松本清張のレビュー一覧
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中編3つ収録。1本目から若い頃に死んだ姉の話なのだが義母と義兄の醜関係が暗示されており思春期を迎え成績急降下中の息子の荒れ方がリンクしているのが不気味。ミステリーではあるが親子関係については普遍的なテーマといえるだろう。
2本目は義父と息子だが母を殺されたと弾劾広告を打つ事で騒動となる筋。トリックとしては昔刑事コロンボで観たような気がするが田舎の人間関係の不気味さというところが秀逸だった。
3本目は美術ミステリーと思いきや純粋な殺人ミステリーで本書では最も本格派に近いように思える。それでも芸術家のサガの様なところが描写されているのはこの作者の持ち味だろう。松本清張氏は仏像のアルカイックスマイル -
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東京の料亭「小雪」の女中、お時と、その料亭の客で官僚の佐山の情死体が福岡市香椎海岸で発見された。東京駅のプラットフォームで2人が乗り込むところを、お時の同僚の女中2人と同じ料亭の客である安田が目撃していたことが、情死の裏付けとなった。しかし、博多のベテラン刑事である鳥飼重太郎は、佐山の持っていた社内食堂の伝票から、2人の情死説に疑問を持つ。女は好きな男とならたとえ腹が空いていなくてもコーヒー一杯くらい食堂に付き合うはずだが、この男は1人で食堂で飯を食っているのである。2人の関係は恋人同士ではないのではないか…?
東京駅で13番線プラットフォームから15番線プラットフォームが見えるのは、1日の -
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見合いで結婚した夫が突然失踪してしまうところから物語が始まる。
広告代理店の営業職で、金沢と東京の二重生活をしていた夫。金沢に夫の失踪の秘密があると、禎子は金沢へ向かう。そこで彼女が知った真相とは…
1950年代、まだ戦後まもないこの時代に女性が生きて行くのは大変だった。時代に翻弄された可哀想な女性たちが物語の鍵になっていきます。
幸せな結婚生活のはずが、最初から夫の鵜原憲一にはどこか不穏な影があった…そんな不穏な雰囲気をじわじわと感じさせるのがなんて上手なんでしょう。
序盤からどんどん物語に引き込まれていきます。
夫の失踪を調べるうちに起きる第一、第二の殺人。
日本海の荒々しい海、寂しい漁 -
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ネタバレ銀行のお金を横領し銀座のママとして成り上がっていくことを策略する元子と周りの人々のお話し。
前編はトントン拍子に進むものの後編の途中ぐらいから雲行きが怪しくなり…
なぜこんなに酷いことをするのか、と元子自身も考えるが、結局は人の怨みの深さや断ち切れない愛情が根本にあった。それが金と性の欲望渦巻く銀座を舞台に、抉り出すように描かれていた。
ラストは実質的に元子の"敗北"で終わってしまうのだが、もう一つどんでん返しが欲しかった…が、白い壁に囲まれた15年間を脱して夢を見れただけでよかったのかしら…。
ちなみにこの小説は1980年に出版されたということで、言葉遣い(バーではな -
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「疑惑」は人間とは主観で物事を考えてしまう生き物なんだなと思わせられる作品であった。読んでいくうちに読者のわたしたちも鬼塚球磨子に対して憎悪の感情を募らせていくようになっている。読者は球磨子が然るべき罰を受けることを願ってしまうけれど、それと実際に罪を犯したか否かという事実はまったくの別物であって慎重に検討しなければならない。人を裁くことの難しさ、そして「面白さ」もわかるような気がした。松本清張作品で、人を殺してしまうのはいわゆるサイコパスではなく、ごくありふれた人である。その人たちがいかにして人を殺してしまうかを丁寧に描いてくれているので、そこが好きだなと思わせられる。
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阻害された孤独な人物を主人公として、その深淵を覗いた、深く深刻な問題を含んだ小説
母との別れ、父との別れ、病気による差別、浮浪児としての孤独と恐怖、戦争、そして孤独、主人公の人生がどれだけ辛くて苦しいものだったのか、私の未熟な想像力では計り知れない。
戦後、浮浪児が恥ずべきもの、差別されるものだったと妻にも言えず隠し通していた元浮浪児の方の手記を読んだことがある。
すごい時代、信じられない。秀雄には何重にも苦しいことの連続、自分のせいではない、まさに人生に翻弄される哀れさが、想像しただけで痛々しく刺さる。
秀雄の人生を軽くのぞく程度で、この小説は終わっている。秀雄についての文章はわずか数ペ