あらすじ
前任地での仕事の引継ぎに行って来るといったまま新婚一週間で失踪した夫、鵜原憲一のゆくえを求めて北陸の灰色の空の下を尋ね歩く禎子。ようやく手がかりを掴んだ時、“自殺”として処理されていた夫の姓は曾根であった! 夫の陰の生活がわかるにつれ関係者がつぎつぎに殺されてゆく。戦争直後の混乱が尾を引いて生じた悲劇を描いて、名作『点と線』と並び称される著者の代表作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
4.3/5.0
終戦直後の混乱が生んだ悲劇。
自分の過去が暴露されることを死よりも恐れた社長夫人の悲しすぎる動機。
時代を如実に内包した人間ドラマだった。
Posted by ブクログ
二桁年振りの松本清張、再読3冊目。
羽咋や和倉温泉が懐かしかった。相変わらずストーリーはほぼ忘れているので、とても新鮮でした。
・・・そうですね、みなさん仰るように個人情報ダダ漏れですな。
Posted by ブクログ
松本清張作品は、終盤からラストまでの疾走感が凄いと思う。本作品もラスト一気読みした。スマホが無い時代ってこんなに情報収集に時間が掛かるんだ、と改めて現代の便利さを感じさせられる。戦後の女性観や背景も垣間見えて興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
初松本清張作品。サスペンス小説の王道を行くような話でなかなか好き。同時に、かつて日本に存在したであろう終戦直後の混乱期を生きる人たちの息遣いが感じられたような気がした。終戦直後の様子は、もはや事象として断片的にしか知ることができないけれど、感情を持った人間として確かに生きた人がいたのだ、と考えさせられた。この頃の日本を知っている人だからこそリアルさを持って書けるのだな、などとも思った。
Posted by ブクログ
戦後の混乱期に翻弄され、自分ではどうにもならなかった、その隠したい過去が事件の鍵となっていた。
そういう時期は、ある人にはあって、でも全てを曝け出さないでも生きていける社会がいいのだと思う。
時代派小説と言われている理由に納得。
Posted by ブクログ
よく分からないままとんでもない男と結婚しちゃった妻目線で進む。口封じのために次々と容易く殺されてばかり。戦後の日本と女性の様子が覗けて勉強になった。読み終えて改めて、そういうことね。。表紙を眺めました。
Posted by ブクログ
映画化ドラマ化されている作品ですがやはり小説は面白ろかったです!真相を知った人たちが殺されていく…現代のサスペンスとは違って複雑な感じはなく読みやすかったです。
Posted by ブクログ
昭和の旅情と共に進んでいくミステリー。内容もさることながら文章も素晴らしくスラスラと読めました。さすが松本清張。最後は一気に逆転のトリック解明。様々な伏線を散りばめた至高の作品です。ただ、今の時代とはマッチしてませんので、違和感を感じる人はいるかもしれませんね。
Posted by ブクログ
サスペンス歴は、比較的浅い時に読んだ。昔の作品を読むとツッコミどころ沢山あったけど、読み応えがあったな。主人公が女性で、立ち振る舞い方が頭が良く思えたりした。
Posted by ブクログ
松本清張をこれまであまり読んでいたわけではなく長編は初めて読んだと思う。面白かった。断崖絶壁で繰り広げられる人間ドラマは、二時間サスペンスの源流はここにあるのか、と思ったり、昭和30年という時代を感じることも多々あってはっとした。例えば知りもしない人に個人情報をしゃべりすぎだろ、しかも医師が、とか、金沢から東京にいくには夜行しかない、とか。もちろんミステリーとしてのストーリーも面白い。意外な人が犯人であることが明らかになって、それもその時代ならではの悲しい背景があったりと王道なのかもしれないが楽しめた。
Posted by ブクログ
小説では初の松本清張作品
といっても他は黒革の手帳くらいしか知らないけど、、でもさすがと言わざるを得ない
時代がちがってもおもしろいものはおもしろいのだなと関心した
少ししつこい感じはしたもののエンターテイメントとして楽しむには十分だった
Posted by ブクログ
『砂の器』の時にも感じた、今の時代では使えない、当時だからこそのトリックに驚かされた。
結婚間もない夫の失踪、そのため夫の事情が何も分からない主人公、その中で少しずつ真相に近づいていく展開から目が離せなかった。
本多からの想いも、全く靡かないのが良かった。勝手なイメージだけれど、これが他の方が書いていると本多と道ならぬ恋…とかなっていそうだったので。身持ちの固い主人公だからこそ、まだ日の浅い夫のために駆けずり回る描写が違和感なく見られたのかなと。
ラストの沖に向かう船に乗った妻が崖の上の夫に手を振っていた、という描写がなんとも美しかった。死へ向かう残酷さが、その情景に言いしれない美しさを与えているように感じた。
なにかの後書きで、松本清張は難しい表現はあまり使わず、簡便な文体だからこそ輝く、といった意見を見たけれど、難しくない簡便な文体であそこまで美しく描写できるのは素晴らしいと思った。
Posted by ブクログ
昔は簡単に個人情報を知り得たのだなぁ。戦後、進駐軍のお相手をしていた事をバレるのを怖がり、ひとを殺めてしまう。読んでいてストーリーは分かってくるのだが、その時代の悲しい部分をみごとに表現する松本清張の小説は引き込まれる。
Posted by ブクログ
見合いで結婚した夫が突然失踪してしまうところから物語が始まる。
広告代理店の営業職で、金沢と東京の二重生活をしていた夫。金沢に夫の失踪の秘密があると、禎子は金沢へ向かう。そこで彼女が知った真相とは…
1950年代、まだ戦後まもないこの時代に女性が生きて行くのは大変だった。時代に翻弄された可哀想な女性たちが物語の鍵になっていきます。
幸せな結婚生活のはずが、最初から夫の鵜原憲一にはどこか不穏な影があった…そんな不穏な雰囲気をじわじわと感じさせるのがなんて上手なんでしょう。
序盤からどんどん物語に引き込まれていきます。
夫の失踪を調べるうちに起きる第一、第二の殺人。
日本海の荒々しい海、寂しい漁村の風景が目に浮かびます。
憲一が残した2枚の家の写真。その写真の謎が明らかになっていくところが本当に面白い。
ゼロの焦点、というタイトルも秀逸ですよね。
Posted by ブクログ
謎解きの要素にではなく、犯人の殺害動機に深い余韻を残す作品。そこに深みを出しているのは、まず時代背景であり、犯人としての語りは無く、冬の荒海に代弁させているところにこの作品の凄みを感じた。
Posted by ブクログ
戦後の日本の時代背景を抑えておくと、より理解が深まる作品かなと感じました。
過去のステータスを知られてしまう事が、いかに地位に関わるのか、暗い過去が何とも言えない気持ちにさせられました。
半世紀も前の作品なのに飽きがこず、スラスラ読めたし、北陸の寒々しい表現が読んでるこっちも寒くなる感じがしました。
作品の演出としてか、石川県各地の陰鬱な雰囲気が強調されていた。私はそうは思わないが、松本清張にはこの地の風景がそんな風に見えたのか…。ただ、重要な舞台である能登の海岸(私が行ったのは冬の夜にライトアップされた機具岩)を前にすると、本作に描かれたように烈風が吹き付け、奇岩のおどろおどろしい感じもあって恐ろしかったのは確か。この地を旅した清張が何を感じたか考えながら読了した。
筋については、先の展開が気になるようなタッチなのでどんどん読み進めることができた。
Posted by ブクログ
風景の描写がうまいので、読んでいてパッと頭の中で想像がつく場面が多い。戦後の生き方とか、戦争が女性の一生に与えた影響とか、勉強になる部分もあって面白かった。
個人的には、分かりやすいけれど説明が何度も重複していてちょっとくどい、と思ったので星3つ。
Posted by ブクログ
探偵ではない一般人が推理を進めるという話の流れは少しユニークだった。
昔の作品であるからなのか現代では考えられない情報のやり取り(見ず知らずの人間に個人情報を渡す)であったり主人公の禎子の価値観(見合い結婚で間もないのに一生懸命尽くした本多より鵜原を好意的に見ている)のせいで変に物語に入り込めなかった。
Posted by ブクログ
時代は感じさせるもののぐいぐい読み進められた。さすが名作。禎子視点で推理が進み、状況証拠?が中心でやや心許ない気はしたが、その当時だと防犯カメラもないだろうし仕方ないかなとも思った。戦後の混乱は想像もつかないが、当時の女性がおかれた状況を思うと胸が苦しい。ラストはとても辛い。能登であることが一層辛さを増す気がする。この暗さは雪国が舞台だからこそかなぁ
Posted by ブクログ
北陸の実家で年越しに読む。
ちょうどラストは大晦日の話だった。
暗いし怖いけど、面白い。
新婚の夫が失踪、その義兄も殺される。
調べるうちにわかる夫の正体。
夫が謎の人だとわかる展開が怖い。
戦後13年はまだこんな社会だったのだなあ。
この当時の金沢、東京の雰囲気も同じくなんだかこわいんですよ。
自分(主人公=妻)との結婚が、夫にとっての崩壊の始まりだった、とうすうす気づいてしまうのが、なんとも苦い。はあー。
そんなわけで、今年の本はこれで終わりです。
来年もよろしくお願いします。
これからも、みなさまのもとに本の神様が微笑まれますように。
Posted by ブクログ
この物語が評価されたのは謎そのものではなく、もはや戦後ではないと言われた時代の暗黙の了解を、闇に葬らないように、サスペンス仕立てで書き表したことにあると思う。
米兵の夜の相手を勤めた女性たちの哀しさ。まとわりつく侮蔑の目。どんなに拭い去りたくて、幸せになりたかったか。
殺人事件までは起こさなくてもこの思いが分かる人、または身近な人がそうなのではないかと思っている人、他人事ではなく我が事として受け止めていたからこそ多くの人に読まれたんだろう。
戦後の雰囲気を色濃く反映しているは任侠映画とかなのかなと思うが、そう言う派手なものばかりじゃなくて、沈黙されたものにも目を向けないといけないなと思う。
家の写真がヒントとなったところで『火車』を思い出し、オマージュだった事に気付いた。
Posted by ブクログ
ゼロの焦点
松本 清張 (著)
---
### あらすじ
自殺した夫には、妻も知らないもう一つの名があった──。
『点と線』と並び称される松本清張初期の代表作。
広告代理店に勤める鵜原憲一と結婚した禎子は、新婚旅行から帰って間もなく金沢に旅立った夫が戻らないことを不審に思い、自ら金沢へ向かう。そこで彼女は、夫の隠された過去と戦後の混乱が招いた悲劇に直面する。北陸の灰色の空の下で繰り広げられる心理描写と緊迫感あふれる展開が、読み手に深い余韻を残す。
---
### 感想
松本清張さんの作品を初めて手に取りました。名前や代表作については以前から知っていましたが、原作を読むのはこれが初めてです。映像化された作品も見たことがなく、完全に予備知識ゼロで挑みました。
本作では戦後の社会的背景を色濃く反映しており、その時代特有の価値観や風景が描かれています。ただ、現代に生きる私には少ししっくりこない部分もありました。そのため、物語にのめり込むまでには時間がかかった印象です。一方で、松本清張さんの繊細な心理描写と、複雑に絡み合う人間関係の謎解きには、やはり「ミステリーの巨匠」と称される理由がうかがえます。
今作が自分にとって完全にフィットしたとは言えませんが、松本清張作品の奥深さに興味を持つきっかけにはなりました。次に読む時はもう少し時間を置き、気分が合ったタイミングで別の代表作に挑戦してみたいと思います。
Posted by ブクログ
一気に読めてしまう没入感はあれど、読破の爽快感があまりなく肩透かしをくらった。
誰しも秘密にしたい事はあれど、最初から隠さず向き合っていたら誰も死なずに済んだのにとか思ってしまう。
特に本多の死がよくわからん。
こんな人もいるよねーってくらいで、好みではなかった。
でも途中でやめずに読める。
不思議。
だから星3つ。
Posted by ブクログ
Audibleにて。
初読み松本清張。
交際期間ゼロ、お見合い結婚後すぐに夫が失踪してしまう。
実質数日間しか一緒にいない、まだよく素性も知らない夫のために妻はよくここまでやるなぁと思ってしまい、登場人物の誰にも感情移入できず。
昔の火曜サスペンスドラマを観ているような感じだった。断崖絶壁も出てくるし。
面白かったけど残念ながら自分の好きなタイプではなかった。
Posted by ブクログ
禎子さん、新婚なのに夫が行方不明になって可哀想だな〜悲劇のヒロインか〜と思っていたら、まさかのそのまま探偵役。うぉ、かっけ〜!!!
トリックどうこうというか、「松本清張、文章上手すぎ」と思いながら楽しく読んだ。
いやもうほんとに松本清張、文章上手すぎ。
Posted by ブクログ
やはり松本清張の推理小説はリアリズムがあるので、サスペンスを楽しめる。オーディブルで聴いたのだが、大昔に読んだ記憶が蘇るのでとても良かった。北陸の裏寂しい情景を描くのが上手いと思う。
Posted by ブクログ
ラピュタの久我美子特集、そこで「ゼロの焦点」(1961)が上映される。
清張か。映画も未見だが、小説も未読。
上映までには、まだ間がある。
先に小説を読んでみるか。。。
ゼロの焦点
いやあ、初松本清張だ。
なんか、うれしい。
200頁くらいまでは、夫の失踪の話だけなので、いささか苦しい....
そのあとに、第一の殺人が起こる。
そこからは一気呵成に読ませる。
犯人、全然わからんね。そう、きたかー
清張って、1909年(明治42年)生まれ。
あの太宰治と同じ年の生まれ。
太宰はそこそこ読んだけれど、清張はまったく....
いい機会だ。清張作品、また読みたい。
Posted by ブクログ
終盤までは引き込まれてどんどん読めたが、終盤の推理が妄想かなと思うくらいに強引で失速。
この本の登場人物達の個人情報への意識がなさすぎて笑った。(執筆された時代もあるのだろうか)