ネタバレ
Posted by ブクログ
2022年03月25日
<蟷螂の斧 自制心と暗い衝動>
しがない公務員、浅井に嫁いだ身の丈に合わない美麗な妻、英子。そんな妻がある日、持病の悪化により急逝してしまう。その妻が亡くなった場所は、浅井には思い当たる節の無い、縁もゆかりも無い場所だった。
そこに絡むタイトル。。
真実を知る為に、そして自分の仮説を否定...続きを読むする為に、推察と調査を重ねるほどに、信じたくない真実が近づいてくる。
丁度、境内にある小池で、水面に向かってゆらりと浮かび上がってくる鯉を見つけた時みたいな。
もう、鯉であることは間違いない。でも、鯉が口を水面から突き出す瞬間まで見つめてしまう、みたいな。
どう転んだって、鯉である。そんな確実性をもって、ぬるぬると真実と鯉は近づいて来る。
舞台は暗転。
逃げようとすればするほどに、偶然と自分で掘った墓穴に足を絡め取られる。因果応報とはまさにこのことか。
しかし、ここまで結び付けられてしまうものなのか、重なってしまうものなのかと思う。もはや神的な意志によって、絶望に誘い込まれているのでは? とまでも思える。でも、わざとらしくならない。それは浅井の心理描写が『そうゆう人間』そのものの動きやから、だと思う。すごく自然なのだ。
最期はたった数行。
しかし物語のその先にあるエンディングは明瞭にイメージさせられる。
堅実な生き方を重ねてきたのに。ぶち壊したのは、自分自身。
そう思う一方、突き動かされた浅井の気持ちが理解できないわけではない。もし自分が、、と主人公に重ねてしまって、胸が締め上げられた人も多いのではないか。
残酷な真実を無理に掘り起こす行為は危険なのかもしれない。危険やからこそ埋まっている。掘り起こせば最後、そんな真実よりも暗く重たい自分の衝動が襲いかかってくる。半端な覚悟では、あっという間に飲み込まれてしまう。
と、、なんかかっこよく書いてみました。いかがかしら。笑
あんまり書きすぎるのは良くないと思いつつも、熱中するあまり朝の通勤電車を乗り過ごしかけたのは久しぶりなのでその熱が乗ってしまいました。笑
文中『活字が模様の様に見える』って表現があるんですが、これは「分かるっ、、」てなりました。