松本清張のレビュー一覧
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クローズドサークルや館シリーズなどのミステリが好きで読んでいるので、この短編で刑事が活躍するミステリは久しぶりでした。
顔、声では、インフルエンザだとかコロナのときとかに寝汗でビショリとして重くなったパジャマが体に粘着したかのように張り付く不快感を思い起こさせました。犯人の感じた不安や神経質ながらも欲にしたがった行動が過去に自分が犯した後ろ暗さに重なりました。
ページを翻す行為が犯人を捕まえること、自分が捕まることと思うと、冷たい脇汗が体の側面を伝っていきました。
投影の作品の雰囲気や登場人物、正義が好きでした。胸が熱くなりました。終わり方も好きです。
不安を誤魔化しそれに嘘をつき生きていくた -
Posted by ブクログ
派手ではないが、確かに推理小説の画期の一つとなったことを納得させるだけの格式の高さがある。
特に印象に残るのは作中人物による習作の「数字のある風景」という随筆。
"私がこうして床の上に自分の細い指を見ている一瞬の間に、全国のさまざまな土地で、汽車がいっせいに停っている。そこにはたいそうな人が、それぞれの人生を追って降りたり乗ったりしている。私は目を閉じて、その情景を想像する。(略)汽車の交差は時間的に必然だが、乗っている人びとの空間の行動の交差は偶然である。私は、今の瞬間に、展がっているさまざまな土地の、行きずりの人生をはてしなく空想することができる。"
時刻表を -
Posted by ブクログ
新聞社の才媛たる姉信子は妹祥子に告げた行先と違う場所でバス事故死。知り合いの同乗者が見捨てたと推理した祥子は縁故採用で新聞社に入社し各界の著名人達の中に犯人がいると睨み調査するが関係者が不審死を遂げていくサスペンス。
読後感としては祥子及び周囲は信子の優秀さを褒めていたが、寧ろ妹の方が男のあしらい方(主要人物の大半が彼女に肉欲的関心がある様な動きをしている)や事件を調査する行動力が優れている。
警察でないためにアリバイ調査や罠の掛け方が上手くいかずギリギリのところで死人が発生するというのはサスペンスとして上手くできている。あまりにも手際が良いので自分は犯人が解明編まで分からなかった。最後に決着 -
Posted by ブクログ
松本清張文学忌、清張忌
1958年文藝春秋連載
1959年第16回文藝春秋読者賞受賞
社会派ノンフィクション
1948年、帝国銀行で起きた毒殺事件。12人が命を落とし、現金が奪われた帝銀事件
まだ日本は、GHQの占領下にあった
当初は参考人のひとりだった画家・平沢貞通が、ある時点から犯人と断定され、死刑判決を受けるまでの経緯には、今も多くの謎が残っている
まず、事件の経過を資料に基づいて小説として再現、次に捜査や証拠への疑問を提示し、そして清張なりの推理と再考を試みている
読み終えて強く印象に残ったのは、容疑者・平沢の言動の不安定さだった
虚言癖や経歴詐称が、むしろ「犯人らしさ」を強め -
Posted by ブクログ
ネタバレ気になっていた事件。
ついに読むことができた。
タイトルに小説とついているが、
帝銀事件をそのまま描いている。
編集者があるきっかけでこの事件を調べ
まとめた形になっている。
帝銀事件は昭和23年1月26日に起こった
毒殺・強盗事件だが、
その手口があまりに手慣れていて
犯人は軍関係者だと目された。
しかし、操作は行き詰まり
名刺という証拠品から絵描きが浮上する。
物的証拠は間接的なものばかりなのに
強要された自白により
犯人とされ死刑判決を受けてしまう。
旧刑訴法では、自白を証拠とできたためだ。
この犯人はおそらく冤罪と思われる。
死刑執行はされず獄中で高齢でなくなっている。
この本