松本清張のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「松本清張」の本格推理長篇『梅雨(ばいう)と西洋風呂』を読みました。
『西郷札 傑作短編集〔三〕』、『私説・日本合戦譚』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
水尾市の市会議員である「鐘崎義介」は酒造会社と市政に批判的な新聞社を経営するやり手。
だが、温泉で出会った女「カツ子」が自室の西洋風呂で見せる、若く奔放な姿態に溺れる。
地方の名士である男は、都会的なものの虚飾に魅せられて破滅の道をたどり、やがて殺人を招き寄せていく!
地方政界に渦巻く欲望と利権を描くとともに、“アリバイ崩し”にも挑んだ本格推理長編。
-----------------------
鬱陶しい梅雨の季節に発生した殺人事件のアリバイ崩しを描いた本格推理長篇です、、、
とはいえ、殺人が起こるのは、終盤になってから(全300ページの261ページ目)… それまでは、酒造会社と地方新聞社を経営し、水尾市の市会議員である「鐘崎義介(かねざきぎすけ)」の視点から、彼の経営する地方新聞社での市政批判や広告料、賛助金名目での恐喝まがいの資金集め、記者として雇った「土井源造」の成長と裏切り、波津温泉で出会った若く魅力的な娘「カツ子」との艶話、地方政界でのドロドロとした派閥争い等々が描かれ、読む側の気持ちは「鐘崎義介」の殺意が徐々に高まっていく気持ちとシンクロしていきます。
そして、殺人事件が発生してから興味は一転してアリバイ崩しに移ります… 「土井源造」の死亡推定時刻に、「鐘崎義介」には明確なアリバイがありましたが、大降雨の中、早朝から出かけるという、新聞の取材とはいえ不自然と思える行動をしており、第三者に証言させるための作為的な行動によるアリバイ工作が疑われるものの、死亡推定時刻が変わらない限りは起訴することができない、、、
法医学の知見がないと全く想像できないトリック… 死亡推定時刻を偽装するトリックが使われていましたね。
そのヒントになっているのは、本書のタイトルにもなっている梅雨と西洋風呂、、、
「カツ子」が愛用していた西洋風呂での行動(身体をくるくると回転させて血液の循環を良くする)がトリック考案の伏線となっており、その季節を梅雨時期にしたことにより死体を風呂に浸けたことを隠すことができたんですね… へぇー、って感じでした。
動機の部分で社会派推理が愉しめ、アリバイ崩しで本格推理が愉しめる作品でしたね。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の歴史小説12作品を収録した『西郷札 傑作短編集〔三〕』を読みました。
ここのところ「半藤一利」作品を読んでいたので、歴史に関する本が読みたかったんですよね… 「松本清張」作品は、一昨年の12月に読んだ『黒の様式』以来です。
-----story-------------
時代小説の第1集。
西南戦争の際に薩軍が発行した軍票をもとに一攫千金を夢見た男とその破滅を描く『西郷札』。
江藤新平の末路を実録的に描いて、同じ権力機構内にいるものの軋轢、対照的な勝敗を浮びあがらせた『梟示抄』。
幕末に、大名、家老、軽輩の子として同じ日に生れた三人の子供が動乱の時代に如何なる運命を辿ったかを追及した『啾々吟』。
異色の時代小説全12編を収める。
-----------------------
久しぶりの「松本清張」作品… しかも、歴史小説は、本当に久しぶりです。
■西郷札
■くるま宿
■梟示抄
■啾々吟
■戦国権謀
■権妻
■酒井の刃傷
■二代の殉死
■面貌
■恋情
■噂始末
■白梅の香
■解説 平野謙
『西郷札』は、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』で既読の「松本清張」処女作品、、、
義妹への淡い恋、忍び寄る罠、そして破滅… かつて薩軍が発行した紙幣に一攫千金の夢を賭けた青年を、史実と想像を巧みに織り交ぜて描いた作品で、何度読んでも愉しめる傑作サスペンスですね。
西南戦争に参加し、生き延びた末、上京した青年「桶村雄吾」… 人力車夫となった彼は、離ればなれになっていた義妹「季乃(すえの)」と再会を果たすが、「季乃」は高級官吏「塚村圭太郎」の妻となっていた、、、
そんな折、一銭の価値もないと思われていた西郷札でひと儲けしようとした紙問屋の主人「幡生粂太郎」が、「雄吾」を利用して「塚村」へ働きかけ、政府に西郷札を買取ってもらえるように工作を図ろうとします… 「雄吾」と「季乃」の仲を嫉妬していた「塚村」は、この機会を巧みに利用して二人の関係を引き裂くことを画策します。
追い詰められた「雄吾」の「最後の策」とは… 明示されてはいませんが、きっと「塚村」の命を奪おうとしたんだと思います、、、
人の心に潜む情念を巧く描いた名作ですね。
『くるま宿』は、明治初期の東京を舞台に、ある旧幕臣の姿を描いた物語、、、
人力車の俥宿「相模屋」に、新しい俥挽き「吉兵衛」が雇われた… 若い車夫たちに混じって力仕事をする四十代の「吉兵衛」は、隣家の料亭に押し入った五人の賊を、巧みな太刀捌き(峰打ち)一人で取り押さえてみせ、皆を驚かせる。
その後、官員のお抱え車夫との揉め事に巻き込まれた「吉兵衛」は、官員が「吉兵衛」の幕臣時代を知る人物であったことから、自らの正体が知れてしまうことを避けるため、病弱な娘とともに旅立っていく… 時代劇ヒーローモノにぴったりの題材でした、、、
旧幕臣としてのプライドを捨てずに生きる姿に憧れちゃいますね… 好きな作品です。
『梟示抄(きょうじしょう)』は、佐賀の乱を主導した「江藤新平」の必死の逃避行を綴った物語、、、
明治初期の刑法にあった梟首刑(きょうしゅけい)… 犯罪者が斬首にされた後に、三日間にわたって晒し首にされる、見せしめ的な要素のある公開処刑のことで、当時、最高権力の座に上っていた参議「大久保利通」が、かつての同僚参議の「江藤」に対して容赦なく刑を執行させる姿にはぞっとさせられましたね。
しかも、「大久保利通」は日記に、裁判の梟首判決を受けて大声をあげようとして取り押さえられた「江藤」について「江藤醜態笑止なり」と書き留めて冷笑し、梟首された後には「今日都合よく相すみ、大安心」と丁寧に書き入れたというんですからね… 同じ権力機構内での軋轢って、怖いですね。
『啾々吟(しゅうしゅうぎん)』は、肥前佐賀藩(鍋島藩)において、幕末の弘化三年丙午八月十四日に生まれた三人の男… 肥前守「鍋島直正」の嫡男である「鍋島淳一郎」、鍋島藩家老の子である「松枝慶一郎」、二百俵三人扶持御徒衆「石内勘右衛門」の子である「石内嘉門」という、身分の異なる三人の武士の数奇な運命をたどる物語、、、
高い能力と才知に恵まれながらも、自分の身分・家格の低さに根深い劣等コンプレックスからか、まわりから受け入れてもらえず、次第に冷遇され、自分より学識や才覚で劣っている人間が厚遇されて出世していくのを見て、妬み嫉みの感情を募らせ次第に孤立していく「石内嘉門」の姿は、現代にも通ずる部分がる感じましたね。
人に好かれる人間性の有無… という、定量的に評価のできない部分での評価や運命をリアルに描いた印象深い作品でした。
『戦国権謀』は、「徳川家康」に仕えた「本多正信」・「正純」親子の権臣としての生き方、そして「本多家」隆盛と衰退を描いた物語、、、
あたかも友人のような関係にあった「徳川家康」と「本多正信」… 相次いで二人が亡くなった後、「正純」には、「徳川秀家」や重臣たちから疎ましく思われ、その存在価値がなくなったという時代の変化が読めてなかったんでしょうね。
『権妻(ごんさい)』は、明治初期、零落した旗本の息子が妻にしたいと連れてきた女の素性をめぐり、自分の過去の過ちと向き合わねばならなくなった男の苦悩が描き出された物語、、、
明治の世となり没落した士族「杉野織部」は、隣り屋敷に越してきた新政府の官員「畑岡喜一郎」との境遇の違いに屈辱を感じる… 「畑岡」の権妻(妾)「お由」と恋仲になった「織部」の息子「進介」から、彼女との結婚の意志を聞かされた「織部」は、「お由」の素性を知り愕然とする。
妊娠した愛人を捨てた過去を持つ「織部」の慚愧… 「お由」が軽い気持ちで使った嘘の身の上話が悲劇を生む、、、
哀しい物語ですが… さすがは「松本清張」作品ですね。巧い!
『酒井の刃傷』は、経済的に苦しくなった大名の転封をめぐり、頑固な老臣の苦悩が生んだ悲劇が語られる物語、、、
老中の職を辞め、裕福な姫路三十万石への国替えが決まり、喜ぶ前橋藩主「酒井雅楽頭(うたのかみ)忠恭」… 国家老「川合勘解由左衛門(かげゆざえもん)」は、「酒井家」にとって由緒ある前橋の地を損得勘定で離れることに異を唱えるが聞き入れられず、この先、若い世代に藩政が左右されていくことを憂える「勘解由左衛門」は最後の手段に訴えることに。
老人の孤独・嫉妬・覚悟が見事に描かれていました… ラストの臨場感・緊迫感が印象深い作品でした、、、
このラストシーンは「黒澤明」に撮って欲しいなぁ… って感じです。
『二代の殉死』は、「徳川家光」に仕えた忠臣の息子が、その父の生き方に縛られてしまったことから起こる悲劇が綴られる物語、、、
持ち前の美貌により「徳川家光」の心を掴んだ「堀田正盛」… 「徳川家光」が亡くなり、「堀田正盛」が殉死した後、息子の「正信」は父の「幕閣が間違った方向に動いた時には、遠慮なく諫言せよ」という遺命を実行しようとしますが、守旧派の「松平信綱」等に、ことごとく握り潰されてしまいます。
敗北していくネガティブな人物像が描かれた作品でした。
『面貌』は、「徳川家康」に嫌われぬかれた息子「松平忠輝」の生涯をたどる物語、、、
「徳川家康」と、百姓の女房だった側室「茶阿の局(つぼね)」との間に生まれた「忠輝(幼名・辰千代)」だが、その顔から受ける印象は、冷たく、陰気で、不快で親しめない… その面貌の悪さから、家康だけでなく、誰からも愛されずに育ち、「家康」の死後、兄「秀忠(二代将軍)」の命によって流罪になってしまう。
不幸な面貌ゆえに孤独に生きた「松平忠輝」の生涯を描いた作品でした。
『恋情』は、明治初期、留学中に、許嫁が親の出世の道具とされて自分の手の届かぬところにいってしまった男の心情が語られる物語、、、
旧藩主の長男に生まれた男爵「山名時正」は、本家筋である伯爵「山名包幸」の娘で、幼馴染の「律子」に恋慕するが、彼が英国に留学中、彼女は政略結婚によって「宮家(東山科宮英彦)」に嫁いでしまう… 「律子」の和歌を見て、彼女の真情を知った「時正」は、「律子」が「宮家」で不幸な生活をしていると聞くに及び、彼女を救いたいと念願するが、「宮家」に嫁いでしまった女性は夫が亡くならない限りは「宮家」を出ることはできない。
“待つ”という生甲斐を見出した主人公の幸福(敗北?)を描いた悲恋物語でした。
『噂始末』は、同僚のねたみからあらぬ噂を流されて破滅にいたってしまう武士夫婦の苦闘を描く物語、、、
上洛する途中、遠州・掛川に一泊した将軍「徳川家光」とその一行… 掛川藩の馬廻役「島倉利介」の家には、「岡田久馬」という旗本が泊まるが、「利介の女房・多美が、旗本と懇(ねんごろ)した」という根も葉もない噂が流れる。
「徳川家光」一行は帰路も掛川で一泊することになるが、「利介」の家には誰も泊めさすなという処置が下されてしまう、、、
噂が一人歩きして、噂が噂でなくなってしまう怖さを描いた物語… 武士の死に様が印象深いですが、理不尽過ぎてやるせなさを感じる作品でした。
『白梅の香』は、国許から一時的に江戸に上ってきた若い武士が妙な事件に巻き込まれてしまう物語、、、
出府する藩主の共で、初めて江戸へやって来た美男子な若侍「白石兵馬」… 何度も芝居見物に行くうちに、芝居茶屋の主人に呼びとめられた「兵馬」は、白梅の香が漂う邸に招待され、見知らぬ女と夢のような一夜を過ごす。
しかし、衣服についた白梅の匂いによって思わぬ事態に… 田舎侍の江戸見物の顛末が描かれた物語、、、
「江戸は面白い所のようでつまらなく、広いようで狭い所だと思った」… という「兵馬」の言葉が印象に残りました。
「松本清張」の歴史小説が愉しめた一冊でしたが… 特に『西郷札』、『くるま宿』、『権妻』が面白くて、印象に残りましたね。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の中篇3作品を収録した『黒の様式』を読みました。
『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』、『霧の旗』、『強き蟻』、『高台の家』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
「松本清張」 生誕100年記念復刊第一弾。
毒が手繰り寄せた忌まわしい過去。
姉の自殺の驚くべき真相とは――。
結婚して二年たらずで自殺した美しい姉。
歳月がながれ高校生の母親となった妹が、思春期の息子の手に負えない行状から、姉の死の真相にたどりつく『歯止め』。
小さな港町の家々に投げ込まれた奇怪なチラシ。
二十年前に母親が義父に殺されたと告発する男が巻き起こす騒動の驚くべき顛末『犯罪広告』。
“古拙の笑い(アーケイック・スマイル)”を浮かべた若い女の硬直した死体の謎『微笑の儀式』。
傑作中編小説三編。
-----------------------
引き続き「松本清張」作品に嵌っていますね、、、
本書には、以下の三篇が収録されています。
■歯止め
■犯罪広告
■微笑の儀式
■解説 中島河太郎/郷原宏
『歯止め』は、大学受験を控えているが荒れている一人息子「恭太」の母親「江利子」が、T大をトップクラスの成績で卒業したエリート「旗島信雄」に嫁いだ翌年に自殺した姉「素芽子」の死に関して不信感を抱いて真相を知ろうとする物語、、、
「江利子」は、留守中の「恭太」の行動に不安を感じつつ、親戚の結婚式に参列するため夫「良夫」とともに長野を訪れるが、その際、病的な性欲を持つ男の話(変態的な性欲を抑制するために母親がある手段で歯止めをかけている)を聞き、死ぬ前の姉の異変や「旗島信雄」とその義母「織江」の微妙な関係、思春期の息子の理解し難い行動をヒントに、改めて事情を調べ始める。
「旗島信雄」と義母「織江」の関係や、姉「素芽子」が薬問屋で購入して自殺に使ったと思われる青酸カリは、実は「旗島信雄」が大学の応用科学の講師から入手した青酸カリだったことが判ったとき、「旗島家」の地獄風景が浮かび上がります。
衝撃的な結末でしたね、、、
ひとつ屋根の下でのドロドロした関係… 実際にあったら耐えられないなぁ。
『週刊朝日』の昭和42年1月6日号 - 昭和42年2月24日号に連載された作品です。
『犯罪広告』は、熊野灘に面した南紀の町・阿夫里(あぶり)で、主だった人々の家に、相次いで殺人告発の広告が投げ込まれたことにより発生する地域社会の波乱や、二十年前に女性が行方不明となった(殺された?)事件の真相を探る物語、、、
広告主の「末永甚吉」は、
「二十年前に、池浦源作は、私の母である末永セイを殺害し、家の床下に埋めた、と私は確信している。
警察に訴えたところ、既に時効が過ぎ、源作を罰することはできないというが、せめて母の遺体を床下から収容したい。
源作は私に会おうとしないが、これは彼の心にやましいことがあるからだ。
そうでないなら、私の疑いを晴らすために床下の土を掘るべきだ」
と主張するが、「甚吉」は過去に精神病院に入院していた経歴があり、「源作」は狂人を相手にするだけ損だとして応じなかった。
しかし、小さな町の中でこの広告が大きな話題となったため、警察署長は根回しをして、床下を掘ることを「源作」に承諾させるが、床下から死体は発見されなかった、、、
その後、「甚吉」が行方不明となり、「甚吉」の友人「金次郎」は「源作」が「甚吉」を殺したのではないかと告発し、再度、床下を掘ることに… 奇想天外な発端、畳みかけるようなサスペンスの連続と予断を許さぬ展開で、物語に惹きつけられました。
「源作」等がウミホタルが付いた死体のことを吹聴し過ぎたために真相が発覚しちゃうのですが、、、
「甚吉」と母親「セイ」の運命は予想通りでしたが… 共犯者は意外な人物でしたね。
『週刊朝日』の昭和42年3月3日号 - 昭和42年4月21日号に連載された作品です。
『微笑の儀式』は、飛鳥仏の持つ「古拙の笑い(アーケイック・スマイル)」の特徴が出ている彫刻作品「微笑」と、その彫刻作品とそっくりの顔付きで亡くなった女性との関連性や女性の死の謎を解く物語、、、
大学で法医学を研究していた「鳥沢良一郎」は、奈良・法隆寺の飛鳥仏を鑑賞中、止利様式の仏像が持つ「古拙の笑い」にとり憑かれている彫刻家「新井大助」と出会う… その後、ある展覧会で見た彫刻作品「微笑」の顔つきには飛鳥仏の特徴がよく出ていたが、作者はやはりあの時の彫刻家「新井」だった。
「新井」に祝意を述べた「鳥沢」だったが、そのあと「鳥沢」を呼び止めた生命保険会社の男は、この彫刻の大きさが「人間の実物大」であり、「本当の人間の顔からそっくり取った」ものではないかと指摘、さらに、この彫刻とよく似た顔の「宅間添子」という女性が、最近死んだ事実を告げる、、、
「宅間添子」は部屋を冷やすためにドライアイスを使用して寝る習慣があり、ドライアイスから発生した炭酸ガスによる中毒死だったが、「宅間添子」の死顔と彫刻作品が酷似していることや父親を受取人にして二千万円の生命保険をかけたばかりだったこと、死顔が謎の微笑を浮かべていたこと等から、事件を不審に感じた「鳥沢」は警視庁に勤める知人「石井警部補」や操作を担当している神奈川県警「元田警部補」等と真相を探ります… 「宅間添子」へ言い寄っていたアパートの管理人の存在やプロパンガスに見せかけた笑気ガスの利用等が判明し、事故死ではなく殺人であることや、その動機が明らかになります。
犯人としては、「新井」に「宅間添子」のデスマスクをとらせたことが命取りでしたね。
『週刊朝日』の昭和42年4月28日号 - 昭和42年6月30日号に連載された作品です。
三篇とも愉しめましたが、奇想天外な発端と予断を許さぬ展開が愉しめた『犯罪広告』がイチバン印象に残りましたね。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の長篇ミステリー作品『時間の習俗』を読みました。
『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
『点と線』の二人が難事件に挑む!!
神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。
関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――
『点と線』の名コンビ「三原警部補」と「鳥飼老刑事」が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
-----------------------
雑誌『旅』の昭和36年5月号から翌年11月号に連載された作品、、、
傑作『点と線』と同じ雑誌に連載されたこともあり、『点と線』で活躍した「三原警部補」と「鳥飼刑事」が再び探偵役となり、犯人が仕組んだアリバイに挑戦する物語です。
関門海峡に面した門司市の古社・和布刈神社で、旧暦元旦の未明に行われる神事に写真撮影が殺到… その前日の深夜23時頃、神奈川県の相模湖近くの弁天島で、交通関係業界紙の編集人「土肥武夫」の死体が発見される、、、
「土肥」の投宿していた宿の女中は、女性が同行していたことを証言するが、その女性は行方不明になっていた… 有力な容疑者も挙がらず手がかりが掴めない中、「三原警部補」は「土肥」の交際人物のリストから、タクシー会社の専務「峰岡周一」に着目するが、「峰岡」は和布刈神社の神事を見物し、その模様をカメラに収めていたという、あまりにも完全なアリバイがあった。
「三原警部補」は、和布刈神社を所管する福岡県警の「鳥飼刑事」と連携してアリバイ崩しを試みます、、、
そんな中、福岡の水城で若い男性の絞殺死体が発見される… 「峰岡」が訪れていた福岡での事件であることや、犯行手口が相模湖の事件と類似していたことから、二人は2つの殺人事件は関連性があると推理して、捜査を進めます。
2つの事件に共通して存在している、ひとりの女性… これがミスリードさせられる展開でしたね、、、
アリバイは、東京~福岡間の飛行機が大阪経由だったことや、写真が他人の撮った写真を撮影していたこと等から徐々に崩れ、そして、ゲイボーイの存在が発覚して、一気に解決に向かいます。
アリバイ崩しの醍醐味が味わえる作品… 「三原警部補」に感情移入して、一緒にアリバイ崩しを推理する気分に浸れました。
飛行機は座席が決まっていなかったことや、カラーフィルムはフィルムメーカーにネガを送って現像する、定期券を身分証明に使う… 等、現代とは条件が大きく異なったり、違和感のある場面もあり、時代の変化を感じられました、、、
これらは現代では使えないトリックですけどねぇ… 当時では斬新なトリックだったんでしょうね。
以下、主な登場人物です。
「三原紀一」
警視庁捜査一課の警部補。
『点と線』の事件以来、鳥飼刑事と親しい間柄となっている。
「鳥飼重太郎」
福岡署の古参刑事。
峰岡のアリバイに関する回答を契機に、事件調査に協力する。
「峰岡周一」
大手タクシー会社「極光交通」の専務。
「土肥武夫」
「交通文化情報」発行人及編集人。
「江藤白葉」
俳句誌「荒海」の主宰者。
「須貝新太郎」
名古屋のバー「蝶々」勤務の男。
「梶原武雄」
「上ノ橋福岡食品工業」の工員。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の長篇ミステリー作品『眼の壁』を読みました。
『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』に続き「松本清張」作品です。
-----story-------------
手形詐欺の驚くべき手口!
上司の汚名を晴らすため、ひとりの男が立ち上がった。
傑作サスペンス!
白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。
責任を一身に負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた「萩崎」は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て必死に手がかりを探る。
二人は事件の背後にうごめく巨大な組織悪に徒手空拳で立ち向うが、せっかくの手がかりは次々に消え去ってしまう……。
複雑怪奇な現代社会の悪の実体をあばき、鬼気迫る追及が展開する。
-----------------------
「松本清張」の短篇を連続3冊読んで、久しぶりに長篇を読みたくなったので本書を選択しました。
400ページを超える長篇でしたが、面白かったので、一気に読んでしまいました、、、
昭和32年の4月~12月に『週刊読売』に連載された作品なので、それから60年近くの年月が経っていますが、現在でも十分愉しめる内容に仕上がっていますね。
昭和電業製作所の会計課長「関野徳一郎」は、つなぎの資金を調達しようとして、R相互銀行本店の会議室でパクリ屋グループによる巧妙な詐欺(篭脱け詐欺)に引っ掛かり、3,000万円(現在だと4億円くらいとか…)の手形を詐取される、、、
会社は大損害を被り、その責任を感じた「関野」は自殺、遺書により過程を知った「関野」の部下「萩崎竜雄」は、自ら真相を追跡しようと決心… 学生時代の友人で新聞記者の「田村満吉」の協力を得ながら事件の真相を探る。
この序盤の展開から物語に引き込まれましたねぇ… 「萩崎」に感情移入して読み進めました。
「萩崎」と「田村」は、「関野」が付き合いのあった高利貸の「山杉喜太郎」や、その女秘書「上崎絵津子」を探るうちに、早い時点から事件の黒幕として右翼の「舟坂英明」の存在に気付きますが、なかなか核心に迫ることができません、、、
その間に、会社からの依頼で事件の真相を探っていた顧問弁護士「瀬沼俊三郎」の部下で元警察官の「田丸利市」は、犯人グループの一味と目されるバーテンダーの「山本一夫(本名:黒池健吉)」に近付こうとして「黒池」が射殺されます… その後「瀬沼」が誘拐され長野県西筑摩郡の山中で死体(死因は餓死?)として発見され、「黒池」も同県北安曇郡の山中で白骨化した死体(死因は自殺?)として発見されます。
「瀬沼」と「黒池」の死については、静養を理由に荻窪の自宅から伊勢に移動した「舟坂」が裏で糸を引いていると思われますが、巧妙なトリックにより、なかなか真相に辿り着くことができません、、、
しかし、二人は「瀬沼」を東京から列車で運び出したトリックや山中に迷い込み餓死したと見せかけたトリック、「黒池」の死体を数日で白骨化させて死後数ヶ月と見せかけたトリックを暴き、そして「舟坂」の正体… 不明だった出生の秘密(出身地や「黒池健吉」、「上崎絵津子」との血縁関係)を解き明かして、アジトとしていた瑞浪(岐阜県)の精神病院「清華院」で追い詰めます。
そして、衝撃的な結末、、、
次に命を狙われていた「上崎絵津子」が沈められるはずだった濃クローム硫酸の風呂に自らが落ちてしまい、跡形もなく溶解… 現在の映像技術で映画化すると、かなりグロテスクなエンディングになりそうですね。
本作品、昭和33年に「佐田啓二」主演で映画化されているようです、、、
当時のことなので、エンディングシーンは、そんなにリアルに描かれていないだろうと思います… プロットや展開は面白いので、機会があれば観てみたいですねぇ。
以下、主な登場人物です。
「萩崎竜雄」
電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。
本作の探偵役。
「田村満吉」
新聞社社会部の記者。
竜雄の学生時代の友人。
「関野徳一郎」
昭和電業の会計課長。
竜雄の上司。
「瀬沼俊三郎」
昭和電業の顧問弁護士。
「岩尾輝輔」
長野県選出の代議士。
「山杉喜太郎」
麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
「上崎絵津子」
山杉商事の女秘書。
「舟坂英明(山崎事務長)」
戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。
荻窪在住。
「梅井淳子」
西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。 -
Posted by ブクログ
張込み:山口県、九州に向かう列車はどの列車なのか特定出来なかった。当時の暮らしぶりが何となく分かる。バスも登場し、昭和全盛の頃を思い起こさせる。
顔:山陰線周布駅から浜田駅までの普通列車、昭和22年の時刻表で確認したが当該の列車は確認出来ず。自らの名声を得ようとするが為に周囲を消してゆく、自己中心的な考え方といってしまえばそれで終わりだが、そこには一般市民としての葛藤も見て取れる。最後のいもぼうの場面はちょっと出来すぎとも思いましたが圧巻でした。いもぼう、京都に長年住んでいますが名前だけ知っていて訪問した事無し。
声:2部構成になっている。1部と2部は別の話かと思っていたが最後に結びつくあたり、構成が上手。声を確認する為に落とし穴にはまってしまった。
地方紙を買う女:準急白馬、K市は甲府。毒を仕込んだのは寿司ではなくジュースだった。場面描写が面白い。
鬼畜:真面目な男がここまで転落するのかと思う。しかし女というものは恐ろしい。娘の良子が何とも可哀そうだ。
1年半待て:男をはめるべくうまく仕組みを考えたものだ。
投影:タイトルの意味は最後の結末でようやく分かった。それにしても出来のよい奥さんだ。折角、事件を解決して腕を上げたのだからもう少し瀬戸内海S市で勤務してほしかった。同様の汚職は世間至る所にあるのではないかと思う。
カルネアデスの舟板:内容的にはやや難しかったが芥川龍之介のクモの糸のようなストーリーか、見下していた人に追いつかれるのは何ともつらいものだが受け入れなければならない時もある。元教授はやはり中国地方の人。東京から鉄道で10時間以上、きたない3等車のみで中国山脈に向かう。岡山駅から伯備線か、どこの盆地だろう???土地勘があるのか中国地方はよく登場するなぁ~