松本清張のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
芥川賞を受賞した表題作と他5篇を集めた短編集。
後の清張のような推理小説的な展開はほとんど見られない。
まず表題作だが、小児麻痺のようなものを患った男が、九州にいた頃の森鴎外を研究していくという話。
全体にも通ずることだが、人物の心情などをほとんど地の文で書かない簡潔な文体が読んでいて潔い。
内容はまずまずといったところ。
他の4篇に関しては、全体的なテーマとして、登場人物(主に主人公)が、一つのことに集中していて他のことには目もくれないような一途さを持っており、
そのせいで他者の反感を買ってしまうという、熱心さに基づく哀れさが展開されている。
途中では、その人物に反感を持ってしまうが、話が終 -
購入済み
迷走地図(下)
寺西正毅は現総理桂重信から禅譲が見込まれている第2派閥の長である。妻の文子は、内助の功と周囲からは高評価されていたのだが、、、。下巻では文子の秘められた行動がストーリーの中核となる。
外浦卓郎は寺西に請われて、東方開発から移籍し彼の秘書を務めていたが、惜しまれつつ社へ戻り、副社長としてチリ東方開発へ渡航した。外浦は渡航にあたって大学の後輩の土井信之へ貸金庫に預けたものを託す。土井は貸金庫の代理人となりその鍵を預かる。
土井信行は、アダムズホテルに事務所を構え、議員のスピーチや著書の代筆を生業としている。土井は寺西の伝記を頼まれるのだが。
外浦はチリで車を運転中に激突事故を起こし亡くなって -
Posted by ブクログ
松本清張『金庫 清張短編レアセレクション 男性篇』中公文庫。
全4巻で刊行される松本清張の珍しい短篇をテーマ別にセレクトしたオリジナル短篇集。第2巻は男性篇で嫉妬や疑惑、不信、復讐を胸に秘めながら騙し合い、競い合う男の世界を描いた短篇全9篇を収録。
先に読んだ『氷雨 清張短編レアセレクション 女性篇』に収容された7篇はミステリー色が薄かったのだが、こちらの『金庫 清張短編レアセレクション 男性篇』では殆んどがミステリー短篇であった。犯罪の陰に女性ありなどと言うが、実際のところ犯罪に手を染めるのは男性の方が圧倒的に多いのだろう。
『金庫』。物語の筋は江戸川乱歩の初期短篇『二銭銅貨』と酷似 -
Posted by ブクログ
松本清張『氷雨 清張短編レアセレクション 女性篇』中公文庫。
全4巻で刊行される松本清張の珍しい短篇をテーマ別にセレクトしたオリジナル短篇集。第1巻は女性篇で岐路や窮地に立っ女性たちを描いた短篇全7篇を収録。
今だに松本清張の小説の人気は高いようだ。かく言う自分も再読を含め、松本清張の小説を度々読んでいる。ミステリー小説もさることながら、市井の人びとの人生を描いた小説にも魅力を感じる。自分が松本清張の小説を初めて読んだのは高校生の時で、芥川賞受賞作の『或る「小倉日記」伝』が初めての小説だったと記憶している。それ以来、現在に至るまで思い付く度に松本清張の小説を読み続けている。
『氷雨』。 -
Posted by ブクログ
映画を観たことがあったので結末は知っていましたがとても興味深く読みました。
時代設定は戦後まもなくなので、よくドラマや映画で見たことのある、いわゆるパンパンと呼ばれていた女性たちが登場したり、個人情報保護の概念が無かった時代でしょうから捜索方法も今では全く成り立ちませんが、その時代の空気感を感じられました。
後半になってくると、主人公の女性がそれまで調べたことを頭でまとめようとするシーンが何度か出てきますが、さっきも同じようなことを書いてなかったかなと思うことが多々あって、ちょっとうるさく感じました(松本清張を始めて読んだのでよく用いられる手法なのがどうかわかりませんが)。
私は結末を知ってい -
Posted by ブクログ
西南戦争で薩軍が発行した軍票「西郷札」の“政府買い上げ”噂に、敗残の下級武士が一攫千金を賭けて転げ落ちていく短編です。
覚書一枚を追いかけて過去へさかのぼる語り口に、最初から引き込まれました。
西南戦争直後、「西郷札」の買い上げ話を巡る欲と体面の駆け引きが、敗残の下級武士を中心にじんわりと崩れていくさまは痛切です。
金と名誉に群がる人間の浅ましさと裏側を、硬質な視線で切り取るところに著者らしさを感じました。
一方で、人物の心情描写には短編ゆえの粗さもあり、「なぜそこまで追うのか」が曖昧なところも少なからずありますが、短い中に鮮烈な余韻と清張の若き刃を感じる味わいがあり、古典として読まれるには十