松本清張のレビュー一覧
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「松本清張」の長篇ミステリ作品『渡された場面』を読みました。
「松本清張」作品は、今年の7月に読んだ『憎悪の依頼』以来ですね。
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四国の県警捜査一課長「香春銀作」は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。
九州在住の「下坂一夫」が書いたというその描写は、「香春」が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件"の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。
再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。
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「下坂一夫」は、坊城町の旅館女中「真野信子」と博多のバーに勤める「景子」の二人の女性と付き合っていたが、時を同じくして二人が妊娠、、、
「下坂」は「景子」との結婚を選び、邪魔になった「信子」を殺害し山中に死体を埋める… 事件は発覚しないと思われたが、「下坂」が同人誌に発表し、文芸雑誌の同人誌評で取り上げられた作品の舞台が、四国A県芝田市で発生した“未亡人強盗強姦殺人事件"の場面と酷似していたことから、四国の県警が「下坂」から聞き取りを行い、徐々に真相が明らかになる。
「下坂」が「信子」から入手した、作家「小寺康司」の原稿を盗用したことが真相発覚の鍵になり、読者には犯人や犯行内容が予め明かされているのですが、警察が真相に迫る展開が面白く、感情移入できました、、、
全く別々の二つの事件が予期せぬ接点でつながり、解決していく展開は巧いなぁ… と感じたし、愉しめましたね。
双方の事件に芝犬が絡んでおり、いずれも事件解決の鍵となっているという小道具(動物?)の使い方も良かったです。
面白かったですね。
以下、主な登場人物です。
「香春(かわら)銀作」
四国の県警捜査一課長。
文学好きで県警部内の同人雑誌に小説を投稿している。
「下坂一夫」
唐津の同人雑誌『海峡文学』に作品を発表している。
抽象的な文学理論を云い、非文学的なものを軽蔑している。
29歳。
「真野信子」
下坂の恋人。
千鳥旅館の女中。
「小寺康司」
中堅どころとして期待の声もあがっている小説家。
千鳥旅館に滞在している。
39歳。
「古賀吾市」
『海峡文学』同人。
漁船員。
「景子」
博多のバーの女。
東京出身。
下坂の子を身篭る。
「越智達雄」
四国の県警捜査一課警部補。 -
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「松本清張」の短篇集『巨人の磯』を読みました。
『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』、『黒い画集』、『眼の気流』に続き「松本清張」作品ですね。
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一見、犯罪とは無縁な日常生活の中に潜んでいる不可解な人間心理を、斬新なアングルと手法でえぐった傑作推理小説集。
大洗海岸に巨人のように膨張して漂着した海外旅行中の県会議員の死体と巨人伝説を巧みに結び付けた『巨人の磯』。
実力はありながら、地味な風貌が災いし、どの組織でも決してトップの椅子にはつけない元銀行副頭取。
男が三十一歳も若いバーのマダムと再婚したとき、悲劇が幕を開ける… 妻の不貞を知った夫の犯行を、その奇抜な凶器と、巧みな人物設定で描『礼遇の資格』。
ほかに、『内なる線影』、『理外の理』、『東経一三九度線』を収録。
一見、犯罪とは無縁な日常生活の中に潜んでいる不可解な人間心理を、斬新なアングルと手法でえぐった傑作推理小説集。
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以下の5篇が収録されています。
■巨人の磯
■礼遇の資格
■内なる線影
■理外の理
■東経一三九度線
『巨人の磯』は、水戸大串貝塚の巨人伝説と、大洗海岸に漂着した巨人のように膨張した溺死体を関連付ける古代史推理要素と、アリバイ崩しのミステリ要素を兼ね備えた物語、、、
被害者の県議「水田克二郎」は台湾旅行中のはずであったが、周囲を欺いて帰国していたことが判明… 義弟「広川博」が容疑者として浮上するが、死亡推定時刻にはアリバイがあった。
「水田克二郎」と義妹「トミ子」の関係は想定内でしたが、死亡推定時刻を誤認させるためのトリックには驚かされましたね。
なかなか奇抜なトリックでしたが、法医学の知識が豊富でないと創造できないトリックでしたねぇ。
『礼遇の資格』は、三十一歳年下の女性「敬子」と再婚した、風采のあがらない元銀行副頭取「原島栄四郎」の悲劇を描いた物語、、、
両者の人間性が巧く描かれた作品でしたね… 地位のある人の妻になりたいという結婚目的を最後まで果たそうとした女性の言動に驚かされるとともに、妻の浮気相手を殺し人生の階段を転落した男性があまりにも哀れで同情してしまう作品でした。
殺人の際に使われた凶器が、妻「敬子」の好物で、その後、その凶器を「敬子」に食べさせるという設定が秀逸でしたね。
『内なる線影』は、精神科医「枝村」が、偶然知り合ったヒッピー画家「白水阿良夫」と「白水」の紹介で知り合った画壇の重鎮「目加田茂盛」とその妻「美那子」とともに玄界灘に面したリゾート地で殺人事件に巻き込まれる物語、、、
ノイローゼが原因で投身自殺したと思われた「目加田茂盛」と謎の窒息死体(絞殺によらない短時間での窒息死)で発見された「白水」の死の真相… 慢性的なガス中毒と硫化水素を使った物理的トリックが用いられていましたね。
物理的(科学的)トリックについては、「東野圭吾」の「ガリレオ」シリーズに通じる印象を受けました。
そして、本作も『礼遇の資格』に続き、年の差婚(二十五歳年下の妻)が生んだ悲劇でしたね。
『理外の理』は、娯楽小説誌の編集方針が変更されたことから、時代モノを得意としていた文筆家「須貝玄堂」は持ち込み原稿を没にされ続け、その結果、生活に困窮し、妻にも逃げられ(これまた二十歳くらい年下の妻でしたね… )、自らの作品『縊鬼(いき)』をもとにした復讐を実行する物語、、、
堆積した怨念の恐ろしさを感じさせる作品… 蔵書を詰めた風呂敷という意外な凶器を使い、非力で小柄な老人でも工夫しだいでは殺人を犯すことができるということを証明した意外なトリックが使われていましたね。
『東経一三九度線』は、古代史における大胆な仮説(東経一三九度沿いに新潟から伊豆まで並んでいる太占(ふとまに)の神事を行う五つの神社と卑弥呼("一三九"を"ひみこ"と読む)の東遷を関連付けて考察)と殺人事件を絡めたミステリ作品、、、
妻との密通や職場での上下関係による忍従が動機となり、自動車事故にみせかけた犯行を計画したという展開は、面白くないことはないのですが… ミステリよりも、古代史における大胆な仮説を主張するために書かれた作品のような気がしましたね。
本書に収録された作品は、殺害方法等のトリックが凝っていましたねぇ… 面白かった。
最近、「松本清張」中毒気味ですね。 -
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「松本清張」の短篇集『眼の気流』を読みました。
『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』、『黒い画集』に続き「松本清張」作品ですね。
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車の座席で戯れる男女に憎悪を燃やす若い運転手、愛人に裏切られた初老の男。
二人の男の接点に生じた殺人事件を描く表題作等5編。
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以下の5篇が収録されています。
■眼の気流
■暗線
■結婚式
■たづたづし
■影
『眼の気流』は、前半はタクシー運転手の視点、後半は刑事の視点から、ひとつの事件を追う物語、、、
前半では愛人に裏切られた初老男性が被害者として描かれ、後半では愛人が情人と行方不明となり初老男性が加害者では… という疑惑の人物として描かれています。
タクシー運転手の視点から偶然乗り合わせた客の私生活に興味を持つことや、前半は被害者として描かれた人物が後半では加害者となる展開は、他の作品でも類似性が感じられましたね。
被害者の着ていたシャツと目撃者の証言が一致しない点に隠されたトリックや、一度は捜査に失敗する死体処理のトリックも、なかなか凝っていて面白かったですね。
『暗線』は、父親の暗い出生の秘密を一歩一歩解明する物語、、、
同じ血を分けた兄弟が、一方はエリートコースを歩み、一方が薄幸な人生を歩むことや、その生地が島根であることが、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』に収録されていた『父系の指』を彷彿する内容でしたね。
運命の不条理… 「松本清張」が好んで描くテーマですよねぇ。
『結婚式』は、若くて美しい女性社員との恋に落ちた中年の経営者が人生を転がり落ちる物語、、、
中年経営者の友人の視点から描かれるのですが、出席した結婚披露宴で、その忌まわしい過去を思い出すという展開… 奥さんが立派過ぎたために起こった事件でもあるのかな。
破局の末に中年経営者が取った行動は、出た恐るべき内容でした。
『たづたづし』は、独身と思っていた不倫相手の女性に刑務所で服役している旦那がおり、しかも、近々出所することを知った男性が、立身出世と体面を保つために愛人を殺そうとする物語、、、
一度殺したはずの女性が生きており、記憶喪失となって生活していることを知った男は、再度、女性を殺そうとするが、記憶喪失になった女性を愛してしまう。
しかし、或る日、女性が失踪… そして、数年後、出張先で幼子を背負った女性を偶然見つける、、、
どこかで読んだ記憶があるなぁ… と感じながら読んだのですが、調べてみると、5年前に映像化作品『愛のきずな』を観てましたね。
『影』は、有名通俗作家のゴーストライターを務めることで、文芸作家への道を踏み外した男の物語、、、
岡山の山間の温泉旅館(湯原温泉かな?)に宿泊した(零落した)作家の男性は、旅館の主人が若いころにゴーストライターをした(させられた)人物だった。
代筆していたことが判明し、お互いが破滅、、、
二人とも作家としての人生を諦めることになったが、どっちが加害者でどっちが被害者だったのか… 小説家の内輪ネタとして愉しめました。
「松本清張」の面白さに嵌っちゃってます… 次々に読みたくなりますね。 -
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「松本清張」の短篇集『張込み 傑作短編集〔五〕』を読みました。
『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』に続き「松本清張」作品ですね。
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推理小説の第1集。
殺人犯を張込み中の刑事の眼に映った平凡な主婦の秘められた過去と、刑事の主婦に対する思いやりを描いて、著者の推理小説の出発点と目される『張込み』。
判決が確定した者に対しては、後に不利な事実が出ても裁判のやり直しはしない“一事不再理”という刑法の条文にヒントを得た『一年半待て』。
ほかに『声』 『鬼畜』 『カルネアデスの舟板』など、全8編を収録する。
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以下の8篇が収録されていますが、、、
■張込み
■顔
■声
■地方紙を買う女
■鬼畜
■一年半待て
■投影
■カルネアデスの舟板
『張込み』、『顔』、『声』、『地方紙を買う女』の4篇は短篇集『顔・白い闇』で既読、『投影』は短篇集『危険な斜面』で既読だったので、初めて読んだのは『鬼畜』、『一年半待て』、『カルネアデスの舟板』の3篇でしたね。
ちなみに、『張込み』、『声(映画タイトル:影なき声)』、『地方紙を買う女(映画タイトル:危険な女)』、『鬼畜』の4作品は映像化作品を観たことがありました。
それでも、好みの作品が集まっていたので退屈せずに読めましたね。
(詳細は忘れている部分も多いし… )
『張込み』は、僅か30ページ足らずの作品なんですが、深みのある作品、、、
生活に疲れた女が、犯罪を犯した昔の恋人と再会し、忘れていた(隠していた?)女としての心に火を点けるところが、憎いほど巧く描かれています。
『顔』は、心理描写が巧みな作品、、、
1度見ただけの顔なんて覚えてないですよねぇ。
それに気付いた犯人が安心して大胆な行動に出ますが、そこから綻びが… 顔そのものよりも、仕草であったり、同じ情景であったりという方が記憶が蘇ることもありますよね。
『声』は、声を見分ける能力が仇になってしまう悲しい作品、、、
石炭を使ったトリックが秀逸でしたね。
『地方紙を買う女』は、戦争で夫を失った女の哀しい物語、、、
地方紙を購入した動機が連載小説… 不審に思った作家の推理が見事ですね。
でも、もしかしたら作家の推理は誤っていたのかも… と思わせるエンディングが大好きです。
『鬼畜』は、「ビートたけし」の演技の素晴らしさを感じた作品、、、
テレビドラマで観たのですが、小説のイメージそのままでしたね… 妻のお菊はドラマでは、少し優しくなっていたかな。
男と女の愛憎、愛人の残した子どもへの憎しみ… 人間って、ここまで冷徹になれるもんなんですよね。怖い…
『一年半待て』は、どこかで観たことのなるような作品、、、
もしかしたら、テレビドラマ化されていたのを観たことあるのかも… 夫殺しの原因が、夫の暴力、飲酒(泥酔)、浮気という判断で情状酌量されますが、その裏には一年半に及ぶ計画的な行動が。
怖いけど、面白かった。
『投影』は、「松本清張」作品には珍しくスッキリとしたエンディングで後味の良い作品、、、
帰宅の方向を誤らせるトリックは、現実味が薄い感じがしますが… トラブルから東京の新聞社を辞職した主人公が、地方都市に移り、再就職した地方新聞社での経験により人間的に成長する姿が活き活きと描かれていますね。
『カルネアデスの舟板』は、二人がつかまると沈んでしまう板に、二人の人間がつかまろうして、生き残るために一方を水死させた場合に罪に問われなかったという寓話を扱った物語、、、
邪魔になった恩師を、情婦を使って陥れようとするが… その行為から男女の気持ちに微妙なズレが生じ、計画は破綻してしまう。
既読作品が多かったけど、面白かったなぁ… さすが「松本清張」作品ですね。 -
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「松本清張」の短篇集『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』を読みました。
『聞かなかった場所』に続き「松本清張」作品ですね。
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『松本清張傑作短編集』は、現代小説、歴史小説、推理小説各2巻の全6巻よりなる。
本書は現代小説の第1集。
身体が不自由で孤独な一青年が小倉在住時代の鴎外を追究する「芥川」賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。
旧石器時代の人骨を発見し、その研究に生涯をかけた中学教師が業績を横取りされる『石の骨』。
功なり名とげた大学教授が悪女にひっかかって学界から顛落する『笛壺』。
他に9編を収める。
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嫉妬や劣等感、様々な葛藤等の人間の闇の部分を抱えた人物の悲哀を描いた、どちらかというと陰鬱で重々しい物語を中心に以下の12篇が収録されています。
■或る「小倉日記」伝
■菊枕
■火の記憶
■断碑
■笛壺
■赤いくじ
■父系の指
■石の骨
■青のある断層
■喪失
■弱味
■箱根心中
現代小説を集めた作品集なので、テーマに類似性が感じられ、ある程度カテゴライズができました。
『或る「小倉日記」伝』、『菊枕』、『断碑』、『石の骨』は、考古学や俳壇等の特定の専門分野等において優れた才能を持ちながら、様々な原因から世の中から認められず、もがき苦しむ模様や、それを支える家族を描いた作品。
『或る「小倉日記」伝』の、白痴のような風貌と歩行が不自由な障害を持つが頭脳は明敏で「森鴎外」が小倉に滞在した際の事績調査に執念を燃やす「田上耕作」、、、
『菊枕』の、その境遇から才能を開花させることができないコンプレックスに悩みながら、世俗的な成功を夢見る俳人の「杉田久女」、、、
『断碑』の「木村卓治」と、『石の骨』の「黒津」は、いずれも不遇な考古学者、、、
どの作品の主人公も、認められたいという欲求が満たされず、コンプレックスを感じながら、過激な行動に移ったり、夢を諦めたり… 薄幸な生涯の悲劇性が前面に押し出された作品群でしたね。
『青のある断層』は、ちょっと趣向は異なりますが、才能を持つ人間の悲劇性を表した部分については、その延長線上にある作品かな。
『火の記憶』、『笛壺』、『赤いくじ』、『父系の指』、『喪失』、『弱味』、『箱根心中』は、理屈では割り切れない男女の関係や、そこから生じた悲劇、肉親だからこそ存在する愛憎について描いた作品。
これらの作品は、後々のミステリー作品にもエッセンスが引き継がれている感じがします。
その中でもイチバン印象に残ったのは『火の記憶』、、、
幼い頃のおぼろげな記憶に残る、暗闇の中に見える赫い火の情景… 自分のルーツを探る、ある意味、ミステリーっぽさのある作品でしたね。
作品の性質上、気持ちが暗くなっちゃう作品が多かったですが、これが現実なんですよねぇ… 他人事じゃないと感じました。 -
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「松本清張」の長篇ミステリー『聞かなかった場所』を読みました。
「松本清張」作品は、今年の4月に読んだ『内海の輪』以来ですね。
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妻の死の真相を追って運命に翻弄される一人の男。
力作長編。
農林省の係長「浅井」が妻の死を知らされたのは、出張先の神戸であった。
外出先での心臓麻痺による急死とのことだったが、妻が倒れた場所は、妻が一度も口にしたことのない町であった…。
一官吏の悲劇を描く力作長編。
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農林省の係長「浅井恒雄」は神戸への出張中に妻「英子」が心臓麻痺で急死した… 元々「英子」には軽度の心筋梗塞があったのだが、倒れた場所に不信感を抱いた「恒雄」は、妻の死の真相を知るために調査を始める、、、
「恒雄」が被害者として真相を探り加害者を追い詰める前半、
一転して脅迫される立場となる中盤、
そして加害者として自ら仕掛けた罠に自ら陥り、農協職員の誠実さにより事実が明るみになる後半… と、それぞれの展開に応じた心理描写が愉しめる作品でした。
自然体でいれば明るみにならなかったかもしれない犯罪が、隠蔽しようと工作を仕掛けた影響で… しかも、悪意のない誠実な農協職員の行動から見破られてしまうという皮肉な展開が面白かったですね。
被害者って、加害者になってしまう要素を持っているもんですよねぇ… 怖い。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の短篇集『危険な斜面』を読みました。
「松本清張」作品は今年の1月に読んだ『神々の乱心』以来ですね。
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男は絶えず急な斜面に立っている……。
爪を立てて上に登って行くか、下に転落するかだ??。
十年ぶりに会った女は、男の会社の実力派会長の妾だった。
彼女を利用して昇進に成功した男はやがて彼女の存在が邪魔になり……。
表題作『危険な斜面』ほか、刑事の張り込みを描いた『失敗』など全六篇の短篇を収録。
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本作品は昭和32年から昭和34年に発表された、以下の6篇で構成されています。
■危険な斜面
■二階
■巻頭句の女
■失敗
■拐帯行
■投影
『危険な斜面』は、出世のために女(十年前に付き合っていて、現在は会社会長の妾)を利用した男が、女の変心から人生を転落する物語、、、
西島電機の調査課長「秋庭文作」は、偶然、西島グループの会長「西島卓平」の妾と遭遇する機会があったが、その女は十年前に交際のあった「野関敏江」だった… 「秋庭」は、彼女を利用して会社での立場を好転させて行くが、「秋庭」との仲が深まった「敏江」は、「秋庭」との結婚を望むようになり、その存在が邪魔になった「秋庭」は、出張を利用してアリバイを作り山口県で「敏江」を殺害する。
完全犯罪と思われたが… 「敏江」には「秋庭」が知らない若い恋人「沼田仁一」という存在があり、その「沼田」が真相に迫る、、、
「松本清張」らしい作品でしたね。
『二階』は、病床の夫と夫に代わって印刷工場を切り盛りする健気な妻、そして派出の看護婦が織り成す心理サスペンス、、、
病身の夫「竹沢英二」は、妻「幸子」に自宅での療養を強く望む… 「幸子」は、派出の看護婦「坪川裕子」を雇い、「英二」の希望を叶えるが、印刷工場兼自宅の二階で過ごす二人の行動に疑心暗鬼となる。
冒頭で「英二」の帰宅をさり気なく避けようとする「幸子」の言動に不信感を覚えてしまうところからミスリードさせられていましたね… 巧いなぁ。
誰が奪って、誰が奪われたのか、、、
死んでからもプライドを捨てられない… そんな人間の愚かさに憐れみを感じました。
『巻頭句の女』は、俳句雑誌「蒲の穂」の巻頭を飾っていた常連投稿者からの連絡が途絶えたことにより、俳句雑誌の主宰者と同人が真相を探ろうとする物語、、、
俳句雑誌の主宰者「石本麦人」と同人の「藤田青沙」は、常連投稿者「志村さち女」が入院していた施療院「愛光園」を訪ねるが、彼女は結婚して退所した後だった… 「さち女」が、胃癌で余命数ヶ月と知ったうえで結婚して自宅に引き取った「岩本英太郎」の行動や、「岩本」の自宅で「さち女」が亡くなった日の自動車の出入り、三日後にようやく親戚が訪ねて着たこと等に疑念を抱いた二人は地道な調査により真相を明らかにする。
俳句によって結ばれた仲間たちの友情が胸を打ちますね。
それにしても… 善人と思われた人物が、凶行犯だったという意外性が愉しめました。
『失敗』は、都内で発生した強盗殺人事件の犯人が、東北地方の自宅に立ち寄る可能性があるため、そこに張り込んだ刑事たちを扱った警察小説、、、
犯人「大岩玄太郎」の妻「くみ子」と五歳の息子が住んでいるのは粗末な長屋形式の公営住宅… その三畳の台所に所轄の刑事二人、古参の「島田」と若手の「津坂」が24時間張り込む。
貧しくても、日雇いの仕事で生活費を稼ぎながら貧しくても歯を食いしばって生きる母子… 張込みを続けるうちに刑事たちは母子との距離が縮まり、徐々に情が移り始めた頃、前代未聞の大失態が発生する、、、
犯人を取り逃がし、自殺させてしまったことに対して、若手の「津坂」は自ら処分を求め、結局、辞職してしまう。
「津坂」の上司で刑事部長の「山村」警部は、「くみ子」や「島田」、「津坂」の証言、翌日「くみ子」が畑を掘り返していたことや、当夜の布団の配置等から、真相に気付くが「津坂」の将来を考えて公表せず、酒を飲みながら「島田」にだけ真相を語る。
男と女って難しいですね。
『拐帯行』は、将来に夢も希望もない若手社員が会社の金を着服後、愛する女との逃避行を描いた物語、、、
「森村隆志」は集金した35万円を自分の鞄に持ったまま、恋人の「西池久美子」と九州へ旅立つ… お金を使い切った後、二人は指宿で心中しようと計画していたが、旅の途中で素敵な中年の夫婦と出会ったことから、自分の人生を立て直そうと翻意して自首するが、羨望して憧れた中年の夫婦の正体は!?
心理描写や登場人物の配置の仕方が巧いなぁ… と感じる作品でした。
『投影』は、上司とのトラブルから大手新聞社を辞職し、水商売の女と地方都市に流れた男が、再就職した地方新聞社での経験により人間的に成長する物語、、、
大手新聞社に努める新聞記者の「田村太一」は部長と喧嘩して新聞社を辞めてしまい、ホールで働いていた恋人「頼子」と瀬戸内のSという都市に都落ちする。
「太一」は、社長「畠中」と社員「湯浅新六」一人の小さな地方新聞社「陽道新報社」に就職し、S市役所の取材をしていたところ、地方の有力者で大物市会議員「石井円吉」と土地買収に絡んでトラブルのあった土木課長「南」が部下の送別会で泥酔した後、海に転落して死亡する事件が発生した。
「石井円吉」にとって、邪魔者であった「南」の死… その死因に疑問を持った「陽道新報社」の三人は真相究明に乗り出す、、、
「太一」は、正義感の強い社長「畠中」の激励を受け、目立たないが有能な同僚「新六」と協力して、「南」を死に追いやった犯罪を立証する。
市制の腐敗摘発という困難な取材を通じて成長する「太一」… エンディングでは東京での再就職が決まり、「松本清張」には珍しく、スッキリとして後味の良い作品でしたね。
「松本清張」の魅力がたっぷり味わえる短篇集でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実際にあった事件を題材にした小説。
小説だけど、ほとんどノンフィクションのような形式。
この事件は犯人が逮捕され死刑判決まで出ているが、松本清張は元731部隊の人が犯人と推理している。
戦後、731部隊のノウハウが米軍に必要だったため、731部隊の隊員はGHQによって庇護された。
そのことを公にしたくなかったため、捜査の手が731部隊に及ぶと、GHQが邪魔をした。
と松本清張は推理を展開する。
いずれも何の証拠もなく、あくまで想像に過ぎないと思うが、一理あると思う。
ただし、冤罪なら誤認逮捕された人は、なぜ事件後、大金を持っていたのか。
そして、そのお金の出どころをなぜ言わないのか。この点が理解できない。 -
Posted by ブクログ
「松本清張」の長篇ミステリー作品『十万分の一の偶然』を読みました。
『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』、『月光 ―松本清張初文庫化作品集〈4〉』に続き「松本清張」作品です。
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夜間の東名高速道路下り線・沼津インターチェンジ近くのカーブで、自動車が次々に大破・炎上する、玉突き衝突事故が発生した。
アルミバン・トラックが急ブレーキをかけ、横転したことに始まったと推測されるも、事故直後の警察の現場検証では、ブレーキをかける原因となるような障害の痕跡は、まったく発見されなかった。
一方、大事故の瞬間を捉えた「山鹿恭介」の写真「激突」は、カメラの迫真力を発揮した作品として、A新聞社主催の「ニュース写真年間最高賞」を受賞、決定的瞬間の場面に撮影者が立ち会っていたことは奇蹟的、十万に一つの偶然と評された。
しかし、事故で婚約者「山内明子」を喪った「沼井正平」は、状況に不審を抱き、調査を開始する。
「十万分の一の偶然」は作られたものなのか。いったい、どのような方法で?
探索の末、「事故」の正体を突き止めたと思い、「正平」は行動に出るが…。
「十万分の一」と評されたそのシャッターチャンスは果たして本当に偶然なのか?
すぐれた作品を残したいというアマチュア・カメラマンのエゴイズムを軸に「作られた報道写真」問題を活写した社会派ミステリー。
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久しぶりに長篇ミステリーを読みたくなって本書を選択したのですが、、、
犯人や動機は読者が序盤から想定できる構成になっていて、ミステリー的な要素としては、その犯行をどのようにして実行したのかという、トリックを推理する部分に限られていたので、期待していた内容とは異なりましたが、人間模様の描き方は、さすが「松本清張」作品… という感じで、一気に読めた一冊でした。
概括すると、、、
婚約者を殺された男性「沼井正平」が、執念と行動力で真実を暴き、(証拠がなく法律で罰せないことから)個人的に復讐を実行する物語をドキュメンタリータッチに描いた作品… という感じでしたね。
「沼井正平」が綿密な調査と的確な推理で真実に近づき、偶然を装いながら犯人と接触し、徐々に犯人を追い詰める展開が面白かったですねぇ… 直接的な犯人だけでなく、間接的に犯人を犯行に駆り立てた人物への復讐も企てる展開は、報道写真や報道の在り方に対して警笛を唱えた作品なんだろうなぁ と感じました。
以下、主な登場人物です。
「沼井正平」
東京・祐天寺に住む、元P大学経済学部助手。
婚約者・山内明子の死を契機に大学を辞職。
「山鹿恭介」
報道写真に強い関心を示すアマチュア・カメラマン。
本職は、福寿生命保険藤沢支店の外務員。
「山内みよ子」
山内明子の姉。
職業は通訳で、明子の死を知りスイスから帰国。
「西田栄三」
藤沢のアマチュア写真団体「湘南光影会」の中心メンバーの一人。
「米津安吉」
事故の際、山内明子の後ろを走っていたライトバンの同乗者。
「古家庫之助」
報道写真の権威として知られる大家。
A新聞社の公募ニュース写真の審査委員長を務める。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ清張没後30年 WOWOWドラマ化。契約してないので観れませんが。なぜ、眼の壁を?まだ本棚に残っているので再読です。
資金調達に窮した昭和電業製作所。白昼のとある相互銀行(平成5年相互銀行法廃止)で、三千万(今だと4or5億くらい?)の手形詐欺にあってしまう。担当者は自殺。部下に遺書ともいえる事件の詳細を書いた手紙を残す。部下・萩崎は友人の新聞記者と共に、事件を追い始める。それは、連続殺人事件へと繋がっていく。
経済犯罪小説の先駆け。事件に絡む右翼組織。作者らしい、伊勢や木曽などの地方都市への旅情。
今では考えられない社会常識の中での推理小説ですが、最後まで何を追い詰めているのかさえもわからない名作だと思います。
でも、これ小説の手順で手形パクリ詐欺ができるとは思わないでくださいね。詐欺事件の手法としては、簡易すぎます。手形を準備していますけどを、融資の種類、手形貸付あるいは割引手形か、さえも明確でない。まして、融資取引を契約していない銀行とは不可能。なーんて重箱の隅突いていたら、作者は、そこのところを故意に簡易化したようです。
この詐欺の後の事件の背後を重視ですね。
そして、なんと今年度後期に手形交換所がなくなるみたいなんですよね。なんと電子化。今では、電子手形なる物も利用されているとか。経済犯罪も電子化でしょうか。現物の手形を使った詐欺のドラマはそろそろ最後ということでしょうか。
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「松本清張」の短篇小説集『虚線の下絵』を読みました。
「松本清張」作品からちょっと離れていましたが、再び「松本清張」作品を読みたくなったんですよね。
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日常に潜む破綻の芽を描いた傑作短篇集。
画家として名声を得た親友への複雑な思いを抱きながら、しがない肖像画家として生計を立てる男。
夫のため、会社の重役を相手に注文取りに奔走する妻は、次第に妖しい色気を増していく。
疑心暗鬼にかられた男が陥った罠とは――。
男女の業(ごう)を炙(あぶ)り出した『虚線の下絵』のほか、『与えられた生』、『通過する客』、『首相官邸』の全四篇を収めた短篇集。
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本書には以下の四篇が収録されています。
■与えられた生
■虚線の下絵
■通過する客
■首相官邸
『与えられた生』は、胃癌と診断された画家が二度に亘る手術で一命を取り留めるが、死ぬ覚悟をした際の夢(望み?)を叶えようとして悲劇の階段を堕ちて行く物語。
画家としての仕事と女性に関する夢を叶えようとする気持ちは痛いほどわかるし、小心者でまわりのことが気になる性質に共感したことで、主人公に気持ちがシンクロして、感情移入しながら読み進みました。
堕ちるところまで堕ちて… そして、最期の望みが絶えたときに、画家の取った行動は、、、
わかりますねぇ、その気持ち… でも、そうなっちゃいけないんだ と自分に言い聞かせながら読みましたね。
それにしても、「松本清張」の魅惑的な女性の描き方には感心させられます… 本当に巧いですねぇ。
『虚線の下絵』も、画家が主人公の物語。
親友の画家は画壇の寵児となったが、自分は肖像画を描いて生活を営むしがない生活に甘んじており、常にコンプレックスを抱いている… 肖像画の仕事も、妻が営業して注文を取ってくることで成り立っている、、、
画廊関係のプロよりも注文を取ってくる妻に感謝していたが、次第に妖しい色気を増していく妻が体を使って注文を取っているのではないかと疑心暗鬼となり、その思いを密かにカンバスの下にデッサンして、自分の欲求不満の捌け口とするが… それが悲劇を生んでしまう。
妄想だったのか、真実だったのか… それは明かされないままエンディングを迎えますが、パートナーを疑うことは、良い結果を生まないという教訓ですかね。
『通過する客』は、得意の英語を活かして、海外からの旅行者のガイドをしている主婦の物語。
主人公は年上の男と再婚した主婦… 優しい歯科医の夫との生活は大きな満足も大きな不満もないが、その平凡な生活に物足りなさを感じている。
以前、ガイドをしたアメリカ人からの紹介で、一人旅をするアメリカ人女性のガイドを担当することになるが、その女性はとっつきにくく、満足のいくガイドができない… そのうえ、その女性は京都に向かう新幹線で偶然知り合ったアメリカ人青年に気を取られ、と京都での行動を共にする、、、
結果的にアメリカ人女性は詐欺に遭うのですが… ひとり取り残された主人公の女性は、アメリカ人女性の行動や発言を振り返ることになり、それが自身の夫への態度や姿勢を見つめ直す機会となります。
他人の行動、姿勢、態度等から、自分の行動を見直す、良い部分は見習い、悪い部分は反面教師として見習わない… ということを改めて感じましたね。
『首相官邸』は、二・二六事件を見習軍医の視点で描いたドキュメンタリー風の作品。
軍と共に行動しつつ、軍医という立場から一歩引いた視点から、やや冷めた目で軍の行動を見つめているところが面白かったですね。
二・二六事件のことを、よく知っていれば、もっと愉しめた作品だと思いますが… ちょっと知識不足でした。
本書に収録された四篇に共通するのは、殺人もなく、刑事や探偵も出てこないということ… 一般的なミステリー、推理小説ではありませんが、それぞれ惹き込まれる魅力がありましたね。
人の気持ちを巧く表現してあり、ついつい感情移入してしますので、面白く感じるんだと思います。
「松本清張」作品、次も読みたいですね。 -
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「松本清張」の推理小説集『証明』を読みました。
『神と野獣の日』、『疑惑』、『火と汐』に続き「松本清張」作品です。
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小説が認められず苛立つ夫に、毎日の行動を執拗に追及される雑誌記者の妻。
怯えからつい口にした嘘が、惨劇をひき起こす。
『証明』、『新開地の事件』、『密宗律仙教』、『留守宅の事件』推理四篇収録。
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「松本清張」作品って、次々と読みたくなる魅力を備えていますよね。
本書には以下の四篇が収録されています。
■証明
■新開地の事件
■密宗律仙教
■留守宅の事件
『証明』は、売れない作家と支える妻の悲劇的な関係を描いた作品。
作家を目指し、仕事を辞め執筆に専念する夫と、夫を精神面・経済面から懸命に支える妻… しかし、夫は小説が認められず、その苛立ちから、雑誌記者として不規則な生活を余儀なくされている妻の行動に不信感を抱き、執拗に毎日の行動を追及する。
妻は誤解を招くことを恐れ、夫にちょっとした嘘をついてしまう。
その嘘を取り繕うため仏文学者に偽りの証明(証言)を依頼するが、それが切欠となり仏文学者と過ちを犯してしまう… 夫が睡眠薬を服用して自殺した後、妻は復習を果たしてから、夫のもとへ。
喉の奥に何か詰まっているような息苦しさが、読み進めながら強まって行くような作品… 嘘をつきとおすというのは、相手のことを思っていたとしても、精神的にキツイですよねぇ。
また、作家に限らず、中途半端な才能を持った故に、一流と平凡のボーダーライン上を彷徨うことになった人生って… 難しいですね。
『新開地の事件』は、「東野圭吾」選のアンソロジー作品『スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎001』で既読の作品。
再読でしたが、面白く読みました。
何気ない日常に潜むドロドロとした人間関係に起因した殺人事件、特に男女の欲望が巧みに描かれているところが「松本清張」らしい作品… 歳は重ねても、女は女なんですよねぇ。
『密宗律仙教』は、ある印刷工が教祖となり密教系の律仙教という新興宗教を興す物語… 宗教関係の内容なので、あまり興味が湧きませんでした。
宗教に関する知識の深さ、広さに感心しました。
『留守宅の事件』は、夫の出張中に妻が殺害された事件のトリックを暴く作品。
夫の出張中、妻に恋心を持つ夫婦共通の友人が夫の留守を知り妻を訪ねていた… 夫が自宅に戻ったとき、妻は物置で死体となって発見される。
東北出張中でアリバイのある夫、殺害の機会と動機があるが殺害を否認する友人、、、
捜査を進める中、夫が妻に多額の生命保険をかけていたことがわかり、警察は夫のアリバイ崩しにかかる… そこにはまさかのトリックが。
昭和44年から昭和46年に発表された作品でしたが、現代に置き換えても通用する作品だと思います。 -
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「松本清張」のSF的小説『神と野獣の日』を読みました。
「清水義範」のSF連作集『博士の異常な発明』を読んで、SF作品を読みたくなったんですよね。
「松本清張」作品は、『ゼロの焦点』以来なので約半年振りです。
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「重大事態発生です」―ある早春の午後、官邸の総理大臣にかかってきた、防衛省統幕議長からの緊急電話が伝えた。
Z国から東京に向かって誤射された、5メガトンの核弾頭ミサイル5基。
1発で、東京から半径12キロ以内が全滅するという。
空中爆破も迎撃も不可能。
ミサイルの到着は、あと…43分。
ラジオ・テレビの臨時ニュースによって、真相が全日本国民に知らされた!
SF的小説に初めて挑戦した「松本清張」の隠れた名作。
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日本から2万km離れた太平洋自由条約機構のZ国から誤って発射された核弾頭ミサイル5基が東京に向かっている… 自爆装置は起動せず、日本(自衛隊及び在日米軍)の迎撃能力では3基しか破壊できない、、、
43分後の12時32分(のちに140分後の15時9分に訂正)には東京が被爆することを覚悟した政府の混乱、事実を告げられた住民のパニック等がリアルに描かれています。
東京から逃げるためにパニックとなった住民の蛮行は、ぞっ… とするような身勝手で野蛮な行動なのですが、実際に死の恐怖に直面した人間は、冷静ではいられないんだろうと思いますね。
極限の状態に置かれ、本能に任せ野獣と化した人々、最期まで人間性を失わず神として行動した人々、、、
その両方が描かれていますが、自分が、その場にいたら、どちらの行動を取っただろうか… 考えさせられる物語でしたねぇ。
(多分?)東西の緊張が高まっていた1963年に書かれた作品ですが、原発事故や北朝鮮の人工衛星発射等もあり、なんだか現実味のある物語に感じました。
現実にならないことを祈るばかりですね。
助かった… と思わせたあとの、このエンディングは巧みです。怖いです。
映画化しても面白そうな作品に感じましたね。