あらすじ
平凡な永い人生を歩き、終点に近い駅路に到着した時、耐え忍んだ人生からこの辺で解放してもらいたいと願い、停年後の人生を愛人と過ごそうとして失踪した男の悲しい終末を描く「駅路」。邪馬台国の謎を追究する郷土史家を描きながら、“邪馬台国論争”に関する著者の独創的見解を織り込んだ力作「陸行水行」。他に「ある小官僚の抹殺」「万葉翡翠」など全10編を収めた傑作短編集。
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Posted by ブクログ
2025/55
大好きな松本清張の短編集。
今回もお気に入りのお話がたくさんあった。
「白い闇」
前に読んだけど、改めて読んでも好き。これが一話に収録されてて嬉しい。十和田湖いつか行ってみたい。
「捜査圏外の条件」
妹を見殺しにされた主人公の執念。読み応えのあるお話ですごく良かった。
「ある小官僚の抹殺」
他とは違うテイストのお話で、私はあまりハマらなかった。
「巻頭句の女」
俳句詠みの女性の最期が切ない。
「駅路」
人は満たされていても、終わりを求める生き物なのかな。無常感漂うお話で好みでした。
「誤差」
死亡推定時刻。終わり方が好み。
「万葉翡翠」
学者が最後は欲に負けてしまうお話。残念だ。
「薄化粧の男」
ナルシスト!奥さんと浮気相手で協力したのに、結局悪いことをしても一生怯えなきゃいけなってことなのかな〜。
「偶数」
食器でバレるとは!にしても自分勝手な犯人。
「陸行水行」
地味にめちゃくちゃ好きな作品だった。或る小倉日記伝っぽい内容。なにも果たせず死んでしまう、というの逆にロマンを感じちゃうんだ。
Posted by ブクログ
【松本清張読み返し7冊目】
2024-8-26(月)松本清張『駅路』傑作短編集(六)を読み終えました。この短編集全6巻は、松本清張の短編作品を現代小説・歴史小説・推理小説に分けて、3つの領域を各2巻にまとめたものです。本書は推理小説分野の第2集で、傑作短編集全6巻の最終巻でもあります。
読売新聞の「松本清張 今日的意義問う」「分析する書籍刊行続く」という見出し記事で取り上げられていた『松本清張の昭和史』と『松本清張はよみがえる』を読んだのをきっかけに、松本清張作品を読み返そうと思いたちました。本書で7冊目です。学生時代に松本清張の作品はかなたり読んだと思い込んでいたけれど、読み返してみると初めて読む作品ばかり。本書収録の10作品も同様です。松本清張は41年間の作家人生で1,000編以上の作品を書いていると聞きました。昔は、数多い話題作のほんの一部を読んだに過ぎないのだなぁ〜とあらためて感じています。
本書では、『ある小官僚の抹殺』、表題作の『駅路』、『陸行水行』の3作品が特に興味深かったです。この3作品を含め本書収録の作品は、えっ!と絶句するような結末を迎える小説が多く、重くのしかかってくるような読書感の作品が多いですが、それでも惹きつけられます。
『ある小官僚の抹殺』は題名が直截的で読むのにちょっと構えてしまう。でも読み出したら止まらない。この作品は、ある中央官庁の課長の犠牲で幕引きとなった政官財の汚職事件の深層に、「私」警視庁捜査ニ課長が推理しつつ迫る展開です。1960(昭和35)年に発表されたもので、作中に昭和の雰囲気を感じる道具立てがいろいろでできます。夜行急行〈安芸〉、時刻表、駅の立ち売り新聞・・・。昭和の人間としては懐かしさを感じる部分が多い。ですが内容は現在の令和の時代にもありそうな状況を描いているように感じます。ぜんぜん古くない。今も汚職事件報道で見たり聞いたりするような。60年前も現在もあまり変わっていない構造があるのだろうかと思いなが読みました。
『駅路』は銀行営業部長を定年退職した人物が主人公です。律儀な努力で勤め上げ、普通以上の地位と収入を獲得した人物。第二の人生の出発に自由を求めます。事件解明にかかわる年配刑事の言葉が印象に残る。「・・・人間だれしも、長い苦労の末、人生の終点に近い駅路に来たとき、はじめて自分の、自由というものを取り戻したいのではないかね。」同じようなステージにある我が身には心に響く。結末は、自由を取り戻しつつある主人公の、明るい歩みであってほしかった。それじゃあ清張作品ではなくなるかもしれないけれど。
『陸行水行』この作品は推理小説なのだろうか?邪馬台国の謎に迫る古代史の歴史書ではないのか?もしかして両方かもしれない。そう思いながら読みました。それにしても、松本清張の古代史にかける熱い想いが伝わってくる作品です。『魏志倭人伝』『古事記』などを縦横に読み解きつつ、諸説を比較検討しながら陸行水行の謎に迫る松本清張の筆は、私にとって驚きの連続でした。この謎の追究は一種の推理だという主旨のことを、筆者は作品の本文で書いていました。この作品は古代史の謎に迫る推理と、この謎解きにかかわる登場人物たちをめぐる事件の真相に迫る推理。推理小説の二重奏だと、読み終わって感じる。何度でも読み返したい作品です。
だいぶ時間はかかりそうだけど、これからも松本清張作品の読み返しを続けようと思っている。
【本書収録作品】
・白い闇
・捜査圏外の条件
・ある小官僚の抹殺
・巻頭句の女
・駅路
・誤差
・万葉翡翠
・薄化粧の男
・偶数
・陸行水行
Posted by ブクログ
親近者が行方不明になった時に、人はどのような行動を起こすのか。幾重にも物語が派生する松本清張の企みは愛憎を潜ませる。この素朴な激情が人の業として様々な事象に連鎖して、転落する様がドラマとして魅せられる。いいよね清張。
Posted by ブクログ
白い闇:北海道に仕事に行ったきり帰ってこない。東北本線を利用。TVでは新幹線利用。
捜査圏外の条件:会社の同僚が?
ある小官僚の抹殺:砂糖に関する癒着、急行なにわ
巻頭句の女:俳人の女性の死亡にまつわる保険金殺人
駅路:定年退職の男が80万円持参で蒸発。広島可部線
誤差:東海道線から私鉄で2時間の温泉宿。大井川鐡道?
万葉翡翠(ひすい):最初の部分はイマイチ理解出来ず。後半は面白い。準急アルプスの全盛時代。大糸線が開通して間が無い頃かも。しかし細い点と線をうまく結びつけるものだ。
薄化粧の男:テレビで見た事があった。50歳になると美男ほど見にくくなるものか。
偶数:映画の大映しのように出てきた茶碗、表現が上手い。
陸行水行:邪馬台国の調査がからんだトリック。しかし邪馬台国の事を徹底的に調べたものだ。
Posted by ブクログ
既読の物も、まるで知らない物も。松本清張の作品は、犯人に対して大なり小なりの作家の共感があるというか、寄り添っているのが感じられる。だから、時代の波に洗われていろいろなアイテムが古くなってしまった今でもたまに読みたくなって、読んでしまうのかも。
「偶数」はそうきたか、だし、「薄化粧の男」はシスターフッドの先駆けとも言えまいか?
「陸行水行」は「或る『小倉日記』伝」と同じ、認められずともひたすら歴史の真実を追い求める者の哀愁があり、ラストシーンには、田舎の小さな人間が大きな歴史を追い求めるロマンさえ漂う。
Posted by ブクログ
短編集として、次の作品が所収。
「白い闇」「捜査圏外の条件」「ある小官僚の抹殺」「巻頭句の女」「駅路」「誤差」「万葉翡翠」「薄化粧の男」「偶数」「陸行水行」
今なお、TVドラマでリバイバルされ続けている松本清張の短編作品。それだけ、どの短編も時代が移ろい変わっても、人間の情欲は不変ということが描かれているためか。
最後の「陸行水行」は、考古学、邪馬台国論争の新説が興味深く描かれており、他の作品とか違った趣を感じる。こうした題材を取り上げるのも、松本清張ならでは。
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何か事件になるんだろうなって分かってても、それを気にしたり考えたりそれでも意外な展開だったりして読んでいくのが楽しかった。これを読ませるのが上手いっていうんだろうな
Posted by ブクログ
松本清張氏の傑作短編集第六弾。推理モノ。完全犯罪をめざすが、ひょんなことから犯行が露見してしまう。特殊なトリックなどなく、ある程度は予想された展開ではあるが、これが昭和30年代の作品とは驚きです。
Posted by ブクログ
巻頭の話がサスペンス向きで面白かった。
どの話も独特な暗さを感じるの自分だけだろうか。
短編とはいえ取材のみならず勉強(邪馬台国の辺りとか)はさすが巨匠だと思う。
Posted by ブクログ
1957(昭和32)年から1962(昭和37)年、次々と傑作を大量に発表し、清張ブームを巻き起こした脂ののった時期の短編集。調べてみると、ちゃんと発表年代順に作品が並んでいることがわかった。
おおむねミステリ/推理小説の系列の作品が多いようだが、清張の場合は犯人の欲望を描き、倒叙の形で構成された方が彼らしくて面白い。なので、本格推理小説というのとはちょっと違う。興味は卓抜な探偵にあるのではなく、一線を超え犯罪を企むことになった犯人の欲動のあり方にある。そしてそれが、清張らしく一切同情心のない、ドライでクールなストーリーテリングとなっている。やはり読んでいてそれが清張の醍醐味であり、面白い。人間心理の掘り下げがさほど深くもないじゃないか、なんて言い出すと、清張は物足りないと感じることになろう。
本書中、異色なのは最後の「陸行水行」(1962)。邪馬台国は結局どこにあったのかという論争を背景に、独創的な仮説が論じられており、そういえばこの作家はこういう、歴史やら考古学やらが趣味で、かなり該博な知識を持っていたらしい、ということを思い出した。確かにこれはなかなか専門的であり、他の作品とはまるで様相が違う。その分、ここでは、犯罪に向かう人間の欲動というテーマからは離れることになったようだ。
全般に面白く読める短編小説集で、さすが清張という安定感である。
Posted by ブクログ
ドラマを見ました。深津絵里が美しい。人生の線路とは。とぼとぼ歩いていくだけか、途中で車線変更するか。―ゴーギャンには絵があった。故人には好きな女がいた。俺には何もない―
Posted by ブクログ
昭和40年、今から40年以上前の松本清張の短編集。
もちろん昭和レトロな香りがプンプンしていますが、短編とはいえ読者をぐいぐい惹きつける力は
松本清張、さすがです。
中学時代、ちょっとインテリな子は松本清張を読んでましたからね。
まぁ私は星新一でしたが・・・・・。
綿密に計画された殺人なのに、犯人は時々とんでもないミスを犯してしまう。
被害者の家で殺人をおこなった後、そこで出されたお茶碗を証拠隠滅のためにもって出る。
タクシーを拾って、さてそのお茶碗をどうしようかと考えたあげく、タクシーを止め、
小便をする振りをして川へ行って、川に向かって投げ捨てる。
しかも運転手さんの視界の中で。・・・・・・なんでそんな目立つことするの?
とりあえず持って帰ればいいじゃん。
とかとか、
恨みを殺人ではらす計画を7年後に立て、そのために仕事をやめ、引越しもし、
ターゲットの前から完全に姿を消し、7年間じっと殺人のことだけを考えて過ごした。
そして当日、偶然をよそおってターゲットに会い食事に誘う。
ところがなんと、行った店はターゲットがよく通っている居酒屋。
当然お店の人はターゲットのことを知っている。
見慣れない人といっしょにいるとなんとなく気になる。
おまけに7年前によく流行った歌をターゲットが口ずさんだのを店の人が聞いていたのだ。
7年間の苦労が水の泡。流行歌を口ずさんだ時点で計画をストップすればよかったのに
殺してしまったんだから、そりゃあ捕まるよね。
裏を返せば、こういうポカをやらなければ、完全犯罪も夢じゃない。
松本清張は世の犯罪者の教科書になってるかもしれない。