
堀口次郎
パクリ屋 30歳前後 長顔
上崎の紹介で会う
大山利雄
R相互銀行常務取締役
萩崎竜雄
電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。本作の探偵役。
恩ある上司関野を死に追いやった犯人を追う。
田村満吉
新聞社社会部の記者。竜雄の学生時代の友人。
関野徳一郎
昭和電業の会計課長。竜雄の上司。
湯河原で首吊り自殺。
瀬沼俊三郎
昭和電業の顧問弁護士。
田丸利市
瀬沼弁護士の部下。元警察官。
「ベレー帽」
岩尾輝輔
長野県選出の代議士。
手形パクリ詐欺で名前を利用された
岩尾輝次
精神科清華園院長
山杉喜太郎
麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
金融業、高利貸
上崎絵津子
山杉商事の女秘書。
舟坂英明
戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。荻窪在住。
46〜47歳
炭鉱会社恐喝など
伊勢市で濃硫酸と重クローム酸カリ大量購入
梅井淳子
西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。
舟坂の最近の愛人
山﨑
舟坂の事務長
山本一夫(黒池健吉)
「彼」
犯人一味と思われるバーテンダー
田丸を射殺して逃走
元中学校教師 長野県 春野中学生
小柴は元教え子
小野繁太郎
山本の紹介者
ホステス、バーテンダー斡旋のブローカー
32歳 華奢 元ダンス教師
小柴安男(安公)
22歳 近視 眼鏡 背が低い
アメリカ物資のブローカー
府中競馬場で黒池先生に再会
黒池先生に拳銃を販売
マリ子(パン助)のヒモ
アメリカ兵と喧嘩し、左脛骨骨折で入院
加藤大六郎老人
信州南佐久郡春野村
横尾の集落在住
上諏訪→小淵沢→海ノ口駅からバス
「健吉」や「音」の子供の頃を知る
Posted by ブクログ
松本清張を読むと、いつも思うことがある。
物語を強引に、都合のいい方に持っていくということである。
本作でも、いくつも見受けられる。
しかし、それを感じさせない松本清張の筆力は凄いものがある。
Posted by ブクログ
次々と連なるトリックの内容は今も楽しめる。昭和32年の作品。新聞記者や単なる市井の人が尋ねたに関わらず、駅員さんとかがポンポンと個人情報を漏らすというところで、時代の違いに気づく。12.7.20