松本清張のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
(01)
歴史に登場する10人の芸術家たち(*02)にそれぞれスポットを当て、彼らの苦渋や葛藤とともに、その作家性や作品の特質を想像の中に描いている。といっても、古代から近世の人物であり、それぞれ残された記録も多いわけではない。そして、その芸術的な行為は、現代の芸術家の生業とも異なる文脈に属している。とりわけ権力との距離や体制、そして芸術を成立させる技術や情報に現代との断絶がある。
しかし、著者は、そこを飛躍し、彼らを生き生きと描いており、その生命は、矛盾はしているが、どうも彼らの現代性にあるのかのようでもある。
(02)
立体としては運慶や止利仏師が、平面としては雪舟、岩佐又兵衛、光悦、写 -
Posted by ブクログ
昭和40年に刊行されたこの短編集には昭和28年に芥川賞を取った『或る「小倉日記」伝』などが収められている。
巻末などに初出年月が一切書かれていないのでとても困るのだが、比較的初期の作品ばかりのような気がする。『黒い画集』の諸作よりもエンターテイメント性や情動的な密度が低いように思える。
幾つかの小説は、全く架空の人物をいかにも本物の伝記らしく記述した、虚構の伝記スタイルである。松本清張はこうしたスタイルを得意とし、(比較的初期の頃?)多用したようだ。それぞれリアリティがあるので、虚構と分かっていても面白く読める。
この短編集の最後の方の幾つかは、これらの中では成熟してきているようで、文学的文体 -
Posted by ブクログ
「火と汐」不倫で京都旅行中の妻が、ヨットレースに参加中の夫によって絞殺される。そのトリックとは。 「証人の森」会社から帰ってみると妻の死体に遭遇。疑われる第一発見者の夫。そして、警察の自白強要によって殺人者に確定。しかし、戦況が激しくなり真犯人として名乗りをあえげてきたのが、近所の米配達の青年。「種族同盟」国選弁護人が手腕を発揮して無罪となった青年。しかし、その青年を自分の事務所に雇い入れて、事件の真相が明らかになる。「山」会社からの横領を逃れるために出奔したのが長野県の山間にある温泉地。中居女中と親密になり、山中で見つけたのが女性の死体そしてその犯人と思しき男性。東京に中居女中と移り住み、そ
-
Posted by ブクログ
清張の短編集2冊目。
こないだの『黒い画集』ほどの衝撃は無かったが、それでも印象の強い作品はいくつかあったし、どれも興味をぐいぐいと引きつけられ一気に読まされてしまう、優れた語り口が見られた。
「紙の刃」などはサラリーマンが苦境に陥り困惑を極める話なのだが、実際の自分の仕事とはえらく違う領域であってもこの仕事上の困窮は身に迫る感じがして、読んでいて辛くなった。
どうやら松本清張は現代日本人が普遍的に日常的にすれ違うような「イヤな感じ」を見事に抉り出す点で実に傑出しているようだ。
松本清張は、「イヤな感じ」大魔王である。
現実生活にもありがちな「イヤな感じ」を、フィクションを読んでわざわざ反芻さ -
Posted by ブクログ
岡倉天心は、「茶の本」という日本というものを
世界に知らしめた人で、法隆寺の秘仏を開き、
大観、春草を育てた人で、自ら取り立ててくれた文部官僚の九鬼男爵の
奥さんを寝取って、修羅場をくぐり、東京美術学校の校長を追放された人。
そして、美術史を編纂し、伊東忠太の建築史にも影響を与えた。
という風に、ある程度の理解していたが、
松本清張にかかると、実に 人間臭い岡倉天心が、噴出する。
手法としては、原典にあたり、そこから解釈して、
天心はどのような人物だったのか?を明らかにしようとする。
最初に、東京府巣鴨病院長(精神病学の権威)への九鬼男爵の申請書から
始まるのであるが、原文そのままなので、読み