あらすじ
前任地での仕事の引継ぎに行って来るといったまま新婚一週間で失踪した夫、鵜原憲一のゆくえを求めて北陸の灰色の空の下を尋ね歩く禎子。ようやく手がかりを掴んだ時、“自殺”として処理されていた夫の姓は曾根であった! 夫の陰の生活がわかるにつれ関係者がつぎつぎに殺されてゆく。戦争直後の混乱が尾を引いて生じた悲劇を描いて、名作『点と線』と並び称される著者の代表作。
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Posted by ブクログ
全体的な雰囲気は砂の器に似ているような感じがした。
けれども、砂の器よりスケールは小さいが、この作品の方が丁寧にストーリーを作っていたと思う。
特に、終盤での石川県のシーンは読み手をハラハラさせるように話を畳み掛けていたのは非常に良かった。
砂の器も良いが、ゼロの焦点も負けずに面白かった。
Posted by ブクログ
初めての松本清張。
個人情報の観点や電話のやり取り、当時の生活様式や言葉遣いなど、自分の世代では馴染みのないものばかりでしたが、以前よりそういった歴史は知っていたので特に違和感もなく読み進められました。
難しい言葉で書き綴らねども、背景描写や心情がわかりやすかったのでサクサクと読んでいけたのが良かったです。
禎子はまだ憲一と結婚して日が浅く、仕事や年齢など、わかりやすい表記のようなものしか知り得ていなかった。短い間で既に彼を充分に愛していたから、行方や過去が気になりあそこまで調べたというよりは、これから愛していけると思っていたから、知りたかったのではないかと思いました。
派手な服装をした女の描写が何度か出てくるので、途中からその女は久子ではないのでは?と思うなど、ミスリードのようなものに早々に気付いてしまう部分も多かったですが、出版された時代を考えると昨今のトリックにも大きな影響を及ぼしている、原点のような作品の1部だと実感しました。
自分の過去を、生活を守りたかった夫人。
自分の意思や努力ではどうにもならない時代から這い上がった女性の最後としては、あまりにも切なく悲しい余韻を残した作品でした。
Posted by ブクログ
「パンパン」という言葉を初めて知った。主人公・禎子の性格というか、行動力が好き。ただの新妻から探偵さながらの洞察力と推察力を見せていくのが本作の醍醐味な気もする。「他の人と比べられている気がする」「本多の気持ちがわかる」と思案する感じ、英語をさらっと話す感じ、良い女である。
〈忘れないよう大枠メモ〉
室田佐知子が全体の犯人。動機は、自分が元パンパンであることを知っているため。主人公・禎子の夫・鵜原憲一=曾根益三郎は、パンパンの女性・田沼久子と名を偽り同棲。室田氏は、佐知子の出を知らずに、田沼を匿う。
Posted by ブクログ
『砂の器』の時にも感じた、今の時代では使えない、当時だからこそのトリックに驚かされた。
結婚間もない夫の失踪、そのため夫の事情が何も分からない主人公、その中で少しずつ真相に近づいていく展開から目が離せなかった。
本多からの想いも、全く靡かないのが良かった。勝手なイメージだけれど、これが他の方が書いていると本多と道ならぬ恋…とかなっていそうだったので。身持ちの固い主人公だからこそ、まだ日の浅い夫のために駆けずり回る描写が違和感なく見られたのかなと。
ラストの沖に向かう船に乗った妻が崖の上の夫に手を振っていた、という描写がなんとも美しかった。死へ向かう残酷さが、その情景に言いしれない美しさを与えているように感じた。
なにかの後書きで、松本清張は難しい表現はあまり使わず、簡便な文体だからこそ輝く、といった意見を見たけれど、難しくない簡便な文体であそこまで美しく描写できるのは素晴らしいと思った。
Posted by ブクログ
解説で平野謙が触れているとおり、ミステリとしては色々アラが目立つ。
途中でしきりに「(田村久子が)本多を殺さねばならない理由がわからない」などと動機が疑問視されるが、本多は宗太郎を殺した疑惑の人物を追っていたとすればどうだろうか?しかも本多は全く警戒せずウイスキーに青酸カリを混入されるという宗太郎と同じ殺され方をする不自然。
が、それより何より、色んな推理や主人公だけが知る秘密を何故か一切警察に漏らさず、超人的行動力で解決しようとする。自身にも危険が降りかかると感じなかったのか?
本筋以外にも義理の兄夫婦に対して自分の夫を呼び捨てにする、その義兄が亡くなったのに嫂に遺骨を持たせて一人で東京に返し葬儀にも出ないなど、言葉選びや筋運びに不自然さが目立つ。
まあしかし、なんだかんだ言っても先を読みたくなってページをくる手が止まらないのは事実。結局は名作とされるだけのことはある。
Posted by ブクログ
感情が無。新婚なのに夫が行方不明、義兄は殺される、良き協力者も殺される、夫に娼婦上がりの女がいた。。。主人公が全ての事実を冷静に受け入れていて違和感がはんぱない。そして主人公が女のカンを元に考えるところはいいと思ったが、探偵としてかなり有能なので、元OL上がりの26歳がなぜこんなに推理できるのか、ここも疑問。基本的に人が推理要素としてしか見られていないような感じがする。感情や人柄、人となりが置き去りになっているように感じた。松本清張は、「電車、空間移動、地理」ネタを常に絡めるので、それが彼の得意ネタなのかと思った。そして主人公が夫に対してどんな感情を抱いていたのかもいまいちよくわからない。推理中に「夫は私のことが好きだったが」みたいな表現がよく出るが、そうかなあ。主人公は何のために1人でこれほど推理したのかも腑に落ちない。夫に対する感情も特に感じられないからだ。ただ『点と線』もそうだったが、清張は読みやすいので軽くサクサク読める。