松本清張のレビュー一覧

  • 水の肌

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    松本清張は、推理に重きを置いているというより、やはり一人の人間が悪事に手を染めるまでの過程を詳らかに描いている。トリックももちろん奇抜なんだけれど、私が松本清張作品にハマる理由は、そのトリックに飽き足らず「人間」という存在を丁寧に描いているからだなと毎回読んで思う

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    2024年12月31日
  • 疑惑

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    「疑惑」は人間とは主観で物事を考えてしまう生き物なんだなと思わせられる作品であった。読んでいくうちに読者のわたしたちも鬼塚球磨子に対して憎悪の感情を募らせていくようになっている。読者は球磨子が然るべき罰を受けることを願ってしまうけれど、それと実際に罪を犯したか否かという事実はまったくの別物であって慎重に検討しなければならない。人を裁くことの難しさ、そして「面白さ」もわかるような気がした。松本清張作品で、人を殺してしまうのはいわゆるサイコパスではなく、ごくありふれた人である。その人たちがいかにして人を殺してしまうかを丁寧に描いてくれているので、そこが好きだなと思わせられる。

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    2024年12月31日
  • 巨人の磯

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    ネタバレ

    短編集五篇。トリックが奇抜なものが多いけれど、トリックのみに終始せず、犯行に至るまでの心理状態や過程、人物相関を丁寧に描いている点がやっぱり好きだ。
    一作目の腐乱死体の話を、常陸国風土記の話と考察しているのがまた面白いなと感じた。各地に伝わる神話や伝承を物語という一側面から捉えるのではなく、科学的な側面から現実的に考えていくという視点が深みをもたらしていると思う。

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    2024年12月24日
  • 点と線

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    1957年の作品。

    なんともミステリ小説の気分になったので、初めて松本清張を読んだ。
    あっという間に読み終えてしまう面白さ。

    時代を感じさせる場面はたびたびあるが、それも魅力となっていて読み進める足枷には全くなっていない。
    ミステリ小説の完成された形はおよそ70年前には出来上がっていたのかもしれない。

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    2024年12月23日
  • 歪んだ複写―税務署殺人事件―

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    作者の徹底した権力者(強者)への反骨精神が窺える気がする作品だった。作者の松本清張氏が新聞記者であったことも関係していると思う。
    私が松本清張作品を好きな理由に、推理小説でありながら「なぜ事件は起きたのか?」という動機に重きをおいて終始描かれているという点が挙げられる。あとがきにあった文学は「人間を描く物」という言葉が印象に残っている。凝ったトリックよりも、一人の人間を凶行に至らしめたその過程を読むのが好きなんだろうなと気付かされた。

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    2024年12月13日
  • 砂の器(下)

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    一度読んであったものを、映画を見たあとに再読。
    犯人を追い詰めていく様はスリリングだが、映画版ほどの情緒はなかった。
    映画版とセットで楽しむと良いと思う。

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    2024年12月03日
  • 黒地の絵―傑作短編集(二)―

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    そういえば松本清張を読んだことがあるかどうか記憶にない。もしかしたら初めてなのかな。やはり凛とした拡張高いものを、気品というのかな、そういうものを感じた。ただ表題作の「黒地の絵」だけは、内容がショッキングだけに後半の展開が中途半端なものに感じた。「真贋の森」は、壮大な企みであったにも関わらず贋作者が、つい知り合いに一言漏らしれしまったことで計画が潰れてしまうという話だが、今の兵庫県知事選挙におけるPR会社の社長がネットでつい自慢してしまったことで、てんやわんやになっている事件を彷彿させた。

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    2024年11月28日
  • 砂の器(下)

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    阻害された孤独な人物を主人公として、その深淵を覗いた、深く深刻な問題を含んだ小説

    母との別れ、父との別れ、病気による差別、浮浪児としての孤独と恐怖、戦争、そして孤独、主人公の人生がどれだけ辛くて苦しいものだったのか、私の未熟な想像力では計り知れない。
    戦後、浮浪児が恥ずべきもの、差別されるものだったと妻にも言えず隠し通していた元浮浪児の方の手記を読んだことがある。
    すごい時代、信じられない。秀雄には何重にも苦しいことの連続、自分のせいではない、まさに人生に翻弄される哀れさが、想像しただけで痛々しく刺さる。

    秀雄の人生を軽くのぞく程度で、この小説は終わっている。秀雄についての文章はわずか数ペ

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    2024年11月27日
  • 黒革の手帖(上)

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    有名な作品なのに未読だったので読んでみた。
    どうやら最初は銀行員だった女性が巧みな横領や恐喝によって銀座でのし上がる物語のようです。
    昭和の中後期の話だけあって法律も常識も街の様子も全てが今とはかなり違いますが、自分が小学生だった頃の作品なので何となく懐かしい匂いがします。
    大御所の有名な作品だけあって内容はかなり濃いものなので、下巻も楽しみです。

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    2024年11月22日
  • 砂の器(上)

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    普通推理小説を読んでいると「理屈ではあり得ても人間の感情ってそんな簡単じゃないだろう」と思ってしまうことが多い。ただ、松本清張作品はあまりそういうことを感じることが少ないように思われる。奇抜なトリックやどんでん返しなどが少ないせいだろうか。どこにでも起こりえそうなそんな話なのに、なぜだか惹きつけられる。
    砂の器というタイトルの理由が上巻だけではまだ深くわからない。ただ砂のイメージから、さらさらと流れていってしまう具体的な形を伴わないもの、という予測を立てている。下巻を楽しみに読みたい。、

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    2024年11月18日
  • 花実(かじつ)のない森~松本清張プレミアム・ミステリー~

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    秩父をドライブ中、たまたま山中で男女のカップルを乗せて美しい女性と容姿が掛け離れた男性を羨ましく思いストーカーまがいの追跡が始まる。
    主人公梅木隆介の物好きな追跡、推理でこの物語が成り立っているので人間の好奇心に心から恐怖を覚えます。
    結末としてはどうと言う事はないのだが、謎が解けてみると何だかなぁという感じ。
    古い小説ですが古さを感じない、非常に読みやすいです。

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    2024年11月18日
  • 高校殺人事件

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    松本清張唯一の青春推理小説、とのこと。ただ読んだ感じ、高校生が主役になっているだけで、世間一般的に言われている青春小説だと思って読むとちょっと違うなと感じてしまう。
    舞台が武蔵野になっているのだけど、武蔵野を表面的に描くのではなく、多分自分の足で実際にその土地を歩いたんだろうなと思わせるところが所々あった。松本清張作品のこのリアリティがやっぱり好きだなと思う。

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    2024年11月10日
  • 点と線

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    昔の作品であり、これを参考に作られた作品も多くあると思われるため、トリックなどは比較的思い浮かびやすい。時間や場所のトリックなどもとても丁寧に説明されており、文章のわかりやすさも相まってすぐに読み終えることができた。

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    2024年10月22日
  • 点と線

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    ネタバレ

    とにかく文章が綺麗。
    倒叙ミステリで、一つ一つの障害を丁寧に取り払っていく過程が素晴らしい。
    また古典推理小説でもあり、特に電報を使ったトリックは新鮮さと興味を惹かれる。
    時刻表トリックは私の苦手とするものだったが、なんの苦労もなく読むことができた。
    内容がキャラクターよりもミステリに重点を置いて書かれているのも良かった。
    純粋な推理小説だったと思う。

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    2024年10月11日
  • 点と線

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    疑問を一つひとつ潰していき、答えに辿り着く過程が丁寧で面白い。
    あと当たり前なんだけど、あまりにも文章が上手い。特に「手紙」の日本語の美しさよ…

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    2024年10月10日
  • 砂の器(下)

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    想像してたよりも怖くなかったけど、ぞわっとする場面が何個かあって、刑事が徐々にヒントから解決に導いていく過程が読んでいてとても面白かった。
    殺害された理由は想像してたものとはかなり違って驚いたけど、三木謙一さん、とても良いひとだったんだな。
    たしかに、昭和の話だから、令和っ子の自分からするとあっさりとしてて実感が湧きづらい。けど当時の人だともっとぞわっと来るものがあったのかな

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    2024年09月26日
  • 黒い福音

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    ネタバレ

    上手いな〜〜描き方

    官能小説じゃねーかと思ってたら怖い話じゃん…書き方が客観視点なのが救いがなくて怖い

    これは神を信仰する宗教をディスった話?
    ミステリーって著者の考えが出てこないという点で怖い、サイコパスみたい
    松本清張って何を書きたい人なの?

    やっと捜査始まるんかい!!

    ランキャスター氏が世津子を襲うって、普通だったらわざわざ自分の手を汚すようなことしないと思うけど、そういうことが罷り通ってた時代ってことなんだろうな…

    実際にあってお蔵入りになったってのがやだなあ
    そうゆうものにメスを入れる感じで書いたわけね

    "実際犯罪の新解釈"っていうジャンルがあるのか…

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    2024年09月27日
  • 点と線

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    昔の小説ですが引きを取らない面白さだと感じました。アリバイ崩しの小説ということで時刻表を巧みに用いて推理を組みたてていく様は読み応え抜群でした。
    物語の途中で犯人が確定されている状態ですが、事件の真相とそこに至るまでのひらめきも含め良かったです。

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    2024年09月23日
  • ゼロの焦点

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    謎解きの要素にではなく、犯人の殺害動機に深い余韻を残す作品。そこに深みを出しているのは、まず時代背景であり、犯人としての語りは無く、冬の荒海に代弁させているところにこの作品の凄みを感じた。

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    2024年09月19日
  • 死の発送 新装版

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    トリックをあれこれ考えるのは楽しい。
    けれど、今回は少しごちゃごちゃ入り組んでいて続けて読まないと分かりにくくなった。

    私は松本清張の書く女性が好きだから、今回は少し満足度が低かったかな。(女性登場人物は、玉弥と店員さんくらい)

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    2024年09月18日