松本清張のレビュー一覧
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雑草群落(下)
古美術品を扱う草美堂の高尾庄平と倅の謙吉は、明和製薬の村上社長へ取り入るべく、村上が興味を示すという肉筆浮世絵の贋作を仕込み、国立総合美術館の佐川課長に鑑定書を依頼する。庄平は佐川が金で動くことを知っている。
ライバル業者の駒井は、以前から佐川に取り入っていた。駒井も同じような肉筆浮世絵の贋作を村上社長へ手渡していた。やはり佐川が鑑定書を書いていた。
庄平より30も若い愛人の和子は、村上社長が外に作った子であった。
庄平は佐川から鑑定書の返却を求められる、村上社長からは手渡していた肉筆浮世絵を返却されてしまう。ライバル駒井にしてやられたのだ。ところが駒井の肉筆浮世絵の贋作が新聞沙汰になっ -
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松本清張『陽炎 清張短編レアセレクション 歴史・時代篇』中公文庫。
松本清張の短篇レアセレクションシリーズの第3作。9篇の短篇と1篇のエッセイを収録。
若い頃の自分であれば、幾ら松本清張とは言えど歴史小説と聞いただけで読まなかったことだろう。何故か歳を重ね、還暦が近付いた頃から、歴史小説もありかなと思うようになった。
松本清張の歴史小説の面白さの極意は最後に収録されている歴史小説について語ったエッセイを読むと、その一端が窺える。
『陽炎』。幻のデビュー第二作。自分を裏切った妻を何時までも思い遣る優しい男。主君の出府に同行した西本四郎左衛門が一年後に帰国すると妻の多美が川村寅次郎と密通 -
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ネタバレ松本清張の代表作のひとつ。推理小説の中の「アリバイ破り」というジャンルで、犯人を当てるのではなく、わかりきった犯人の「鉄壁のアリバイをいかに探偵が歩一歩と破ってゆくか」を楽しむものだというのは平野謙さんの解説で知った。
どうしても時代の違いはあるので、現代ではありえないトリックや捜査方法ばかりなのだが、刑事が一歩一歩自分の足で真実にたどり着こうと奮闘する姿は清々しい。自殺ではなく情死にみせかければ捜査の手は及ぶまい、という犯人の狡猾さにもぞっとさせられた。犯人が分かっていてもなお、すべてが明かされた時の衝撃は圧巻だった。
刑事が列車移動にばかり気を取られ、飛行機があることに気が回らなかったのは -
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「推理小説の結末が気になって寝る間も惜しんで頁をめくる」というベタベタな読書体験ができた。松本清張の代表作のひとつ。”動機”を重要視する清張先生らしく、意外なところに収束してゆく結末には素直に驚かされ、『ゼロの焦点』というタイトルの重みも後からじわじわと感じた。途中やや冗長な感じがするものの、情報と論点が次々に整理されてゆくので読みやすい。しかし昭和30年代といえば私の両親が生まれた頃だけど、こんな時代だったのだな。戦争の傷も癒えきらず、お見合い結婚が普通にあって、個人情報保護とか皆無で……。禎子がお見合い結婚したばかりの夫・憲一のためになぜこれほど一生懸命になるのか、そして憲一も久子がいるの
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迷走地図(下)
寺西正毅は現総理桂重信から禅譲が見込まれている第2派閥の長である。妻の文子は、内助の功と周囲からは高評価されていたのだが、、、。下巻では文子の秘められた行動がストーリーの中核となる。
外浦卓郎は寺西に請われて、東方開発から移籍し彼の秘書を務めていたが、惜しまれつつ社へ戻り、副社長としてチリ東方開発へ渡航した。外浦は渡航にあたって大学の後輩の土井信之へ貸金庫に預けたものを託す。土井は貸金庫の代理人となりその鍵を預かる。
土井信行は、アダムズホテルに事務所を構え、議員のスピーチや著書の代筆を生業としている。土井は寺西の伝記を頼まれるのだが。
外浦はチリで車を運転中に激突事故を起こし亡くなって -
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松本清張『金庫 清張短編レアセレクション 男性篇』中公文庫。
全4巻で刊行される松本清張の珍しい短篇をテーマ別にセレクトしたオリジナル短篇集。第2巻は男性篇で嫉妬や疑惑、不信、復讐を胸に秘めながら騙し合い、競い合う男の世界を描いた短篇全9篇を収録。
先に読んだ『氷雨 清張短編レアセレクション 女性篇』に収容された7篇はミステリー色が薄かったのだが、こちらの『金庫 清張短編レアセレクション 男性篇』では殆んどがミステリー短篇であった。犯罪の陰に女性ありなどと言うが、実際のところ犯罪に手を染めるのは男性の方が圧倒的に多いのだろう。
『金庫』。物語の筋は江戸川乱歩の初期短篇『二銭銅貨』と酷似 -
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松本清張『氷雨 清張短編レアセレクション 女性篇』中公文庫。
全4巻で刊行される松本清張の珍しい短篇をテーマ別にセレクトしたオリジナル短篇集。第1巻は女性篇で岐路や窮地に立っ女性たちを描いた短篇全7篇を収録。
今だに松本清張の小説の人気は高いようだ。かく言う自分も再読を含め、松本清張の小説を度々読んでいる。ミステリー小説もさることながら、市井の人びとの人生を描いた小説にも魅力を感じる。自分が松本清張の小説を初めて読んだのは高校生の時で、芥川賞受賞作の『或る「小倉日記」伝』が初めての小説だったと記憶している。それ以来、現在に至るまで思い付く度に松本清張の小説を読み続けている。
『氷雨』。 -
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映画を観たことがあったので結末は知っていましたがとても興味深く読みました。
時代設定は戦後まもなくなので、よくドラマや映画で見たことのある、いわゆるパンパンと呼ばれていた女性たちが登場したり、個人情報保護の概念が無かった時代でしょうから捜索方法も今では全く成り立ちませんが、その時代の空気感を感じられました。
後半になってくると、主人公の女性がそれまで調べたことを頭でまとめようとするシーンが何度か出てきますが、さっきも同じようなことを書いてなかったかなと思うことが多々あって、ちょっとうるさく感じました(松本清張を始めて読んだのでよく用いられる手法なのがどうかわかりませんが)。
私は結末を知ってい -
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西南戦争で薩軍が発行した軍票「西郷札」の“政府買い上げ”噂に、敗残の下級武士が一攫千金を賭けて転げ落ちていく短編です。
覚書一枚を追いかけて過去へさかのぼる語り口に、最初から引き込まれました。
西南戦争直後、「西郷札」の買い上げ話を巡る欲と体面の駆け引きが、敗残の下級武士を中心にじんわりと崩れていくさまは痛切です。
金と名誉に群がる人間の浅ましさと裏側を、硬質な視線で切り取るところに著者らしさを感じました。
一方で、人物の心情描写には短編ゆえの粗さもあり、「なぜそこまで追うのか」が曖昧なところも少なからずありますが、短い中に鮮烈な余韻と清張の若き刃を感じる味わいがあり、古典として読まれるには十 -
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上巻も下巻も、続きが気になって気になって、仕事どころではなかったですw
そして、思うのは、この小説に「砂の器」というタイトルを付けた松本清張氏のセンス。すごく美しいですね。脱帽です。
作中の風景描写も表現が美しいと感じました。
2004年にドラマ化された際の主題歌は、ドリカムの「やさしいキスをして」。
これを読んだ後に聴くとまた格別ですね。
いつの世も、女性の愛は一途で美しい。
傍から見たら"どうかしている"状態であるほど、本人の中では純度を増していく。
そこにはまさに「幸か不幸かは私が決める」という強い意志がある。
美しさの核はそれかなと思う。
そして、それを体現して -
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犯罪の回送
北海道北浦市(小説内の架空の市)の春田市長が、陳情で東京出張中に行方不明となり、日野市の林の中に埋められた死体となって発見される。警視庁の田代警部、岡本刑事、青木刑事が真相を追う。他派閥で政争中の田代も時を同じくして東京に来ており怪しまれるが、北海道へ帰郷した彼は水死体となって発見される。北浦市には、札幌のクラブママあがりの妻美知子、弟雄治がいた。はたして春田市長は、どこで殺害され現場へ「犯罪の回送」となったのか。本当に東京で殺害されたのか、いかなる理由で殺されたのか、田代警部は解き明かしていく、この小説の核心となる。